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1.  Pearl パール
 パールが母親の古い服(ウエストの絞られたエドワーディアン風ドレス)を一張羅にしていて、義理の妹が最先端のフラッパーファッションに身を包んでいるというのは、明らかにパールの境遇(抑圧)と欲求(解放)の対比だろう。抑圧された女主人公が限界を迎えて大爆発するプロットといったら、やはり頭に浮かぶのは『キャリー』だ。しかしキャリーが「プロムに行くことを夢見るイジメられっ子の少女(見た目は冴えないけど超能力持ち)」という同情を誘うキャラクターであるのに対して、パールは自己中心的なシリアルキラーとして描かれるので、だんだん見る側の調子も狂ってくる。「銀幕スターという分不相応な夢を望む主婦(精神異常者なだけで凡人)」に、感情移入は難しい。パールの大暴れは見ていてハラハラする一方、「なんだこいつ…」と心が離れていく。この人物描写の雑さはA24スタジオ製作の他の作品にも共通するところだと感じる。そういう意味では、なんでもかんでも「親ガチャ」などと言って責任転嫁する現代の視聴層には合っているのかもしれない。
[インターネット(字幕)] 5点(2024-11-20 21:52:40)
2.  プラダを着た悪魔 《ネタバレ》 
 もう何十回見たかわからない。脚色が突飛すぎてキャラクターの誰にも感情移入できないし、泣けたりもしないのだが、マンハッタンを縦横無尽に駆け回るプロットと、ミランダとエミリーのセリフ回しがとにかく面白い。映像・音のすべてが気持ち良いテンポでできている。   ミランダの登場シーンやアンディの着せ替えシーンは絶対に映画でしかできない盛り上げ方だし、モチーフの反復による2つの世界の対比(「ミーティングに間に合わせるためにランチを捨てるナイジェル」「ミランダにキレてステーキを放り投げるアンディ」「炭水化物を摂らないエミリー」に対して、「いつも集まって飲み食いしている友人」「アンディのために夜食を作るネイト」「パリ行きがダメになった途端にパンを頬張るエミリー」)も面白い。   最後にネイトと復縁するアンディの心情はまったく理解できないが、これはわざとなのかなとも思う。なぜならこの映画は、ファッション界の悪魔的な魅力を描くことに成功していればいるほど、その世界を捨てるという決断がハッピーになりえないからだ。観客は無邪気に「ジャーナリストになる夢が叶ってよかったね」と思うことができない。だからこそ、観客に「ファッション界への未練」を思いきり感じさせるために、アンディはガキ臭い彼氏との元サヤに収まるのだろう。そして観客は、もう一度面接のシーンから映画を再生したくなるのだ。それが愚かなことだとわかっていても。
[DVD(字幕)] 8点(2024-02-03 09:14:02)
3.  ピーターラビット 《ネタバレ》 
 冒頭のおじいさんがサム・ニールだとは気づかなかった。面白かったのは、人間が電気ショックで何度も吹っ飛ぶところくらい。この内容で「ピーターラビット」の看板を掲げる意味はよくわからない。   アレルギー反応などのブラックジョークを入れるなら菜食主義なんかもネタにしてほしかったし、いっそ原作に寄り添って「食うか食われるか」みたいな、動物がお互いに食べ合うことの意義なんかを感じさせてくれるプロットなら面白かったのにと思う(それこそピーターのお父さんはミートパイにされているわけだし)。   隣家の畑を荒らすところから始まって、その畑で大手を振って過ごせるようになって終わり……という、不遜な若者が不遜な若者のまま終わる成長のなさもスカッとしない。
[インターネット(字幕)] 4点(2023-06-07 22:44:29)(良:1票)
4.  ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
 ワクワクのワの字もない。あれこれ書く気も起きない。センスのないスタッフたちが、イースターエッグを散りばめて誤魔化そうとしているだけの2時間15分。
[インターネット(字幕)] 1点(2023-01-02 21:59:34)
5.  パラノーマン ブライス・ホローの謎 《ネタバレ》 
 キャラクターはブキミカワイイし、ノーマンの切ない境遇もたしかに胸に刺さるのに、作劇がトンチンカンすぎて不完全燃焼してしまった。「何かが起こり始めている」という序章が長すぎて、やっとストーリーが転がり始めたかと思ったら、行き当たりばったりのパニックシーンばかりで物語の目的がいまいち見えず……(一応、目的は「墓の前で本を読む」ということなのだが、押し付けがましくてまったく腑に落ちない)   せっかくノーマンが「幽霊が見える」という設定なのだから、あの少女を冒頭から「正体はわからないけど、いつも見えている幽霊の一人」として絡ませればよかったのになと思った。そこから少女が他の幽霊とは違うことに気づいて……という展開にすれば、ノーマンとの絆も描けてクライマックスに感動できたと思う。   少女の声は『サイレントヒル』でアレッサ役をやったジョデル・フェルランドが当てていて、日本びいきのLAIKAスタジオらしさを感じた。魔女狩りに遭った少女を永遠に煉獄で生殺しにするのが日本なら、しっかりと救済を与えるのがアメリカ。両国の感性の違いが見えて面白い。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-10-14 09:55:41)(良:1票)
6.  シャッター アイランド 《ネタバレ》 
 霧、水辺、炎、病院、精神病、鉄格子、象徴的な悪夢。そして、妄想による自己欺瞞で妻殺しの罪から逃避する主人公。クリーチャーが出てこないというだけで、ほぼそのままホラーゲームの『サイレントヒル2』だったし、更に言うならそのイメージ源である『ジェイコブス・ラダー』の変奏。制作陣はかなり影響を受けていると思う。特に“崖の下の死体”のシーンはゾクッとして良かった。   しかし表層的な作りは上手でも、人物描写はすっぽりと抜け落ちていた。だから、「どんでん返しは見え見えだったけど、トータルで良かったよね」という評価にならない。死んだ妻の登場シーンは「観客を混乱させたい」という狙いがあからさますぎて、ミステリアスというよりイライラするし、「二人の間にあった愛」が描かれないので「子殺し」の真相は荒唐無稽に映る。主人公はただプッツン女に人生を奪われたようにしか思えず、「最後の選択」に切ない余韻を感じることはできなかった。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-10-03 23:37:15)
7.  メリー・ポピンズ リターンズ
 元祖『メリー・ポピンズ』が冒頭からメリー・ポピンズをチラ見せし、バートが歌う魅力的な「チム・チム・チェリー」のメロディで心を掴むのに対して、この『リターンズ』の冒頭10分は「設定を説明するためだけの会話の連続(とりあえず形だけの歌もあるよ)」という感じで、この時点でもう「ハズレだな……」と思った。   その設定も、借金がどうとか父の株券がどうとか、本当にどうでもいい。1ミリも興味を持てない。なぜ元祖のように「謎めいたナニーの魔法に翻弄されるうちに、機能不全ファミリーが再生していく」といったシンプルな作りにできないのか。   アニメパートは、黄金期のアニメーターの仕事に敵うわけがないのは当然としても、CGにあぐらをかいているのが見え見えで芳醇さを微塵も感じられなかったし、歌については1曲も耳に残らなかった。   エミリー・ブラントは歌唱力以前に、「陰」か「陽」かで言うと「陰」の女優だと思うのでそもそものミスキャスト感が否めない(尾野真千子が明るい役をやっているときの違和感に近い)。相手役のリン=マニュエル・ミランダも、ただただプエルトリコ系のクドさだけが目立った。キャスティングのポリコレにこだわるなら、ヴィクトリア時代の話など作らなければいいのにと思う。   とにかく作り手の情熱とか才能みたいなものがまったく香ってこず、「人から作品が生まれる」のではなく「企画ありきで人を集める(適任者がいなくても無理に作る)」という、近年の業界にありがちな1本に思えた。
[インターネット(字幕)] 3点(2022-04-27 08:09:14)
8.  シュガー・ラッシュ:オンライン
 ポリコレ臭くてかなわん料理を、演出のケレン味をふりかけて誤魔化すタイプの映画。近年のディズニーお得意のメニューだ。映像としては楽しいけれど、大切な「作品の核」みたいなものがまったく感じられない。プリンセスたちのネタ化も想像以上に酷かった。これにアラン・メンケンが曲を当てるのだから世も末。ハワード・アッシュマンが生きていたら、きっとこんな時代にはならなかったろう。
[インターネット(吹替)] 3点(2022-02-13 20:14:31)
9.  ウィッチ 《ネタバレ》 
 魔女を描いた映画は多いが、これほどまでに絵画的で様式美に満ちた作品には出会ったことがない。音のメリハリも良く、不協和音で首筋を撫でられる快感は『リング』以来の満足度。   アメリカ入植時代の考証を、ファッションや生活様式だけでなく古い英語にまでこだわって行ったことにも非常に価値があると思う。特に黒山羊のフィリップが人語を操るシーンの、舌先で転がすような響きは蠱惑的ですらあった。   展開は地味だが、登場人物それぞれのモヤモヤが明快なので「家族が崩壊していく様」だけでじゅうぶん引きつけられたし、トマシンが魔女になる決意を明確にセリフで示しているので、バッドエンドの中にカタルシスもある。この先、これ以上の魔女映画はもう出ないと断言できる。
[インターネット(字幕)] 10点(2021-11-23 14:32:42)
10.  ミッドサマー
 白昼夢のような映像の美しさ、検証欲を掻き立てられる世界観はたしかに魅力的だが、絵解きの前にまずきっちり楽しませてほしい。ゴア表現を抜いたら何も残らない内容で2時間半は長すぎる。   『ヘレディタリー』もそうだったが、この監督は作品の門構えをスプラッターにしないくせに、結局のところ「グロさが話題に!」という流れを期待しているのがずるいと思う。「話術で怖がらせてくれると思わせておいて、いきなり殴りかかってくる人」という感じ。そんなことされたら痛いのは当たり前で、暴力でイニシアチブをとる歪んだコミュニケーションでしかない。   殴られたときに出るアドレナリンは脳の防御反応でしかないのに、人はその興奮を「すごいものを見た!」という評価に繋げてしまう。これはただの狡猾なビジネスモデルだ。ホラー映画ファンだからこそ、0点をつけます。
[インターネット(字幕)] 0点(2021-11-14 02:07:42)(良:3票)
11.  ハッピー・デス・デイ 《ネタバレ》 
 まさに「小気味良い」と言いたくなる面白さだった。   ループものの定石である「パニック→受容→謎解き」の展開を終えたあと、主人公が「どうせ誰の記憶にも残らない」と自暴自棄になって、人前でオナラをブーブーしだす展開が新鮮で楽しい。終始、お笑い用語で言うところの「天丼」がスマートに用いられていて、セリフも今っぽくしゃれている。   結果ありきの不自然な展開(犯人を知りたいのなら、殺される直前にお面を取りさえすればいいのにそれをしない→お面を取ってしまうと「真犯人がいる」という大オチが成立しなくなるから…という都合)は少し気になったが、そもそもシリアスぶっていないので問題点というほどでもないように感じた。   不気味なマスクのデザインは『スクリーム』のゴーストフェイスをデザインしたトニー・ガードナーによるもので、90年代のメタホラーブームの香りを残すシニカルな作風に華を添えている。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-09-20 14:21:36)
12.  エクトプラズム 怨霊の棲む家 《ネタバレ》 
 遺体写真(ポストモーテム・フォトグラフィー)や交霊会などの19世紀的オカルト要素を盛り込んではいるものの、それらはあくまで味付けにすぎず、よくあるC級ホラーだった。そもそも原題は『THE HAUNTING IN CONNECTICUT(コネチカットの幽霊屋敷)』で、エクトプラズムはストーリーの中で特に重要な意味を持っていない。ズレた邦題はホラー配給の伝統芸とはいえ、なかなかの詐欺タイトルと言っていい。   登場人物たちは「息子がガンで死にかけているのに葬儀場だった曰くつきの物件を借りる」とか「見るからに不気味な開かずの扉がある地下室を自室に選ぶ」とか、リアリティのない行動ばかりとるので感情移入がまるでできない。後半で明らかになる幽霊屋敷の設定も、トンデモすぎてカタルシスを得られなかった(「この家は葬儀場だった→葬儀場の主人は、霊能力を持つ少年を使って交霊会を開いていた」まではわかるが、「その少年の霊能力をさらに高めるために、死体を黒魔術で蘇らせた」あたりからバカバカしくなってくる……)。   『キャンディマン』のヴァージニア・マドセンをホラーで見られる!という感慨とともにワクワクしながら観たので、ガッカリ感ひとしお。
[インターネット(字幕)] 4点(2021-09-06 11:00:02)
13.  魔女がいっぱい 《ネタバレ》 
 物語が本格的に転がり始めるまでが長く(アン・ハサウェイの登場まで20分以上かかる)、その後もいまいち盛り上がらず終わってしまった。主人公サイドも魔女サイドも、直接的に怪我を負ったり死ぬということがないので、危機感がまったくない。   魔女のケバケバしさやオーバーな言動は、ドラァグ・クイーンに着想を得たものだろう。しかしキャラクターの面白さというのはスパイスであって、それだけで長編映像は牽引できないはずだ。「アン・ハサウェイにドぎついキャラを演じさせれば話題になるだろう」とあぐらをかいて、ストーリーをなおざりにしているように思えた。   ではキッズ向けか?というとそうでもなく、魔女の身体的特徴(裂けた口・カツラで爛れたスキンヘッド・指が3本しかない手・指のない足)を「醜さ」として描く危うさ(皮膚疾患・部位欠損をマイナスととらえるルッキズム)を秘めている。   監督の「悪趣味に振り切りたい」という意図と、制作会社の「できるだけマイルドにしたい」という意図がぶつかり合って、空中分解している印象。
[インターネット(字幕)] 3点(2021-08-23 07:59:08)
14.  ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey 《ネタバレ》 
 なぜかハーレイが「そこらへんにいそうな前向きな女の子になって帰ってきた」という印象。   なんというか、メンタルが至ってノーマルなのだ。もちろん暴力的だし、スーパーマーケットでお金を払わずレジを突っ切ったりするのだが、それは「狂気」ではない。もしジョーカーとの破局によってメンタルが弱体化したのだとしたら、主役になる資格さえないのではないか?   肝心のストーリーは「利害の一致した女たちが団結して敵(=男)を倒す」という、ガールズパワームービー的な世界観に小さくまとまってしまっている。全体的にフェミニズムが匂い立つのだが、アクションシーンは男たちが「斬られチャンバラをしてあげている」という感じが拭えないし、金的を潰す描写の強調にはミサンドリー(男性嫌悪)さえ感じる。   そもそもハーレイ・クインというキャラクターの魅力は、「美女なのに悪役」「もともと才女なのに白痴美を感じる」といったところにあると思う。裏を返せば「ブスでは成立しない」「知的なままではダメ」ということであり、フェミニズムやアンチルッキズムとは真逆のファンタジーのはずなのだが……   終盤のビックリハウスは面白くなりそうなシチュエーションなのに、バネやゴムでドタバタするだけでガッカリした(すごく「予算が尽きました」という感じがする)。あと細かいかもしれないが、ストーリーの構造上、常に下ネタ(エロじゃなくて汚い方の)がついて回るのもいただけない。
[インターネット(字幕)] 3点(2021-07-30 22:50:22)
15.  ゲット・アウト 《ネタバレ》 
 あのジョージアン様式の佇まいと広大な土地からして、舞台となるお屋敷がプランテーションのオーナーハウスだったことは想像に難くない。「かつて黒人奴隷が労働させられていた場所で白人と黒人が(表面上)仲良くする」というのは、現代アメリカにおいては地雷原を歩くような行為だ(みんなそんなことは口が裂けても言わないが)。その空気感をまるごと利用しているのは斬新だった。   後半の展開は、意外というより茶番。オチが荒唐無稽なのは構わないが、それならば全体を調和させる何かが前半にもっと欲しかった。また、アーミテージ家の奴らをぶっ倒していくシークエンスで、ミッシー(彼女の母親)への一撃がサクッと終わってしまったのも気持ち悪い。主人公に催眠術をかけた主犯格への反撃なのだから、しっかりしたカタルシスが欲しかった。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-06-04 00:09:37)
16.  ヘレディタリー 継承 《ネタバレ》 
 私は悪魔ネタがけっこう好きだ。よく「日本はキリスト教圏ではないから、悪魔の怖さはピンとこない」という感想を聞くことがあるが、そんなこともないと思う。「邪悪な集団に追い詰められていく」というのはホラーの定番だし、『ローズマリーの赤ちゃん』は何度見ても背筋が凍る。サタニストがマンハッタンのアッパークラスに巣食っているという設定に妙にリアリティがあり、「悪魔に狙われている」という状況を早々に明かした上でのストーリーテリングが巧いからだ。   本作ではサタニストの存在が終盤で明らかになる上、存在感がどうもボヤッとしている。そもそも、主人公たちはどんな街に住んでいるのか。悪魔崇拝者たちは、どのようにカモフラージュして暮らしているのか。彼らのコミュニティとしてのリアルを描けていないので、現実としての恐怖感がまるでない。裸の信者たちがわらわら出てくるシーンはそれこそ『ローズマリーの赤ちゃん』っぽくておぞましいが、同時に苦笑いもしてしまう。   致命的なのは、誰も彼もが辛気臭い顔・行動を示すので「この家族がどうなろうと知ったこっちゃないよ」という気分になること。ルッキズム否定がトレンドなのかもしれないが、やはり「愛嬌のない者に感情移入はできない」ということを痛感する。息子役だけが中東系の顔立ちをしているのも、「何か意味があるのかな?」と思わせてしまう謎のキャスティング。ポリコレ対策だろうか。   恐怖シーンのひとつひとつはけっこうしっかりしているので、怖くすらない駄作と比べれば高評価になるのかもしれないが、名作として後世のホラーファンに「継承」されていくとは到底思えない。
[インターネット(字幕)] 4点(2021-05-22 01:44:25)
17.  ジュラシック・ワールド/炎の王国 《ネタバレ》 
 「恐竜を使ってこういう画を撮りたい」というコダワリは、このシリーズを続ける原動力として間違っているとまでは言わないが……もう「それだけ」になってしまってはいないか。インドラプトルがトリケラトプスの化石で串刺しになるシーンの向こう側に、作り手のドヤ顔が見え隠れする感じは不快ですらある。『ファイナル・デスティネーション』シリーズの、「こういう死に方面白くね?」のノリを恐竜でやっているだけである。   過去作のオマージュも散りばめられているが、これがまた安っぽい。特に、「あわや殺されるという瞬間に、横からTレックスが出てきて助かる」というシーン。これを何の脈絡もなく、「ほら、喜べよ」とばかりに入れてくるセンスの無さにガッカリ。   肝心の大筋はというと、人間たちが「恐竜保護派vs恐竜利用派」に別れて争うという、『ロスト・ワールド』の轍を踏む退屈な展開。「恐竜vs人間」以上に明確かつ感情移入できるスリルはないのに、なぜそこを大事にしないのだろうか?   初代『ジュラシック・パーク』はどうしてあんなにも手に汗握るか。それは劇中でもサトラー博士が言っているが、「愛する人が命を落とすかもしれない」という恐怖を擬似体験するからだと思う。それは人物が「生きている」と思わせて初めて成立するもの。気の置けない恋人同士(グラント博士とサトラー博士)。姉弟(レックスとティム)。血の通った脚本と役者の演技力が、観客に「この4人が死ぬところは見たくない」と思わせるパーソナリティーを生んでいる。   以降の作品の主人公たちは、どうにも生きていない。揃いも揃って「ひねった家族関係」の設定(両親が離婚していたり夫婦仲が冷めていたり兄弟仲が悪かったり)が与えられている上に、それを掘り下げるわけでもない(なぜなら本筋ではない)から、どうしても短い時間の中でパッと好きになりにくいのだ。オーウェンとクレアに至っては「ワケありの男女」というしょーもない設定で、この二人の間にどれほどの絆があるかもわからない。『ロスト・ワールド』以降、キャラクターたちが死のうが生きようがどうでもいいと思えてしまうのは、このあたりに原因がある気がする。   ただ、それでも「かっこよかった!」と思わせてくれるクリス・プラットのスター性はすごい。
[インターネット(字幕)] 5点(2021-02-28 19:13:05)(良:3票)
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