3.第2次世界大戦から戦後の東西冷戦の時代。
ソ連に原爆の情報を渡した、実在した1人のイギリス人女性の実話に基づくドラマ。
キャストを見ると、「ジョーン・スタンリーと若き日のジョーン」となっていますが、
むしろ「ジョーン・スタンリーと年老いた晩年のジョーン」というべき作品構成になっています。
名優ジュディ・デンチは過去を回想し、作品のストーリーテリングを支えるといった位置づけで
実質的な主演は若き日の彼女を演じたソフィー・クックソン。
実話モノゆえ、スパイものとしては地味で淡々とした流れとなっていますが、
彼女と、彼女の周りにいた親友や男たちとの関係を通して、
なぜ彼女がこのような行為に至ったのかはしっかり描かれていたと思います。
終盤に息子に対して、
「東西それぞれが大量破壊兵器を持てば、どちらも使えない。私が原爆を使えない状況を作ったの。」
ラストも群がる報道陣に対して、
「私はただソ連と西側を対等にしたかった。そうすれば恐ろしい世界大戦がまた起きるのを防ぐことができる。
歴史を振り返れば、私が正しかったと分かるはずです。」と言った。
その危機はあったが、確かにこれまではそうだったのかもしれない。
しかし2022年。核兵器の使用をチラつかせる独裁者と、今ウクライナで起こっていること。
このタイミングで見た本作。核兵器の廃絶を強く願う。