110.《ネタバレ》 素晴らしいほど繊細に"普通の人々"を描いた傑作だった。1980年にしてこんなに繊細に人間のグレーの部分を描いていることに驚いた。何度も泣いてしまった。 家族を失うという悲劇に、残された家族は一様に心に傷を負うが、その対応の仕方がまるで違っていて、それがまさに普通の人々だ。 母親は愛情が少ない人物のように描写されているが、自分には彼女が「蓋をする」タイプの人物のように見える。あまりに辛いことはそれに向き合うことをせず「触れない」。おそらく次男に対しても愛情はあり、色々あった結果として今の態度に至っているように見える。フレンチトーストの件も同じようなことが何度もあったうえでの積み重ねではないかと。ただ解決するために正面から向き合わずに逃げている。カウンセラーが言う「彼女の限界」。 辛いことや面倒から逃げること、自分に置き換えると胸が痛い。 人って白でも黒でもなくて、皆グレーなんだよな。方位によってグレーの濃淡がそれぞれ違うだけ。 次男はセラピーと新しい出会いによって変化・前進することができた。他者を変化させるのではなく自分を変える。そのことで周りが変わる。誰よりも傷ついているのにそれができるのが本当にすごい。 【kosuke】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2021-09-11 20:00:14) |
109.もっと胸が熱くなるドラマかと思ったら、あまり感情移入できなかった。 【へまち】さん [DVD(字幕)] 6点(2018-09-02 18:31:59) |
108.《ネタバレ》 主人公の家族が皆、傷ついて血を流していて観ていて心が痛かった。懐深いレッドフォード監督をもってしても、瓦解してゆく家族の再生は叶わなかったのだね・・。 人はそれぞれ、持って生まれた「愛」の総量が多い人と少ない人がいる。この母親は少ない人で、だから長男の死で激しく傷ついた自分自身を手当てするのになけなしの愛を使い果たしてしまって、次男や夫にまで振り分ける分が残っていないのだ。セラピストが正しくも指摘したように、彼女は彼女なりに次男のことを愛してはいたと思う。だけど、そもそも備わっている愛情量が少量なので、リストカットするほどに追いつめられている息子の心を汲んでやることまではとうていできない人だったのだ。おそらく何故非難されるのか自分では理解できないだろう。 この映画の、とりわけ優れているのは各人物の描写力である。母親の冷たさはフレンチトーストの件や、息子の部屋の灯りをスルーする無関心ぶり、上面の息子との会話等で痛いほどこちらに響く。T・ハットン演じる次男は「良い子」をやってきたことが言葉遣いや父親への気遣いからわかる。セラピストの前で心が均衡を崩すシーンは、身体をゆする仕草や八つ当たりな態度がとても苦しそうだ。苦悩しっぱなしの父親は長いこと妻に「違うだろ」と言えない。だけどセラピーを受け、自分の心を見つめなおして改めて気付くのだ。息子の葬儀だというのに、この女はシャツや靴のことを気にする人格なのだ、と。 人間に対する洞察力、その細やかなこと。驚くべき観察力。これが監督一作目というレッドフォードの明晰なことには畏れ入った。胸が痛いほどの名作。 【tottoko】さん [DVD(字幕)] 9点(2018-05-09 17:34:02) (良:1票) |
107.《ネタバレ》 意外に面白かった。最後まですくわれない母親は残念。 【ホットチョコレート】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-03-11 06:43:33) |
106.《ネタバレ》 先ず静かな映画と感じて、それ故に人々の感情の機微を感じることが出来る。 三人で囲んだテーブルを見て、何となく普通の人々で構成される家庭ではないと感じる。それがセラピーや家族の会話を中心に少しずつ明らかになっていく。謎解きのようでとても興味を惹かれます。 序盤は親子の溝があるのかと感じていたが、徐々に父親と母親の子に対する差が理解できてくる。そして母親に腹立たしさを覚えて、さらには怖さをも感じて大方の原因を悟ることが出来る。庭で横になっていた子のコンラッドを見て母親が庭に出てくるところを見るに、きっと母親も子と仲良くしたかったのだろう。でもやっぱり母子の会話は噛み合わない。写真撮影で子が声を荒らげて、普通を演じていたメッキが剥がれる。このシーンのインパクトの大きさは作品の静かさ故だろう。二人の関係はますます悪くなっていき誰も止められなくなる。 母親とセラピーの先生のコンラッドへの対応は正反対だと見えました。一方は感情を隠し本音を言わず父親のフィルターを通す。もう一方は気持ちと感情を露わにし思っていることを言葉でぶつける。母親のように気持ちを表せない人を、私自身も身近な人に感じることがあります。確かに母親は体裁とか過剰に気にする人として象徴的に描かれていますが、多くの人はそういうものが全くないわけではないでしょう。家族が特殊な状況にあってということを考えると母子両方の苦悩が理解でき切ない気持ちになりました。 カレンの両親の電話対応やセラピーへの母親の反応が印象的でした。精神疾患やセラピーをネガティブに捉えるのは良くないことということを改めて感じ、真っ直ぐ問題と向き合うことが大事であると感じます。今の時代にも通ずることで社会的にも意義がありますし、映画としても興味深く見ることが出来る素晴らしい作品でした。コンラッドが自らの力で歩み寄ろうとする姿は感動的です。 皆表面的に普通に見えても、背景を知ると普通って何だろうと考えずにはいられません。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-12-31 15:08:36) |
105.何かどんでん返しでもあるのかと思っていたら、冷淡な母親と鈍感な父親の普通の映画でした。冷たさと鈍さに深みが感じられないので物足りない。 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-12-16 23:37:39) |
104.テレビ放送で初めて観たのが、中学生の頃だったか高校生だったか。激安のドンパチ映画がすべてだと思っていた私にとって、このあまりに地味なタイトルは、これは一度は乗り越えなければならない修験道だとも思えたのですが。 観てみりゃ別に退屈な映画でも何でもなくって、何だかむしろ、身につまされる。私も不器用な方で、上のきょうだいと比べられるのがイヤで、それでも何とか親に気に入られようとして、うまくいかなくて、ちょうどこの頃、母親とギクシャクしたりしてて。 そんでもって、この結末、ですから。 今になってみるとそれなりに、すべてが懐かしくもあり(沖田艦長じゃないけど)、でも、他人から理解されないもどかしさ、ってのは、この歳になっても逃れられないんだよなーとも思ったり。 それはともかく、本作。タイトルとは裏腹に、「普通の映画」という訳ではなくって、少々いびつな印象があります。作中では人物同士の「対話」に主眼が置かれていて、「行動」の描写が奇妙なほどに抑えられています。例えば、ティモシー・ハットン演じる次男が、何度かセラピストの元を訪れますが、診療所に向かうシーンってのは殆ど無くって、多くの場合いきなり、二人が対話するシーンへと場面が飛びます。だからこそ、次男が家を飛び出して走り出すクライマックスが、とりわけ印象的にもなるのですが。 そうやって、さまざまな形での「対話」が描かれ続ける。ちょっとやり過ぎかも知れない。「対話」以外の描写が希薄なもんで、おそらくは主人公にとって重要な存在なのであろう、「カレン」という女性の存在が、観てる我々にとってもうひとつピンとこない、などという事態も招いていたり。 そういったことも含めて、決して「普通」ではない、風変わりな映画だと思ってます。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-12-10 20:08:25) |
103.《ネタバレ》 まだ、若い時に一度見ましたが再度観賞。普通の人々の心理をさりげない演出で見事に映し出していた良作であると気づきました。かなり繊細な映画ですので、その繊細さを理解できるかどうかでこの映画の評価が決まると思います。現在、職場でこの映画の母親そっくりの人がいるので、次男のイライラがとてもよく理解出来ました。特に退部のシーンで母親と言い合いになる場面。「母さんが怒るのは人が自分より先に知っていたから」どうして退部したのか次男に理由を聞きもしない。フレンチトーストを捨てる場面といい、この母親は他人の気持ちなど考えたことがないのではないでしょうか?「人から私が幸せに見えるか」ばかり気にしている。だから溺愛していた長男が亡くなった悲しみも表せない。父親曰く「君は弱い人」だと言いましたが、私は「哀れな人」と思いました。次男が母親を抱擁するシーンですが、ラストやセラピストとも抱擁との違いを比べずにはいられません。この母親はわが子を抱きしめてやることも出来ないのです。そして、彼女自身もそんな自分に気づいたのでしょう。だから、何も言わずに去っていった。去っていくだけの理性があったのがせめてもの救い。離れて暮らすほうがお互いの為、なんて家族としては悲しいですね。 【果月】さん [地上波(字幕)] 8点(2017-12-03 15:12:10) |
102.普通の人々とは何か、きっと「普通」というものは現実的ではない。 映画の中で人物が丁寧に描かれていて、若い時はこの物語が退屈に思えたが、今観るとなかなか心に響くし、最後の場面に考えさせられる。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-11-23 19:43:52) |
101.《ネタバレ》 経済的には豊かな家族だけれど、ある事件がきっかけの心の問題を丁寧且つ冷徹に描いたヒューマンドラマです。 長男の事故死から心を封印した母親と自責の念にかられ自殺未遂までした次男。そしてその間で揺れる父親。そんな家族を季節感のあるみずみずしい映像で綴っていきますが、表面からはなかなか見えない心の奥までを克明に描写しているところに私の心もしびれました。 数々の試練を乗り越え自分を取り戻しつつある次男と心のモヤモヤを取り払った父親。しかし最後まで心の封印を解けなかった母親に決別を言い渡す父親の決断で皮肉なラストを迎えてしまいます。 でも、これは家族の再生のための最後の試練だという風に私は解釈させていただきます。 ところで【普通の人々】というタイトルですが、大なり小なり誰もが心に闇を抱えており、このひとたちが特別という事ではない「普通」の人達なんだと解釈させていただきましたが如何でしょうか。 とにかく久しぶりにいい映画を見させていただきました。 【仁】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2017-11-23 00:26:54) |
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100.アメリカが夢想する中流家庭が、たった一つの瑕瑾により崩壊の危険性を内包している様が淡々と描かれている。主人公だけでなく家族それぞれが内側に暗い思いを抱えており、家庭がギクシャクしているのだが、映画を見ている我々にはそれが理解できるだけに余計切ない。映画のジャンルとしてあまり好きではないが、映像の美しさ、登場人物の描写の丁寧さなど、この映画の評価の高さは十分伝わってくる。好み20/50、演出13/15、脚本12/15、演技9/10、技術8/10、合計62/100→6/10点 |
99.《ネタバレ》 なかなか面白い映画でした。 母親と次男の葛藤がこの映画の中心だと思いますが、 この「支配的」で「完璧主義」な母親については、いろいろ考えさせられました。 完璧を求めるが故のもろさというのか。 息子が食べないフレンチトーストを捨てるシーンや、水泳部を退部したときの口論。 夫が葬式での違和感を告白したときの異様なまでのとりみだしぶり。 よくよく考えると、この母親がほかの誰よりも、些細なことで動揺していた気がします。 コントロールしたがる人間の宿命なのか。 世間体のためにその場を取り繕うことに必死で、本当の平穏にたどり着けない。 しかも、自分は十分努力していると考えているから、他人の意見にも耳を貸せない。 最後まで見て、でもこういう人って案外身近にいるよなぁ、なんて思ってしまいました。 |
98.ある家族の日常を繊細に描いた、非常に深い内容の作品だと思います。タイトルも良くできており、普通ってそもそも何なのか、考えさせられますね。 【川本知佳】さん [DVD(字幕)] 7点(2014-12-22 01:19:19) |
97.《ネタバレ》 観終わってからなんとか頭の中を整理しようとしてもなかなかまとまらない。人の心の脆さ、人の関係の危うさがみごとに描かれていて、最後まで引き込まれて観てしまうのだけど、母親にもなんらかの言い分があるのでは…とずっと見ていたので、もやもやしたものが残ってしまった。けれどみんなのコメントを読んでいてやっと納得できた。母親をはじいてしまうことによって終わるのですね。こういう最後しかないですね、やっぱり。 【柚】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-06-15 19:18:23) |
96.異性同士の親子関係(父と娘、母と息子)は難しいが乗り越えなくてもなんとかなるが、同性同士の親子関係(父と息子、母と娘)は乗り越えないと先に進めないんだな…ということを考えさせてくれた。 メインとなっている、父と息子の関係は男性ではないと感情移入できないかも。 |
95.二人の息子のうち、可愛がっていた方が死んでしまった家族の物語。兄の死や弟の自殺未遂といった映画的に美味しい部分は敢えて省略し、一家が平穏を取り戻そうとしている部分にスポットを当てるという、なかなか斬新な構成となっています。『ペーパームーン』で高い評価を獲得し、後には『スパイダーマン』シリーズを手掛けるアルヴィン・サージェントによる脚色が素晴らしく、本来はドラマティックではない物語が、非常にドラマティックな内容として描かれています。何が素晴らしいって、それまで機嫌良くしていた人間がさっと冷めていく瞬間であったり、何となく保たれていた日常の均衡が崩れる時の気まずさであったりというものが、抜群の臨場感をもって描かれているのです。例えば、祖父母も交えて家族写真を撮る場面。みんな勝手なことばかりを言って会話はまるで噛み合っていないのですが、それでも全員が笑顔で機嫌良く振舞うことで、場の空気は平穏に保たれていました。しかし、イライラを募らせた次男が怒鳴り声をあげたことで一瞬にして全員が凍りつき、「この場を何とか取り繕わなきゃ」と思っても適切な言葉が浮かんでこないという、あの場面の何とも言えない気まずさ。あるいは、冒頭の朝食の場面。母親が作った朝食を子供が食べないというありふれた場面なのですが、本作の母親は「食べないのなら捨てる」と言って、出来たてのフレンチトーストを流しに捨ててしまいます。この数十秒のやり取りで、この母親がキ○ガイだということが観客にはっきりと伝わる仕組みになっているのです。本作にはこの手の的確な描写が多く、ディティールの面で非常に成功した映画だと言えます。。。 レッドフォードは初監督ながら、地に足のついた演出でこの脚本を映像化しています。また、自身が俳優であるためか役者の動かし方もよく心得ていて、エキセントリックな役柄ばかりを演じてきたドナルド・サザーランドに気の弱い父親役を、有名なコメディアンであるメアリー・タイラー・ムーアに神経質な母親役を、演技歴の浅いティモシー・ハットンに繊細な次男役をやらせるという奇抜なキャスティングながら、各々から生涯ベストとも言える名演技を引き出しています。ただし、地に足がつき過ぎて一つ一つの場面が妙に長かった点は、本作の数少ない欠点。今回DVDで見たオリジナル版よりも、正味90分に編集された地上波放映版の方が面白く感じられました。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 7点(2013-06-19 01:39:47) (良:1票) |
94.《ネタバレ》 ロバート・レッドフォードが描く、一見普通だけど大きなトラウマを抱えた家族の物語。いきなりの「フレンチトースト」でわかる母親の異常性。だがしかし、大切な子どもを失った苦しみは、きっと彼女の中では処理しきれず、あのようなカタチになってしまったのかもしれません。思っていた方向とは違うラストだったが、家族再生の道がみえる希望のあるラストだと解釈致しました。 なかなか深い内容でゴザイマシタ 【Kaname】さん [レーザーディスク(字幕)] 6点(2013-01-16 18:56:53) |
★93.ドラマチックな展開はいっさいなし。どこの家庭でも起こりうる、 中流家庭の家族間の問題を小細工なしで描いた作品。息子役の役者さんは、 繊細で神経質な役柄にピッタリ。それ以上によかったのは父親役のドナルド・サザーランドで、 終始落ち着いた演技が印象に残っている。サブでの出演数が多いのも納得できるというもの。 映像はあまりきれいじゃないけど、ゆったりとした季節の移り変わりはよく表現されている。 鑑賞後にタイトルの意味を噛み締めれば、より深みを与えてくれる良作。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-05-04 03:11:22) |
92.《ネタバレ》 とても心打たれる映画でした。 『普通の人々』とは言うものの、一見普通に見えて普通じゃないことの方が実は多いんじゃないでしょうか・・・ 他人であれば、どれほど楽なんだろうと思える程、夫婦間と親子関係の微妙な描写が良く描かれており、家族とは何かと改めて考えさせられました。 終盤、息子から歩み寄って母親に抱擁し、それを見守る父親・・・時既に遅かったかもだけど、新たに道が開けるように思えました。 それにしても、こんな映画を監督しちゃうロバート・レッドフォードにアッパレ!! 【ぐうたらパパ】さん [DVD(字幕)] 9点(2012-04-14 22:23:14) |
91.ラストの母親と息子の抱擁からの父親の告白や、母親が出て行ったあとの父親と息子の会話が、まとめを急いだ感じでちょっと違和感あり。でも似たようなテーマの映画が多い中、これは良作。 【noji】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-03-21 02:15:04) |