9.《ネタバレ》 こ、これは凄い。導入部で、これはよくあるローマ帝国の剣闘士ものかなあなどと思っていたら、イエスの処刑を転換点に(このシークエンスでの、1シーンだけ登場ゆえのユダのインパクトも強力)、ぐいぐいドラマが動き出す。そして主人公の(および作品世界全体の)宗教的方向へのテンションは着実に高まっていき、いつしか、信仰心が剣よりも強いというワールドが完成してしまう。この導線力というか吸引力は実に強烈でした。一方で、お顔から立ち姿からすべてが美しすぎるジーン・シモンズをできる限り存分に画面に登場させるというサービス精神も忘れてはおらず、作品が観念的次元に陥ることを防いでいます。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-06-16 00:25:28) |
《改行表示》8.《ネタバレ》 歴史スペクタクル、とは言っても大規模な戦闘シーンを売り物にしている訳ではないのですが(チャンバラが多少)、大がかりなセットに大勢のエキストラ、やはりこれはスペクタクル。 イエス・キリストの処刑にまつわるオハナシで、例によってイエスの顔は劇中には登場しません。そして意外にアッサリと処刑されてしまう。その処刑の際にイエスが身に着けていた衣装、「聖衣」がこの作品のテーマ。 イエスは生前、人々の病気を治す奇蹟をおこなった、らしいのだけど、作中ではその奇蹟が直接描かれる訳ではなく、イエスを自らの手で処刑し後に続くマーセラスの苦しみも、聖衣に触れたため、というよりは、聖衣を通じて自分の良心の呵責に触れたため、という描かれ方になってます。キリスト教とは無縁の人間が観ても、納得感がありますね。 ラストシーンで胸を張って処刑場に赴く主人公と、その恋人。彼らの背景が、次第に現実のものから大霊界(?)へと変化していく描写が、これは今見ると少し気恥ずかしいものがあったりもするのですが、しかしなるほど、合成技術によりこういう表現もできるんだなあ。というワケで、この手法は少林サッカーあたりにも影響を与えているのではないか、と(まさか)。 基本は宗教劇なので、活劇の要素は多くはありませんが、ペテロの集会が軍隊に襲われる場面や、終盤の城への侵入シーンなどは、なかなかの見せ場になっています。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-01-04 15:43:28) (良:1票) |
《改行表示》7.クリスマスイブに見ました。 ちょうどその頃、ジョン・レノンの特集番組が沢山放送されていて、その番組と本作が重なってしまいました。 ジョン・レノンは救世主イエス・キリストに例えられるのではと。 そう見ていくと、ポールはペトロといったところか。 では、主人公のマーセラスは誰かと考えてみると…。 それは私自身では…。 こうして物語を自分に重なてしまうと、主人公である自分は最終的にどこへ向かうのか。 勘違いすると、ジョン・レノンを暗殺したマーク・チャップマンになりかねない。 そう考えると、むやみに物語を自分に重ね合わせるものではないなと思いました。 私はクリスチャンではありませんが、心に訴えかけてくる映画ではありました。 【クロエ】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-12-25 18:41:35) |
6.この作品を初めて見たのはまだ小学生の頃だったと思います。イエス・キリストの生涯については新約聖書を子供向きに書き直したものを読んでいたものの本作品とオーバーラップする箇所はロングショットで映されるイエス・キリストの磔刑のシーンしかなく、世界史(ローマ帝国)についての知識は皆無でしたがなぜか子供の頭にもすんなり入る内容だったことを記憶しています。もう一度鑑賞してみてその理由を探るとやはり若き日のリチャード・バートンの西洋流チャンバラの負うところが多いのではないかと思います。兜のてっぺんの赤い飾りが特長的なローマ武将(護民官)がキリストの磔刑の警備に当たっていたと思ったら次のシーンで同じ格好の同僚とチャンチャンバラバラ。。。視覚的に非常にわかりやすかったです。この映画が作られた1953年にはチャールトン・ヘストン主演の「十戒」が制作され、1959年には同じヘストン主演のハリウッドの記念碑的作品の「ベン・ハー」が作製されます。日本にとって戦国時代が汲めども尽きないドラマとスペクタクル源泉になっているように、キリスト教国のアメリカではまずは聖書がスペクタクルとドラマの源泉と映画界は捉えたようです。そして日本の戦国時代を舞台とする映画作品がカオスによってその後三百年弱の江戸時代の太平の礎(いしずえ)が築かれる様を描いているように、聖書を題材とする多くの映画作品はイエス・キリストが生きた時代に原始宗教が主流だった世界に唯一絶対神の下での統一された道徳観を人類の大半にもたらす礎石が築かれる過程を描いているのです。 【かわまり】さん [DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2020-04-13 12:51:52) (良:1票) |
《改行表示》5.巨額の製作費を投じたというのも頷ける史劇。スケールの壮大さとは裏腹に贖罪を実直に描いた地味な物語。キリスト教徒でない身には神に許しを請う考えが解らない。時間は元に戻せなく罪もなかった事には出来ないのであり、罪の意識を持った時点でこれからどう生きてゆくのか自分で考えて実行するのが償いだと思う。 How many fingers am I holding up, Winston? が頭にこびり付いているリチャード・バートン28歳時の演技は同じように淡々としているも遺作に比べて深みが無いのが残念。シネマスコープ初採用作に敬意を表します。 |
《改行表示》4.《ネタバレ》 映画史上初のシネマスコープ作品だそうです。 当時台頭したテレビに対抗して導入されたそうで、今から60年も前にこの方式が生み出されて今日までこのシネスコが続いているわけですから、凄いものですよね。映像的にも、セットや小道具、衣装などまさに大作の様相で、遠景はおそらく絵画なんでしょう。それが手前の実写と違和感なく、見事に合わさっている。マーセラス が、奴隷のディミトリアスに布を渡されるシーンの台詞が印象深いです。「呪いは布にあるのではなく、あなたの心にあるのです」「これまであなたは、自分の犯した罪だけを考えていた。今後は主のことを思う」なんというか、罪の意識から解放されて、心が楽になるその気持ちがよくわかるような気がします。 【あろえりーな】さん [DVD(字幕)] 6点(2012-02-26 03:05:54) (良:1票) |
《改行表示》3.《ネタバレ》 昔、『トリノの聖骸布』という本を読んだ。イエスの遺体を包んでいた布という触れ込みで、イエスの全体像が転写されている。その本は初版では真偽は不明としていたが、重販される頃には、科学的に否定された旨、追加されていた。二十数年前、この映画は、てっきりその布のことだと思って見た。なぜなら、そういう紹介をしている本を、昔読んだからだ。……騙された。 ”これは、イエスが生前羽織っていた布の物語です。” キリスト教では、イエスの直接使ったものは残されていないが、その後の聖人の遺したものを、聖遺物と称して霊力を認めていたりする。その中には、亡くなった司祭の腕を切り落としたものがあったり、なかなかおぞましい世界らしいのだが、そういう文化を引き継いだ欧米の人たちには、この布が力を発揮するさまを、素直に受け入れられるのかも知れない。 イエスをその手で処刑したローマ役人の奴隷が、エルサレムに入城するイエスを、見ただけで心酔してしまうのは、聖遺物同様、信者でないと受け入れ難い表現だ。更に、マーセラスが問題の布切れを羽織っただけで、かの人の教えが彼の心を苦しめる。この辺の描写が心的なものなのか、超常的な力があるのか、判りにくい。微妙にどうとも取れる描き方なのだ。後にペテロが奇跡を起こすように、超常的な事を描く世界観で行くのなら、布の力にしてしまえばいい。少なくともペテロが奇跡を起こすよりは、その方が。しかし、そうではなく、もっと精神世界的な物語を期待していた私には、最初はどっちつかずで、とうとうペテロがやらかした、と映ってしまう。 【Tolbie】さん [DVD(字幕)] 5点(2011-10-23 05:00:53) |
《改行表示》2.シネマスコープ方式によって撮影された第1回作品とあったが、そんな気もする。 なんと言っても大昔に観た映画の記憶に入っている一つ。小学生だったと思う。 ヴィクター・マチュアは外人で覚えたスターの一人目。 【ご自由さん】さん [映画館(字幕)] 7点(2009-09-18 23:59:07) |
1.《ネタバレ》 続編「ディミトリアスと闘士」から先に観てしまうという掟破りの鑑賞法。続編の冒頭で、この作品の結末が明示されていたので、ああ、多分これがこうなってああいう結末になるんだなあって見てると、まさしくその予想通りになる(笑)続編は娯楽大衆色が強いスペクタクル的アプローチに対し、こちらはより宗教的、しかも大真面目で立派な作りになってますね。世界初シネマスコープ方式採用作品として、映画史に残る著名な映画ですが、今となってはブラウン管で見る限りどうという事もない。キリスト教信者の方なら、これは非常に有難いっていう内容なのかな?信者でない自分にはその辺は良くわかりかねます。DVDジャケットの逝っちゃってる(←悟りを開いたともいう)護民兵リチャード・バートンの表情がこの映画の全てを語っているとも言ってよいかも。まだ信仰がそれほど篤いようには見えない、ダイアナ(ジーン・シモンズ!美しい!)を神の国に連れて行くっていう結末は・・・ど~なんだろねえ・・・。ラストシーン、お二人のあまりに幸福そうな表情を見ると、キリスト教に限らず宗教とはまるで縁がない自分としてはちょいと複雑な気分に。まあ当人さえよければそれで大円団なのか。ハ~レ~ル~ヤ~!! 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-05-09 14:45:31) |