1.《ネタバレ》 原作は雫井脩介さんのベストセラー小説。残念ながら原作は未読です。
テーマであり、作品の題名にもなっている父親と母親の異なる「望み」。犯人でもいい、生きていて欲しいと祈る母。息子が犯人の訳がないと信じる、いや信じたい父。そして、愛する兄ではあるけれど、兄の為に自分の将来が滅茶苦茶になってしまったと嘆く受験生の長女。息苦しいほどの重い空気に充たされた家庭。家族の在り方が問われる瞬間。それぞれにもがき苦しみながらも、真実に向き合おうとする姿は、痛々しいと同時に、美しく純粋に感じました。この状況の中で、毅然としていられるのは余程の人物。ここに描かれているのは、普通の人たち。決してこんな思いを抱きながらの生活は送りたくはないけれど、父に母に長女に、そして何よりも長男に、すっかりと感情移入してしまいました。他の加害者と被害者については表面的に描かれているだけなのが、寧ろ救いかな?一人ひとりをもっと描き込んでしまったら、収拾のつかない愛憎のドラマになってしまうでしょうね。必要以上に他の関係者を描き込まず、シンプルに、石川家にだけスポットを当てていることで、スッキリとまとまった良作になっていると思いました。