1. 孤島の王
もう少しうまく作れると感じた惜しい作品。テーマは大好きなのだが。 [映画館(字幕)] 6点(2012-07-16 14:38:33) |
2. ドラゴン・タトゥーの女
《ネタバレ》 出だしは流石のフィンチャークオリティだが、ラストのツンデレに気持ちが萎えた。一気にリスベットがダサく見える。 [映画館(字幕)] 6点(2012-06-30 14:42:59) |
3. 未来を生きる君たちへ
《ネタバレ》 母性的な優しさで登場人物を見守るビア監督の眼差しは健在だが、この作品は彼女の作品にしては珍しい「社会派」映画だった。政治的なスタンスや道徳のあり方といった問題は比較的少なく、家族や愛をテーマにした物語に重点を置いてきたこれまでの作品と異なり、この作品は「復讐」(流行の言葉で言えば「暴力の連鎖」)という倫理的に難しいテーマに多方面からアプローチした意欲作だ。デンマークのとある町での出来事とアフリカの難民キャンプでの出来事をうまく対比させながら、コミュニティの力学(公)と個人の感情(私)の二つのレベルで「復讐」というテーマを取り扱っており、これだけでは難しく聞こえるかもしれないが、結論から言うとよく出来ている。 まず、この複雑なテーマとあらすじの絡め方が絶妙で、押し付けがましくないので、いつの間にか作品の中に引き込まれてしまう。きちんとストーリーを通じて、観客に訴えかけているから、途中で飽きることもない。高度に観念的な映画になると観客を選ぶが、この作品はそんなことは無く、一般人の視点に立つことを忘れない優しい映画である。シリアスなテーマだけに、かなり監督が気を使った様子が見て取れる。 また、登場人物の造形も確かで非常に丁寧である。純粋(=世間知らず)な子供という存在を効果的に活用し、抽象的なテーマをわかりやすく提示できている。この監督の登場人物の心情描写には以前から感心していたが、今回はそれを目的ではなく、手段として上手に使ったという印象を受けた。 打ちのめされるような感動は無いかもしれないが、手際の良い職人芸を見るような映画で、こういう映画がもっと広く映画ファンの目に触れるようになることを願って止まない。 [映画館(字幕)] 8点(2011-09-16 21:46:43) |
4. キラー・インサイド・ミー
《ネタバレ》 アメリカ南部の田舎町で保安官助手を務めるルー(ケイシー・アフレック)は温厚で愛想のいい性格で、その不幸な経歴にもかかわらず、職場でもその町の住民からも愛されていた。ガールフレンドである教師のエイミー(ケイト・ハドソン)との仲も悪くない。ある日、彼は上司から町外れの娼婦ジョイス(ジェシカ・アルバ)を町から追い出すよう命じられ、彼女の家へ向かう。そして、そこで彼女から平手打ちを食らったことで、彼の中の「キラー」が目覚め、彼は次第に暴力に魅入られていく。 主人公のルーは完全な二重人格ではない。自分のやっていることを冷静に評価し、それを隠そうとする知恵もある。それゆえ、余計に彼の行為は不愉快でそして魅力的なのだ。もちろん人を傷つけることは許されない。しかし、それに対して食欲や性欲と同等のレベルで欲求を感じる人間がいたら、どうだろうか。彼は苦しむだろう。苦しみながら人を殺すだろう。人を殺しながら泣くだろう。僕は「彼」ではないが、「彼」という人間には強く同情したし、魅力すら感じてしまった。あくまでも「彼」の一人称でこの物語を語らせた脚本の勝利だ。全てが完結するラストのクライマックスは美しくさえある。僕は映画の世界に完全に引き込まれてしまった。 少し眠そうな南部訛りで淡々と暴力への憧憬を語るサイコキラーを演じたケイシー・アフレックの演技は背筋が凍りつくほど恐ろしい。ベン・アフレックの監督・俳優としての才能も凄いし、この兄弟からは目が離せない。 [映画館(字幕)] 8点(2011-04-28 23:01:35) |
5. ぼくのエリ 200歳の少女
《ネタバレ》 映画の開始時刻を勘違いしていて、少し遅れてあわてて館内に入った。館内は真っ暗で静まり返っていた。通路の隣の席も見えない真の闇だった。僕は立ったまま待っていた。しばらくすると音もないままスクリーンに雪が降り始めた。その仄暗い雪の中でようやく僕は席を見つけることができた。 この神秘的で静寂に包まれたオープニングはこの映画の全体の雰囲気をよく表している。12歳のいじめられっ子オスカーと永遠に12歳であり続ける吸血鬼エリ。それぞれのやり方で相手を想う2人の思いは強いが、吸血鬼というテーマとは裏腹に映画は常に静かに展開する。2人の、圧倒的に美しいが同時に繊細なたたずまいを前にしては、多くの言葉は必要ない。 一方で、この美しいエリの存在に実在感が薄かったのも事実だ。映画を通じて、オスカーとエリの間にはほとんど人が介在しない。オスカーの母親はエリと直接関係しないし、介在するのは結果的に死んでしまう人ばかりだ。僕は心の中のどこかで「エリはオスカーの作り出した幻影ではないか?」とずっと感じていた。「強さ」を願うオスカーの心が作り上げた架空の存在だとしたら?エリに襲われた人々もまた実は存在しないのではなかろうか?実際にはオスカーはプールで死んでしまうのではなかろうか?エリの存在自体の危うさが、この映画の魅力である儚さをより際立たせているようにも感じる。 吸血鬼映画に仮託して、監督は、思春期特有の純粋な気持ちや強さへの憧れを撮りたかったのではないかと僕は感じたし、それはそれで紛れもなく成功している。エリをどう解釈しても、素晴らしい映画だということに変わりはない。エリの「保護者」として成長していくオスカーの未来には破滅しかないが、それがまたラストを一際美しくしている。実際にオスカーが生きているとしても死んでいるとしても、ラストのオスカーとエリの旅は黄泉の国への旅なのである。 [映画館(字幕)] 8点(2011-01-05 21:57:45)(良:1票) |
6. ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
よくあるミステリーものの範疇を出ない作品。リスベットという女性のキャラクターはそれなりに面白いのだが、全体的に演出が地味で、物足りない印象だった。ナチスだの性的虐待だの、陰影の濃い、どす黒いストーリー展開は比較的好みだが、主演二人や脇役にぐっと惹きつけられるものがないのが残念。特にラストでリスベットが普通の女っぽい格好をしていたのにはがっかりした。それじゃ全然かっこよくないじゃん。 [DVD(字幕)] 5点(2010-09-06 22:42:01)(良:1票) |
7. アフター・ウェディング
《ネタバレ》 スザンネ・ビア監督らしい「喪失」がテーマの作品だが、これは彼女の他の作品と少し毛色が違い、「喪失の過程」を描いた映画だ。ヤコブに感情移入するかヨルゲンに感情移入するか、人によって観方は様々だと思うが、どの観方をしても興味深い内容であることは確かだ。家族モノを撮らせたら、今、私の最も好きな監督だ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-07-29 22:51:29) |