461. 荷車の歌
山本薩夫監督の作品って、どうも息苦しくて、それほど好みではないが、力作が多いため、力ずくでその作品に引き込まれてしまう。 本作も、紛れもなく力作であった。 三國連太郎の演技は相変わらず素晴らしい。 脇を固める出演陣も渾身の演技をみせる。 山本監督が、本作を完成させる為に、相当の労力を費やしたというのも頷ける、素晴らしい演出である。 [DVD(邦画)] 7点(2008-05-07 19:57:25) |
462. 恋の花咲く 伊豆の踊子
《ネタバレ》 川端康成の文芸小説『伊豆の踊子』は、何度か製作されているが、本作が一番最初に製作されたものである。 1930年代の作品だけあって、保存状態も悪く、やや退屈する部分もあるが、ラストはとても心を打たれた。 人間にとって「愛」というものがいかに大きな存在かを、非常に切なく叙情的に語っている。 好きな人の幸せを願うが故に、自分はその好きな人の前から去ることを決意する。 でも、それって本当に相手の幸せにつながるのだろうか?? 人は、本当に愛する人と結ばれればこそ、幸せになれるのではないだろうか?? そういったことを、ふと真剣に考えてしまった。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-05-07 19:51:09) |
463. 人間魚雷回天
《ネタバレ》 『雲ながるる果てに』を観た後では、残念ながら同じ展開に少し飽きがきたのは事実。 しかし、凄まじいまでの反戦映画だ。 現代の人間はこの様な反戦映画をもっと観るべき。 どんな説教や授業なんかよりも、よほど真に迫るものがある。 戦争がいかに残酷で無用なものかを、ここまでハッキリと観る者に訴えかけてくる作品はそうにない。 こういった救いようのない話は、個人的好みには合わない。 しかし、一度は観るべき作品として、皆様に推奨したい作品である。 そういった救いようのない話の中で、唯一、純粋に心打たれたのが、木村功の海辺での最後のロマンス。 これにはまいった。 あまりに哀しすぎる。 平和な時代に生まれた有り難味を、非常に実感することができた。 愛する人を大切にしたい。 生きていることの喜びをもっと堪能したい。 明日への活力をそういった意味で得ることができた。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-04-19 19:38:02) |
464. ビルマの竪琴(1956)
市川崑監督の代表作に恥じない高いレベルの作品でした。 桟橋において、あの距離でかつての同志とすれ違ったなら、さすがに気付くでしょうに、ってツッコミは置いておいて、2時間たっぷり楽しめました。 [DVD(邦画)] 7点(2008-04-14 00:18:42) |
465. 彼岸花
《ネタバレ》 “メタボ”佐分利信。 星野仙一バリ、田中角栄バリのカミナリ親父ぶりを十二分に発揮。 最初は悪役に回り、最後は従順な一面を見せて、父親としての理解を示す。 まあ、小津作品を見慣れた人ならすぐに予想できる内容です。 しかしながら、内容が読めるとか読めないとか、そんなことは小津作品を観るに当たっては、さして重要なことではありません。 小津ならではの様式美に支えられた画面の中で、ゆっくりと進行する人情劇に気持ち良く身を委ねれば良いのです。 それにしても、会話のシーンがとても個性的というか、ぎこちないというか。 もちろん、小津監督は狙って演出しているのですが、これは何度観ても、なかなか慣れることができません。 というか、いつから小津監督の撮る作品は、こんな感じになったのでしょうか。 完成された小津様式といったところなんでしょうが、画面がセリフごとに忙しなく入れ替わる、あの撮り方は一体、どんな意図があるんでしょうか。 まあ、それはそれとして、小津監督の後期カラー作品は、色鮮やかでとにかく綺麗です。 あんなカラー映像を撮れる監督は、世界広しと言えど、小津監督しかいないでしょう。 本作は、遺作である『秋刀魚の味』と似たテイストの作品ですが、個人的には、テンポ良く、小気味良く進んでいく『秋刀魚の味』の方が好きですね。 本作はさすがにゆったり過ぎたような気もします。 でも久我美子を、あんなチョイ役に使うだなんて、なんて贅沢な作品なんでしょう・・・ [DVD(邦画)] 7点(2008-04-11 22:18:39) |
466. 私は貝になりたい(1959)
《ネタバレ》 これは真に迫った物凄い作品だ。 日本軍の末端たる二等兵が、上官からの命令により人を殺し、その罪が問われて死刑に処せられる。 縦社会の日本軍内で、上官に逆らうことなどできようはずもない。 つまり、フランキー堺演ずる主人公は、死刑というものから逃れようもなかったわけだ。 何たる悲劇。 戦争の愚かさと残酷さを、深刻に考えさせられた。 だが、何分、後味が悪すぎる。 戦争の何たるかについて真剣に考えさせられるし、フランキー堺の名演もあって、素晴らしい作品だが、とにもかくにも後味が悪すぎる。 あー、辛い。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-04-10 23:41:12) |
467. わが町(1956)
《ネタバレ》 父と娘のビンタの応酬。 これには思わず声をあげてしまった。 その後、父は街で若者にからまれ大怪我を負う。 病床にて、父は言う。 「娘から殴られたのが何より痛かった。」 この言葉には感動した。 川島雄三っぽさは比較的薄い本作だが、非常に完成度の高い人情劇だ。 それにしても、南田洋子の若い頃って美しいなぁ。 それを再認識した。 [DVD(邦画)] 7点(2008-04-08 13:15:08)(良:1票) |
468. 地獄門
カンヌで最高賞を取った作品を是非観てみたい!ということで鑑賞。 まず長谷川一夫。 私はこの人が苦手。 下膨れだし、大げさだし、オカマっぽい。 そして京マチ子。 私はこの人も苦手。 下膨れだし、気味も悪い。 つまりは、私にとって最悪のキャスティング。 だけど、楽しめた。 これは自分でも驚き。 まず極彩色のイーストマン・カラーが素晴らしい! まばゆいほどの色鮮やかさ。 そして、そのカラーに映える衣装の数々。 また、音楽も素晴らしい。 重厚で迫力のある音楽。 本作で音楽を担当している芥川也寸志って、今まであんまり好きじゃなかったんだけど、かなり見直した。 ストーリー自体はとってもシンプルで、どこかで見聞きした様な型通りのものだったが、映像と音楽による効果がそれを非凡なものに変えた。 この時代の日本映画はやっぱり凄かった。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-04-02 01:32:32) |
469. へそくり社長
森繁久彌がふざけまくると思いきや、意外や根は真面目な役だった。 社長挨拶なんて真面目そのもの。 喜劇のイメージがあったので、とても意外だった。 後に加東大介が加わるこのシリーズだが、本作ではまだ出演しておらず、そこが少し物足りない。 しかし、その後のドル箱シリーズとなる第一作目とあって、なかなかの完成度。 そつなく楽しませる良作だった。 でもなぁ・・・ なんか仕事を思い出してしまうのがネックだ。 サラリーマン社会の辛さ哀しさも散りばめられているからだ。 それが良いと言えば良いのかもしれないが、どうも観ていて仕事を思い出してしまうなぁ。 [DVD(邦画)] 7点(2008-04-01 19:17:02) |
470. 太陽を盗んだ男
後半の緊迫感はかなりのもの。 『青春の殺人者』同様、パワー漲った作品だった。 1970年代の東京。 それも西新宿や渋谷東急などが舞台となっており、興味を持って観ることができた。 この監督が、本作以後、全く監督業をしていないのが残念だ。 それにしても、長谷川和彦監督は映像センスと音楽センスがどうもなぁ。 緊迫感重視で、最後まで力で持っていく監督だ。 最初はそのパワーにグイグイと牽引されるものの、観ているうちにそのパワーに慣れてしまい、後半が間延びしていると感じる御仁も多いことだろう。 欠点もあるが、愛すべき監督である。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-03-29 10:12:10) |
471. 蛇イチゴ
《ネタバレ》 不思議と最後まで観てしまう力を持った作品だ。 それだけ観る者を作品世界へ吸引する力を持った作品と言えるであろう。 表層的にいたって平凡で幸福な家庭が、ある日突然ガタガタと音をたてて崩壊していく。 その様を、非常に緻密に巧く描いている。 この巧さは、今日の日本映画界において傑出している。 そして女性を美しく撮る監督さんだ。 女性なのに、何故か男性が興奮するような女性の撮り方をする。 興奮とは言っても、決してエロティックな意味ではなく、純粋に女性を美しく撮るのだ。 「なんて美しいのだろう」 と、観ているこちらは興奮するわけである。 女性が女性を美しく撮ったというものではなく、それは明らかに男性目線の美しさ。 この監督って、レズビアンなんじゃないか?と疑ってしまう程に、驚くほど男性が女性を撮るような形で、女性を美しく撮るのだ。 ところで本作だが、少々解りにくさが無いわけではない。 最後の終わらせ方も、明解というわけではなく、観るものの想像に委ねる様な形の終わらせ方。 でも、これが余韻を残し、なかなか良い。 本当に、巧い監督さんだなぁ、と感心してしまった。 脚本家としての巧さ、監督としての女性を美しく撮る巧さ。 それらを併せ持った天才女流監督だ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-03-25 23:39:58) |
472. 妻(1953)
《ネタバレ》 成瀬映画に上原謙との取り合わせ。 これだけでもう、ハズレなんかあり得ません。 上原謙のダメ男ぶりも観ていて気分が良くなるくらいハマっています。 しかしまぁ、 高峰三枝子が・・・ 元々、あまり好きな女優さんではないのですが、その嫌なイメージを増幅させる役を演じています。 煎餅をボリボリ、お茶でうがい。 こりゃ、夫としてはたまりません。 上原謙のごとく、観ている私までイライラしてきました。 ここまでイラつく「妻」を演じた高峰三枝子は、ある意味凄い。 彼女の演技の成せるワザなのか? それとも単なる地か? いずれにしてもウザ過ぎます! しかし、本作を観ていて少しシックリこなかった部分がありました。 それは上原謙が浮気をして、結局、浮気相手の女性にフラれてしまう部分です。 これがどうも唐突ですし、理由が良く解りません。 なんか強引に、「元のサヤに戻る夫婦」という成瀬映画のパターンに持っていった様な気がします。 これが強引すぎて、どうも最後はシックリとこなかったのです。 上原謙をはじめ、雰囲気は非常に“成瀬していて”で良いのですが、このストーリー展開の無理が気になりました。 それでも十分楽しめるところは、さすが成瀬監督ですね! [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-03-21 21:10:11) |
473. サッド ヴァケイション
前作にあたる『Helpless』ほどの出来ではないにしろ、なかなか楽しめました。 青山監督の作品は、最近不作続きでしたが、やはりこの『Helpless』が良かっただけに、ここは外れませんでしたね。 キャストがなかなか豪華で、それも楽しめました。 又、斉藤陽一郎を出してくれたのが嬉しかったですね。 光石研との掛け合いもサイコーでした。 ああいう力の抜けたやり取り、会話のシーンは自分好みです。 浅野忠信にそういう会話シーンをさせるとピカイチなんですが、本作でのキャラがそれを許さなかったのが残念です。 それにしても『ユリイカ』まで混ぜてしまう脚本はどうなんでしょうか? やり過ぎの様な気もしましたが・・・ [映画館(邦画)] 7点(2008-03-15 23:55:29) |
474. 鏡心
ご覧の様に、石井聰亙監督が全てを担当した、自主映画の様な作品です。 しかし、そこは石井聰亙監督の力ですから、凡作にはなっていません。 映像で語る作品なのですが、これが素晴らしい映像美! はっきり言って、出演者の演技とセリフはいらない感じ。 それだけ映像が綺麗で素晴らしい。 『狂い咲きサンダーロード』の様な荒削りな作品を撮った監督とは思えない、洗練された作品に仕上がっています。 万人にオススメできる作品ではないかもしれませんが、映像重視の映画ファンの方には絶対オススメしたい作品です。 もちろん石井聰亙ファンの方は必見です。 [DVD(邦画)] 7点(2008-03-14 00:18:21) |
475. にあんちゃん
《ネタバレ》 今村昌平作品にしては、性描写が全くない。 これにまず驚き。 しかし、今村監督ならではの“泥くさい描写”は健在である。 田舎町の泥臭さをストレートに映像に焼き付けている。 「にあんちゃん」が貧しくて厳しい環境ながら、未来に希望をもって敢然と山を登るラストシーン。 これは北野武監督作品『キッズ・リターン』のラストシーンを思わせる素晴らしいシーンである。 どんな苦しい環境においても、「希望」を持ってさえいれば、人生が「終わった」ということにはならない。 苦境に立たされても、熱い「希望」を決して捨ててはならない。 「希望」を持つことこそが、生きる上で非常に大切であり、生きる喜びの源泉となり得ることを、本作は雄弁に物語っている。 力をもらえる、心に残る良作であった。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-03-08 19:32:49) |
476. 剣
《ネタバレ》 時代劇だと思って観始めたのに、実は現代劇だったということで、完全に予想を裏切られた。 でも、私は時代劇での雷蔵より、現代劇での雷蔵の方が好きなので、私にとってこれは良い意味での裏切りだった。 本作での雷蔵の役回りは、まさに三島由紀夫の生き写しの様なキャラ。 自分が命を賭けて取り組んだものに挫折を感じたならば、死すことも厭わない。 完全にスポコンものの本作であるので、雷蔵のキャラは熱血だ。 クールな役柄が多い雷蔵なのに、見事に演じきっていた。 しかも、少しも違和感がない。 禁欲主義者で、女性の誘惑に一切乗らない。 女性に乗らないのだ。 こういうキャラを演じても、少しも違和感がないのに、女好きの好色男を演じさせても違和感なくこなす雷蔵は、まさに天才だ。 熱血で禁欲的な男と、クールで女好きの男。 この対極的な男を、完璧に演じ分けることのできる俳優、市川雷蔵。 前にも増してファンになった。 本作は、内容はまずまずのレベルだが、雷蔵ファンなら必見の三隅作品であろう。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-03-03 00:05:47)(良:1票) |
477. キクとイサム
《ネタバレ》 まずは、北林谷栄が40代だったというのが驚き! しかも、まだご存命とのことですし。 こりゃ、凄い! 話はやや重くて暗いものがあるが、ユーモラスな描写も多く、なかなか楽しめた。 [DVD(邦画)] 7点(2008-03-02 15:59:31) |
478. 風の中の牝雞
《ネタバレ》 この作品は小津的ではなく、むしろ溝口的な作品である。 それは主演が田中絹代だからという理由によるものではない。 内容的に溝口的なのだ。 田中絹代演じる女性は、ひたすら健気である。 夫(佐野周二)がどんなに酷い仕打ちをしようとも、「自分が悪いのです」と言う。 これは観ていて辛い。 ここまで健気だと、観ていて辛いのだ。 途中まで「何と救いようのない暗い話だろう」と思って観ていたが、終わってみれば、心にじんわりしみいる、なかなかの良作であった。 夫婦の間で、どんな問題がおきようとも、「互いをより深く愛する気持ちを持て」ば、乗り越えられる。 ラストで語られる佐野周二のこのセリフが胸を打った。 「深く愛する気持ち」。 確かに夫婦がより深く理解し、末永く幸せにやっていくには大切な姿勢なのではないだろうか。 とても考えさせられる作品だった。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-26 21:13:01) |
479. 雄呂血
80分という短い尺に加え、頭から最後までスピーディに見せるので、最後まで楽しむことができた。 バンツマがどうこうより、作品としてまず面白いし、出来が良い。 評判だけでイマイチだった『赤西蠣太』なんかよりは、評判に内容が伴っていて、素直に楽しめた。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-24 17:14:13) |
480. 小早川家の秋
《ネタバレ》 ぬは~、見よ!このオールキャストぶりを! 中村鴈治郎、小林桂樹、原節子、新珠三千代、司葉子、森繁久彌、加東大介、杉村春子、浪花千栄子、宝田明、白川由美、藤木悠、そして笠智衆! 惚れ惚れする程のメンバー。 いやぁ、これだけで満足。 だけど、なんだかコレ、小津っぽくない。 家族構成の複雑さといい、出演者のラインナップといい、なんだか成瀬っぽい。 だけど、画的にはこれ以上なく小津してる。 最後にオヤジさんが亡くなるところも、見事に小津。 一度は復活するところなんぞ、一ひねりあって面白かったが。 (森繁久彌) モリシゲって、小津作品に全然染まってない。 まるっきり、モリシゲのまんま。 これは凄い。 (原節子) この人の、あの微笑み。 やっぱり私にとっては気持ちが悪い。 (司葉子) 髪型微妙だけど、スタイルはやっぱり最高。 (新珠三千代) あらー、タマ(猫)、道よ。 こんなに脚が綺麗だとは! あの、かかとは嬉しすぎる。 (加東大介) ますますもって、不健康オヤジ。 顔のむくみ方がヤバすぎ。 (浪花千栄子) 元々おばあちゃんぽかったが、本作では本当におばあちゃんに見えた。 翌年の遺作、『秋刀魚の味』ほどではないけれど、なかなかの出来。 だけど、最後は不気味すぎ。 あの葬列に、あのカラスに、あの笠智衆のセリフに、あの音楽。 後味はよろしくない。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-18 22:11:33) |