31.《ネタバレ》 「フランケンシュタイン」以前にも活躍してきたカーロフだが、少なくとも「フランケンシュタイン」でトップスターの仲間入りをした事は決定的だ。
吸血鬼と言えばベラ・ルゴシ、そしてフランケンシュタイン博士のモンスターと言えばボリス・カーロフ。
そんなカーロフの凶暴さと哀愁を帯びた演技、フランケンシュタイン博士のモンスターのイメージを決定づけたジェイムズ・ホエールの傑作。
メアリー・シェリーの原作小説をベースに、ヴィクター・フランケンシュタインを大学生から完全な博士に変え、モンスターも原作には無かった「ツギハギの肉体」と「知能の低い化物」というイメージを作り上げた。
原作では知性を持ち、人間と同じように物を考えられるのに人間になれないという葛藤が主軸だった。
本作の「怪物」は言葉も知性も無い。いや本当は言葉を発せられないだけで知性があったのかも知れない。
冒頭の遺体と脳の収集。丁寧に組み立てていくストーリー、そして実験所における人造人間の「誕生」。電流をバチバチ鳴らし怪物を創造していく場面。
博士の「息子」そのものは29分してようやく登場するのだが、セリフもシーンも中々テンポが良いので飽きない。
だが誕生した人造人間は「息子」であり同時に「殺人兵器」となっていく。
息子の脳を支配するのは殺人鬼の記憶。
殺しの記憶と凶暴な肉体が結びつく時。息子は「化物」になってしまう。
そんな手の付けられなくなった息子を医者に押し付ける様子は育児放棄した父親にしか見えない。フランケンシュタインと妻の間に本当の子はまだいない。彼は実験の成果よりも子供が欲しかったのだろう。妻のため?自分のため?それは解らない。
そんな息子は少女と出会う。
少女は息子を「化物」ではなく同じ「人間」?として接しようとする。
少女の無垢な心、それに応えてしまった「息子」の純粋な「記憶」。「息子」に葛藤は無かった。それは心が無いからなのか。
「息子」は街を彷徨う、人々は「殺人鬼」を殺すために群れとなって殺人鬼を追う。
そこに父親の姿もあった。一応産みの親としての責任はあるようだ。
父親と「息子」の対面。二人は最後まで相容れない水と油として別れていった。
つうか頑丈すぎるだろフランケンシュタイン博士。
燃え盛る風車と息子・・・博士は何を思ったのだろうか。