1. メランコリア
《ネタバレ》 「ネタバレのイントロダクションなど不要!」と言いたいところですが、『100日後に死ぬワニ』方式の演出と捉えれば納得できます。何気ない日常も「まもなく地球が消滅する」枕詞が付けば別物に変わる。実際ジャスティンの態度は一般的なマリッジブルーの症状と何ら変わりなく、彼女が抱えていた「憂鬱」の正体を知らないままでは、詫びも寂びもあったものではありません。真実を見通せる能力を持つ彼女いわく、地球は宇宙で唯一生物が存在する惑星とのこと。我が身可愛さで嘆くような次元の話ではなく宇宙規模の大事件。「イチからゼロ」に変わる運命の瞬間が迫っているのだとしたら憂鬱度も一層増すというものです。とはいえ地球が消滅しようと自分だけが死のうと、自意識レベルの結末は同じ。たぶんジャスティンは「大して変わらない」と思い、クレアは「全く違う」と認識している気がします。人間らしいのはクレアの方。一方ジャスティンは「悟りの境地」とも言えますが、真実を誰とも共感し合えない孤独の先に行き着いた心境でもあり、どこか哀れに思えます。彼女が最後に考えたキャッチコピーが「無」というのも、さもありなん。 終末世界を描く映画の中では刺激度はかなり低めだったと思います。暴動や略奪、集団自殺なんて物騒な描写はありません。これは民衆に破滅が予告されていなかったせいです。もちろん天文学者がこの結末を予想できないはずがなく、各国政府が事実を隠蔽していたと推測されます。しかしこれは「嘘も方便」の類。こんな時に「知る権利」が発動していたら地獄絵図は不可避でした。唐突に、抗う術がないから救われる。それが「死」の本質という気がします。ここから尊厳死の意義について考えるのは飛躍し過ぎでしょうか。木の枝で組んだ魔法陣は気休めの象徴。大した覚悟も無く迎える最期というのも悪くないのでは。 私が今まで観てきたラース・フォン・トリアー監督作品の中では、最も「観易い」映画でした。鬱度はさほど高くありません。ただこの監督の場合、これが誉め言葉にはならないのがユニークなところ。貶しているつもりはありません。でも些か冗長だったとは思います。大監督が制約無く創った芸術作品とでも申しましょうか。歓迎すべきなのでしょうが、多少制限があった方が客観的に「良いもの」が出来たりして。「名作は2時間超が当たり前」の風潮ですが、2時間以内に収めてくれていたら8点でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-11-28 19:29:49) |
2. ボーダー 二つの世界
《ネタバレ》 (ネタバレあります。未見の皆様ご注意ください) 元ネタは、アンデルセン童話で有名なあのお話。テーマ及び帰結点についても大差ないと考えます。異なる種族の常識をアイデンティティに取り込んだが故に、主人公は“苦しんだ”訳ですが、“人として生きるには必要だった”のも間違いありません。さて、問題はこれから。自らの正体を知った彼女の生きる道は?もちろん同族のコミュニティで暮らすのが幸せに違いないでしょうが、どうやらかなり難しそう。これからも人間のコミュニティに依存して生きるのであれば、“歪んだアイデンティティ”だとしても彼女はそれに縋るより他ないでしょう。果たして彼女は、子のしっぽを引き千切るのでしょうか。『おおかみこどもの雨と雪』(あっまだ観ていないや)、『借りぐらしのアリエッティ』あたりと対比してみるのも面白いと思います。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-14 21:28:59) |
3. 湿地
《ネタバレ》 作品登録の際に知ったのですが、原作小説は「このミステリーが凄い」選出だそう。なるほど言われてみればそんな感じ。濃い人間模様あり。社会派の一面もあり。一筋縄ではいかない構成のトリッキーさも勿論あります。ほどほどに胸糞なところも、らしいなあと。ただし、観終えてみればストーリーは明快で、消化不良はありません。日本人にとっては、馴染みがない人名を覚えるのが一番厄介かもしれません。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-06-15 21:21:17) |
4. 獣は月夜に夢を見る
《ネタバレ》 DVDに収録されていた予告編には、トーマス・アルフレッドソン監督の『某作品』を彷彿させるとのコメントが。ああ、それ言っちゃうんだという感じ。おっしゃる通り、基本設定は『某作品』(後にヒットガールちゃんでリメイク)を連想せずにはいられないもの。言葉を選ばなければ二番煎じです。ただし、オリジナリティ云々を理由に低評価を付けるつもりはありません。そんな事言い出したら、ゾンビ映画なんてほとんどパクリですし。問題なのは尻切れトンボのような終わり方。彼女の素性は知れました。さあそこからどうするかって話が知りたいんです。確かに彼氏から意思表明らしき言葉は発せられました。でも行動が伴ってこそ初めて価値が生まれるのでは。ピロートークの「愛している」と、クロちゃんの「守るから」を信じられるほど、お人好しではないもので。寒々とした空気感はさすが北欧の映画。見慣れた米国製映画のそれとは違う新鮮味を感じましたが、ちょっと残念な仕立てでした。 [DVD(吹替)] 5点(2019-01-10 19:18:22) |
5. ニンフォマニアック Vol.2
《ネタバレ》 1+2合わせてきっちり4時間!延々と『好色一代女』のアブノーマルな性遍歴を見せられるワケですから、それはもうグッタリです(歳のせいかなあ苦笑)。でも、この“長さ”に価値があったと考えます。お経のような、あるいは校長先生の訓話のような。長過ぎるお話に集中力が続くはずもなく、エピソードは次第に耳を通り抜けていきます。そこで始まるのは自分自身への問い掛けでした。己が知識、経験、人生観と照らし合わせて、主人公の生き様に対する検証作業を行います(テンポの良いお話だとこんなコトしません)。ところが監督は意地が悪いとみえます。折角自分なりの解釈を導き出したと思ったら、終盤ご丁寧な解説が用意されていました。まるで「馬鹿なお前らに、ちゃんとお気に召す答えを用意してやったよ」と、心の内を見透かされたようで。その最たるものが、セリグマンの醜態という事になるのでしょう。自身の矮小さと、愚劣さを突きつけられて、気分が良いはずがありません。本当に監督は性格が悪いです。それでもジョーの子供が命を落とさなかった事、自らの尊厳のため彼女に銃の引き金を引かせた点は、監督の良心と捉えておきましょう。(以下余談)ラース・フォン・トリアー初体験が、果たして本作で良かったのかどうなのか。監督が相当のクセ者だという事だけは分かりました。他の映画も観てみたいですが、精神的に余裕がある時じゃないと無理そうですな。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2016-06-20 23:54:40) |
6. ニンフォマニアック Vol.1
そもそも前・後編に分ける必要があるのか疑問でしたが、1・2続けて観終えて意味が分かった気がします。本作も含めて感想は『2』で述べます。本作単独での評価はしかねますので採点放棄という意味の5点です。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2016-06-20 23:53:48) |