3.《ネタバレ》 まず、ヒトデのような六つ首鮫のデザインは面白いです。
死んだ頭を他の頭が食い千切り、それを投げつけて攻撃するって場面もあるし、呆気に取られるような「地上歩行シーン」もあるしで、奇抜なデザインをきちんと作中で活かしてる点も好印象。
前作の不満点だった「せっかく良いデザインなのに、それを活かせず普通のサメ映画になってる」って部分を克服しているし、これに関しては見事だったと思います。
ただ、映画全体の面白さって意味では……
残念ながら、傑作とも良作とも呼べない感じ。
上述のサメ描写はコミカルだし、カップルセラピーキャンプって設定もラブコメ的だしで、如何にも「明るく楽しいノリ」が似合いそうなのに、何故か「ヘッド・ジョーズ」シリーズの中でも一番シリアスってくらいのストーリーなんですよね、これ。
主人公もムサい髭面のオジサンで、過去作に比べると一気に年齢上がってると思いますし、良くも悪くも「真面目」で「大人向け」って感じ。
人が死ぬ場面で感動的な音楽を流し、悲劇を煽ってみせる演出もクドい感じがして、ノリ切れませんでした。
「問題のあるカップルが命の危機に瀕し、絆を取り戻していく」っていう王道ストーリーを扱ってるにも拘らず「カップルの絆が蘇った途端にサメに喰われてしまう」ってのをお約束にしてる辺りも、何とも悪趣味。
結局、作中で復縁した上で生き残ったカップルは一組も無く、生き残った主人公とヒロインも、本来の恋人と呼べる存在は殺された後なので、どうもハッピーエンド感が薄いんですよね。
そもそも主人公グループが全然「良い人達」に思えないんだから、これはモンスターパニック物として、致命的な欠点。
主人公のウィルも「嵐が来るのを承知の上で、それを客に隠してた」とか、流石にそれはどうなのって設定のせいで感情移入出来ないし、客の皆も「アンタを訴える」ってウィルを責めてる連中ばかりだしで、観ていて「生き残って欲しい」って思えるキャラがいないんです。
なので、どんな展開になろうとも「どうでもいいや」って心境になっちゃう訳で……
良い部分も色々ある映画なんですけど、そういう根本的な部分が拙かった気がします。
六つ首サメを生み出したはずのラボが、どう見ても「海に浮かぶバラック小屋」程度の規模なのも笑っちゃったし、あからさまな低予算映画なので、あんまり厳しい目で見るのも可哀想なんですけどね。
「水に入ると危険(=水に入らなければ安全)」というイメージを与えておいた上で、サメが地上を歩いて襲ってくるという場面に繋げるのには感心させられたし、頑張って「良い映画」「面白い映画」を撮ろうという、スタッフの意気込みは伝わってきました。
そんなこんなで、総合的に評価するなら5点くらいになっちゃう訳ですが……
「サメ映画を観たい」って気持ちには、しっかり応えてくれる内容だった為、満足度としては悪くないですね。
ちゃんとサメが暴れて、退治されてと、ツボは押さえた作りでしたし。
鑑賞後に残念な気持ちになるのまで含めて「サメ映画の醍醐味」と言えない事も無いですし。
色んな意味で、サメ映画らしいサメ映画だったと思います。