2. すずめの戸締まり
《ネタバレ》 相変わらず絵は綺麗。 キラキラ夜空もちゃんと出てくるし、新海エフェクトのかかった夕日がちなシーン、都会の建物の林立具合も美しいし、東京都を見下ろしたような緻密な描画も登場する。 美しく緻密に描かれた自然や都会の中で登場人物たちが躍動し、人外の大いなる存在が荒ぶる壮大な姿を映画館の大音響とともに観てしまうと、大迫力に押されてそれだけで涙が出てしまう...。 ただ、他のレビュアーも書いているように、引っかかる点も多かった。 - 要石になること=体が凍ること。これは凍るのではなく、石英として結晶化していく描写だったのか? - 要石の化身が動物なのはいいが、グッズ展開を見込んだようなファンシーで目の大きいネコである必然性は... - 細腕の女子高生にあの懸垂は無理がある。新海誠は筋トレを経験すべき。 - 地鎮、荒ぶる神、神の人情味のなさ...もののけ姫? - みみずが殲滅されるときは全身モコモコに膨らんで虹色に破裂する。エヴァ? - 椅子...ピクサー映画を見ているようだった これらが対して何を暗喩しているのか、掘り下げた先に果たして奥行きはあるのかが自信を持って感じられず、鑑賞中引っかかり続けた。 - そして愛が全てを解決する、世界を救う、ヒーロー譚…。ハリウッドや昔のトレンディドラマのような既視感... - オープンカーのルーフの故障、などなど 震災を風化させないというテーマ自体はチャレンジングでリスペクトするし、2時間退屈せずに見れたし、傷ついた魂の救済や異なる世界線と時空の交差が描かれているところは他の新海誠作品同様に私の琴線をボロンボロンかき鳴らしてくるので、そこは大いによかった。叔母さんの善意の代償について辛辣な心情を吐露するシーンも現代の心情に寄り添っていてとてもよかった (たまきさんにはその後、みのるさんと幸せになる将来が待っていてほしい)。 だけど、先述の設定の恣意性がもうちょっとなんとかなったのではという思いが残り、この点数とさせてもらった。 本当は震災、人知を超えた不条理さとそれでも生きていく、生きていかねばならない人間たちそのものを描くつもりが、大人の事情でネコやイケメン、ラブロマンスを捩じ込まざるを得なかったのか?私の掘り下げが足りないのかも知れないし、そもそもが文芸性よりもエンタメ性に振っていて、前提とする視点が異なるのかも知れない。 どこかの機会で再鑑賞したい。 [映画館(邦画)] 6点(2023-01-15 00:01:06) |