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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1249
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1.  パンダ・コパンダ 雨ふりサーカスの巻 《ネタバレ》 
時間が短いので前作に続けて見た。新作なので新キャラを出さなくては済まないらしく、今回はサーカスを呼んで他の動物の出番も作ってある。ママ友同士でなめ合うのは悪くなかったが、自宅のネコとはやらない方が無難である。 ある程度の知能を持った(言葉を話す)生物をサーカスで使役するのでは、奴隷労働のような印象が出てしまうのでまずいことになる(というか家内労働のイメージか)。トラの子が人の言葉を解するのに母親が話さなかったのは、やはりケモノであるから檻に閉じ込めるのも自然と見せる都合があったからか。あるいは「魔女の宅急便」(1989)での魔女さんと黒ネコの関係のようなものかとも思ったが、それにしても前作の状況とは矛盾することになる。 そのように基本設定がいい加減な上に、いつまで経っても祖母が帰って来ないというのも限界があり、さすがにこの延長上でシリーズ化するのも厳しかったかも知れない。また今回はクライマックス部分が単純に笑っていられない状況で(大惨事の予感)、ラストにもそれほど意外性がなく、最後になんでみんなが盛り上がっているのかも納得できなかった。  なお今回目についたのは、家の周辺一帯を海のようにしてしまう非日常の演出であり、これは後の「千と千尋の神隠し」(2001)などの先駆けかとも思った。水の透明度が高く、水中から家と空を見上げる場面は当時としては斬新だったのではないか。手に持った食物に小魚がすかさず群がるなども後の映画で見たかも知れない。 また少し笑ったのは、子トラから来た手紙を「読んで読んで」とせがまれたがとても読めそうなものではなかったのを、パパが難なく読んでしまったことだった。確かに「助けて助けてトラ」くらいならわかるかも知れない。表意文字だ。
[インターネット(邦画)] 5点(2021-05-01 08:50:39)
2.  パンダ・コパンダ 《ネタバレ》 
時代背景からいえば、第二次大戦後の国共内戦で大陸を追われた国民党勢力が、台湾島と附属島嶼だけの状態で国連安全保障理事会の常任理事国として「五大国」の扱いを受けていたが、1971年に諸国の思惑がらみで代表権を失って国連を去り、1972年には日本も国交を断絶した(来年で50年)。代わりに国交が生じた大陸側から記念としてパンダ2頭が送られて来て、1972年11月から上野動物園で公開が始まり大人気になったが、そのような情勢のもとでこのアニメが作られたことを今回再認識した。 明らかに国家戦略のために使われているにもかかわらず、パンダ自体は現在も絶対善のように思われているようだが、それはこの時代に形成された国民意識の影響かも知れない。国民一億総panda huggerということだ(言いすぎか)。  当時は自分も見たのかどうかわからないが、3つ下の従妹が見て大喜びして、歌の冒頭部分をやかましいほど繰り返し歌っていたことは憶えている。何が面白かったのか不明だが、部外者なりに考えると、主人公の少女が父親に甘える立場と、小さい子に甘えられる立場の両方を兼ねるのが豪華な設定だったかも知れない。 序盤の幸せな時間も長くは続かず(全体で30分しかない)、やがて大人社会からの脅威が及んで来て、最後は別れの寂しさを残す終幕だろうと予想していたら、意外にも奇想天外な結末だったのには驚かされた。完全に現実を度外視してでも、見ている子どもらの期待を裏切るまいとする制作姿勢だったらしい(感動的だ)。 そのようなことで、今回見てもそれほど悪くない映画だとは思った。なお主人公の少女が、昔のアニメにしては表情豊かで躍動感もあるのはさすがということか。得意の逆立ちをする時に、ちょっと溜めてから伸びる場面があったのは芸が細かい。
[インターネット(邦画)] 6点(2021-05-01 08:50:36)(良:1票)
3.  ハイサイゾンビ 《ネタバレ》 
沖縄の映像関係者が地元で撮ったホラーである。場所はかつてコザ市と呼ばれた沖縄市だが、今も中心街はコザというらしく、「コザ花園(かえん)」の看板とか「ゴヤ中央市場」の表示が見えたのがご当地感を出している。ちなみに「ゴヤ」とは、米軍のキャンプ・コザが置かれる前からあった「胡屋」という地名を残しているものらしい。 市や観光協会も協力している地元PR映画だが、最初の公園だけが明るい雰囲気で、市街地に入ると人もいなくてゾンビばかりの寂しい街ということが印象づけられてしまう。しかし商店街がゾンビであふれかえる場面がかつての賑わいを想像させ(そういう意図か?)、また横丁のような所でエロいゾンビが登場して(「踊るゾンビ」演・水井真希)男ゾンビの股間に何気に触っていたりしたのは、こういう風俗面でも栄えた過去を偲ばせるものがあった(そういう意図か?)。  内容的には「カメラを止めるな」(2017)と比較されているが(制作年はこっちが早い)、別にワンカットで撮っているわけではなく、映画撮影中に本物のゾンビが現れたという設定が共通している。一応は本物のホラーだがコメディ色が強く、人がゾンビにやられて血が飛んで、登場人物の衣服が(レフ板も)どんどん真っ赤になっていくのは笑ってしまう。とにかく血が飛ぶ映画という印象だった。 物語としては、崩壊の兆しが見えた自主映画制作グループが、千載一遇の機会を得て再び映画への情熱を燃やす話になっている。人でなくなってもなお映画を撮ろうとする(生きようとする?)執念を描いており、最後はいわばゾンビの、ゾンビによる、ゾンビのための映画になってしまったかと思ったが、一応は人間ドラマとして、いわゆる映画愛のようなものも感じられた。いかに低予算に見えても嫌いになれない/好きにさせられるという点でもカメ止めに近いかも知れない。 キャストはみな沖縄在住の人々のようで、当然ながら地元市民もエキストラとして大挙出演している。劇中劇のヒロイン役の人(演・川満彩杏)がなかなか可愛いと思ったが、途中でいったん退場してしまったのは残念だ。この人がゾンビに噛まれて意識が薄れていく表情は好きだ(少し惚れた)。
[インターネット(邦画)] 6点(2021-01-23 08:59:12)
4.  パプリカ(2006) 《ネタバレ》 
パプリカといえば現時点ではNHKの「2020応援ソング」が有名かと思われる。映画の前に原作を読んだところ、帯に「ヤバい方のパプリカ」と書いてあったのは上記ソングがヤバくないという判断らしいが、しかしネット上で“可愛くない”とか“気持ち悪い”といわれていたのを見たことがあり、大して変わらないのではないかと思っている。 原作では、第一部は科学技術の開発に関わる現世的な話だったが、第二部に入ると時空間の制約を越えた奔放な展開になってアニメ向きの印象だった。映画では、登場人物を集約した上で第一部も踏まえ、派手でリアルに気色悪い現代風アニメを作っている。  原作のパプリカは、オタク気質の肥満の男も50がらみの大人のオジサマも惚れさせ、かつ惚れてくれる点で魅力的なキャラクターであり、かなり男に都合のいい女性像という感じだった。このアニメでは千葉敦子とパプリカが別人格という印象を強め、現実世界の千葉敦子はオタク(一応若い)に取れられてしまったが、オジサマ連中は夢の世界のパプリカちゃんに自分の夢を託す、という形で整理をつけたらしい。その過程で「夢」に関して、本来の精神活動としての夢→将来の希望としての夢→映画などによる架空世界の夢、という形で意味を発展させ、最終的には夢の世界を創ることの意義まで訴えていたように見えた。 またその「映画」というものに関して、原作でも短編長編のたとえ話までは出ていたが、このアニメではこれを膨らませて映画志望だったオジサマの物語を作っており、最終的に夢と現実を統合させていたのはなかなか感動的だった。原作も一応は問題解決だが物寂しさも残す終幕だったのに対し、このアニメは娯楽映画らしく通俗的だが文句なしのハッピーエンドになっている。ここは大変結構でした。 ただし問題なのはキャラクターデザインであって、千葉敦子/パプリカからしてあまり可愛気を感じないが、その他の人物もみな顔が気色悪いので親近感が湧きにくく、これが最初から映画の印象を悪くしていたと思われる。もう一つ、このアニメではパプリカが忙しすぎて、途中からオジサマがパプリカ抜きで勝手にトラウマ解消をやってしまったというのが不十分な活躍ぶりではあった。
[ブルーレイ(邦画)] 5点(2021-01-16 09:29:27)
5.  パラノイアック 《ネタバレ》 
「青鬼」「デスフォレスト」に続くフリーホラーゲーム第3弾とのことで、廃墟に侵入した若い連中が逃げ回って殺されていく展開になる。基本的には心霊系だろうが、「怪物」も出るのはもとのゲームに由来するものか。見る人が見れば怖いのかも知れないが、個人的にはやかましいだけのホラーだった。 特徴としては基本的にPOVであり、冒頭の自宅の場面からして劇中カメラで撮られている。また主人公グループ3人だけでなく、別のグループ3人(緑)が同様に逃げ回るのと並行する形で作ってある。ほかクラシックの著名な曲が使われており、映画の章立ても第一~第三楽章にしていたが、どういう効果を狙ったのかわからない。ホラー向けに作った曲ではないはずだ。 なお序盤で窓ガラス越しに怪しい人影が一瞬見えた場面があったが、その手の趣向はそこしか気づかなかった。  【以下個人的解釈】 題名のparanoiaとはどういうものか知らないが、少なくともこの映画では、要は強い妄想があるという意味らしい。廃墟で主人公が体験したことのほとんどが妄想だったと思えなくもないが、しかしビデオ撮りしているからには客観映像のはずだと解釈すれば、筋の通らないことは全て妄想のせいともいえない。死人が生き返ったりするのはゲームというものの性質上かも知れないが、まともな理由など考えても仕方ないという気もする(「ソラリスの陽のもとに」と関係あるかは不明、読んでない)。 それより主人公の主な妄想は、姉らしき人物(肩書付きのテロップが出ない)を「お母さん」だと思い込んでいたことのようで、これは叔母がクマを息子と思っていたのと同じということになる。その姉は、叔母がされていたのと同様の「経過観察」をしながら妹を世話してきたが、実は叔母と同じように破滅してしまえと願ったりしているのではないか。 本来この姉は問題ない人なのだろうが、上の階のピアノに怒るとかコップの縁をいちいち拭くのは神経質なようでもあり、また終盤で恨み言を劇団員風に述べるとか、凄惨な死体の傍らにあったカメラを冷静に拾うなどはもう変になっていたようでもある。最後の赤い空の場面でもなお妹を経過観察していたようだが、その光景をまた誰かが経過観察していたのかも知れない。  細かく考えようとすると面倒臭いホラーであり、結果として面白いともいえないが、それなりの企みはあったようなのであまり低い点にはしない。なお主演の小西キスという人(けっこう熱演)は、漢字であれば小西鱚と書けないこともないと今回思った。もう一つのグループの女子(奥田安沙)役は朝見心という人である(京都府出身とのこと)。
[DVD(邦画)] 5点(2021-01-09 13:52:52)
6.  はらはらなのか。 《ネタバレ》 
監督の酒井麻衣という人は、映画と音楽のコラボレーションによる映画祭「MOOSIC LAB」に出品した「いいにおいのする映画」(2015)で各賞を受賞して注目された人物らしい。ちなみに同じ音楽祭の出品作としては、個人的に加藤綾佳監督「おんなのこきらい」(2014)、松本花奈監督「脱脱脱脱17」(2016)を見たことがある。 この映画はその映画祭と関係ないらしいが、やはり映画×音楽のコラボ風のようで複数のミュージシャンが出演・演奏している。また物語の中心になる劇中劇は、実際にこの映画の主演女優が2015年に主演した演劇とのことだが、その舞台の演出家もこの映画に脚本協力するとともに本人役で出演している。ちなみに主演女優もいわば本人役ということになるらしい。  内容としては役者の道を目指す少女の物語になっており、ポスタービジュアルの印象ではコメディかと思うが実は笑えない真剣ドラマである。ただ突然始まるミュージカル風の場面はコミカルで、また主人公の見ている幻影を現実に紛れ込ませるのがファンタジックではある。 解説によると子役から俳優へ移行する過程の話だそうで、演技することの意味を主人公が悟るのと、母親の不在を満たすのが最後に重なる展開だったらしい。子どもの頃なら妄想や願望でしかなかったものを、仮想的に実現する場として演劇を位置付けるようになったということか。ほかに個人的感覚としては、役者になるための基礎条件として、本人が役者になると頭から決めてかかっている必要があることが表現されているかと思った。 見ている側は12歳の少女でも役者志望でもなく、共感しにくい題材だったのは仕方ないが、結構深みのある映画ではあった。なおラストの場面が「心で見たい世界」を舞台の上で見るという意味だとすれば、いきなり異次元世界に入り込んだ印象だったのはわかりにくかった。  キャストとしては、主演女優は満13歳になった直後くらいの撮影だったようで、最初は心許ないかと思ったが実はそうでもなく、主人公の心の変化を表現できていたようで感心した。また松井玲奈という人は大人のおねえさん役で惹かれたが、13年前の場面も13歳くらいらしく可愛く見える。ほか先輩役の吉田凜音という人は、「女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。」(2015)と似たような服装で出るのでまたこれかと思わされるが、まだ若いのに顔に迫力があるのは特徴的だった。ギターで歌う場面もある。
[インターネット(邦画)] 6点(2020-11-07 08:56:52)
7.  ハワイ・マレー沖海戦 《ネタバレ》 
円谷特撮の最初期の傑作として有名なだけあって、ミニチュアやジオラマはよくできている。しかし水柱とか爆発とかの動きが出ると模型であることが一目瞭然で、これを見て実写と思ったという米軍は目が節穴だったのかと思う。 ほかに大がかりな屋外セットも作ったとのことだが、どうやらこれは本物ではないかと見える映像もある。個人的には航空母艦の飛行甲板の下で、支柱に人が取りついている映像は何だったのか知りたい。  物語としては、戦意高揚映画だからといって戦意を高揚させられる義理もないので自由な見方をすると、まず前半の清く正しい練習生のところは息がつまりそうで(皆さんご立派で辟易)、こんなのを見て飛行兵を志す少年などいたのかと思った。しかし一方で、主人公の家族を描いた部分が切なく見えたのはかなり意外だった。 主人公が序盤で見た夢は入隊直後の不安の表現だろうが、それにしても姉妹のわけのわからない言動が不穏なものを感じさせ、さらに仏壇に向かう母親の背中が寂寥感と不吉感まで出している(父親が亡くなった事情も不明)。また突然帰った息子と母親が相対した場面では、表向きではない本当の思いが抑制的ながらも明らかに見えて痛々しい。こういうものが戦意高揚映画にふさわしいのか不明だが、それを見て問題とも思わない海軍の関係者も目が節穴だったのか、あるいはわかっていても許容したのかどうか。 後半は題名通りの話になるが、開戦劈頭の勝ち戦限定なので逆にその後を意識させられてしまう。本当に主人公が真珠湾攻撃に参加したのなら、公開年の6月にあったミッドウェー海戦を生き延びられたのかがまず問題になる。また実際に、主人公役の俳優が映画公開の頃に兵隊に取られ、翌年(昭和18年)1月には戦死したと知ると寂しい気持ちにさせられてしまう。 結果として、個人的には全く戦意を高揚させられない映画だった。  ほか余談として、主人公の姉は変に洋風美人で(顔が非国民)妹も可愛らしいので、どちらかに婿を取ればいいくらいの割り切りがあっただろうとは思う。また艦内では日本海海戦のような艦名当てクイズをやっていて、この映画でもユーモラスで笑わせる場面になっていた。終盤では哨戒機の操縦席に女児向けのぬいぐるみのようなものが下がっていたが、これは例えば幼い娘が自分の一番大事なものを父親にあげたというような想定だったのか。
[DVD(邦画)] 6点(2019-12-07 11:22:17)
8.  パパのお弁当は世界一 《ネタバレ》 
Twitter発祥の感動物語で、もとはショートムービーとしての企画だったのが結果的に1時間以上に拡張されたものらしい。 まず問題としては劇中の時間の流れが十分表現されていないことで、最初の時点で娘が何年生だったのかがわからず、17歳のところで2年生だったのかと思ったら、すぐその後で卒業の話が出たので大混乱した(「卒業」というのが何か別のことの比喩なのかと思った)。また何で最後の授業が12/8なのかもわからなかったが、これは近年、受験に備えて12月で授業が終わる高校もあるということらしい。実際のツイートも2016/12/8だったようで、ここは実話に合わせた形になっている。  物語としては、その12/8を目標点に据えて全体を膨らませた形になっており、当然ながら創作部分がほとんどと思われる。最初の導入部分はコメディでもないがかなりユーモラスな作りで、特に職場でのやり取りは笑わせる。娘については、どんなのが出て来てもとりあえず全部食うというのがまともな育ちで好感が持たれる。学校の友だちも優しいので和まされる。 中盤では少々の波乱があり、これは父親への裏切りではないかと思うところもあったが、しかし結局彼氏などはどうでもよかったのであって、それ以前に人として基礎的に大事なものがわかったエピソードになっている。堤防の上で、思わず漏らした本音に電車の音を被せたのはいい感じだった。また全てが終わって、弁当をかみしめて出た一言には泣かされた。 ほか娘がろくに手伝わないのは問題だと思われるかも知れないが、本物の高校生などどうせこの程度の感覚だろうし(覚えのある人は多いはず)、それよりも、3年間の累積赤字に気づいてちゃんと態度を変えていたのはやはり感心な娘である。父親が作り続けた弁当は、言葉は悪いが“愛情のベースロード電源”のような感じで、愛情の供給量を底上げしていたように思われる。 簡素な作りの映画だがポイントは押さえてあり、何より気持ちの詰まった物語になっている。幸せそうな父親で羨ましい(努力が必要なわけだが)。
[映画館(邦画)] 9点(2018-11-29 20:25:37)(良:1票)
9.  HALLOWEEN NIGHTMARE ハロウィン ナイトメア 《ネタバレ》 
「ハロウィン ナイトメア2」(2015)の方は前に見たが、この映画の主演が「かぐや姫の物語」(2013)の主演声優だったとのことでこれも見た。「かぐや姫」の方はあまり可愛げのないキャラクターだったが今回は当然顔出しで、自然体で活動的な編集者の役がなかなかいい印象である。ちなみに劇中の編集長には美少女の娘がいることが次作で明らかになる。  基本的な性質としては低予算ホラーだが、監督と脚本家が「口裂け女2」(2008)と同じのため一応期待が高まらなくもない。短い映画ながら主人公をオカルト雑誌の編集者という設定にして、10年前から続く不気味な事件の謎を解明していく形にしている。日本でハロウィンのホラーというのは無理やりだが一応の説明は付けてあり、変な外来種を持ち込んだために、国内で被害が拡大していく結果を生んだ関係者は罪深いと思わせる。 また不自然さ(制作側にとっての都合よさ)をそれほど感じさせない作りになっており、登場人物の微妙にユーモラスな掛け合いや皮肉な物言いが気の利いた印象を出している。最初の事件が小平市といった地味目の地名だったことや、職場でフォトショップが使える、フェイスブックも効果がある(ない)といった具体的な事物が劇中世界と現実との距離を縮めていた。それにしても登場人物が何で「甲府事件」(1975)なるもの(ストーリーと直接無関係)を重視していたのかはわからない。スタッフの中にこの手のマニアでもいたということか。 視覚的には黒い霧などは安っぽいが、全体的には絞った形でスリリングな場面を設定している。最後の12分間を視覚化するための場所選定も(多少無理はあったが)効果的で、エンディングにつながるところも心地いい。主人公はよく頑張ったと言ってやりたい。  なお雑談として、主人公の友人が真昼間に襲われた場所は千代田区とされていたが、撮影場所は川崎市の武蔵小杉(中原区小杉町)にあるカフェだったらしい。いかにもただの古い住宅を改装した作りで、同種のものが「ハロウィン ナイトメア2」でも使われていたが、近年こういうのが好まれるようになっているということか。現地は「シン・ゴジラ」(2016)にも出たタワーマンションが林立する地区に接しており、長期的な土地利用でもないだろうが、空き家のとりあえずの活用方法としてはよさそうな感じである。
[DVD(邦画)] 5点(2018-06-30 20:23:04)
10.  バレンタインナイトメア 《ネタバレ》 
「ハロウィンナイトメア2」(2015)に続くシリーズのようなものらしい。前作もちょっとどうかという感じだったがこの映画に関しては、予算面のほかにも例えば(素人がいうのも何だが)よほど時間がなかったとか、あるいは3時間くらいに作ってしまって無理に短縮したとかいうような、何かの事情があったのではという気がした(真面目に作ったという前提でいえば)。特に“フランケンシュタインの怪物”の件が唐突で、何がいいたいのかは薄々わかるとしても、それが今回の事件全体とどう関わっているのかがわからない。 ちなみに大事なところでオーケストラ付きの歌曲(リヒャルト・ワーグナーとのこと)が流れるのは別に好きではないが嫌いでもない。が、エンディングで出ていた邦訳で、自称が基本的に「僕」だったのに一か所だけ「私」だったのは、仮に何か意図があったとしても変である。この歌詞とストーリーとの関係もあまり明瞭でない気がした(要はあの場で死んだということか?)。  また最も不満に思ったのは、主演女優の魅力がほとんど出ていないことである。役柄との関係なのか演出なのかその他の理由かわからないが、他の映画で見た時の(2回だけだが)強力なオーラのようなものが感じられず、単なる普通の女子のように見えている。かえって死者役の芋生悠という人が、特殊メイクなしだといい感じに見えた。また他の映画では名もない端役に甘んじていることもある佐々木萌詠さんが、今回は目立つ役だったのは個人的に嬉しい(また悪役だ)。もう一人、加納美香役の藤井衣瑠花という人が頑張って演技していたのは目についた(少し笑ってしまうところもあったが)。 ちなみに監督の今野恭成という人物は、この少し前の「リスナー」(2015)というオムニバス映画でも名前を見たことがある。今回は監督・脚本・撮影・編集を一人でしていたようでご苦労様だった。
[DVD(邦画)] 2点(2018-05-24 18:58:26)
11.  HALLOWEEN NIGHTMARE ハロウィン ナイトメア2 《ネタバレ》 
名前からすると「ハロウィン ナイトメア」(2015)の続編らしい。前作は見ていないが、これ単独で見る限りはストーリーなどどうでもいいように見える。ほとんど空虚な映画だが、そこを何かが起こりそうなこけ脅しと、主演女優の映像で埋めて1時間にした感じである。 こけ脅しに関しては、いかにも何かが起こりそうでいて、何もないまま次の場面に移って束の間の安心感を生じさせるのは、中身のないホラー映画の典型のようでもあるが実はそれほど嫌いでない。また女子高生4人組がメインと見せておいて早々に脱落者を出してしまい、主演女優ばかりが終始目立っていたのも結果的には悪くない。武田玲奈さんの初主演映画らしいが(自慢にもならない感じだが)、この人の顔はもちろんすらりとした体型を含めた全体像を印象づける映画になっており、そっちの方が真の製作目的かとも見える。 また、どこかのショップ(注:原宿に直営店があった輸入コスチューム・ランジェリー販売店)で「かわいい」連発の映像を延々と流すとか、カボチャの投げ合いをまた延々と続けるとかを含めて全体が1時間なわけだが、終盤のパーティ会場の怪しげな空間(注:東武線曳舟駅近くのダイニングバーを借りたらしい)での妙な高揚感も含めてgirlyな色付けがなされており、これがエンディングにも引き継がれて変な余韻を残す映画になっていた。 ほか細かいところでは、女子2人が走って逃げた場面で傘が裏返ったとか、2人目の失踪場面で背後に宅配便のトラックが意味ありげに停まったとか、主人公が友人を探しに出ようとして少し突っかかったとかいうのは意図不明だった。しかし女子2人の後を追ってストーカーが出て行ったところの流れは好きだ。  ちなみに山下洋助監督は、この少し前の「リスナー」(2015)というオムニバス映画で「RADIO GIRLS」というのを見たことがある(女子高生4人の太ももが見どころとのこと)。その時点で東京芸大の院生だったはずだが、当時からこういうことをやっていたらしい。 そのほか余談として、主人公の父親が関わっている月刊誌に「比謝愛未VS狐憑き」という記事があったので“比嘉”愛未ではないのかと思ったが、今野敏という作家の「心霊特捜」という小説に比謝里美(ひじゃさとみ)という登場人物がいて、「狐憑き」というエピソードもあるらしいので読んでみるかという気になった。映画化の素材としてもいいかも知れない。
[DVD(邦画)] 3点(2018-05-24 18:58:23)
12.  バニラボーイ トゥモロー・イズ・アナザー・デイ 《ネタバレ》 
近年、邦画のロケ地として栃木県がのしてきているようで、この映画でも最初から栃木県が前面に出ている。自分が気づいたところでは旧・喜連川町(現・さくら市)と宇都宮のオリオン通りが出ていたが、このまま最後まで栃木県では映像的に地味だろうと思っていたら後半は本物の沖縄に行ったようで、うるま市のゆるキャラ「うるうらら」が狙撃されて倒れたのは気の毒だった。 ストーリーとしてはただの高校生が世界の命運を左右するタイプの大それた話で、終盤などは一応スリリングな展開になっているが、そもそも主要キャスト3人をジャニーズJr.で固めた企画なのでたかが知れるところはある。NERV風の演出とか「宇宙人、未来人…」とか、微妙に既成アニメのパロディに見えるところもあるがだから何だという感じである。基本的にはコメディだが全編にわたって笑えるわけでもなく、寒いギャグが多い中で部分的に可笑しいところもあるという程度だが、個人的には「今日、恋をはじめます」とウィキペディアはツボだった。 なお少し感心したのは、NSAという略語の意味が2つあったということである。また1999年7月生まれの「恐怖の大王」が出て来るので、昭和年代から生きてきた者としては、もうこのネタをこういう風に使える時代になったのかと感慨深いものがあった。  ほか登場人物としては、男を見るためだけの映画かというとそうでもなく、マネージャー名目でついて来ていた女子2人(演・美山加恋、山崎萌香)も可愛く撮られているので、そこを目的にして見るのも変ではない。他の生徒役ではイケメンにデレデレしていた女子(演・北村優衣?)には笑った。またヒロイン役の竹富聖花(当時)さんはこの人に似合いのクールな美少女役だが、今回はアクションもあっての大活躍で、「女の子なのに!」のところはそうだそうだと言ってやりたくなる(反論は認めない)。この人にはどうか今後とも頑張ってもらいたい。
[DVD(邦画)] 4点(2018-05-06 19:58:22)
13.  バイロケーション 《ネタバレ》 
原作も一応読んだが、映画化に当たってはかなり手際よくまとめたようで、映画だけでも全体像はわかる。前宣伝ではラストが衝撃的とされていたようだが、実際は最後だけがひっくり返るような構造ではなく、徐々に観客の思い込みが覆されて自然にラストにつながる展開に見えた。結末が「表」「裏」の2種類あるのも基本的には肯定できる。ただ背景事情の省略のために最後までわからないこともあり、また御手洗という男は映画ではほとんど不要な人物になっている。 題名の現象に関しては、この映画で二重人格の実体化のような意味づけをされているのは原作を超えた趣向である。しかしそれだと本来は本体に統合するよう努めるのが筋ということになり、劇中で共存が理想というようなことを言っていたのは明らかに変である。物語中の状況ではやむを得ない発想だとしても、「裏」の最後の独白など聞くともう外部の常識が通用しない閉鎖世界ができてしまったようで、かなり独りよがりな印象になっていた。こういう変なところに踏み込まないで止めていた原作の方はまともである。 映像的な面では全般的に好印象だが、人や物が霧消する表現は少々安っぽい(演出上の意味のある場面はあったが)。キャストに関しては、まずは滝藤賢一氏が原作でも描写された凄みのある表情を見せている。また主演女優はこれまで可愛気がない人だと思っていたが、今回は女性的なところが前面に出ていたようで、特に結婚後の様子は可愛らしくも見えたのが意外だった。この映画で最もいいと思ったのは実はこの点である。また酒井若菜という人も嫌いでない(けっこう好きだ)。  なお冒頭の外国の場面は、19世紀のリヴォニア(現在のラトヴィア共和国)で起きたとされる事件の再現映像のようなものかも知れないが、仮にこの手の現象が実在するとすればこれ以前のはるか昔からあったはずで、現象自体が19世紀から発生し始めたかのように台詞で説明していたのは変である…オカルトの世界で話題になったのが19世紀のヨーロッパから、というならわかる。 ちなみにここでしゃべっていたのは何語なのか。リヴォニアの寄宿学校の事件とすればフランス語かドイツ語を使っていた可能性があるのでは。
[DVD(邦画)] 5点(2017-06-30 19:48:23)
14.  ×ゲーム(バツゲーム)(2010) 《ネタバレ》 
この原作者の著作は読む気にならないが、今回は原作がどうなっていたのか気になったので読んだ。 原作でも根本原因はいじめだが、起こったことは単なる性格異常者の猟奇犯罪という印象が強い。それだけでは不足と思ったのか、映画では組織的な復讐ということにして社会性を持たせているが、そのためにかえって荒唐無稽の度合いが増してしまっている。また話を大きくした割に、最後に糾弾すべき相手が特定されずに拡散してしまったのは、いわば社会派崩れの腰砕けという印象もあった。 いじめる側や黙認した教員の悪質さを強調して観客の憎悪を煽るのは、映画の見せ場である残虐行為を心理的に肯定させるためだろうが、劇中の大学教員の発言によれば、こういう映画ができるのも世間がそれを望んでいるからだと言い訳していたようで、結局は一般大衆の嗜好に媚びた形になっていたようである。登場人物のうち金持ちの同級生は行き過ぎた復讐という意味合いを出すための存在だったのだろうが、結果的にはあまり印象に残らず、この男が語った心の傷の説明も取ってつけたように思われた。  また原作では性格異常者の極端な執着としか思えないものを、映画では悲しく痛々しい愛情という印象に変え、破滅的なラブストーリーとして一定の共感が得られるよう再構成したと見える。これはアイドル映画としての性質からも十分理解できる。 それと同時に主人公の男の境遇にも憐憫とやるせなさを感じなければならないのだろうが、しかしこの男は最初から態度が極めて苛立たしく(本物のバカ)、自分としては真っ先に死んで当然だと決めつけていたら主人公だったというのが意外な展開で、最後までこの男には同情する気に全くならなかったのは作り手の意図に沿っていなかっただろうと思われる。  そのほか映像化という面では悪い印象はなく、主役の人物も苛立たしい(バカな)人間像を好演している。刑の執行時のおふざけ感などはいいとして、残酷描写はそれほど徹底しておらず(尻に穴がない)、真に迫っているのは登場人物の顔芸だけだったようだが、それも残虐なだけの映画ではないという作り手の意図を反映していると解することはできる。 ただ現実問題として、自分としては見ていて最初から最後まで不快感しかなかったというのが実態だったので、それをそのまま反映した点数にしておく。関係者の皆さんはご苦労様でした。
[DVD(邦画)] 1点(2017-06-30 19:48:18)
15.  花戦さ 《ネタバレ》 
華道家元池坊に伝わるエピソードを題材にした原作の映画化である。自分は無粋なので花を愛でる習慣はないが、美というものが確かにそこにある、ということは映像から納得させられる。また千利休との関係を強調した物語のため、いわゆる三千家も製作に協力している。主人公が初めて利休を訪ねたときに突然泣き言を言い出したのは、映像では見えない作用を利休の茶が及ぼしたという表現のようで興味深かった。  原作はわりと淡白な感じの小説で、最後の勝負など本当にこれだけでよかったのか、という思いが残るものだったが、映画では序盤の岐阜城と終盤の前田邸の対応関係が明瞭で、庶民にできる最高度に強烈な反撃という印象も強まっていておおむね納得させられる。この場面では観客としても息を詰めるようにして見入ってしまい、その余韻は鑑賞後もしばらく後を引いた。また全体としてのメッセージも明快で、美と芸術家を賞揚するにとどまらず、秀吉含め全ての人それぞれの個を咲かそうとする物語になっている。素直にそう思えるだけの愛おしさが劇中人物には感じられた。 ほか秀吉との対比ということだろうが、美的なものへの関心の高さや批評精神など、京の町衆の文化水準の高さが表現されている。それは原作も同じだが、映画を見るとジョークのレベルも高かったようで感心した(少し古風で漫才風?)。  登場人物に関しては、序盤では主人公が変人すぎて呆れたが、終盤はそれらしい人物像に収まっていたようで悪くない。人を覚えられなくて苦労するのは個人的に共感できるので、茶室の場面では見ている方も泣き笑いになった。この主人公に寄り添う弟の人物像もいい。 また「れん」というのは原作にない人物だが、映画の飾りとしてのヒロインというだけでなく、掛け軸のサルなど見ても、父親を含めた形での存在意義がちゃんと付与されていたようで安心した。外見的には可愛らしいが(森川さん本当に可愛い)それだけでなく、最後には芸術家としての側面を含めた人物像も見えて来る。主人公がこの人の名を呼んで手に取った蓮の花が、本当にこの人らしく見えたのは感動的だった。 そのほか人懐こく笑う町娘はどこかで見たと思ったら、「湯を沸かすほどの熱い愛」の妹役(鮎子ここにあり)の伊東蒼(あおい)という人だった。子役も含めて役者揃いのように思われる。  結果としては小説を何となく映画化しただけのものでなく、単なる華道家元のPR映画でもなく、花がきれいだった、で終わりの映画でもなく、それ自体の存在意義をちゃんと主張する映画になっている。人に勧めるかは別として自分にとってはいい映画だった。
[映画館(邦画)] 8点(2017-06-03 22:49:26)(良:1票)
16.  ハウルの動く城 《ネタバレ》 
最初に見たのはTVだったが、その時は何が何だかわからず単純に面白くなかった。その後は見直す気にならなかったが故あって改めて見たところ、大人になれない若い男と老婆のような若い女が影響し合って最後は幸せな家庭を築いた話に見えた。 男の方は世間の風など関係なくお花畑に身を置いて「人殺しどもめ」と戦争を蔑んでいればいいと思っていたが、具体的に守りたい相手ができたとたんに何人殺しても構わないほど舞い上がってしまい、これはまずいと女の方が抑えにかかって安定状態に至ったように見える。女の方はもう人生終わったかのように思っていたが、私だけの王子様のようなのが突然現れて、駄目な男だけど本当は優しい人だから何とかしてあげたいと思ったり、私のことをずっと待っていてくれたと感激したりしてやっと年齢なりの女子になったということか。それでも基本的に落ち着いた主婦向きの人物なので、男が恋人に母親を求めるような都合のいい話になっていたようである。 劇中で戦争が起こったのは二人を高次の人格に導くための契機ということだろうが、物語を動かすために起こした戦争など「バカげた戦争」というのは当然であり、物語の終了と同時に戦争が終わったのも変ではない。あるいは実際に、王室付きの魔法使いが生涯最高の弟子を表舞台に引っ張り出すためにわざと起こした戦争ということだったのかも知れない。まともに取れば多数の人命が失われたのだろうが、そもそも観念的な戦争のようでどれだけ人が死んだかなど気にしなくていい感じだった。 以上のような感じで大まかな説明はできなくもないが、それで面白いかというと大して面白くはなく、映像面でも風景や事物などに既視感のあるものが多い。宮崎アニメはいわば国民的アニメであるから一度は見なければと昔は思っていたが、別に見なくても問題ないと初めて思ったのがこれだった。 なお端正な美形女子が年を取ると鷲鼻になるのはなぜか不明だが、これならシータが年を取るとドーラになるというのもわかる。
[DVD(邦画)] 4点(2017-01-23 23:42:08)(良:3票)
17.  灰色の烏 《ネタバレ》 
赤い果実はまあいいとして、天狗は暗喩どころでなく下品である。またTVのぐさっ、ぐさっというのは趣向としては面白いが、ニュース番組の出演者としては不自然だ。ほか同じような動作をしつこく繰り返す場面が二つあったが、これは何らかのこだわりがあったものか(特に二回目は“執拗な抵抗”の表現?)。またDVDを見る限り、最初と最後に真っ暗な画面が何秒か続くのも考えがあってのことかも知れない。 物語の面では、冒頭から刺激的な映像を通じてかなりシビアな状況が提示されていたので問題点はわかったが、その後の展開と結末がわからない。主人公自身が変化したのはともかく、当初はとんでもない人格破綻者に見えた母親までが、最後はおとなしい要介護者のように変わっていたのは納得しかねるものがある。加えて現実世界での決着をどうつけたのかも不明であり、リーダーは失格、保護者から苦情が殺到してキャンプクラブは廃絶ということでは主人公も穏やかな気分ではいられないはずで、これは見ていてかなり気になった。 また中学生も、個別の行動としては理解不能なところが多かったが、これはまあ思春期の少女なのでそういうこともあるかも知れないと思えなくもない(思考放棄)。印刷屋の娘とその友人では外見的な印象に結構な差があったが(友人の方が明らかに女性的)、これは問題の所在をビジュアル面で表現したものと考えておく。 全体として年齢性別を選ぶ映画のようでもあり、理性的に見るより感性的に受け取れるものが多ければ勝ちということかも知れない。自分としては納得できるものがなかったが、映画の雰囲気としては悪くなく、何よりハッピーエンドだったのは安心した。まあ若年者の成長譚であってホラーではないので、最後は全員破滅して終わりなどということは当然ないわけだが。  なおキャスト面では、特にエビ中の人(アイドルグループ「私立恵比寿中学」のメンバー)の演技が心許ないところがあって一か所笑った。ただメイキングで本人が「演技力とかないんですけど…温かい目で見てください!」と言っていたのでこれはそのように対応したい。 ほか個別の場面としては“猫をかぶる”の説明のところが好きだ。この小学生2人は屈託がなくて大変結構だった。
[DVD(邦画)] 4点(2016-12-30 16:38:31)
18.  八甲田山 《ネタバレ》 
これまでに何度か見ているが、国土地理院サイトの地形図やGoogle Earthで場所を逐一確認しながら見ると退屈しない。特にGoogle Earthを見ると山の形から撮影場所がどのあたりだったかわかる場合もある(注:現在はGoogle Mapでも3Dが使えるらしい)。原作本にも当時の詳細な地図がついている。 撮影秘話のようなものはあまり読んでいないが、映像からすればいかにも厳しい現場だったようには見える。特に、休止中の人々の頭の上に相当量の雪がそれらしく積もっていた場面があったが、落ちた様子を見ると本物の雪だったように見え、これはこのように雪が積もる間この人々がずっとここに立っていたことを意味するのだろうかと素朴な疑問を感じる。 また物語に関して印象に残るのは、まずは当然ながら兵隊さんのご労苦ということになるが、暗澹とさせられたのが最後の説明文で、生還した人々がわずか2年後に戦死したと書かれていたことである。この時の経験が満州の平原で生かされたのかどうか不明だが、明治日本が列強に追いつく過程ですり潰されていったかのような人々の存在が痛々しく、登場人物の子どもの頃の情景も、むしろそのこととの関係で哀しく思われた。  ところで弘前の部隊が村へ入る際、案内人を先頭にしてラッパ付きで行進した場面は普通に感動的だった。これは原作とも違っており、当時としては常識外れのことかも知れないが、しかし現代の映画としてはかえってこれでよかったのではと思われる。昔の軍隊は百姓町人に教わることなどないと思っていたかも知れないが、わからないことはわかる人間に尋ねるべきであり、またその人間には敬意を払わなければならない。そのような態度が成功をもたらすというのはまあ当然だろうが、この点でちゃんと筋を通してくれたことで、この映画が昔の軍隊の理不尽さを糾弾するだけのものでなく、現代人の心にも通じるものになっていた気がする。 なお部隊が敬礼をしたときに、案内人殿が照れたように笑っていたのは可愛らしい。いくら何でもこんな人が現地にいたかとは思うが、重厚な高倉健と軽やかな秋吉久美子の極端な対比は非常にいい感じを出していた。「まんまくうべや」という台詞が耳に残る。
[DVD(邦画)] 8点(2016-05-28 14:11:03)(良:1票)
19.  BAR神風~誤魔化しドライブ 《ネタバレ》 
ほとんど一室だけの撮影だが意外な展開の連続で飽きさせず、また背景音楽も心地いい。前半はかなり大笑いしたが、後半は主人公が心の傷を克服する話になっており、最後の締めは予定通りともいえるがちゃんと観客が望む形に収めてある。また、よくわからないが何気にクリエーターの心意気のようなもの(浮気はバレないようにやる、といったこと)も込めてあったらしい。 登場人物としては、まずは男連中の個性がそれぞれ際立っていて好印象である。女性の登場人物は怖い人ばかりだが、個人的にはミュージシャンの二股相手の友人がキュートで少々何をやっても見惚れてしまう。またアルバイト店員役に関しては、いくら可愛くしていてもどこか怪しい雰囲気が残ると思うが、特に厨房にいて口しか見えなかった場面が非常にいい(怖い)。 若干の不満としては、パスタを作れない理由付けがかなりいい加減に感じられた。人が死んだからにはここで笑ってはならないのだろうと思うが。  なお監督は厳しい人物ということのようで、メイキングを見ると確かに厳しい言い方をしているが、キレて暴言を吐いているわけでもなく、まあ普通に厳しい指導の範囲に見える。刑事役の俳優がインタビューで語っていたところでは、自分がこれまでの現場で言われるべきことを言われずに来たのをあえて言ってくれる監督とのことで、これを聞くと逆にいまの制作現場の雰囲気が想像されるものがある。完成品を見たからこそ言えるのかも知れないが、役者がちゃんと本を読んできたのか怪しく思える場面もあって、これでは怒られても仕方ないと笑ってしまった。このメイキングも少し面白い。
[DVD(邦画)] 6点(2015-09-26 19:09:24)
20.  半分の月がのぼる空 《ネタバレ》 
登場人物の伊勢弁?が耳慣れない感じで珍しい。 原作は読んでないので比較できないが、時間の流れに沿ってそのままであれば割と平凡なお話だったところ、前後を組み替えて再構成したのは効果的である。死ぬ物語でなく生きる物語というのは恐らく原作由来なのだろうが、ラストでまた月明かりの病室に戻ったことでそれがより強調されていたように思われる(舞台セットとライトは不要だが)。 しかし見ていて引っかかる点はかなり多い。例えば序盤の「命令」は若年者受けを狙った女王様設定のようで必然性が感じられず、それを終盤で忘れた頃になって再現されても冷やかな目でしか見られない。そのため、ここから導かれた医師の再出発(及び娘の存在の再認識)という点にも共感する気にならなかったのは残念なことである。加えて全般的に都合の良すぎる安易な展開が非常に多いのも困ったことだった。  それでも演劇の場面など、けっこう心和む(笑う)ところも多い。舞台での「私も」という台詞は原作由来かどうか知らないが、自分としてはこれが最大の泣き笑いポイントだった。また若年かつ病人のためあくまで清純でほのぼのした関係にとどまっているが、そのためかえってフトンの中で二人きりのドキドキ感が生じてしまう。 この場面をはじめとして、ヒロインの円い感じの笑顔(変な表現だが)は見ているだけで嬉しくなる。この笑顔が、生きていてよかった、という実感の表現になっていたのは間違いないことで、これがこの映画の大きな価値と思われる。全体としては感心しないところも多いが、このヒロインのために評点は少しいい方にしておく。娘の「笑ってるやん」もよかった。
[DVD(邦画)] 6点(2015-08-23 23:47:53)(良:2票)
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