63.ふとそれに気がついて、意外に思った。
宮崎あおいの出演作を昨年(2009年)は、一本も観ていなかった。それどころか、もっと確かめると、最後に観た彼女の出演映画は、2006年の「ただ、君を愛してる」だった。
3年以上も彼女の演技を映画で見ていなかった。何たることだ。と、思った。
今年の日本アカデミー賞で、主演女優賞にノミネートされた彼女の紹介映像で、今作のワンシーンが流れた。
「何だか面白い演技をしている」と、とても新鮮に感じ、久しぶりに彼女の映画を観たいと思った。
言わずもがな僕は宮崎あおいという女優のファンである。10年近く。
それなのにどうして3年以上も出演映画を観ていなかったのか。
一昨年の大河ドラマの出演の影響で、出演作品数自体が少なかったということももちろん一因だけれど、はっきり言うと「観たい!」と思える作品がなかったということに尽きると思う。
大河ドラマの出演とその成功、CMなどへの露出拡大に伴い、宮崎あおいという女優は、一躍“国民的女優”となった。
そんな中で、彼女の”畑”である映画に対する立ち位置も確実に変化をせざるを得ない状況となったと思う。
詰まるところ、以前のようにフットワーク軽く若手映画監督の挑戦的作品に出演しづらくなってしまった。
それが、彼女の出演映画を「観たい!」と思えなくなってしまっていた要因だと思う。
そんなわけで、この映画についても、自分の中で敬遠していた。
敬遠していた理由はもう一つあって。
クドカンは好きだけれど、彼の良さは長編映画では発揮されにくい。“クドカンワールド”は、テレビドラマや舞台など時間や環境に「制限」がある媒体でこそ発揮されると思う。なのでこの映画も、きっと笑えるし面白いんだろうけど、トータル的にはクドカンが個人的な趣味趣向に突っ走った作品なんだろうと、分かっていた。そして実際そうだった。
ただ今回は、端から「宮崎あおいを見よう」と思って、この映画を観た。
さすがに宮崎あおいで、滅茶苦茶な映画世界の中で、存分にコメディエンヌとしての魅力を見せてつけていた。
終始、「かわいい」としか言いようが無いし、やはりこの女優は凄いと思った。
じゃあそれでいいじゃない。と、思う。