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1.  太陽(2005) 《ネタバレ》 
イッセーさんてなんて勇気のある人なんだろう。ただただ感嘆するばかりです。まさかロシア人監督が描く昭和天皇の映画で、まさにその昭和天皇の役を演じるなんて!しかもその描写と行ったら、もう。僕の見方は間違っているのかもしれません。でも僕にはそうとしか見えなかった。この映画で描かれているのは多分、その器もないのに神と等しい位置にまで祭り上げられてしまった一人の哀れな男の姿です。そしてこの、本来もの静かで知性も備えた、現人神でいるにはあまりにも我の強くない男はその重荷に耐えきれずに半ば精神に変調をきたしかけています。僕は観てて本当に戦慄が走りました。”これじゃイッセーさん右翼に殺されちゃう!”て本気で思いました。特にマッカーサー登場までは。この内容を徹頭徹尾リアルな映画として撮ってしまったとしたらほんとに政治問題や国際問題になりかねないな、って思いました。ところがこの映画はそんな愚をおかすことは決してしないで、美しくもグロテスクなイメージを重ねつつ、あくまでファンタジィの側で踏みとどまります。これは現実の皇居で起きた現実のことではない。どこか観ている僕らにはその確信がある。その上でこそあのイッセーさんのすばらしいお芝居が輝きます。その緻密さ。連合軍のジープに乗せられて去ってゆく現人神の庭には丹頂鶴が憩うている!しびれます。太陽と崇められた男の心はしかし崩壊の手前で踏みとどまります。そして月光の下で一人の小さな人間としての悲しい再出発を決意する。この先の人生が苦い苦いものになるであろう予感を含んで。やがて太陽は昇る。今日もゆっくりと。
[DVD(字幕)] 8点(2007-05-30 03:56:16)(良:1票)
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