21. 豚と軍艦
それぞれの出来事のつながりが把握しづらかったが、映像は圧倒的だった。主人公たちの存在を拡散するかのように画面のあちこちで動き回る人々が、街中に溢れかえった豚の姿に変わったとき、この映画が伝えようとしていることの全てはここに集約されてしまうのではないかと思った。皆が生き残ろうと必死になっているが、そこには何らの秩序もなく、そのことに疑問を感じ立ち止まる者などひとりもいない。人間がとても活き活きと描かれていながらも、どこか皮肉を感じてしまう。 [DVD(邦画)] 8点(2007-08-21 23:11:49) |
22. あしたの私のつくり方
《ネタバレ》 高校生くらいの女の子にとって、家庭とか友人関係というものはママゴトのようなものなんだろうか。主人公たちはママゴトの役を降りて本当の自分を生きることを選んだが、現実ではそこで「本当の自分って何?」という問題が浮上してしまいそうだ。 [映画館(邦画)] 6点(2007-08-18 11:11:14) |
23. 田園に死す
ノスタルジアにつきまとう記憶の美化によって隠蔽された事実を暴き、真剣に過去と向き合おうとしても、過去が記憶という曖昧なものによってしか現れてこない以上、過去を否定することは、記憶によって形成された自己を否定することになってしまうのではないか。そんなことを考えさせられた。独特の色使いが良い。『書を捨てよ町に出よう』のときよりずっと洗練された感じがする。 [DVD(邦画)] 9点(2007-08-18 10:52:12) |
24. 股旅
冒頭の儀式こそ興味を引いたものの、後の展開には特に目を見張るようなものがなかった。主人公たちが非人道的なことを仕方がないからとやってのける箇所や、あっけないラストは当時の時代性を表しているようだが、今となっては色褪せて見えてしまうものなんだろうか。 [DVD(邦画)] 6点(2007-08-13 01:17:48) |
25. 竜馬暗殺
《ネタバレ》 倒幕を掲げながらも色情にかまけたり、口論から殺し合いを始めたかと思えばふとしたきっかけで中断してしまったり、野放図な展開が良い。これは、原田芳雄扮する竜馬の気負いのなさに拠る所が大きいのはもちろんだが、映画のスタイルもそういった雰囲気を醸し出すのに一役買っていたように思う。白黒の粗い映像とか、走って行く人物を手持ちカメラで追ったりするなど、ドキュメンタリー的な要素を取り入れることによって躍動感を生み出し、それぞれの登場人物の様子が活き活きと描いている。時代劇というと、少なくとも僕が今までに観た中では、ある種の様式的な美しさが強調されてきたように思える。活劇という形を取りながらも、そうした潮流を撥ね除けてみせた点で、この映画はとても新鮮に感じられた。30年以上も前に作られた映画を新鮮だと言うのもおかしな話ではあるが。 [DVD(邦画)] 9点(2007-08-08 02:02:16) |
26. にっぽん昆虫記
《ネタバレ》 冒頭のマイマイカブリがラストで山を登って行くとめの姿だとすれば、随分と身も蓋もない映画だなと見終わった後すぐに思った。志を持って生きようとしながらも、欲望に取り込まれ、最終的には生きていればそれでいいというような境地にまで堕ちて行くこと自体は肯定的に捉えていない。しかし、最後のとめの描写には確かにどこか突き抜けた感があり、力強さを感じてしまう。生きるということに対して得体の知れない感情を喚起させる、不思議な映画だった。 [ビデオ(邦画)] 8点(2007-08-08 01:24:28) |
27. 復讐するは我にあり
人間の醜悪な部分を徹底的に描いてみせていたと思う。序盤の殺しのシーンで、殺される人たちの最期の抵抗が間抜けに見えたのが気になっていたが、最後まで観て妙に納得してしまった。人々の良心の欠如が巌を殺人鬼に仕立て上げていたように感じられたから。最期に何度も繰り返されるストップ・モーションでは、そのことを僕自身が突きつけてられているようでぞっとした。 [DVD(邦画)] 8点(2007-08-01 01:45:50) |