52.《ネタバレ》 自然は本能的に調和を保つ方法を知っている 全ては機械的に役割を果たす
ダニーがトリップしながら木を見上げるシーンでペレにより語られたこの理念
祭りのイベント一つとっても自然と体力のある優秀なものを選別してより良いポジションに据え、大事に残そうとする
日の当たる部分ではそうだ。これらを見ると牧歌的だが理にかなっている、めったなことにはなりますまいという安心感を覚えるのだろう
「ホルガ村ヘルシングランド」という"なんでもみんな一緒にやる"テーマパークが一見大事にしているこの理念に来訪者は油断してしまった
村のチープさにはかなりやられた。なるほどこの即席感なら旅行前にペレの言ったようにみんなが演劇してるとしか思えない
祭りはイベントのごっこ遊びと大差ない、などと訪問客は油断してしまうだろう。ところが…、なんですけれども
しかしロケ地に村を一個作ってそこを舞台にするこの感じ、七人の侍か!なんて思ったりして。ペレが菊千代(=侍ではない)でコニーとサイモンも合わせたら丁度七人になるし…
ここで起こることの一部は絶句するくらいショッキングであり、ほとんどすべてが笑わずにいられない
全て冗談みたいなものだ。深く考えずにジャンルものとして楽しむのが一番良い気がした
コミューン 法治国家 しきたり 掟 相互理解 残虐行為 没個性 多様性 従順 全体主義
冷戦時など、かつて幾度も批判をこめてこれらがキーとなるフォーマットの映画は描かれてきたと思うが、
より映画を面白くするための普遍的テーマであって、イデオロギーの対立を見せたくてこれらが今さら用いられているわけではないのだろう
こちら側とあちら側どちらの側に属していても人間のヤバさはつきつめれば同じだという描き方をしている
同調圧力が一つの例になる
同調圧力ほどおそろしいものはない。曲がったことも押し通す。協同で物事をなしうる生き物である人間の弱点のひとつだろう
なにかおかしいとわかっているのに他者の見解と比較・検証して落としどころを探してしまう。そうしているうちに時間が経過し、次第に何事もなかったかのような錯覚に陥っていく
正しく反発したサイモンはいずれ殺される運命であったにせよ、支援を得られなかった
目の前で恐ろしい惨劇が起こっているにもかかわらず、価値観が違うのだからとか郷に入れば…などと無理やり理解を示そうとまでする
別の場面では、ダニー独りが薬物に及び腰な動きを見せる。その際の仲間の白けたムードはまさしく同調圧力以外の何物でもない
ここでやや間があってから渋々理解を示すそぶりをするクリスが結構な問題児。明らかに面倒くさがっている彼氏。ヒーローに成れない男
忘れていた恋人の誕生日パフォーマンスもあまりにもお粗末。こりゃ面倒くさがっている。そしてあろうことか彼女がろうそくの火を吹き消す瞬間すらよそを向いて見ていない
論文トラブルは仲間割れから殺人に発展する一つの例だがまさかこの映画で見ようとは。クリスくんの外道っぷりがいかんなく発揮されていて笑う
その論文を全うするにはマヤの誘いに乗るしかない。しかもダニーにばれないように一夜限りのというなんとも都合の良い・・
聖人君子とは程遠いクリスが例の同調圧力も相まってスルスルと罠に嵌っていく様はかなりカッコワルイ
個人的には結構満足いく映画だった