1181. にあんちゃん
《ネタバレ》 今村昌平作品にしては、性描写が全くない。 これにまず驚き。 しかし、今村監督ならではの“泥くさい描写”は健在である。 田舎町の泥臭さをストレートに映像に焼き付けている。 「にあんちゃん」が貧しくて厳しい環境ながら、未来に希望をもって敢然と山を登るラストシーン。 これは北野武監督作品『キッズ・リターン』のラストシーンを思わせる素晴らしいシーンである。 どんな苦しい環境においても、「希望」を持ってさえいれば、人生が「終わった」ということにはならない。 苦境に立たされても、熱い「希望」を決して捨ててはならない。 「希望」を持つことこそが、生きる上で非常に大切であり、生きる喜びの源泉となり得ることを、本作は雄弁に物語っている。 力をもらえる、心に残る良作であった。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-03-08 19:32:49) |
1182. 魔像(1952)
《ネタバレ》 ベタベタのチャンバラ喜劇。 個人的に苦手な系統の時代劇。 ただし、津島恵子の美しさは特筆モノ! おかしいなぁ、彼女の出演作を観るのは初めてじゃないのに、今までこんなに美しいと感じたことはなかった。 これは監督の手腕のせいか?! 今一度、その美しさに注目したい女優となった。 [ビデオ(邦画)] 5点(2008-03-03 23:03:19) |
1183. 剣
《ネタバレ》 時代劇だと思って観始めたのに、実は現代劇だったということで、完全に予想を裏切られた。 でも、私は時代劇での雷蔵より、現代劇での雷蔵の方が好きなので、私にとってこれは良い意味での裏切りだった。 本作での雷蔵の役回りは、まさに三島由紀夫の生き写しの様なキャラ。 自分が命を賭けて取り組んだものに挫折を感じたならば、死すことも厭わない。 完全にスポコンものの本作であるので、雷蔵のキャラは熱血だ。 クールな役柄が多い雷蔵なのに、見事に演じきっていた。 しかも、少しも違和感がない。 禁欲主義者で、女性の誘惑に一切乗らない。 女性に乗らないのだ。 こういうキャラを演じても、少しも違和感がないのに、女好きの好色男を演じさせても違和感なくこなす雷蔵は、まさに天才だ。 熱血で禁欲的な男と、クールで女好きの男。 この対極的な男を、完璧に演じ分けることのできる俳優、市川雷蔵。 前にも増してファンになった。 本作は、内容はまずまずのレベルだが、雷蔵ファンなら必見の三隅作品であろう。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-03-03 00:05:47)(良:1票) |
1184. 雲ながるる果てに(1953)
《ネタバレ》 “カミカゼ特攻隊”の特攻までの数日をドキュメンタリー・タッチで描いた本作。 戦争の悲惨に関わる史実を、忠実に描いたことに関しては賞賛に値するし、何より反戦的な訴えも見事に表現されている。 しかしながら、そもそもお国の為に命を捧げるということ、それ自体に嫌悪感を持っている私は、最後まで感情移入できなかった。 こういう悲惨な事実が戦争中にはあった。 それはよく伝わるが、個人的好みとして、感情移入しがたい戦時中の「天皇万歳」的な悪しき風潮は、観ていて不快感が募りっぱなしであった。 [ビデオ(邦画)] 5点(2008-03-02 23:44:50) |
1185. キクとイサム
《ネタバレ》 まずは、北林谷栄が40代だったというのが驚き! しかも、まだご存命とのことですし。 こりゃ、凄い! 話はやや重くて暗いものがあるが、ユーモラスな描写も多く、なかなか楽しめた。 [DVD(邦画)] 7点(2008-03-02 15:59:31) |
1186. 風の中の牝雞
《ネタバレ》 この作品は小津的ではなく、むしろ溝口的な作品である。 それは主演が田中絹代だからという理由によるものではない。 内容的に溝口的なのだ。 田中絹代演じる女性は、ひたすら健気である。 夫(佐野周二)がどんなに酷い仕打ちをしようとも、「自分が悪いのです」と言う。 これは観ていて辛い。 ここまで健気だと、観ていて辛いのだ。 途中まで「何と救いようのない暗い話だろう」と思って観ていたが、終わってみれば、心にじんわりしみいる、なかなかの良作であった。 夫婦の間で、どんな問題がおきようとも、「互いをより深く愛する気持ちを持て」ば、乗り越えられる。 ラストで語られる佐野周二のこのセリフが胸を打った。 「深く愛する気持ち」。 確かに夫婦がより深く理解し、末永く幸せにやっていくには大切な姿勢なのではないだろうか。 とても考えさせられる作品だった。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-26 21:13:01) |
1187. 夢野久作の少女地獄
《ネタバレ》 映画館にて、“わざわざ”鑑賞。 観るに足らない作品。 日活ロマンポルノのレベルの低さを初体験。 苦痛きわまりない。 特にヒロインがブサイク。 しかも女子高生に見えないほど老けている。 「火星さん」というあだ名も不快感だけが募る。 ラストも、上手く収めることができず、ぐちゃぐちゃになって、そのまま放置した感じ。 しょーもない映画だった。 [映画館(邦画)] 2点(2008-02-25 21:41:24) |
1188. 雄呂血
80分という短い尺に加え、頭から最後までスピーディに見せるので、最後まで楽しむことができた。 バンツマがどうこうより、作品としてまず面白いし、出来が良い。 評判だけでイマイチだった『赤西蠣太』なんかよりは、評判に内容が伴っていて、素直に楽しめた。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-24 17:14:13) |
1189. プーサン
伊藤雄之助がとにかく凄い! 男の哀愁が体全身に漂っています。 伊藤雄之助って、こんなにも凄い俳優だったんですね。 いやぁ、感服いたしました。 そして加東大介も、本作では特に魅力を発していました。 元々好きな俳優ですが、本作の加東大介は、事のほか良かったです。 院長室での伊藤雄之助とのやりとり、電車の中での女性二人に挟まれた時の表情などなど、面白すぎです。 市川崑監督の作品って、あまり本数観ていないんですが、初期にこの様な素晴らしい作品を撮っているんですね! なんかハマりそうな予感がします。 [映画館(邦画)] 8点(2008-02-24 01:10:28) |
1190. 小早川家の秋
《ネタバレ》 ぬは~、見よ!このオールキャストぶりを! 中村鴈治郎、小林桂樹、原節子、新珠三千代、司葉子、森繁久彌、加東大介、杉村春子、浪花千栄子、宝田明、白川由美、藤木悠、そして笠智衆! 惚れ惚れする程のメンバー。 いやぁ、これだけで満足。 だけど、なんだかコレ、小津っぽくない。 家族構成の複雑さといい、出演者のラインナップといい、なんだか成瀬っぽい。 だけど、画的にはこれ以上なく小津してる。 最後にオヤジさんが亡くなるところも、見事に小津。 一度は復活するところなんぞ、一ひねりあって面白かったが。 (森繁久彌) モリシゲって、小津作品に全然染まってない。 まるっきり、モリシゲのまんま。 これは凄い。 (原節子) この人の、あの微笑み。 やっぱり私にとっては気持ちが悪い。 (司葉子) 髪型微妙だけど、スタイルはやっぱり最高。 (新珠三千代) あらー、タマ(猫)、道よ。 こんなに脚が綺麗だとは! あの、かかとは嬉しすぎる。 (加東大介) ますますもって、不健康オヤジ。 顔のむくみ方がヤバすぎ。 (浪花千栄子) 元々おばあちゃんぽかったが、本作では本当におばあちゃんに見えた。 翌年の遺作、『秋刀魚の味』ほどではないけれど、なかなかの出来。 だけど、最後は不気味すぎ。 あの葬列に、あのカラスに、あの笠智衆のセリフに、あの音楽。 後味はよろしくない。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-18 22:11:33) |
1191. 愛のお荷物
なんと豪華な出演陣! 山村聡、三橋達也、フランキー堺、山田五十鈴。 それぞれ個性を満面に打ち出していて楽しい。 テンポ良く最後まで観られるのが魅力。 また、人口増加というシリアスな問題が背景にあるのに、まるっきり暗さがなく、川島監督の上手さが伺える。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-17 18:28:13) |
1192. 長屋紳士録
飯田蝶子と吉川満子の二人が中心という時点で、少しテンションが落ちた。 笠智衆が珍しく歳相応の役をしていて新鮮味アリ。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-02-16 08:22:56) |
1193. 喜劇 逆転旅行
佐藤友美が凄い! 脚線美が凄い! ノースリーブから伸びる細い腕が凄い! チラリと見える八重歯が凄い! ハスキーボイスが凄い! 髪の毛が綺麗過ぎて凄い! 完璧! 佐藤友美の美しさにメロメロでした。 そしてフランキー堺。 もう、彼の独壇場。 面白すぎ。 いちいち面白い。 ちょっとした仕草だけでも笑えてしまう。 ゲラゲラ笑い転げる程の面白さ。 こりゃー、久しぶりに凄面白い日本映画を観れました。 いやー、今日はよく眠れるぞ! 日頃のストレスが吹っ飛んだ気がします。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-02-12 23:38:36) |
1194. 花とアリス〈劇場版〉
岩井俊二監督、いつの間にこんなまともな作品を撮るようになったのか。 結構、ストレートな青春モノで驚いた。 岩井監督の十八番、ゲテモノ的な物や登場人物がほとんど登場しない。 そういう意味で新鮮味があった。 蒼井優のバレエシーンに固唾をのんだ。 美しい。 最後の脚を上げるシーンは、彼女本人か、それとも代役が演じたのか。 遠目でよく分からず。 それにしても、鈴木杏の魅力の無さ加減にはびっくり。 役柄のせいもあるが、あれはキツい。 主演の俳優も全く男としての魅力がなく、中心に据えるには無理があった。 蒼井優と言えば『フラガール』だが、あの感動のフラダンスの下敷きになったのが、もしや本作のバレエシーンなのでは?? だとすれば、岩井監督は先見の目がある。 本作には、そこかしこにユーモアが散りばめられている。 これが微妙な笑いを誘い、岩井監督のユーモアセンスの高さを伺わせる。 この絶妙なるさじ加減のユーモア演出に反応できないと、本作を楽しむのは難しいのではないだろうか。 単なる女のコが楽しむ映画と簡単には片付けられないクオリティを感じた。 岩井監督は元々そんなに好きな監督ではなかったが、本作でかなりイメージが良くなった。 おまけだが、広末涼子。 カッチリきめた彼女のスーツ姿が観られたのは嬉しかった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-02-08 13:45:22) |
1195. 天使の卵(2006)
《ネタバレ》 本作に高得点はつけようがない、といったところか。 それだけ、作りが稚拙、ベタ。 小西真奈美、いや、こにたんを目当てで鑑賞したので、それでもそれなりに満足はできた。 こにたんが好きな人なら、ストーリーや演出には目をつぶって観ましょう。 きっと楽しめるはず? さて、更に言うと、セリフ回しがとにかく酷い。 学芸会に毛の生えたレベル。 ただし、唯一凄かったシーンがある。 それは、山を望む廃屋屋上での長回しシーン。 長い長い。 長ければいいってもんじゃないかもしれないけど、あれには感心した。 そして、沢尻エリカ。 本作では純真な妹を演じていて、非常に好印象。 とてもかわいい。 教師役におけるスーツ姿がグッド。 タイトスカートが眩しかった。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2008-02-08 08:48:29) |
1196. ゆれる
《ネタバレ》 西川美和監督、凄い実力です。 師匠の是枝裕和監督を既に抜いていますね。 しかしながら、純粋に脚本としてみるとシックリこない部分があります。 結局、事実としては「手を差し伸べたが落ちてしまった」だと思われますが(兄の手の傷から)、それに対し、法廷で最終的に「突き落とした」と偽証した弟を、あのバス停で笑顔で迎えるには、さすがに無理があります。 ただし、もしかしたら、兄は弟を心理的に揺さぶることによって、何かを弟に伝え、そして弟はそれをきっかけに兄を理解した。 その満足の結果として、あの笑顔がもれた。 そう考えることもできます。 ただ、これは前述した通り、7年もの刑期を負わされた兄が、そこまで弟を良心的に解釈するには無理があり、説得力を欠くと個人的に感じました。 しかし、ここまで観た後に、考えさせられる時点で、西川監督に見事に翻弄されているのです。 そういう意味で、脚本的には少々無理があるものの、西川監督の並々ならぬ実力に感服しました。 この女流監督の今後の活躍に目がはなせませんね。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-02-07 18:49:29)(良:1票) |
1197. あにいもうと(1953)
《ネタバレ》 森雅之だが、本作では職人風情の荒っぽい男を演じていた。 これがどうも無理があるように見えてならない。 熱演により、何とかそれらしくは見えたが、ミスキャストなのは否定できないところ。 やはり、森雅之には「脂ぎった陰気なオヤジ」が良く似合う。 しかしながら、「妹を本心では愛しつつも、表向きは邪険に振舞い、そして妹を孕ませた船越英二を殴り飛ばす」、このシーンには感動できた。 京マチ子だが、以前からどうも苦手な女優だ。 ボリュームがありすぎるし、どうも好みに合わない。 むしろ、気持ち悪いとさえ感じてしまう。 久我美子だが、やっぱりナインティナインの岡村に似ていた。 浦辺粂子は実にいい味を出していた。 野暮ったくてノロマな田舎のばあちゃんだけど、実に人情味があって、家族思い。 そんな役をこれ以上なく自然に演じていて見事だった。 特別に出来がいい成瀬作品とは思わないが、パワーを感じた。 成瀬作品としては、力作の部類に入るのではないだろうか。 [DVD(邦画)] 7点(2008-02-06 14:39:43)(良:1票) |
1198. ツィゴイネルワイゼン
第一に面白くない。 そしていかにもな映像センスが自分とは合わない。 更に、原田芳雄が苦手。 大楠道代も楠田枝里子の様で気持ちが悪い。 だけど、不思議と印象に残る作品だ。 この特別な印象こそが、本作が高く評価される源なのかもしれないが、その良さを十分には理解できなかった。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-02-05 19:03:37) |
1199. 戸田家の兄妹
《ネタバレ》 前半は面白くなかったが、しり上がりに良くなった。 特に、ラスト付近の佐分利信が軽薄な兄妹たちを豪快に追っ払うシーン。 そして、熱心に母や妹を説得し、中国の天津に希望を持って誘うシーン。 これらのシーンはとても良かった。 でもこういう家族内のいざこざや女性同士の問答を内容とする作品であれば、成瀬巳喜男監督なら、もっと上手く撮ったのではないか。 小津監督は、カラっとしたコメディタッチなものを撮らせると最高に上手い監督だし。 成瀬監督は沢山の作品を撮っているから、本作の様なテーマと似た作品を既に撮っているかもしれないけど、本作の成瀬バージョンを観てみたい気がする。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-05 00:35:14) |
1200. 破れ太鼓
まず阪妻。 凄まじい存在感! これぞニッポンの雷オヤジ! 息子役の森雅之が「こわぃ、オヤジだなぁ・・・」とつぶやくのが愉快、そして納得。 あの森雅之を子供扱いにする阪妻の迫力は流石。 そして次女役の桂木洋子。 本作でもやっぱり可愛いかった。 いつも思うが、桂木洋子って若い頃の「いとうまいこ」(若い頃の芸名は「伊藤麻衣子」)に声も雰囲気もソックリな気がする。 又、妻役の村瀬幸子だが、観ている間中ずっと沢村貞子に似てるなぁ、と思っていた。 そしてラスト付近で、その妹だが姉だか「おばさん」役の、当の沢村貞子が登場。 これにはビックリ。 やはり似ている。 そしてこの似ている二人を姉妹にもってきたのが、また良い。 阪妻に話を戻すと、前述した「存在感」や「迫力」といったものを前面に出しながらも、同時に「コミカルさ」や「人間の弱さ」なども滲ませている。 これは阪妻の天性のものか、それとも演技によるものか。 いずれにしても、凄い俳優だ。 阪妻の出演作には傑作が多いのがよく理解できた。 阪妻という俳優は、その一人の力で、作品全体を傑作にまで至らしめるパワーと実力を持った俳優なのだ。 傍若無人な大太鼓。 哀愁漂う破れ太鼓。 両方を見事に演じ分けた阪妻の演技に、ただただ敬服するばかりである。 [DVD(邦画)] 8点(2008-02-03 09:03:19)(良:1票) |