1. PERFECT DAYS
《ネタバレ》 小津安二郎を敬愛し、生前の出演俳優のドキュメンタリーを撮ったこともあるヴェンダース初の邦画作品。 平坦なトーンで劇的な展開がないのに飽きずに見せる。 築50年近くの安アパートから一日が始まり、公衆トイレの清掃員としてルーティンワークをこなし、 ささやかなことに喜びと幸せを見出していた寡黙で孤独な男が、 姪の来訪と少しずつ近づく終焉の数々に、その"満ち足りた日々"が崩れていく不安を感じ始める。 彼の過去に何があったのかは分からない。 公衆トイレの設備にきめ細やかな手入れを行うプロとしての誇りとストイックさに敬意を覚えるくらいであり、 自由を謳歌している浮浪者に慈しみを感じながらも、実は過去に向き合えず逃げ続けていただけなのか。 彼の穏やかで急ぎすぎない生き方に憧れても、どこかで「本当にそれで良いのか?」という疑問を抱く。 充実しながらも後悔しているような、達観もしているような心の機微を役所広司が体現する。 人生に上下はないかもしれない、間違いのない選択肢などないかもしれない。 見えていないだけで主人公のような人生を送っている人たちが近くにどこかしらにいるのだろう。 せめてやりたくない末端の仕事を誰かがしていることに感謝の気持ちを持ちたい。 [映画館(邦画)] 8点(2023-12-29 00:41:05) |
2. パプリカ(2006)
《ネタバレ》 気持ち悪くて気持ちいい。 リアル系のキャラクターデザインにどこか違和感が混ざり合うように、 夢と現実との境目がなくなって、混沌が肥大化していくさまが面白くアニメでしか表現できない。 夢は言語化できないもので、その願望がまとまらないからこそ、具現化するためにもがく姿が現実とリンクする。 敦子が時田を救うために、理想の自分であるパプリカから独立して現実を勝ち取るように。 ハリウッドにも影響を与え、細田や新海を超えるだろう監督の早世が惜しまれる。 [地上波(邦画)] 8点(2022-02-09 13:45:02)(良:1票) |
3. バトル・ロワイアルⅡ 鎮魂歌
《ネタバレ》 劇場で見なければ良かったと後悔している。深作欣二の遺作でその息子の力量が未知数である分、微かな期待はあったが、やはり親の七光りだった。前作以上に惨すぎる生徒の扱いに、対テロリストのチーム戦になったからか、理不尽さが減って代わりに臭すぎるメッセージ性が前面に押し出される始末。『プライベート・ライアン』の劣化コピーに過ぎず、コントにしか見えない展開の数々、ただ銃撃と爆発さえあれば迫力があると勘違いしている虚しいアクションシーン、寒すぎる主題歌にはただただ引くばかり。自分の仲間殺されたのに、テロリストに肩入れする生存者も如何なものかと。早い話、何が言いたいのかよく分からなかった。 [映画館(邦画)] 1点(2016-02-23 20:49:39) |
4. バトル・ロワイアル
原作は大長編で、コミカライズ版しか読んだことがないが、2時間で収めるには厳しい内容。極限状態に置かれた生徒たちの人間模様がメインなのに、映画はカットされまくりで、ただ殺し合いをしているだけだった。そのため、くどいメッセージ性が空回り。せめて前後に分けて製作しないと。アクション演出に迫力あり。殺し合いゲームの残酷さと理不尽さが伝わってくる分、後に作られたハリウッド映画の『ハンガー・ゲーム』と比べても遥かにマシだろう。 [DVD(邦画)] 4点(2016-02-23 20:46:48) |
5. バケモノの子
《ネタバレ》 エンターテイメントのツボをしっかり押さえているし、退屈はしないけれど、前半のトーンを貫いて欲しかった。いろいろ詰め込んでいる割に、終盤の展開がジブリみたいに抽象化して、こじんまりになってしまった。混乱を止めるためにバケモノ達を渋谷で大暴れさせるとか、なぜそれをしないのだろう。宮崎駿からの世代交代でプレッシャーは相当なものかもしれないが、時かけみたいに初心に帰って、数人で脚本を書く体制に戻さないと、難解で内省的になったジブリと同じ轍を踏む羽目になるだろう。 [映画館(邦画)] 6点(2015-08-08 01:18:47) |
6. ハウルの動く城
《ネタバレ》 原作既読。"ハウル"と言ったら、宮崎アニメのことを思い出してしまうくらい、悪い意味で原作との剥離が激しい。後半からオリジナル展開でも面白いならまだしも、老人介護や疑似家族、戦争をクローズアップしながらも崇高だと煙に巻いて、無理矢理大団円にしてしまう無責任さだけが残った。躍動感あふれる演出と音楽の相乗効果が素晴らしいだけに大幅減点は避けられない。話題性だけで倍賞とキムタクを利用する意味はあったのか? [DVD(邦画)] 4点(2015-06-30 19:18:49) |
7. パッチギ!
《ネタバレ》 別に良いんじゃないでしょうか? 偏った政治的要素を前面に押し出そうが、大衆が自分の価値観を信じて、彼らに歩み寄りたいのなら肯定も否定もしない。今やヘイトスピーチが問題になっているが、グローバル化が避けられない以上、大衆が多民族との共生を望むのであれば、この結末のように個人レベルから仲良くなれば良い。それはともかくとして、娯楽として見るなら、自分には政治的云々以前に合わない。役者のパワーがあっても、暴力シーンを無意味に強調させるのは如何なものかと。描くにしても最低限留めてくれるならまだ見れた。つまるところ、偶然脚本が良かっただけで監督のセンスがなかったということ。俳優陣の熱演に+1点で5点が限界。 [地上波(邦画)] 5点(2015-01-02 18:06:54) |