1. 審判(1963)
《ネタバレ》 カフカの意味不明(褒め言葉)な傑作小説をよくぞここまで映像化しましたよ。やっぱりウェルズは天才。 ストーリーはいきなり主人公が逮捕されるわ、次々と異様で不可解で意味不明でエロいナース服?姿の女の娘とチューだわウェルズが相変わらずデブ(ry とにかく不条理極まるカオスな映画だ。でもスゲー面白れえ。 ラスト・シーンはもっと謎だ。 文字通りドカーンとしたラスト。カフカはポカーンだろうぜ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-12-15 23:09:19) |
2. ネバーエンディング・ストーリー
《ネタバレ》 ガキの頃TVの再放送で夢中になって見てた映画だ。オープニングだけは今でもワクワクするね。ファルコンの背中に乗ってどこまでも飛んでいけたらな~なんて楽しく見たっけか。 ・・・ほんと、あの頃に戻りたい。 逃げ込んだ先で出会う不思議な本・その中の住人たち、読めば読むほど作品世界に飲まれていく魔法の本・・・。 終わりがないのが終わり・・・それが「ネバーエンディング・ストーリー」。 [DVD(字幕)] 8点(2014-12-15 21:55:22) |
3. オーソン・ウェルズのフェイク
《ネタバレ》 騙す事の楽しさ、騙される事の楽しさ。それが詰まった「フェイク(贋作)」。 細野不二彦の作品で「ギャラリーフェイク」という漫画があるが、90年代に描かれた漫画に先駆けて70年代にウェルズは「贋作」の醍醐味を映画で語っていたのだ。 ファーストシーンで手品を披露するウェルズ。この場面こそこの映画の全て。自ら「ペテン師」と称し、「嘘」を映像の中で「本物」にしていく作家としての、舞台俳優としての演目。 ファーストシーンが終わって1時間は、稀代の贋作家と稀代の偽作家のエピソードをインタビュー形式で淡々と語る。 やや退屈な1時間だが、ラジオ時代の「宇宙戦争」に関する面白いエピソードやピカソの情事は興味深い。 その後に訪れる17分間の「オヤ」のエピソード。今までの退屈さをなかった事にしてもいいくらい画面に吸い込まれる。どこまでが嘘でどこまでが真実か。 最後まで見ないと絶対に損をする映画です。 この映画のトリックはオープニングから既に始まっていた。 実在の美人モデル、贋作家、偽作家など様々な「フェイク」がインタビュー形式で出てくる。 そこから既に「騙し」が始まっていた。 歳を取っても若い頃の情熱は失わない。 最後まで少年の遊び心で映画を作り続けたウェルズのこだわりが感じられる。 それはラジオ時代の「宇宙戦争」の頃から変わっちゃいない。 白熱した実況で視聴者に「本当に宇宙人が攻めて来たのか!?」と騙くらかしたエピソード。後の猛抗議も、ウェルズにとっては「してやったり」。 映画デビュー作「市民ケーン」もそう。 実在の新聞王ウィリアム・ハーストの「偽物」チャールズ・フォーガスタ・ケーンを産みだした。 その偽物の新聞王を映画の中で「本物」にしていく面白さ。ケーンの壮絶な生き様が「本物」にした。確かに映画の中に生きていたのだから。 「黒い罠」はタイトル通り、観客を騙す「罠」。これも最後まで見ろないとアカン映画だね。 「オセロ」や「マクベス」は心理描写の騙し合い。自分自身すら「騙して」追い込んでいく人間の限界を魅せつける。 ともかく、この作品はウェルズのお遊び精神の結晶の一つ。 [DVD(字幕)] 8点(2014-12-07 20:25:05)(良:1票) |
4. 眼下の敵
《ネタバレ》 アメリカ、ドイツ両方の視点で描かれる潜水艦映画の傑作「眼下の敵」。 ロバート・ミッチャム演じる経験豊富な艦長は亡き妻のために意地でも潜水艦を叩きのめそうとしている。 一方、クルト・ユルゲンス演じる潜水艦の艦長もまた亡き息子達のために死に場所を求めてさまよう。 潜水艦の機雷が爆発するシーンの迫力、緻密な計算で魚雷を避けるシーン、“音をたててはいけない”シーンの緊迫感など100分弱のコンパクトさも手伝い並々ならぬ密度を持っている。 駆逐艦の名通りに徹底的に叩こうとするシーンは怖い。一方、潜水艦は酸素との戦いもあり時間的余裕はない。 計器が割れるほどの衝撃が襲う恐怖。 その恐怖を“歌”によって克服しようとするシーンが熱い。 “一騎打ち”だ!死なばもろとも、死ぬのは俺一人でいい、壮絶なクライマックスと敬礼、敵味方を超えて結ばれる友情。面白い。 [DVD(字幕)] 9点(2014-12-01 18:05:27) |
5. ダウン・バイ・ロー
《ネタバレ》 ジム・ジャームッシュによる愉快な刑務所&ロードムービー。 ジャームッシュの最高傑作はコレだろうねえ。 歌を歌うように淀みのない会話で人と人とが繋がっていく楽しさ。 デコボコだった3人の男たちが、会話や音楽によって「親しい兄弟のような間柄」になっていく映画だ。 こういうセリフが多い映画は、速さが足りない字幕なんぞで愉しみきれない。 戸田奈津子のカスみたいな字幕で楽しめるワケねえだろうがあっ!! 原語だけで愉しむのが一番だ。 まあ、そんな事はどうだっていいんだ。 この映画は、軽快な音楽と共に郊外の自然や市街地を移動撮影で映していく場面から始まる。 男と女が熱く愛を語っていた筈のベッドは冷たくなり、女に愛想を尽かされた男達は家を出て行く。 「あんたの音は聞き飽きたの」とばかりに散乱するレコードの破片、破片、破片。 外の町だってゴミだらけ。 銃を背中に向け「撃つわよ」と弾を込める音をわざわざ聞かせる女、それを「君になら撃たれても良い」とばかりに黙って立ち尽くす男。 男は背中で語る。こういうシーンが大好きです。 白いベッドに横たわる黒い女の裸体がエロい。布団を優しくかける紳士すら捨てられていく。 ジャックとザックは女に捨てられるわ罠に嵌められるわ仕舞いにゃブタ箱。 独房の壁のザラザラした音が耳障り。あの感触を想像するだけで胸が痛くなる。 だが、そのブタ箱で思わぬ出会いをする3人目の男ロベルト。 この男が衝突する2人の間を取り持ち、潤滑油のように友情を深めてしまう。 喧嘩するほど仲が良い。 ジャックとザックの殴り合うような掛け合いだけでも面白いが、そこにロベルトが加わる事でアンサンブルはより楽しくなる。 3人の合唱は独房全体に響き渡り、警官の警棒がフィナーレを締めくくる。最高に楽しい場面だった。 独房の中心でアイ(スクリーム)を叫ぶ(スクリーム)。 ロベルトは壁に“窓”を書いて「ここから出ちまおうぜ」と言ってのける。 本当に出ちまうんだから面白い。 逃亡という名の森林散策。 船で沼地を進む3人ををロングショットで捉えたシーンの幻想的なこと。 ウサギの丸焼きは美味そうだ。 飯喰って仲直り。 道の一軒屋で3人を持て成してくれた奥さんがキレイな人でねえ。 ロベルトもまた恋に出会う。 やがて別れていく3人だが、分かれ道でのやり取りの何と粋な事。 「おまえが左なら俺は右よお」 [DVD(字幕)] 9点(2014-11-07 16:47:30)(良:1票) |
6. ファニーとアレクサンデル
《ネタバレ》 この映画は、愛のドラマでもあるし「狼の時刻」のようなホラーでもある。 水の激しい流れで各章は始まる。 まるで人生が流れるように、2年かけて一つの家族のドラマを群像劇風に描いていく。 プロローグのアレクサンデルの幻視体験と一人舞台に始まり、聖夜(性夜)の祭り、家族の死、家族の再婚、新しい生活とアレクの受難、主教の苦悩とアレクの悪夢、そしてエピローグの新しい命の誕生。 冒頭のアレクが見る幻。動くはずのないものが動く恐怖、死神が予告する死の恐怖。 愛情をまんべんなく注く父親や母親。 子供達に文字通り“臭い”ジョークを飛ばして愉しませる。オナラでろうそくを消すシーンは爆笑。 愛情が注がれた子供達は、メイドと枕を炸裂させて聖夜を楽しんでいる。 うら若き母親と中年気味の父親もベッドを粉砕するほど性夜を(ry そんな楽しき夜も、父親はもっと身近に家族達といたいと嘆く。まさか不幸な形で彼の望みが現実になるとは。 父親の代わりとして現れる、悪魔の様な主教がアレクを苦しめていく事になる。 母親は子供達を養うために止む無く再婚を選ぶ。 主教も厳しく子供達にあたるが、それも新しい父親として子供達を立派に育てようとする想いが空回りしているのかも知れない。 舞台の装いを止めさせたのも、父の死という辛い記憶から残された人々を解放しようとしての事だったのかも。 だが、アレクは憎悪を抱いてしまう。 冒頭の動くだけの人形は、人の化身となってアレクの話し相手となる。 亡き父親もその一人として彼を見守る。アレクは未だに前の父親が忘れられない。 それはアレクの寂しさ故だ。妹のファニーがいるだけじゃ寂しさは収まらない。ただ家族の愛に飢えている。 しかし、見守るだけで彼を直接助けようとはしない。 「いるだけならさっさと成仏しちまえよっ!」とばかりにブチ切れるアレク。 主教の家を焼いた業火は亡霊が放ったのか。それとも単なる偶然なのか。それは解らない。 アレクは自分のした事を悔やむ。本当に祈った事は、こんな事じゃなかった。ただ暖かい愛が欲しいだけだったのに・・・。 クライマックスは、新しい命の誕生、主教とアレクが“再会”するシーンで締めくくられる。 [DVD(字幕)] 9点(2014-11-07 00:49:12) |
7. ストーカー(1979)
《ネタバレ》 2時間45分という長さは、全2部構成として1つずつ別けて見ればどうという事はない(と思う)。 「惑星ソラリス」に続くSF映画だが、この映画は冒頭のウォーレス博士の短い言葉が字幕で語られ、ストーカーたちが追う「ゾーン」と呼ばれる空間だけがかろうじてSFの機能を果たす。ここでの“SF”は、完全に要素の一つとして使われるのみ。 いや、もっと言えば身近な科学…例えばこの映画では原発の描写を暗示または予兆している。 タルコフスキーの映画はこの作品から難解と言われるようになるが、俺にはこれほど解り易い映画も無いと思う。 確かに途中の劇中会話は謎も多いが、大筋は“願いがかなう場所に旅人を案内するハンター”の話だ。 長セリフで少し退屈する時もある(意味不明だし)が、あの長回しの映像は見ていて何故か飽きない。 電車の振動が「ボレロ」のように幾重にも響くこの映画は、ストーカーという運び屋がとある酒場に入る場面から始まる。酒場には物理学者が二人。彼らは興味本位・欲望の赴くままストーカーに身を預ける。 だが「ゾーン」に入ればありとあらゆる願いが叶うと信じられていた。人々はその願いのために命懸けでストーカーと共に冒険へと出る。 冒頭から夥しく飛び込む水と光のイメージは、湿地帯の静かさを除けばところどころ人間の欲望で穢れてしまった空間ばかり。 ストーカーはあの空間に安らぎを見出しているが、旅人には危険な「パンドラの箱」でもある。 部屋で揉める旅人と運び屋の取っ組み合いを不気味に静観するように“待ち続ける”「ゾーン」。「ゾーン」は拒む事も手招きもしない。ただ彼らが部屋に入るのを待つだけでいい。 旅人たちは己との戦いの果てに答えを出す。 ストーカーも以前は同じ旅人の一人だったのかも知れない。 だが、彼は過去の出来事で同じ旅人が部屋に入った結末を知ってしまっている。 だからストーカーは運び屋であり、傍観者になる事を決めた筈だった。その傍観者が旅人から「ゾーン」を守るために己の“欲望”を優先して傍観者を止める。ストーカーもまた作家になじられる旅人でしかなかったのだ。 ストーカーは絶望を口にするが、彼はその絶望を何度となく味わうであろう宿命にある。 その宿命は、その妻や娘をも狂わせていくのだろう。ストーカーの家族が旅人にならないという保障は何処にもないのだから。 [DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 01:02:09)(良:1票) |
8. 暗殺の森
《ネタバレ》 ベルトルッチ初期の傑作。人によっては「ラスト・エンペラー」ではなくこの作品がベルトルッチの最高傑作だという人もいるそうだ。確かにそれほどの作品なのだろう。俺は最後まで余り好きになれなかったが。 第二次大戦前夜のイタリア。 主人公のマルチェロはファシスト組織の一員として暗殺の任務をこなす日々を送るが、幼き日のトラウマと優柔不断な性格で冷徹な殺し屋に成りきれずにいた。 まあ、殺しを部下に任せている事・銃もまともに撃てないなんて随分「中途半端」な殺し屋だ。 新妻となるアンナはマルチェロの裏仕事を知らない。 マルチェロも何処かファシストから足を洗いたさそうな表情を見せる。殺し屋一筋のマンガニエーロはそんなマルチェロをため息をもらしつつ護衛する。 マルチェロを励ます(?)マンガニエーロの姿はちょっと応援してしまう。 当の本人は殺しよりも魅力的な人妻にメロメロだ。いや夢中なフリと言うべきか。いや本当に惚れていたのかも。 母親の情夫、恩師の人妻・・・まったく嫌な事件だったぜ。やるせない。 車の中から“あの人”を見つめる姿なんてもう・・・ね・・・。 マルチェロが見た「アイツ」はソックリさんか本物か。それは解らない。 戦争によって狂い、戦争によって心を“抹殺”されていったマルチェロは今後どのような人生を歩むのか。そんな事を思うラストだった。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-20 23:12:24)(良:1票) |
9. さよなら子供たち
《ネタバレ》 ルイ・マルの自伝的要素がこもった傑作。 この映画は、銃弾を1発も撃つことなく戦争の悲劇を伝える。 電車、駅、別れの挨拶を交わす母と子。クリスマス休暇を終えて寄宿学校に戻っていく子供の姿から、この映画は始まる。 学校では、人々の合唱が校内を包む。 寝静まる前のベッド、子供たちは新しい生徒への“挨拶”も忘れない。 窓の外で睨みを効かす軍人が、戦争を静かに物語る。 竹馬での遊び、空襲警報が続く中も防空壕で勉強を続ける熱心な教師。爆撃音が遠くで響く様子が怖い。 ピアノのレッスンでは、美しい女性が優しく教えてくれる。 空襲が続こうとも、ピアノの音色は度々響き渡る。 時々出入りする若い軍人たちもまた、寄宿生と年齢が少ししか違わない“子供”たちでもあるのだ。 森の中でのおにごっこは、まるで戦場を行くように描写される。今軍人として殺しあっている兵士もまた、彼らの様に遊びまわる子供時代があっただろう。 フランソワ・トリュフォーの「あこがれ」でも、そんな事をふと思ってしまうシーンがあった。 おにごっこの果て、洞窟の中に隠された探し物。 不安定な足場、徐々に暗くなる空の色が不安を煽る。 仲間と再会し一安心したのも束の間、薄暗い森の中には猪以上の獣も潜んでいるだろう。 そんな獣のように眼光を光らせる軍人に助けられるシーンは面白い。 食事の席で軍人たちが交わすやり取りが怖い。戦争はまだ終わらない。 劇中で流される「チャップリンの移民」でゲラゲラ笑う子供たち。俺もついツラれて笑ってしまう。 ピアノのカップルも口付けを交わす。 少年たちは戦争もなんのそので友情を深めていたが、その平和な日々は突然終わりを迎えてしまう。 ユダヤ人というだけで“別れ”なければならない悲しさ。 神父たちが「さよなら子供たち」と言い、壁の向こうに消えていくシーンが忘れられない。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-20 19:48:29) |
10. ヴォイツェク
《ネタバレ》 キンスキーの演技力の凄まじさをより味わう作品。 一兵卒に徹するキンスキーは、いつもの野獣のような獰猛さがこの作品には無い。 上官に踏みつけられるキンスキー。それでも彼は反抗しない。 あろうことかマッドサイエンティストのような軍医の実験材料にまでなって“小銭稼ぎ”だ。 ヴォイツェクは散々だ。それでも、この男はひたすら耐えて耐えて耐える。 その怒りを耐えているキンスキーの表情が凄い。 上官、軍医も、みんな噛み合わない意味不明なやり取りを繰り返している。 そんな彼らを、ヴォイツェクは人間の本質をツクように語る。 一見何の抵抗もしない、頭も空っぽではないのかという彼がだ。物事の考えを上手く表現する学もない、聞いてくれる友達もいない。 それを口に出せない苛立ちが積もり続ける。 そんあヴォイツェクの心を唯一和ませてくれる愛人のマリーと子供。 ヴォイツェクの笑顔がそれを語ってくれる。 マリーもまた、鏡に映る自分を見て残念そうなため息を付く。 それでもヴォイツェクを襲う悲劇。 堪忍袋も限界、ブチ切れたヴォイツェクはダムが決壊するように、獣が理性を失うように“ブッ壊れる”・・・! [DVD(字幕)] 9点(2014-05-18 15:30:30) |
11. シュトロツェクの不思議な旅
《ネタバレ》 ヘルツォーク最高傑作の一つ。 夢を求めてベルリンからアメリカに渡ってきたシュトロツェク。彼は刑務所から希望へ向って突き進む。娼婦のエーファーや老人のシャイツという仲間と共に。 懸命に働き、ローンを組み、とにかく死ぬほど努力を重ねた。 だが現実は余りに厳しかった。ローンを払いきれず差し押さえられ、エーファーまでもが去ってしまう。 追い詰められた二人は強盗になり、再び刑務所にブチ込まれる危険性をおかす。 シュトロツェクに再び犯罪をおかさせてしまうほど彼を追い込んだ社会の現実。後味の悪い映画だが、人々の「どうしてそうなってしまったんだ」という虚しさとやるせなさに溢れた作品。 [DVD(字幕)] 9点(2014-05-18 15:00:42) |
12. 夕陽のガンマン
《ネタバレ》 マカロニウエスタンが邪道だなんて知った風な事をほざく奴らは、「真昼の決闘」のように西部劇の常識を溝に捨て、プロ意識の欠如した作品こそ真の邪道だという事に気付いていない。 西部劇は、「大列車強盗」の頃から銃をブッ放して当たり前の筈だ。 しみったれた詩情や、湿っぽい西部劇などツマランだけだ。 レオーネは最高だよ。 ホークス、デミル、アルドリッチのように「グダグダ言ってねえで撃って撃って撃ちまくりやがれ」という精神だから良い。 むしろ凄惨な殺し合いの合間合間で光る一瞬のドラマの方が俺は惹かれる。 「ウエスタン」は自分にはちょいと退屈だったが、この頃のレオーネはただただカッコ良い。 「続・夕陽のガンマン」も間延びした感じでちと退屈なのだが「喋ってないで撃てよ」という神セリフを聞く度に全てを許してしまう。 大体、帽子を撃ち合うだけであそこまで楽しませてくれるんだから最高だ。 リー・ヴァ・ンクリーフが鞄をガパッと開いて大量の銃器を観客に印象付ける場面も良い。 大量の仏をリアカーに積み上げて「金がたんまり入るぜ」ってシュールな絵面が素晴らしい。この死生観のあやふやな感じが良い。 死んで終わりではなく、死後も“役”が与えられるのが良いじゃないですか。 銃声がデけえ?何言ってやがる、「シェーン」なんか爆撃音じゃねえか!! モリコーネの曲は何度聞いても気持ちが良いね。 [DVD(字幕)] 9点(2014-04-07 19:59:22)(良:1票) |
13. 追想(1975)
《ネタバレ》 これは、甘ったるい幻想をを打ち砕くような映画だ。 第二次大戦中に実際に起きた虐殺事件をモデルにしているが、現実は誰一人「殺人者」を裁こうともしなかった。 それに対するロベール・アンリコの憂さ晴らしと見るか、戦争の悲惨さを物語として語る純粋なドラマと見るか。 疎開させ、安全だと信じていた場所で惨たらしく殺された妻子。 男は「命を救う」という医者の義務を捨ててまで、復讐心で胸を埋め尽くす。妻子の亡骸が男を復讐へと動かす。 古城はかつて男が「庭」として遊んでいたいわば「遊び場」。奴らを逃せば地の利もなくなる。 「死んだ命はもう戻って来ない。せめてアイツらだけは殺してやりたい!!」 男は淡々と「殺人者」たちを城に閉じ込める。 水に沈めて皆殺しだ。火炎放射器でドロドロに溶ける鏡、女を焼いた火で自分が焼かれる感じはどうなのだろうか。 絶えず男の脳裏によぎる過去の美しき記憶。死んだ者はもう戻らない・・・。 [DVD(字幕)] 9点(2014-04-02 19:31:09) |
14. パリ、テキサス
ヴィム・ヴェンダースはドイツ時代に「さすらい」や「都会のアリス」といった傑作を幾つか撮っているが、アメリカでもこのような素晴らしい作品を残してくれた。 砂漠を放浪していた謎の男トラヴィス。 ファーストシーンがいきなり砂漠。そこを男がフラフラ彷徨っている。こういうオープニング大好きだ。今から何が始まるのか無性にワクワクしてしまう。 バックミラーと車道の対比も面白い。こういう一画面で二つの場面を交差させる構成、たまらない。この映画はバックミラーのシーンみたいに色んな対比が出てくる。 彼は何故砂漠を放浪していたのか?そして何者なのか?それを少しずつ紐解いていく。トラヴィスは探しものを見つけるために旅を続けているという。 彼は唯一残っていた名刺に誘われ家族の元へ戻っていく。 妻を持った弟、その“息子”とのささやかな団欒。“息子”とは最初距離があったが、トラヴィスと過ごす日々は彼を得体の知れない男から大切な家族へと変えていく。 そして“息子”とトラヴィスの空白を埋める8mmフィルム。 無粋な言葉はいらない、ただ心で触れ合った思い出さえ取り戻せれば良いのだから・。会いたいという気持ち、会うべきなのかと葛藤するトラヴィス。 だが彼も男だ。“息子”のためにもトラヴィスは探しものを見つけに行く。そんなトラヴィスも、とうとう探しものを見つけ出す。 窓越しの再会、8mmフィルムに収められた想い出、100万の言葉にも勝る包容・・・トラヴィスは、またあてのない荒野へと戻っていく。 でも、こに寂しさは感じられない。何故なら彼の心はもう“一人”ではないのだから・・・良い映画です。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-17 07:44:09)(良:1票) |
15. 戦争のはらわた
《ネタバレ》 「完全版」の出来が満足(10)点だったので、コッチはほぼ満足(9)点を付けておく。 「ワイルドバンチ」は執拗なスローモーション&クローズアップ演出で反吐が出る映画だったが、本作はそれを極力抑えたことで見事な傑作となった。 「昼下がりの決斗」と共にペキンパーを見直した映画。 リアルな戦場と言えばルイス・マイルストンの「西部戦線異状なし」もあるが、どちらかと言えば俺は「戦争のはらわた」を選ぶ。 第二次世界大戦の東部戦線を舞台としたこの映画は、ウィリー・ハインリッヒの原作「Willing Flesh」を元に映画化。 オープニングの子供の童謡をバッグにした戦争資料のような映像、 そして冒頭のシュタイナー小隊の華々しい活躍。 死と破壊に満ちた戦場、その下に拡がる塹壕の中に溢れる人間の温もり・・・やがてそれも消えていく。 シュタイナーが助けたロシア人捕虜の少年が良い例だ。 アンドレイ・タルコフスキー監督の「僕の村は戦場だった」を思い出すその子供。 死が待つだけの戦場で生まれる言語を超えた友情・・・それすらも打ち砕かれていく。 兵士は国の道具なのか? 一人の人間なのか? そんな様を死が飛び交う戦場、ドイツ軍の一部隊の視点で描いていく。 勲章一つのために多くの人間が死んでいく。 「こんな物」のために・・・主人公はそれに気付いてしまったのだ。 そして戦うことの意味を求めて苦悩と葛藤を繰り返す。 上司であるシュトランスキーとの闘争。 内も外も疑心暗鬼で敵だらけ。 取り返しのつかない死があるとも知らずに彼らは争う。 そんな男たちも、いざ死ぬとなると人間としての尊厳を取り戻す。 シュタイナーも、ブランド大佐も、シュトランスキーも輝きに満ちた顔で戦場に飛び出していった。 彼らの最期は解らないが、そこには命懸けで戦った人々の物語が強く刻まれている。 シュタイナーが笑ったのはシュトランスキーの滑稽さか、戦争そのものの滑稽さか。 その答えはシュタイナーだけが知っている。 [DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:23:42) |
16. 続・夕陽のガンマン/地獄の決斗
《ネタバレ》 本作「The Good, the Bad and the Ugly 」の主題は善玉、悪玉、卑劣漢。 え? 善玉? そんな奴この映画にいねーよ。とてもセンスのあるジョークだわ。 「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗」の名でも知られる本作。 エンニオ・モリコーネの最高の音楽、前半のスピーディーな展開は前作よりも好きだ。 最初10分、会話がほとんど無いのに見るものを惹きつける面白さ。 主人公ブロンディ(イーストウッド)が捕まる場面だって仲間通しのイザコザという感じで違和感はあまり無い。 前作で味方だったエンジェルが敵として立ちはだかるのも面白い。 相変わらず同じような格好のイーストウッドもまた。 トゥーコ(イーライ・ウォラック)が銃をバラしたり組んだりして試し撃ちをするシーンはマニアをくすぐる面白い場面。 南北戦争時代の銃器のこだわり振り。この時代考証は完璧だね。 とにかくイーライ・ウォラックの悪どいキャラクターが最高だった。 見た目は太めのオッサン、中身がガッチリ凄腕のガンマン。 悪党だと思ったら意外と人に優しかったりする。 最初は金が目的だったが、次第に情が芽生える場面は熱い。 そしてまた逃げられ「バカヤロ~!」素晴らしい腐れ縁。 ただ,中盤の長回しのシーンが長いこと長いこと。 トゥーコが駅馬車を発見しなかったら俺も寝るとこだった(「アラビアのロレンス」もそれで寝そうになった)。 でも、そこからのドラマ展開が面白い。 ブロンディは情報を知っているから殺されない、トゥーコは金が欲しいから殺せない。 二人が南軍や北軍に潜り込んでアレコレ騒ぎを起こす場面は面白かった。 脱線だけど良い脱線。 敵となったり味方となったりするデコボココンビなブロンディとトゥーコのやり取りは見ていて楽しい。 最高だったのが風呂場での銃撃。 「喋ってないで撃たなきゃ」。聞いてるか007の馬鹿な殺し屋ども(それが007の魅力です)。 ラストの決闘がこれまた長い長いなっげー。 モリコーネの音楽が最高すぎて笑ってしまったのは俺だけじゃ無いだろう?・・・多分。 [DVD(字幕)] 9点(2014-01-30 10:44:44)(良:1票) |
17. メトロポリス 完全復元版(1926)
フリッツ・ラングは「M(エム)」、それにアメリカ時代の「ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ」や「激怒」「スカーレット・ストリート」いった作品の方が完成度が高いが、今回「メトロポリス」の完全版を見た上で大満足な出来だったのでレビューしたい。 フリッツ・ラングが当時のアメリカの摩天楼に衝撃を受け、妻のテア・フォン・ハルボウと共に熱狂しながら構想した「メトロポリス」。 完全版ではヨシワラにおける人間達の欲望が弾ける様子、フレーダーセンの部下がヨザフォートに迫るサスペンス、アンドロイドマリアのダンスシーンの一部などなど重要な部分が修復されている。修復部分の痛みは激しいが、今まで欠けていた部分が補われた事でより、いや本来の魅力を存分に愉しめるようになったのである。 今日では散逸したフィルムも補完されて「完全版」として楽しむ事が出来るようになったが、それまでの80年を生きてきた人にとってはどれほど長い道のりだったか・・・。 そしてそのフィルムを含めて、今日まで作品を守ってきた人々は、もっともっと評価されなければならない。 ここに感謝の意を評したい。 ありがとう・・・! [DVD(字幕)] 9点(2013-12-15 11:41:50) |