1. ヒトラーの贋札
《ネタバレ》 妻投稿■ホロコーストの映画って、虐殺被害者は聖人君子みたいな人ばかりで、生き残れた喜びと生き残れなかった悲惨さを対極に画くことが多い。これって、歴史修正の中で被害者(の人として許される範疇の世俗)に物凄いバッシングが来たり、被害者自身が「お前は実はこんなズルで生き残ったんじゃないか」と生き残ったことに罪悪感を感じるように強要されたり、そうやって結局虐殺を容認した社会やそこに生きる人の想像力の足りなさが無罪放免になる仕組みになったりして、とても危険だと思います。■この映画は、というよりこの原作者で実際に収容所に入って贋札を作った方は、「私のことを厭らしい俗物と非難してくれてもかまわない」「かわいそうだと思ってくれなくてもかまわない」「贋札作りという理的行為を行った人間として糾弾してくれても構わない」というスタンスです。その代わりに見た人に対し、「私たちはこの状況で正義を取れるか、それとも安全のために強いものに気に入られるよう頑張るか」というジレンマを感じてほしかったんだと思います。ホロコーストは一般大衆が賛成した大虐殺。それを許した歴史を持つ人間は、実はヒトラーに洗脳されて何が正しいのかわからなかったのだけではなく、正しいものを封殺した主人公のような俗人的部分があったんだと思います。だから、終戦記念日の黙祷時間に、こういうジレンマが自分の体にあることを感じてほしいと、この映画は訴えているんじゃないかと思います。生き残ったものがカジノで喜びではなく孤独を感じるシーンは、その象徴だと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2011-07-14 10:41:42) |
2. ジャーヘッド
妻投稿■人間は自分という存在に対し、絶対的な支配権がある。唯一殺しても罪に問われないのが自分自身であるくらいその自己支配権は絶大だ。当然「死ね」と言われて死ぬ必要もないし、自分の命を守るためなら「社会人の品格」なんて踏みにじっても問題はない。それが人間の自然だ。■でも軍隊の訓練はそういう自然を不自然にし、自己支配権を組織に全部渡してしまう作業だ。その時点で実は物凄く無茶なんですよね。そういう無茶をさせられた人間が、戦闘に巻き込まれなくてハッピーハッピーかというとそうでもなく、「自分自身が安全で、殺されたり殺さなくてもいい状況」を許せなくなってしまう。「人間兵器」に自己進化した人間の、なんかすごく悲しいものが描かれていたと思う。■でもそういう人間を作り上げる事で現代社会の繁栄と安全は成り立っているんですよね。結構重い問題ですよね。 [DVD(吹替)] 8点(2010-09-02 22:40:22) |
3. かいじゅうたちのいるところ
《ネタバレ》 妻投稿■「かいじゅうたちのいるところ」は大好きな絵本だ。しかしそれを2時間映画にする事は最低だ。絵本は基本的に映画とは違う時間が流れている。特に「かいじゅうたちのいるところ」や「おしいれの冒険」を24みたいにリアルタイムで映像化したとして、たとえ子供たちが異世界に迷い込んだ時間が2時間だとしても、映像化されたものを大人の視点で見たところで10分くらいにもならないはずだ。■それを数学で表わしてみると、現実世界ではy=ax、y=出来事、x=時間、a=あなたの行動になる。でもこの数式は絵本でふっと迷い込んだ異世界では成立しない。こういう世界はy=aw/xという数式が成立すると思う。この場合w=「あなたにとって重要な思い出場面の時間」だと思う。つまり、出来事yが同じでも、異世界ではそれをつかさどる時間軸はとても短い瞬間であるはずなのだ。■その異次元変異を舐めているから、大人たちは物語を「2時間映画」にまとめるために、安っぽい「商業映画的感動」を挿入する羽目になると思う。■でも「映画化」ではなく「映像化」なら私も大賛成。そういう点では(絨毯の草のシーンとか)素晴らしい点はいくつも見つけられる気がする。※注意:この数式は旦那の中学校の教科書の折れ線グラフを参考に友達と適当につくりました。私は養護しか出ていないので(10歳までは「てにをは」や100円玉2つで200円になる事さえ碌に知らなかった)、あんまり参考にしないで下さいませ。 [DVD(吹替)] 5点(2010-05-24 23:59:32) |
4. ラッシュアワー3
《ネタバレ》 妻投稿■ラッシュアワーに何を期待する・・・と聞かれてみれば期待していたものは出してくれている気がする結構良心的なシリーズだと思う。でもスーヤンはもっとさわやか系の女の子があっている気がする。 [DVD(吹替)] 6点(2010-02-26 18:27:59) |
5. サヴァイヴ 殺戮の森
《ネタバレ》 妻投稿■「無人惑星サヴァイヴ」というNHKでやっていたアニメシリーズが私大好きで、旦那にそのDVDをお見舞いに借りてきて(^^)/と頼んだのですが、何をどう間違えたのか、彼の借りてきたパッケージには逆さづりにされた女の子とナイフが・・・・。ちなみに旦那のメモ帳には「殺人惑星サヴァイヴ」と書いてありました。■内容は・・・なんと説明すればいいのか…何かを間違えているんじゃないかというのが、率直な感想でした。多分旦那と同じ脳味噌構造の監督なんでしょうね。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-30 23:44:20) |
6. トゥームレイダー2
《ネタバレ》 妻投稿■5年くらい前に見ました。サメを殴るシーンは実際には結構有効らしいので許せますが、アドベンチャーゲームの映画化の分際で仲間が次々と殺され、最後はパートナーも自分が殺すという無駄に悲劇的な内容なのが解せないです。■で「なんでこんなストーリー」なのか考えてみました。簡単にいえばこれ、「ゲームの映画化」ではなくて「映画とゲームを混合」しているんだと思います。このゲームをやったことがない私の身勝手な推測なのですが、香港のビルを滑空するシーンでは空中にコインが浮かんでいそうですし、人が無駄に死ぬのも(前回の悪役たちはある程度現実世界の住人として自分が死なないで目的を達成する技術を持っていた)、連中にとっては喜劇でも悲劇ではなくゲームオーバーなんでしょう。 [地上波(吹替)] 5点(2010-01-24 15:36:57) |
7. es[エス](2001)
《ネタバレ》 妻投稿■ドイツ連邦共和国では「民主主義を否定する民主主義は認めない」政策のもとで、ヒトラーとかホロコーストとかそういうものを描くことが禁止されているけど(ヒトラーが役者で演じられた「ヒトラー最期の12日間」も公開できるか否か非常に議論された)、基本的には自由の国なので「間接表現」という形でホロコーストの狂気を描く秀逸な作品が表わされたりするが、この映画もその一つではないかと思う。旧戦勝国のアメリカのスタンフォード監獄実験をモチーフにしている(と、当局に思わせている)というもが凄く皮肉が利いている。現実の実験では人が死んでいないのにこっちは殺され放題なのも、実は抽象的にナチの浸透や暴力を描いているのだから関係ない。■現実のスタンフォード実験はあくまで「心理実験」だったようだけど、この作品はどう考えても「暴力の構造的構築実験」のように見える。つまり「異常な心理状態で人間がどのような行動に出るか」というものではなく、「暴力や尊厳のはく奪は人間にどのような変化を与え、どのように利用しえるようになるか」という確信犯的な実験みたいに見えるのだ。これはまさに暴力を構造的かつ能率的かつ効果的に使ったヒトラーとナチスの話だ。 [DVD(吹替)] 8点(2010-01-04 23:36:39) |
8. ボウリング・フォー・コロンバイン
《ネタバレ》 妻投稿■突然だけど一時期「なんで人を殺してはいけないのか」という質問が日本で流行りましたよね。それに明確に答えられない大人を辱めるか、そんな質問をする子供を非難するか、当時の世論はどっちかだったと思う。ちなみに私の答えは「そういう選択を人類がしたから」。だから人が選択するのをやめさえすればいつでも「人殺しオッケイ」になるのだと思う。■実はそういう結論に私が達したきっかけがこの映画だったりする。作中のアメリカ人は銃を持つか持たないかという選択を迫られている。つまりは「自分が人を殺す」という状況を想定しているのである。私にはそれが衝撃的だった。日本だったら「人の生殺与奪を個人が握るなんてとんでもない」という「良識」が社会を支配しているらしいから。・・・けど、考えてみれば日本だって国民の大半は死刑にノリノリだし、「一個人が死ななければいけない理由」なんて(「うざい」とか「きもい」とか)社会にいくらでも転がっているようにも見える。■実は犯罪率は減っているという事実、やたら不安をあおるメディア、カナダとの比較、福祉制度と貧困の絶望(チャールトン・ヘストンの部分の趣旨はよくわからなかったけど)など、映画の言いたいことはたくさんあると思う。だけど日本人がこの映画から受け取るべき事は、「人を殺してはいけない倫理なんて明日には吹っ飛びかねないはかない倫理」だという事と、「暴力は相手を支配するためではなく、相手を痛めつけるためにあるわけでもなく、確実に殺すためにある」という事の2点ではないだろうか。ムーアの編集でイカレポンチの集まりみたいに描かれているアメリカ人だが、この2点は日本人よりはるかによく自覚していると思う。■9条、銃刀法法違反…私は賛成だ。でも平和ボケはしていても、人の痛みに鈍感になったツケは、この映画が否が応でも教えてくれる。■マイナス点は、マイケルムーアがこの解決策を「敵を作る」ということに求めていることかな。 [DVD(吹替)] 7点(2009-12-18 21:58:36) |
9. 16ブロック
《ネタバレ》 ちょっと最初が緩いかな。電話の位置特定になぜ気づかないとか、なぜ屋上にいることに気がついたとか、そういうところに知恵と知恵のぶつかり合いをメリハリきかせてくれれば名作になったと思う。 [地上波(吹替)] 6点(2009-11-23 23:21:35) |
10. ヒトラー 最期の12日間
《ネタバレ》 妻投稿■「おっぱいぷるんぷるん」とか「ちくしょーめー」とか「×××スターリン」とかうるせー旦那は放っておいて、再度レビュー、レビュー(元ネタがわからなかったらyoutubeへ^_^;)■私の友達に韓国系(お母さんが日本人)の女の子がいて、その子は竹島は日本の物だと考えているし、日本を勉強するために靖国博物館に行った事がある。人懐っこい高校生だ。でもその子が私に「最近インターネットとか本とか見ていると怖い」「『拉致問題で責任と取れ』と道端で暴力をふるわれた事がある」と言った事がある。「もし東海大地震が起こったら、関東大震災の時みたいにみんなが私を殺すんじゃないかと思う事がある」とも。「もしなんかあったら家にかくまってね」と言われて、私は「日本人は理性的で頭いい民族だからそんなことしないよ」と言ったけど、この映画を見て心配になってきた。■いや、日本人が理性的で賢い民族だと言う事には異論はないんですよ。そして、ドイツ人は日本人と同じくらい自動車などの科学技術でも文学でも哲学でも医学でもメチャメチャ優秀な民族だ。そして理性的で劇中のヒトラーやゲッペみたいに子供には優しい人たちであるはずだ。そんなドイツ人が揃いも揃って第三帝国に脳味噌を全部預けてしまったのだ。■あーあ、私はおばちゃんになった主人公みたいな言いわけ「知らなかった」を言う事が出来ない立場になった。私はルームメイトと一緒に育てている今4歳のチビに無理やり毒物を飲ませる羽目になるのか、それともパーティ会場で旦那風にいえば「おっぱいぷるんぷるん」な裸踊りをするのかはわからない。 でもそれを私にさせたのはDVDパッケージにあるような「戦争の狂気」ではなく「理性」(裁判員裁判風にいえば)「一般社会における常識」になるんだろうと思う。■「戦争の狂気でそうなった」というフレーズで逃げようとする主人公に「いや、これは狂気ではなく理性がそうしたんだ」と畳みかける結末。これが「あなたにも責任がある」と言われれば、「私には決定権はなかったわよ」で言い逃れられるが、「これは皆さんが狂ったわけではなく、極めて理性的に決めたのだ」という結末なので、多分誰も逃げられない。 [DVD(吹替)] 8点(2009-07-30 03:09:13) |
11. サラエボの花
《ネタバレ》 母さんの感情移入に勤しんでいたので、あんまり子供の方は見ていなかった・・・というかお母さんの気持ちを主観的に、子供の気持ちを客観的に描いたのは、お母さんの綱渡りのような気持ちと行動を描きたかったんじゃないのかなと・・。観客が子供の信条を詳しく知っていたら、「愛があるんだもの」で片づけられかねない浅い作品になったような気がする。母と子どもに微妙な隔たり、大きくなっていく溝・・・暴力が人間の大切な愛や絆、希望全てをぶち壊すものだという事が、逆に私はお母さん一点を見る事で表現を受け取れたと思う。最後に私は子供の信条を表現した少なくとも秀逸なものに、女の子の綺麗な髪の毛が切り取られた場面を挙げたいと思う。修学旅行の楽しいバスの中で、1人だけ髪の毛のない女の子。この姿がもう一つの民族浄化「アウシュヴィッツ」の姿を思い出した。レイプとはそういうものなのだ。平和な秩序世界に飛び地のように存在する真っ黒なアウシュヴィッツなのだ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-26 03:09:31) |
12. SWEET SIXTEEN
こういう山上憶良みたいな映画を見て思うのだが、「貧困が人間の心を破綻させる」なんて法則は間違っている。僕の経験上金持ちでいかにも「社会で成功してます」という背広姿の人間の方がよっぽど暴力的かつ依存的だ。僕なんかボンビーで野宿経験者で障害者で精神的に半分以上壊れているが、それなりに今の家族と楽しくやっている。富裕層のバロメーターで勝手に不幸だとか「何か本人に理由がある」とか言って絶望を煽る映画は僕は好きではない。 [ビデオ(字幕)] 3点(2008-11-02 00:16:06) |
13. パニッシャー(2004)
「殺人鬼、サディストは俺に気をつけろ」? あんたに言われたくない。 [地上波(吹替)] 6点(2008-02-29 23:00:01) |
14. ハリー・ポッターと秘密の部屋
ハリポタシリーズは全部見たが、面白いのはこれだけ。原作が長くなかったのと、続編だったため世界観をいちいち説明する手間が省けたのがよいのだろう。さらにジニーをはじめ、ウィズリーちゃんたち面々が良いキャラクターであり、それをさらった蛇野郎のいかれっぷり、何だか某合衆国時代もの映画でも似たような役をやっていたマルフォイパパの悪っぷり、わけのわからんナルシスト作家野郎など、面白い要素が調和していた。地下室のシーンも結構ドキドキしたぜ。ダンブルドアの最後の締めなども爽快感があり、魔法世界とエンターテイメント性が結構いい感じで融合して、「魔法の世界って一度行ってみたい」と思えるくらい楽しめた。 [DVD(吹替)] 8点(2008-01-31 00:44:21)(良:1票) |
15. パトリオット
妻投稿です・・・・。①「世界最強の軍隊に対して愛国者たちがゲリラ戦で勝負する」というプロット。②「人質を殺す」と脅して捕虜を釈放させる場面。③爆弾で停泊中の軍艦をドカン。④「文明国相手に何で正面から戦わないんだ」「正面から戦ったら負けるから」「他国に侵攻して罪もない女子供を殺すのをやめてほしい」というやりとり。⑤「息子よ、俺は昔イギリス軍と仲良く●●(残虐行為につき省略)や●●(食事がまずくなるので省略)を切り刻んで取り出して共通の敵軍隊に贈ったんだ」「でも今は仲が悪くなって敵同士になっちゃったんだ」というやりとり。⑥無実の農民の家を放火して子供を殺して長男を拉致するシーン・・・。思いっきりイギリス軍=今のアメリカ、大陸軍=今でいうア●●イダじゃないですか・・・。嘘だと思ったら、イギリス軍襲撃シーンにおいてジョン・ウィリアムズの音楽を、アルジャジーラに送られてくるテロの瞬間の映像のアラビア語のテーマソングに脳内変換してください。きっとそれほど剥離はしていないはずです。アメリカバンザイ映画にしては確信犯的だと思っていたら、主演のメルギブとヒースレはオーストラリア人、監督はドイツ人・・・。これはひょっとして「ビバ・アメリカ」と言いに映画館にきた観客に対する「アメリカの価値観がこれからも永遠に世界を支配できるとは思うなよ」という意地悪メッセージなのかとも思ったんですが、同じ監督の宇宙人やイグアナの映画を見る限りそれは考えられず・・・・多分私たちが豊臣秀吉や徳川家康の活躍および戦闘シーンを何度見ても楽しめるように、監督もアメリカの歴史と戦闘シーンを無邪気に撮りたかったんだろうな・・・・という事にしておきます。じゃあ、私は何が言いたかったのか・・・。それはお馬のダビちゃんが銃やサーベルを構える表情が、魔法のお城のアルピノパパが「アバダケパブラ」という表情に酷似していたことを言いたかったんです。とりあえず8点。 [地上波(吹替)] 8点(2008-01-28 19:59:18) |