1.ホウ・シャオシェンの作品で度々その姿を見ることができるリー・ティエンルー。本作は彼自身を主人公とし、彼の人生のうち、台湾の日本統治下という激動の時代に激動の半生を過ごした日々をリー自らが語り部となって綴られる。
激動の時代に生きた激動の半生にしてはあまりにも淡々としている。そんな日々を回想するリー老人自身もまた淡々と飄々と自らの半生を語ります。それは彼と彼の家族の描写もそうだし、日本軍の描き方さえも。
激動の時代の激動の半生を敢えて淡々と描き、淡々と自身の運命を受け入れてきたリー老人の姿を通して見えてくる庶民の強さ、逞しさ。戦争が終わった直後のラストシーンからは特にそれを強く感じます。
こちらでホウ・シャオシェンの映画のコメントを書くのはこれで4本目ですが、いずれも青年や少年の成長とその家族との日々を、台湾の美しくどこか懐かしさを感じさせる風景描写の中に瑞々しく描かれた素晴らしい作品です。節目に挿入される台湾の風景描写、音楽の使い方のセンスなど、本作にも随所にそんなホウ・シャオシェンの映画特有の味わいがあります。