2.ストーリーはあって無きに等しいこの映画。骨格だけの映画、というのともチト違いますね。むしろ骨格が無いと言うべきか。実態の無い「何か」の周りをただ廻り続ける脆さ、それが独特の緊迫感に結びついています。そうだ、昔から、ドーナツは穴が一番美味い、と言うじゃないか(←言わないよ)。映画全体を覆う虚無感、そしてそれを冷たく彩る銃撃戦。この銃撃戦には立体感がある。「向こうにいる敵」と撃ち合うこの感覚は、壮絶でもあればドライでもあります。また、5人が食卓を囲むシーンでの、銃をテーブルに置くときの、ガツンという銃の質感も忘れがたい。そう、シュワとかスタとかが映画でピストル振り回すと何だかピストルって軽~いものみたいに錯覚してしまうけど、実際にはこんなに重いものなんだな。映画の中には、緊張を緩和させるシーンがいくつかあります。プールサイドでの喫煙シーン、紙くずサッカーのシーン・・・だが、この食卓いのシーンは、銃の質感の前に、もはや「緩和」ではありえない・・・。いささか映画らしい肉付けに欠けているのが、(たとえ製作側の意図通りであれ)気にならなくもないのですが、特異な魅力を放った映画には違いありません。それにしても・・・宍戸錠に似てるなあ。