28.《ネタバレ》 観光で、ノイシュヴァンシュタイン城に行ったことがある。もう19世紀も後半という時代に、国防にも外交にもまったく何の役にも立たない美しいお城を、中世への憧れというだけの動機で、国金をさんざん浪費して作った代物であった。しかしそれだけに、その城は、向こう何百年にもわたって時の検証に耐えるであろうオタクの異常な執念を感じさせた。また、ルートヴィヒ2世という人は引きこもりの人嫌いだったのだが、そうであるがゆえに建築されたこの城が、今では世界中から観光客が詰めかける重要スポットになっているというのも、歴史の楽しさを感じさせる。つまり、ルートヴィヒ2世こそ、世界史上有数の最強の引きこもりオタクなのである。最後は臣下から廃帝扱いされて、その後間もなく謎の死を遂げたというのも、その末路にふさわしい。●で、その前提でこれを見ると、その辺が全然表現されていないのです。主人公はあれこれ悩んだりはしていますが、何かそれはハムレットかウェルテルみたいで、まっとうな悩みの域を脱してはいません。その程度では、あんなお城はできなかったはず。また、脇役にもほとんど個性がありませんし、すべてが美術負けしてしまっています。 【Olias】さん [DVD(字幕)] 4点(2023-03-10 01:09:08) |
27.批判的な視点で淡々と史実だけを綴ったジャーナリスティックな伝記映画。けっして美しい映画ではありません。むしろ、美しさからはもっとも遠い世界だと思います。ヴィスコンティ自身は、ワーグナーはおろか、ルートヴィヒのことも、まったく愛していないのでしょう。ひたすら冷たい眼差しで、その哀れで無様で滑稽な人生を描いています。ヘルムート・バーガーもロミー・シュナイダーも美しいとは思えません。むしろ露骨なくらいに醜悪でした。あえてドイツ文化のグロテスクな面をあぶりだしているのでしょうか。個人的には、幻想的な映像美とワーグナーの音楽に耽溺できる内容に期待していましたが、そうした要素は皆無でした。安っぽいだけのデカダンが、悲しく虚しい。 個人的な好みとしては6点ぐらい。伝記映画としてなら7点。 【まいか】さん [DVD(字幕)] 7点(2020-01-19 07:32:24) |
26.《ネタバレ》 ヴィスコンティの最大の傑作。そして、退廃的な映像の極致。狂った男の一生を、華麗に残酷に冷徹に描いた作品。見ている間は、取り込まれる。二度とこのような映画はできないだろう。ある意味、映像美の極限。また、ロミーシュナイダーがいいんだなあ。 【にけ】さん [映画館(字幕)] 10点(2019-02-02 18:16:30) |
25.全編イタリア語ってのが残念。しかしながら、確かに長いけれども、非常に分かりやすいし、これぞ映画! って感じの作品。もう、最初から最後まで贅沢の極みみたいな作りに溜息モノです。また、ヘルムート・バーガーは、残されているルートヴィヒの写真にそっくりで、演技も素晴らしい。ロミー・シュナイダーのシシーは、ちょっとイメージが違う気もするけれど、何しろ、ロミー自身も素晴らしい美女。ヴィスコンティ映画はあんまし得意じゃないんですけど、これは彼の執念のようなものが感じられ、圧巻です。全編を覆う頽廃的な雰囲気と、どんどん神経を病んでいくルートヴィヒ。彼は、当時は禁治産者の烙印を押され、無能の王とされたけれども、歴史的には十分存在感を発揮しているわけで、その当時のちょっとした賢王程度だったら、歴史に名を残していたかどうかも怪しいもの。まして、彼が国家を破綻させてまで作った城の数々は今や重要な観光資源。ヘレンキームゼー城しか行ったことないけど、本当に、ただただ溜息の出るばかりの美しさで・・・。歴史的建物なんて、大抵、当時にしてみりゃ無駄遣いの象徴みたいなのが多いわけで、ルートヴィヒも、あの世で現代における我が身の扱いに納得しているんじゃないかしらん。とにかく、端から端まで美しい映画でございました。 【すねこすり】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-01-13 21:21:07) |
24.自分がもう少しまじめな映画ファンで、もう少し感受性のある年齢でこの映画に出会っていたら、人生が変わっていんじゃないかと思わせる作品。イタリア語でこの話を鑑るのも不思議な感じだが、イタリア語じゃないと、この映画にならなかったような気がする。 【みんな嫌い】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-08-11 23:26:56) |
23.《ネタバレ》 “巨匠”と呼ばれる様になってからのヴィスコンティ映画はあまり自分は好きじゃない。彼の晩年の作品は大芝居を工夫のないカメラワークで延々と見せられるというイメージが強いし、民主党の大嫌いな某大物政治家が最近どういうわけか『山猫』を演説で引用していることを知ったことも一因かな。でもほとんど遺作と言っても良い本作にはさすがにヴィスコンティの執念が伝わってきます。ヘルムート・バーガーの演技はルードヴィヒの霊がとり付いたかの様な迫力で必見です(そういや最近お姿をスクリーンで見かけませんが、どうしてるんでしょうか)。全篇にヴィスコンティの貴族趣味に満ち溢れていて、民衆や大衆が歴史もののくせに全く画面に登場しないという徹底ぶり(バジェットの関係かな)。そしてロミー・シュナイダーの“シシー”にはただうっとりさせられるばかりで、さすが“シシー”は10代からの彼女の当たり役だけのことはあります。“赤い貴族”と呼ばれたヴィスコンティですが、マルクス主義者のくせに頽廃の甘美な魅力をこよなく愛しており、そこが頽廃を誰よりも鮮やかに映像化するくせに本当は頽廃を嫌悪していたフェリーニとの大きな違いでしょう。 まあお暇なときにはこの4時間の頽廃の極北を味わってみるのも良いんじゃないでしょうか。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-01-24 23:56:50) |
22.ヘルムート・バーガーの名演と、きらびやか・重厚な画面、美しい音楽。 4時間という長尺を全く感じさせない非常に贅沢・絵画のような映画。 「地獄に堕ちた勇者ども」と本作は、ヴィスコンティのデカダン美術の極地を見せつけられているような気分だった。 【せかいのこども】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-12-12 10:25:04) |
21.2度見ました。たぶん再見する機会があったら鑑賞すると思います。 こういうハリウッドとは違った意味での絢爛豪華な映画はあまり知らなかったので新鮮でした。 「神々の黄昏」という副題も好きです。 【kagrik】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2008-12-17 15:21:19) |
20.《ネタバレ》 男の没落を描く映画は多い。そのほとんどは、女、酒、ドラッグなのだが、芸術に耽溺してボロボロになるのは、国王ならでは・・。国務よりも、趣味に興じるから当たり前といえば、当たり前だが。国王が引きこもってオタクになってしまったから、戦争には負けるは、政治には無関心になるは・・。金は使い放題だから、税金でワグナーの借金肩代わりしたり、洒落たお城の建築に夢中になるというのは、スケールが大きい。それでも国民から人気があるのは面白いね。ビスコンティの映画らしく、女性が重要なファクターにならず、男一色なので、観てて少し疲れました。 【トント】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-07-08 17:08:40) |
【にじばぶ】さん [ビデオ(字幕)] 1点(2007-09-03 16:16:57) |
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18.何度見てもこの四時間が飽きない。非常に贅沢なひととき。ひたすら豊かな時間の流れ。この至福は言葉で説明できません。 【いのうえ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2006-12-23 23:52:11) |
17.史実を元にしているようで、王侯貴族の豪華絢爛な生活は凄い。ルー ドウィヒもワグナーも名前は知ってるが、このような関係で、又天才もいやな性格の人だったとは勉強になった。現在でも充分見応えがある。ロミーが良かった。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-11-28 16:34:49) |
16.凄いですね。いささか誇張じみた言い方を許してもらえれば、あらゆるシーンがそのまま油絵の画材になりそうな、絢爛たる調度、光と色合い。引き込まれると、もう、時間を感じさせない。でも4時間は長い(どっちやねん!)。音声がほとんどアフレコ丸出し、そこがまたイタリア映画らしさとも言えるが(笑)、これだけの長尺ともなると、この音の薄さ、気になっちゃう。さて物語の前半は、リヒャルト・ワーグナーに入れ込んで莫大な資金をつぎ込んでしまうルートヴィヒ。一見マトモだが、ワーグナーなんぞに入れ込んでは、無事で済むワケがない。このおっさん、ヒトのモノはオレのモノ、ヒトの人妻もオレのモノ、間違っても感謝などされるわけがない。なお、ここに登場するビューロー夫人は、作曲家リストの娘にして、指揮者ハンス・フォン・ビューローの妻、後のコジマ・ワーグナー。コジマに捧げられた「ジークフリート牧歌」のエピソード(だよね?コレ)も挿入されます。なお、妻を奪われたのでビューローはワーグナーが嫌い。ついでに言うと、若き日のブラームスがリストの演奏中に居眠りしたのでリストはブラームスが嫌い。批評家ハンスリックが結婚相手として薦めた女性をブルックナーが断ったのでハンスリックはオカンムリ。当時の音楽界を二分したワーグナー派・反ワーグナー派の闘争の背景にはこんなツマラナイ諸事情があったとかなかったとか。さて、話が大きく逸れてしまった(汗)。後半いよいよ憔悴の度合いを深めるルートヴィヒII世。前半は何だか、サリーちゃんのパパにそっくりに見えたが、だんだんそうでもなくなってきたなあ、残念(←アホ)。豪華さの中を、破局はあくまで静かに迫ってくる。それだけにラストシーンのこの虚しさ・・・いや、トボケちゃいけない。虚しさははじめっから、映画全体を覆っていたのだよ。妄執と虚しさ。それがルートヴィヒII世の生涯であり、この『ルートヴィヒ』という作品でもあり・・・。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-09-23 21:42:17) (笑:1票) |
15.小学生のときに初上演版を見てバーガー氏の虜となり3回、その後完全版をやはり3回いずれも劇場で観ました。それぞれのグッズも持っています。そして更に、舞台となったヨーロッパへも行ってしまいました。当時はドイツは東西に分かれており、又ノイシュバインシュタイン城へ行くツアーはあったもののヘレンキームゼー城とリンダーホッフ城はメジャーではなかったのでツアーがなくて、地球の歩き方で調べて一人で行きました。 私の青春の中で一番大好きな映画です。又行きたいな。 【るる】さん 10点(2004-06-20 00:36:08) |
★14.贅沢な映画。贅沢という言葉を眼で見たかったらこの映画を見るべし。過去の貴族世界の再現に終始している感があるので、普通われわれが「映画」に求める楽しさとかエンターテイメントは期待しないほうがよい。「観る」というより「浸る(ひたる)」という感覚がいい。こういう映画は文化的な資料の意味もあるので、あっていいと思う。でもヘルムート・グリームのルードヴィヒへの諫言「高い理想を持った人間が平凡な生活をすることは非常に勇気のいることです」というのはグっときた。 【シン】さん 5点(2004-03-15 11:11:40) |
13.まさにヨーロッパらしい熟しきった甘い腐敗臭に酔いしれる作品。病みやつれて無精ひげをはやしていても気品漂うヘルムート・バーガーは「ルードヴィッヒを演じるのはあんた以外ありえない!」と思える程のはまり役。この映画を見ていると、最近世の中何もかもあまりにも幼稚じゃないかい?と思ったりする。 【黒猫クロマティ】さん 8点(2003-11-07 19:59:33) |
12. これでもかっていうぐらいのビスコンティの映像芸術を感じることはできました。 ヘルムート・バーガーの演技はやばい。貴族階級の退廃を美しく官能的に描けるのはビスコンティが貴族階級出身だからだろう。 【たましろ】さん 8点(2003-10-25 00:26:58) |
11.ごめんなさい。ヴィスコンティ大好きな私ですが、この作品は正直、金のかかった自己満足としか思えませんでした。美術や配役やカメラは、さすがの美しさ豪華さですが、彼の映画独特の「痛み」を、あまり感じることが出来なかった。それはルードヴィヒが、おかれた状況の中で常軌を逸していった人物ではなく、生まれつきの変人だったせいかもしれません。 【ともとも】さん 6点(2003-10-22 15:52:52) |
10. この作品の製作途上で既に財政的にも体力的にも行き詰まっていたことを感じさせない、ヴィスコンティの執念が伝わる作品.併せて、H. バーガーという役者がいなければ撮れなかった映画だとも思う.一国を統治する王の待つべき資質にヴィッテルスバッハ一族の芸術気質が最も必要でなかったという悲劇.王たる資質に悉く欠けていることを真摯な部下に“義務無くして幸福があろうか.”という言葉で語らせ、またそれを聞くことをあえて拒否しないルードウィヒの哀しさ.対して、R. シュナイダー演ずる同じ一族でも最も気質が似ていたと云われるシシイを、翳りのみえない人物にしてしまったことに違和感を感じてしまった.ルードウィヒの唯一の理解者ともいえるシシイもまた、ハプスブルグ家とのあまりの確執から自分を持て余し、皇妃という身分から逃避し続けた人なのであるから.そして階級と時代が違っていたなら、双方とも優れた才能を存分に発揮できたであろう人物であったと思う. 【シャリファ】さん 8点(2003-09-15 17:53:03) (良:1票) |
9. 絢爛豪華。品格がある。大衆文化とは一線を画している。貴族の危うい美意識とヨーロッパの上流文化の雰囲気に酔いしれる。映画に文化財とか世界遺産等が適用されるなら、この映画は十分それに値するだろう。マイナス要因は、イタリア語であること。作品を最初から最後まで致命的に破壊している。ドイツ語吹き替え版があればいいのにな。 |