2.警察官と揉み合いながら、封鎖を突破していく清水優と梶原ひかりのロングショットや、
村上淳と神楽坂恵の記念写真といった、ふとしたシーンの軽妙なユーモアがいい。
生真面目一辺倒の『生きものの記録』路線でないのが救いだ。
『ヒミズ』の貸ボート店のソファも良かったが、本作の縁側や花壇や牛舎なども、
身近な生活空間が魅力的で切実な舞台として映えている。
背景の花と手前で打ち込まれる杭を組み合わせたショットなど、
意味性が強く観念的すぎる箇所も多いが、
逆光を効果的に使った白バックのシンプルなショットが要所要所で印象強い。
花壇中央にそそり立つ立木を包む光。
夏八木勲への感謝を電話で伝える神楽坂恵を包む光など、
今作の園子温はかなり照明に意識的である。
あるいは、透明ビニルシートを背景に父親に電話する中村淳の横顔。
一面の雪の中で踊る夏八木勲と大谷直子の夫婦の楽しげな様。
いずれも白をバックとした画面が、人間の像を一層引き立てている。