1.ナチ支配からチェコが解放されるまでの厳しい歳月を、人々が如何に生き抜いていったかを、ユーモアとペーソスを交えて描いた秀作。戦時下の特殊な状況を描くことで、戦争の虚しさや愚かしさを批判した作品は数多くあるが、本作は人々の普遍的な日常のドラマを通して、人間の愚かさ・哀しさ、そして尊厳というものを、柔らかな眼差しで格調高く描いてゆく。戦争の行方しだいでは立場も逆転してしまうという皮肉な運命に翻弄される人々。そういった切羽詰った状況でみせる、人が他人を思い遣る心が大切なのだと、きっと作者は言いたいのだろう。やがて生まれてきた、まだ争い事など知らない無垢な赤ん坊。それは、すべての人々の魂を救済するような、あたかも神の啓示としての存在だと言える。映画は、まさしくファンタジックで感動的なエンディングを迎える。