1. バービー(2023)
多くの賞レースに絡んだ話題作だけあって風刺や皮肉が効いてるなぁとは思った。日本から見れば先進国のアメリカも北欧なんかに比べたらまだまだって感じなんだろうか。ただまあ、振り返ってみるとほぼ笑ってない自分に気づく。コメディは言葉や文化の壁が大きいからしょうがない部分もあるけど、それでも笑えるものは笑えるのだから、その点に限れば並以下の出来であったと言わざるを得ないか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-05-19 20:54:11) |
2. オッペンハイマー
《ネタバレ》 原爆の父オッペンハイマー博士の半生を描いた伝記映画。ユダヤ人である氏は絶対にナチスに先を越されるわけにはいかなかった。恐怖を抱えながら研究・開発に邁進するが、やがてヒトラーが自殺、そしてドイツは降伏した。先を越されるという懸念した事態は避けられたのに、彼は日本に対して核を使用するよう進言する。制空権を奪われ、連日の空襲で焼け野原と化し、もはや瀕死と呼んでいい国に対してだ。その後の世界において主導権を握りたかったアメリカの思惑によるものとされるが、政治家ではないオッペンハイマーがこの主張をしたのは自身の功績を国内外に示したかったからとしか思えない。科学者の性と言うべきか。それでいて、8月6日以降は急に罪悪感に苛まれ、より強力な水素爆弾の開発で競い始めた米ソに対しても、どうにか歯止めをかけられないものかと苦心する。矛盾するようで矛盾しない、実に人間らしい主人公をキリアン・マーフィーが好演。映画的にはだいたいこの辺りがピークかなと思うが、その後の赤狩りを背景とした戦いもアカデミー助演男優賞に輝いたロバート・ダウニー・Jr.の存在感もあり、なかなか見応えがあった。3時間だれることのない優れた出来。アカデミー作品賞も納得の一本だ。 [映画館(字幕)] 8点(2024-04-01 20:46:56) |
3. M3GAN ミーガン
これ、予告編でミーガンが変なダンスを踊っていたな。ホラーであり、若干コメディでもあることが分かって助かる。実際に見る際に細かいことは気にせず、楽しもうと思えるからだ。ただまあ、後半はそれでも度が過ぎた気がした。開発者が雑に作りすぎってのはその通りだろうけど、あれだけ屈強に作ったのはもはやご都合主義の極みか。テンポが良くて楽しい映画なのは確かだけど、ちょっと勿体なかったなー。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-01-04 00:01:52) |
4. トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男
自由の国アメリカでも当時は思想に対して迫害があり、その中で服役までした脚本家ダルトン・トランボとその家族、そして友人の物語。ハリウッドの赤狩りは「映像の世紀」やらでちょっと見たくらいだったから、この映画はいろんな事が知れて面白かった。これだけ時代が近いと日本なら日和って実名は避けるかもしれないが、アメリカは遠慮なしなのも良い。カーク・ダグラスが男気あるスターとして登場する一方、ジョン・ウェインは悪役、ヘレン・ミレンが演じた嫌味なおばさんも実在の人物。トランボ自身もなかなか濃いキャラとして映画の中心にいるが、ブライアン・クランストンの演技は強弱のさじ加減が絶妙で素晴らしかった。彼でなければここまで魅力的な映画にはならなかったかもしれないな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-12-20 18:42:14) |
5. ザリガニの鳴くところ
<原作未読>面白かった。チェイスの死をめぐる裁判と、非常に特殊な環境で育った主人公の恋愛模様。濃密な2時間だったように思う。絵に描いたような悪人もいれば、真逆の善人もいる、さらには基本的には善人だけどある意味諸悪の根源になっちゃった男もいて、人生いろいろ、男もいろいろ状態。オチは想定内だが、過程を十分に楽しめたからこの点数。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-07-19 21:40:17) |
6. テルマ&ルイーズ
追われる身になったとはいえ、息が詰まるような日常から解放されて人が変わっていくテルマが印象的。程よくユーモアが散りばめられた会話劇、ロードムービーとしても楽しいし、二人の友情にもグッとくる。そして映画史に残ると言われるラストシーンはやはり格別。ブラピはここから始まったという点含め語り継がれる映画の一つだろうか。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-12 21:01:19) |
7. ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
ゲイリー・オールドマンがウィンストン・チャーチルを演じた歴史ドラマ。特殊メイクで外見を寄せたらあとは名優にお任せ。当然チャーチルに会ったことはないけど、あんな感じだったんだろうな~という説得力があった。その英首相は困難な状況で難しい選択を迫られている。ハリファックスたちの言うことも一理あって、当時の人たちが先が見通せない中でそれぞれの正義をぶつけ合っていたことがよく分かる。このあたり見応えは十分。勝てば官軍、負ければ賊軍。有事のリーダーはどちらにも転びうるし、勝ったからこその映画でもあった。確かに羨ましいっちゃ羨ましい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-03-31 19:34:46) |
8. オールド
《ネタバレ》 掴みは良かった。謎めいていて少し怖さもありグイグイ引き込まれていく。次に謎解きパート、こちらも知的な人が多いためかサクサク進んで良い感じ。そしていよいよ脱出パートへ… このビーチからなんとか抜け出ようとするが、これが俗に言う無理ゲーだった。最後に一矢報いてはいるが、もう青春時代は戻らないことを思えばこの映画は主人公サイドの敗北と言っていいと思う。その点で後味はあまり良くない。随分年を取ったガイとプリスカの会話などじんとくる場面もあって、人生とか老いとかについて考えさせられるところは一応評価して6点で。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-15 23:42:55) |
9. プロミシング・ヤング・ウーマン
《ネタバレ》 思いっきりネタバレ。大坂の陣で奮戦し、日ノ本一の兵と称された真田幸村は武士として大戦で死ねることに喜びを感じていたと思われる。人にはふさわしい死に場所があるということだが、カサンドラの死に場所はあそこではなかったなぁ。結婚式で動画を流すだけで復讐としては十分なはずだが、自分の命を犠牲にしてアルを殺人犯にする。あんな奴を陥れるために命を捨てる価値はないよって思っちゃうけど、アカデミー賞はこれに対して脚本賞を送っているわけだから世の中分からない。でも確かに前者だけでは「平凡な映画」の烙印を押されたかもしれない… そう考えると映画脚本の塩梅は難しい。とりあえず退屈せず最後まで観ることができたから6点は付けておこうっと。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-23 19:33:34) |
10. ゴジラvsコング
《ネタバレ》 "映画館で観てなんぼ"系の作品なのは承知だけど、それにしても気持ちが乗らなかった。二大怪獣の共演だけどメインは明らかにコングの方。類人猿だけあってその表情には親しみが湧くが、戦いでは2連敗してモヤモヤ…。ゴジラはゴジラで爬虫類色が強くなって魅力半減。聞いたところによると東宝はゴジラ負けを決して許可しないらしく、そこへの当てつけかと勘ぐってしまった。2019年の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」はもっと面白かったと記憶しているが、監督が変わっちゃったんだね。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-05-08 21:35:43) |
11. コーダ あいのうた
フランスのオリジナル版は未見(というかそもそもリメイクと知らなかった)。主人公ルビーは家族で唯一の健聴者。これまで両親・兄の耳となり口となってきた。ルビーは大好きな歌で生きていきたいと思っているが、家族を助けるため夢を諦めるべきだろうか? 簡単ではない問題だけに重たい空気になってしまうが、適度な笑い(主に下ネタ)と、ルビーの美しい歌声がこれを和らげてくれた。主演のエミリア・ジョーンズは歌手ではないようだが、役にしっかり説得力を持たせていてあっぱれと言う他ない。終盤の展開はまあベタではあるけど、手話で気持ちをぶつけ合う兄貴とのシーンなんかはやっぱり泣けた。家族愛に溢れる素敵な映画。V先生もナイスなキャラだね。 [映画館(字幕)] 7点(2022-01-31 23:31:30)(良:1票) |
12. 最後の決闘裁判
《ネタバレ》 決闘裁判というシステム、女性の扱われ方、あとは権力層の腐敗とか、ひどい時代もあったもんだ…と中世の怖さを感じながら観ていたが、残念なことにすべてが過去のものになったわけではない。現代にも通ずる社会派映画として重厚に仕上がっている。そんなテーマからして当然だけれども3周目=マルグリットパートではだいぶストレスを感じ、正直疲れてしまった。ささやかなハッピーエンドはこの陰鬱とした気分を晴らすには至らない。羅生門的構成もまあまあ興味深かったが、好きな映画かと問われればYESとは答えないかな。無論駄作とも思わないけど。俳優陣はベン・アフレック含め皆良かった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-01-12 19:01:48) |
13. はちどり
主人公ウニは1994年に14歳だから1980年生まれ、監督もそれくらいの人でやはり自伝的な部分が多々ありそう。だからか起承転結はあまりはっきりせず、結局どういう映画だったんだろう…という思いは今もある。ただ、抱えきれないほど多くのことが起きて爆発しそうだった日々も大人になってから振り返ると悪いことだけじゃなかったと思える、世界は不思議で美しいと言える日が来るんだってことならばなかなか素敵。国は違うがどこか懐かしい風景と、ウニを演じたパク・ジフの可愛らしさと繊細な演技が印象的な作品。おススメ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-12-25 13:37:38) |
14. ノマドランド
しんどいね生きていくのは。ドキュメンタリーのような…というかドキュメンタリーも含まれる映画といった感じで終盤のボブ(息子が自殺)の話も実話とのこと。ただしこれは悲しみや喪失感を抱えた人たちがあえて選んだ生き方だから、そこはとても尊重されているし、ことさら政治が悪いと主張することもなかった。もちろん厳しい現実もたくさん見せられたから憧れはしないけど、ノマドのことを知り、考える時間は悪いものじゃなかった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-11-03 16:07:30)(良:2票) |
15. アップグレード
AIが最善を導き出して人にアドバイスするのはすでに始まっていることだが、それがさらに進化し、体の動きまでコントロール可能になったら? そんな近未来を舞台にしたSFアクション。よくよく考えるとツッコミどころもあるんだけど、観てる間はそこを感じさせなかった。スピード感や緊張感が程よく見応えある映画になっている。オチも秀逸で満足だけど少々グロいのと、くしゃみで人を殺す技術に若干白けてしまったのを思い出して7点ということに。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-26 23:00:19) |
16. アス
<ゲット・アウトは未見>嫌な思い出があるビーチに出かけると、その夜、奴らが現れた。ここまでは良かった。邦画ならこの不気味な雰囲気をしばらくは引っ張るんだろうけど、こちらはすぐに直接対決が始まる。そしてあっさり制圧される主人公サイド。反撃に出て以降、笑って良いのか悪いのかよく分からない戦いが続いて、だんだん飽きてきた。で終盤戦、肝心の奴らの正体だが… 唯一言葉を話す彼女が説明してくれたが「なんだそりゃ」という感じ。と同時にあるオチが浮かんでくるが、案の定そう来たんで驚きにも繋がらず…。残念な印象が強い映画。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-08-25 00:06:14) |
17. パーム・スプリングス
《ネタバレ》 繰り返される11月9日。眠るか死ぬか、あの洞窟に行くかでリセット。もちろん記憶は積み重なっていく。多くの人がこのループからどうにかして抜け出そうとするサラに共感するのは間違いないだろう、しかし迷うナイルズや、受け入れたロイにも全く説得力がないわけじゃなく、人生とは一体…と考えさせられる。主人公自ら「よく聞く話だろ」と言ってるくらいで、ありきたりな設定ではあるが、そのへん、佳作に出会えたという満足感あり。念のため言っておくと、決して上品なコメディではないので一応ご注意を。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-08-17 00:14:42) |
18. 禁断の惑星
1956年にしてあのスケール感をよく出せたものだと思う。創意工夫して撮られた映像のありがたみだ。もちろん時代を感じさせる部分も多々あるが、却ってレトロ感が楽しかったりもした。この懐かしさは本作がいかに後世の作品に多大な影響を与えたかということを表しているのだろう。怪物の正体は、なるほど…。SF映画の古典的名作、お目にかかれて良かった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-03-10 18:45:38)(良:1票) |
19. 深夜の告白(1944)
ビリー・ワイルダー初期の傑作、というわけで鑑賞。同僚キーズの鋭い推理に徐々に追い詰められていくネフ、その程よい緊張感が中盤以降保たれていた。フィリス役バーバラ・スタンウィックの悪女ぶりも良い。計画の失敗自体は冒頭に明かされているが、二人の顛末はメロドラマ要素もあり、なかなか読めなかった。こういったジャンルの先駆けと評されている作品だけあって面白さは保証済みといったところか。おススメ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-02-24 19:32:43) |
20. レベッカ(1940)
結婚してから…というよりダンバース夫人が登場してからぐんぐん面白くなっていく。マンダレーの怪しげな雰囲気と、不安、怯えといった感情表現が抜群のジョーン・フォンテインに引き込まれ気がつけば終盤だ。事件の真相と物語の結末は驚きもあり、最後まで楽しませてもらった。1940年時点で既に監督として15年ほどのキャリアがあったヒッチコック、その安定感、さらに貫禄に近いものも感じることができる。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-01-21 20:06:04) |