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delft-Qさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 122
性別 男性
自己紹介 自分の感性は、きわめて平凡だと自分でもわかっています。ただ、ほんとうはよくわかっていないのに、「わかった!」「よかった!」というのだけはしないつもりです。

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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  沈黙の艦隊(2023) 《ネタバレ》 
俳優陣やVFXなどは頑張っていたと思います(とくに水川あさみの好演が光っていた)。しかし、脚本がイマイチでした。   まずストーリー展開のテンポが悪い。始まって20分ぐらい経っても、まだシーバットは出航せずにグダグダやっていて、こんな調子で話がどこまで進むのかと懸念を持ちましたが、最後はその懸念が当たりました。いくら続編予定としても「ここで?」というところで終わりました。   次に、セリフが共感できない。たとえば、海江田が自分の真意を初めて明らかにするシーン。「世界をひとつにする」と宣言しますが、心の中で思わず「ハァ?」と言ってしまいましたw。まったくリアリティがない。それは実写映画のせいだったかもしれませんが、そうであればもっと別の言葉(たとえば、せめて「新しい秩序を構築する」とか「世界の抑止力を更新する」ぐらい)を語らせる必要があったかと。海江田の行動に観客が共感を覚えられるかどうかのキモの部分なので、あれでは深町の言うように「狂っている」とか見えません。   また、細かい部分の演出も気になりました。米空母ロナルド・レーガンとのチキンレースのシークエンスで、海江田のこめかみから汗が流れるシーンが描写されましたが、まったくの失敗です。この作品で海江田に躊躇や弱さを見せてはダメ。完全なる確信のもと完全なる計算によって動いているマシーンのような人物像でなければなりません。ほんの1秒ほどの短いシーンでしたが、めちゃくちゃ興ざめしました。   ほかにも、閣僚会議がレベル低すぎとか、米第7艦隊をもっと完膚なきまで翻弄しなければならなかったとか、海江田の部下があまりにも盲目的とか、いろいろと突っ込みどころが目につき、到底「どっぷりと浸る」ということになりませんでした。   現実社会ではロシアによるウクライナ侵攻が起こっており、戦争ものの描き方にデリケートさが求められる部分はあったでしょうが、やまとがあまりにも戦わなさすぎるのも不自然だし、現実に戦争が起こっているからこそ、こういう映画を通じて「武力」や「自衛」「平和維持」のあり方を実効的に問い直すためにも、戦闘のリアルをもっと伝える必要があったのではないかと感じました。そのあたりは『空母いぶき』などのほうがよく描かれていました。   説得力ある世界観が構築できておりず、また細部の煮詰めも甘いので、内容的にはガッカリでした。俳優陣の頑張りに敬意を表してこの評価とします。もし、同じ素材でハリウッドがつくったら(あるいはいまや韓国や中国でも)、もっと見応えのある映画になったであろうと想像すると、現在の日本映画界のレベルは相当低くなっているのだなと妙なかたちで再確認してしまう結果になりました。いい素材だっただけに残念な一作です。
[映画館(邦画)] 6点(2023-10-09 10:19:30)(良:3票)
2.  言の葉の庭 《ネタバレ》 
毀誉褒貶の激しい作品だろう。この世界に入っていける人とそうでない人とでは受けとめが真逆といってもいいほど違ってくる可能性があると思われる。ファンタジーとして割り切って見られれば、繊細で美しく、安らぎに満ちた世界として心地よいだろう。他方、リアリティを伴う視線で見ると、主人公二人は共依存の関係にある、かなりあぶない人たちと映るだろう。  私自身はどちらかといえば後者の感覚で見ることになった。女性が10歳以上年上というのは構わないし、先生と生徒のストーリーというのもまあよい。が、決定的だったのは、あくまで私の場合の話だが、少年はともかく、ユキノにほぼ感情移入することができなかった点である。社会的常識というものをふりかざして語る気はさらさらないのだが、どう見てもまともな女性とは思われない。まだ異性に疎いいたいけな少年が徐々にたぶらかされていく様子に危惧さえ覚えた(笑)。劇中、「ユキノちゃんはやさしすぎるんだよな」というセリフでユキノの人物描写が間接的になされ、弁護されるが、それはやさしすぎるというものではないだろ、とつっこみを入れたくなった。   物語の進行と人物のセリフも予定調和に終始し、特段どうということのないままエンディングへ(そのくせ主人公たちにはどこまでも美しく、都合よくすべてが運ぶ)。この世界にいつまでも浸っていたい向きには期待を裏切らないつくりではあったと思うが、見る者に何を伝えたいのかは不透明のままとも見えた。ちょっと辛口になるが、製作者たちはこのような視野の狭窄した世界に若者たちに生きてほしいと願っているのだろうか。また、「心を病む」ということを軽視しているところもある気がした。思うに、この時期の新海誠は、夏目漱石に相当思い入れていたのではないだろうか。
[インターネット(邦画)] 4点(2019-07-02 10:24:31)
3.  キングダム(2019) 《ネタバレ》 
全体を通して“穴”のない、完成度の高い映画でした。とくにキャスティングには感心しました。吉沢亮のセイ、山﨑賢人のシン、長澤まさみの楊端和と、みな原作のイメージを損なわず、というかピッタリで、まさにハマっていたと思います。なかでも橋本環奈のテンと大沢たかおの王騎は、ともにキャスティングの難しいキャラと思われましたが、その困難さをいともたやすく乗り超えており、人物造形の見事さは拍手ものです(バジオウらの俳優は損をしていて可哀そうだなと思っちゃいましたが)。アクションも頑張っていて、ひとつ間違えば大怪我をしかねない場面もあって見応え十分でした。 とはいえ、このシリーズの真価が問われるのは次作以降であろうとも思いました。今回は弟の謀反鎮圧までで、いわば“内輪もめ”の段階。キングダム本来の国と国とのスケールの大きな戦いは次回以降に持ち越されました。国レベルの戦が続くとやや冗長な印象になる傾向がありますから、それを高いクオリティで、見る者を納得させられる映像にできるかどうかが大きなポイントになろうかと思われます。いずれにせよ、2作目が楽しみになりました。個人的にはキョウカイを誰がどのように演じるかに関心があります。
[映画館(邦画)] 8点(2019-05-03 20:34:20)
4.  君の名は。(2016) 《ネタバレ》 
傑作だと思う。封切られた2016年に社会現象となるほどのメガヒットを記録したので、当初は話題先行の映画かと思っていたが、実際に見てみたら決してそんなことはなかった。新海作品は映像美がよく称えられるが、それだけではなく、ストーリーが巧みに練られ、テーマ設定も確か。また無駄なシークエンスもなく、完成度のきわめて高い作品だった。  新海作品は本作まで『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』と見てきていた。それぞれ面白くはあったが限界も感じていた。『雲のむこう、約束の場所』と『星を追う子ども』はジブリ作品やエヴァンゲリオンの影響が強く出過ぎていたし、『秒速5センチメートル』はオリジナリティが発揮されていたがストーリーに難があった(第3話。私的にはということだが)。そのため、いい線を行っているのに、いま一つ突き抜けられないもどかしさが残っていた。しかし、この『君の名は。』でついに殻をぶち破って、新海作品の決定版に到達した感がある。  ストーリーの初めは単なる入れ替わりものかと思われたが、じつはそうではなく、3年という時間の隔てが存在し、糸守はすでに消滅していたことが明らかになる。そこに至って、いったい、物語をどう収斂させるのかと見る者をハラハラさせるのだが、見事にエンディングまで力技で持って行った。ラストも『秒速5センチメートル』の第3話みたいなやりきれないものではなく、見る者に希望を持たせる心地よいものがあった。  本作のよくできたところは、見る人によって多様なテーマの受け止め方が許容されるところだ。誰にも大切なものはあるがそれは黄昏時のように移ろいやすいものでもあるという哲理、テクノロジーがどれだけ発達してもそれがすべてではないのではという問いかけ、いまのメディアの力弱さへのチクリとした批判、母なる自然は大いなる恵みを与えてくれると同時に情け容赦のない存在でもあるという現実(いうまでもなく、3・11が踏まえられているだろう)……作品にちりばめられたいくつものテーマは、まるでミラーボールのように見る人ごとに違った色彩の光芒を放つ。にもかかわらず、どのような受け止め方をしようとも、しっかりした手応えあるものが受けとめられる。加えて、テーマの提示加減が絶妙である。これ以上語れば教条的臭くなるし、寡黙すぎれば伝わらなくなるという、ちょうどほどよい線を見事に見出し実現している。これは至難の業であろう。  先鋭的な作品だが、他方、映画づくりとしては基本に忠実である。さまざまな伏線が配され、それらがしっかり回収されていく。映画序盤、糸守にはカフェがないことを登場人物たちは嘆く。ところが、三葉と入れ替わった瀧は丸太をノコギリで切り、木のテーブルとイスをつくり即席のカフェを仕立てている。さりげないシーンだが、彗星落下のカタストロフィーから人々を救おうとする瀧の行動力の一端がすでに示されている。糸守では黄昏時をなぜ「かたわれ時」というのか? 「かたわれ」は「片割れ」だったことがあとでわかる。三葉になった瀧が休日なのに制服に着替えてしまったのも寝ぼけていたからではなかった。違う年だったので曜日がずれていたのだ。ストーリーの練り上げ方も念が入っている。彗星落下から8年後、瀧と三葉の再会へ至るプロセスは簡単には進まない。雪の降る新宿の歩道橋では互いに何かを感じ取りながらもすれ違いで終わる。ようやく、春になってついにはっきりと互いを認識し、こんどこそしっかり再び出会う。冬という厳しい季節を経たあとの春なればこそ、望みが叶うということを暗に私たちに伝えている。  登場人物たちのキャクター設定もうまい。妙に媚びたようなキャラといったこともなく、瀧にも三葉にも自然に感情移入することができる。脇を固めるサヤチンやテッシー、四葉らもよく効いていた。さらに、天空をオーロラのような極彩色で彩る彗星のスケールとビジュアル、小気味よい音楽、幽玄な巫女の舞い、組紐を一本一本編んでいく伝承の手業などなど、壮大さときめ細かさが同居しており、隙のない、ごくていねいな作品づくりに心を動かされた。  きっと、何度見ても新しい発見がある作品だろうと思う。また、海外の映画賞をいくつも受賞しているのも、日本アニメの底力を世界に改めて知らしめたという点で胸のすく想いがする。歴史に残る、残すべき日本アニメの金字塔として最大の評価を贈りたい。なお、本作の誕生によって、今後もっとも苦しむことになるのは新海誠自身となるかもしれない。これだけの作品をつくってしまったことで、これをどう乗り越えていけばいいのかということが大きな課題となる可能性がある。クリエイターの宿命とはいえ終わりなき道である。そこからこそさらなる「進歩」や「成長」が生まれるのだとしても。
[映画館(邦画)] 10点(2017-11-07 12:12:41)(良:2票)
5.  劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語 《ネタバレ》 
「壮大な構想のもとにつくられた旧作を超える傑作」という見方と「新作を強制的に求められ、もはや制作者自身が物語を見失っている迷作」という見方のどちらでも見ることができそうな一作。◆はじめのうちは穏やかな展開だが(ただし、すでに死んだはずの人物たちが次々に登場するため、パラレルワールドもの?と思ってしまうのだが)、このシリーズを見てきた者にはそれによって後半はとんでもない筋書きになるのだろうなと早々に察しはつく。後半、ほむらが「魔女」を越えて「悪魔」と化し、再び世界を再構成してしまい、新たな世界ではまどかが転校生としてやってきて、ほむらとぼしょぼしょ話をする、というところで映画は終わる。◆終わりまで見てもっとも強く覚えたのは、ストーリーそのものより、関係者はこれをどうでもつくらねばならなかったんだろうなという裏事情であった。会社としてはこんなドル箱をそう簡単には手放せない。続編をつくれ、となるのも致し方ないのであるが、その結果、どなたかが書いておられたが「引き際を見誤った」印象を与えるものとなってしまった。冒頭の二つの見方に即していえば、現時点では私自身は後者と見るしかない。◆ストーリーは、キュゥべえに長尺のセリフを語らせて種明かし的に説明するなど苦心しているが、もはや破綻している感が強い。たとえば、新キャラのなぎさが登場しているが、ほとんど意味がない。しかも、中盤ではほむらがベベが黒幕と見て、マミとガチで戦うまでするのに、結局、何もなかった(つまり、ほむらの勘違い)というオチで、しかもそのことはサラッと流して終わりにしている。このあたりはシナリオの手直しがあったのではと推察させるものがある。あるいは、そういったストーリーの行き詰まりを映像表現で誤魔化している感もある。◆前作までは、多少ステレオタイプ的ながらもはっきりとしたテーマがあったが、本作では何がいいたいのかもわからないというか、そもそもいいたいテーマがあるのかどうかも疑問。終わり方からして、まず間違いなく、さらに続編がつくられるだろうが、よほどのハイクオリティでなければ、せっかくのシリーズの評価をさらに失いかねないものとなってしまった。
[ブルーレイ(邦画)] 3点(2017-05-28 13:33:00)(良:2票)
6.  真夏の方程式 《ネタバレ》 
映画版としては「容疑者Xの献身」の続作という位置づけになるため、どうしてもそれと比較してしまう。前作のレベルが高かっただけに、その比較は苦しいものになる。 多くの人の指摘と同じく、私も二つの殺人の動機が腑に落ちなかった。一つ目の殺人は子どもがそこまでするか?という違和感が大いに残るし、二つ目も殺すまでするか?という気が拭えない。物語の端緒であり核心でもある二つの殺人に無理があるので、作品全体の説得力がどうしても弱くなっている。また、二つ目の殺人のトリックは、劇中に提示された材料だけで観る者に推理させるというのは無理があると思った。この点も「容疑者X」のほうがよく出来ていたと思う。ということで、推理ものとしての本作はストーリー、トリックの両面で無理のあるものといわざるをえない気がする。 反面、(これも少々の無理は感じるが)湯川と少年のかかわり、前田吟の父親の愛の深さといった部分には心揺さぶられるものがあった。と考えると、本作はサスペンス作品でありながら、ヒューマンな部分のほうがよく出来た映画だったといえるように思う。そのあたりは東野作品のよさに違いない。あと、蛇足ながら、ペットボトルロケットのシーン、携帯電話があれだけ長時間コールし続けるのか?という心配も残った(笑)。
[地上波(邦画)] 6点(2014-05-26 12:19:34)
7.  クライマーズ・ハイ(2008) 《ネタバレ》 
俳優陣は頑張っているし、それなりに迫力ある世界がつくり出されてもいる。しかし、私のこの作品に対する評価は0点である。それは、原作者の横山秀夫がひそかに作品に込めた真のメッセージに制作スタッフは気づいていないからだ。  この作品はヒューマニズムやジャーナリズムだけの物語ではない。本作では、悠木は「ダブルチェック」がなされていないという理由でスクープ掲載を断念している。だが、これでは一番肝心なことを何もわかっていないといわざるを得ない。原作者が悠木に大ネタを掲載させなかった理由はそんなことではない。映画の最後で「事故原因には諸説ある。圧力隔壁説だけではない」といったテロップをわざわざ入れているというのに、入れた当人たち自身がそのことの深い意味を理解していない。NHK版ドラマのほうは悠木に何も語らせないかたちで見る者に真のテーマを暗黙裡に伝えている。この一つの、しかし、決定的な一点によって、私は向こうに満点を、こちらに0点をつけた。つけざるをえなかった。  また、映画の脚本が原作通りである必要はないが、それは原作をちゃんと理解したうえでのアレンジであるべきであろう。冒頭で悠木の息子が一人で飛行機に乗るという原作にはないシークエンスが付け加えられているが、その必然性はない。むしろ、悠木の息子も事故に巻き込まれたという誤解の元になっている。あるいは、やはり原作とは違って神沢をこんなふうに死なせたのも意味不明だし、その神沢の葬式で悠木が軽く昔話を語るなど違和感がありすぎる、ありえないシーンだ。さらに原作では「水爆」というあだ名の社長がラスト近くで悠木に媚びを売るなど見ていられない。脚本のセンスがズレすぎている。あの原作をこんな映画にしたことに腹が立つ。ドラマとしてのつくり込みもNHK版の圧勝である。
[CS・衛星(邦画)] 0点(2013-08-08 13:14:42)(良:1票)
8.  クライマーズ・ハイ (2005)<TVM> 《ネタバレ》 
この「クライマーズ・ハイ」は案外奥が深い作品である。最大の山場は、事故原因についてのスクープを掲載するかしないかという局面である。だが、この場面を見たとき、私は微妙な違和感を覚えた。あの場面で悠木はある遺族の母子が新聞を買いにきたときのことを思い出している。「どうか真実を伝えてくださいね」と悠木の手を握って懇願して帰った母子だ。ところが、「どうか真実を」と願った母子のことをわざわざ悠木に思い出させながら、結局はスクープ不掲載という結論に達しているのだ。スクープを掲載することこそが母子の願いに沿うことになるはずなのに、そうはしないという矛盾したシナリオなのである。ドラマに酔いながらも妙な印象を覚えた。  ところで、現実の日航ジャンボ機墜落の原因について、みなさんはどう理解しているだろうか。おそらくほとんどの人は「圧力隔壁の修理ミス説」を認識しているかと思う。だが、安易な陰謀説に加担する気はさらさらないが、いろいろ調べてみるとおかしな点があるのも事実である。日航機事故のあとタイ航空機がまさに圧力隔壁の破損事故を起こしている。細かい話になるが、そのときは機内の与圧が破れ、気圧が急激に低下したため、乗員乗客89名が瞬間的に航空性中耳炎になっている。だが、日航機では奇跡的に生き残った落合由美氏や川上慶子氏らの証言からもそうした話はまったく出てきていない。  また、急激な気圧低下に対応するため、タイ機ではパイロットによって緊急降下が行われているが、日航機の場合、それがなされていない(操縦不能になった事故機であったが、緊急降下することはできた)。あるいは、日航の乗員組合や整備士たちも「圧力隔壁説」は絶対に違うと主張している。圧力隔壁説の証拠として、煙草のヤニが垂れるほど付着したリベットが見つかったとされたが(当時の飛行機は禁煙ではなかったため、隔壁に破壊の元ととなる亀裂が生じ、そこから煙草の煙を含んだ空気が流出した結果、ヤニの付着したリベットが生じたとされた)、そんなリベットがあったら、整備作業で必ず発見しているはずだという。  さらに、この事故では結局、すべての関係者が不起訴となっているが、不起訴を決定した担当検事(山口悠介検事正)も微妙なことを述べている。「(墜落原因が)圧力隔壁の修理ミスかどうか疑わしい」というのだ。そのために案件としては不起訴とせざるを得なかったのであって、検事自身、事故調査委員会が出した圧力隔壁説という結論には疑念を抱いていたのである。  では、ほかにどんな原因がありえるのか、ということになるが、それこそがこの作品の核心であり、隠されたメッセージだと私は解釈している。当初私は、悠木はジャーナリズム論として不掲載を決断したと思っていた。しかし、「圧力隔壁説」の真実性に疑問があるという観点に立ってみると、「圧力隔壁説」を掲載しなかったことこそが「真実を伝える」ことになるという逆説的な図式が見えてくる。悠木にスクープ不掲載という不作為をさせることで、ドラマは「圧力隔壁説」とは異なる「墜落原因X」の存在を暗黙のうちに示唆しているのではないか。よくよく考えれば、「圧力隔壁説」を掲載しなかった理由について悠木は何も語っていない。  墜落の真の原因が何かは私なんぞにはわからない。しかし、あの事故では何かが隠蔽されているということだけはまず間違いないという心証を抱いた。あのとき123便と交信した管制官がその後何の事情聴取も受けていないという事実を知り、心証は確信になった。「クライマーズ・ハイ」は人間ドラマやジャーナリズム論を表面にかぶりながらも、寡黙なうちに欺瞞を告発し、真実は何も明かされていないと強烈に訴えているのではないだろうか。恐るべき作品だと思う。そういう隠された狙いを秘めたうえで本作は制作されているのではないか。
[DVD(邦画)] 10点(2013-08-08 12:59:59)(良:1票)
9.  SPACE BATTLESHIP ヤマト 《ネタバレ》 
キムタクがやったらどんな役でもキムタクになってしまうというのは、私的にはそれはそれで別にかまわなかったんです。むしろ、キムタクなりに頑張っているなぁ、と思ったほどで。ちょっと軟派な古代進というのも、味があって私は受け入れられました。また、オリジナル作品をバカにしているとかいうのも、あまりそういうふうには思いませんでした。 しかし、とにかく見ていて恥ずかしいのですよ。正直、学芸会レベルの演技と演出で、よくこんな小っ恥ずかしいことができるよなあ、と。古代とのお別れシーンがその典型で、いつまでも延々とお涙頂戴をやっている(そのわりにはちっとも悲しくならない)。もそっとスマートにやれないものかと。こういうことをやっているから「邦画はレベルが低い」といわれるんじゃないかと情けなくなりました。はっきりいって、お金を取って見てもらうだけのプロの仕事のレベルに達していないと思われるので、カラいですがこの点数です。
[DVD(邦画)] 2点(2013-07-21 19:54:57)(笑:1票) (良:1票)
10.  GANTZ:PERFECT ANSWER 《ネタバレ》 
原作は部分的に読んだことがあるが、ともかくあれをよくここまで映画化したもんだとは思った。これは私の勝手な想像だが、作者の奥浩哉氏自身もどういうようにストーリーをつなげ、どういうオチをつければいいかわからないまま苦悩しながら連載が進んでいったのでは?という気がする。これは本作に限らず、奥作品に共通する印象。   そのため、シチュエーション設定や演出の断片断片は凝っていて面白い反面、人間心理(兄弟愛とか友情とか)はありがちなステレオタイプを越えられておらず、掘り下げや練りはない。感覚的にはいいものを持っているが、ロジカルな思考が深められないという言い方をしてもいい。テーマ性は希薄というか弱く、「正義とは何か?」とか「人間における暴力の不可避性」とかいちおうあるようだが、それらも突っ込みが足りず平板。   不条理がウリの作品なので、あまり細かいことをいってもしょうがないのだが、ラスト近くで星人たちと玄野たちが猛烈な撃ち合いをしたあと、いったい、どう落とし前をつけるのかと思っていたところ、まるでゾンビのように次々と人物たちが起き上がってきたのは、いくらなんでもない。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2013-05-06 00:20:18)
11.  踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ! 《ネタバレ》 
ラストのすみれのセリフ、「死ねばよかったのに」は許せない。受け入れられない。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2011-05-08 22:25:34)(良:1票)
12.  日本沈没(2006)
映画が沈没してる。  (あ、同じ感想を書いている人が↓にいらっしゃった(笑))
[CS・衛星(邦画)] 3点(2009-12-05 20:55:21)
13.  レディ・ジョーカー
全編ハイクオリティの雰囲気が満ちているのに、何がなんやらさっぱりわからなかったのでここを見たら、やっぱりみんなわからないのだということがわかって安心した。
[DVD(邦画)] 2点(2008-12-10 22:41:59)
14.  トゥモロー・ワールド 《ネタバレ》 
私はまったくといっていいほど楽しめませんでした。↓の「ジャスミン」さんのご感想と同感です。「人類が生殖能力を喪失」という設定自体は斬新で、まずそこに観る者の期待が寄せられるわけですが、ただそれだけで終わっており、何らの掘り下げもみられません。その後の展開も、主人公が状況に追われて、ただただ逃げ延びているだけで、ラストもキーを「トゥモロー号」に無事に届けて終わりという、いってみればそれだけのストーリー。そもそも、どうして必死になって逃げないといけないのかが、さっぱりわかりませんでした(子どもができることは超貴重なのだから、ほんとうなら政府が、いや世界が全力で守ってくれるはずではないのか? たとえ不法移民であっても)。   生殖能力喪失という設定は、いわば現在の少子化を極端に表現したものといえるでしょう。であれば、ただ数人の人間たちが逃亡劇を繰り広げるだけではなく、社会や国レベルの、もっと大きなスケールの話にならないと不自然ではないでしょうか。私には、映像がいくら素晴らしくても、物語が弱くてはどうしようもないという典型例にしか見えませんでした。ということで2点也しか差し上げられません。映画館では観客がわずか8人で、イヤな予感はしたのですが……(苦笑)。
[映画館(字幕)] 2点(2006-12-15 10:40:32)(良:2票)
15.  機動戦士ZガンダムII 恋人たち 《ネタバレ》 
「星を継ぐ者」に引き続き、絵:ツギハギ、ストーリー:ワープしまくり、BGM:サイテーのレベルの低い代物だった。出だしの音楽など、いったいどうしたらこんな演出になるのかと驚くほど時代錯誤。人物たちの心の動きもまったく奇妙キテレツで、アイスクリームを買ってきて仲よく食べているかと思えば、いきなり理由もなく「立ち去れ!」と怒鳴り始めたり、さんざん気持ちよさそうに戦っておいて「大人ってヤツは」とつぶやいたり。で、「大人ってヤツは」に続いて何をいいたいのかはまったくもって不明。もっとも理解不能だったのが、カミーユとファがメット越しにキスしようとするシーン。けたたましいファの笑い声に、思わずバルカン砲をぶちこみたくなったとしても責められはしまい(汗)。    初期3部作で登場人物たちが背負っていた十字架はここにはなく、ただ表面的にニヒルなだけのセリフと無意味な闘いばかりが続き、見ている者に訴えてくるものがなにもない。戦闘シーンも、やたらとコマが粗く、迫力効果よりもつくりの雑さ加減しか伝わってこない。ツギハギだらけのわりには、無意味に思える部分も少なくなく、上記キスシーンはもとより、カツとサラのエピソードなども不要だったのでは、という気がする。    かつてのガンダム世界の表面だけをなぞった自己模倣の最悪パターンで、レビューの数がこの程度にとどまっていることが、すべてを物語っていると思う。ということで、前作と同じ点数にするしかなく、2点也です。カミーユの親にまつわるトラウマはどこへ行った?
[DVD(邦画)] 2点(2006-11-21 20:27:31)
16.  機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者
ガンダムに関しては初代がTV放送された世代の人間です。必ずしもガンダムフリークというわけではないのですが、初代劇場3部作までは見ています。「Z」以降はTVは見ていません。さて、そういう人間が久々にガンダムの世界に浸ってみたいなと思いつき、DVDを借りて見た感想は、「訳がわからなかった」のひと言に尽きます。   みなさんが危惧されている通り、TVを見ていない人間には、まったくストーリーが理解できませんでした。話のすじみちがわからないぐらいですから、「空気感」とか「心理世界」といったレベルのものには到底触れることができません。終始、何となく登場人物たちが争っているだけで、まったく、作品世界に入ることも浸ることもできず、これが正統後継シリーズとして満を持して登場した映画なのかと呆然としてしまいました。それは、あながち私がオッサンになったからだけではないと思います(笑)。   21世紀のいま、このレベルのものを劇場公開するというのは、よほど大胆な人間か、よほどアホな人間かのどちらかとしか思えません。絵はヒドイし、物語もめちゃくちゃ。作中BGMセンスにいたっては、初代当時以前です。まさか、ガンダムシリーズにこの言葉を使うことになるとは思ってもみませんでした。そう、残念ながら本作は紛れもなく「糞映画」です。
[DVD(邦画)] 2点(2006-11-20 13:58:51)
17.  切腹 《ネタバレ》 
仲代・津雲が「千々石求女は、少々縁がありましてな」(ちょっとセリフ違う)と言い出すシーンから、ぐっと引き込まれた。井伊家の庭先にいる現実と、津雲の語りで繰り出される過去とが重層的な映画構造をつくり、複雑な面白さが展開されていたように思う。みなさんおっしゃるように、このあたりの脚本の工夫には冴えが感じられる。   回想が現実に追いついてからは重層構造もなくなり、以後は一般的な映画と同じように進展、やや平板な印象に。復讐劇という大筋は読めているものの、どういう落とし前の付け方をするかについては、引き続き引っ張られる。   最終盤の立ち回りについては、ところどころ稚拙な部分はあるが、主役が圧倒的に強くて敵を斬り続けるといったものではなく、仲代・津雲も次第に疲れてきて、少しずつ傷つきながら闘い続けるふうにしたのはリアルでよかった。で、津雲が死に、三國家老が生き延びるという大ラス部分は、前半の脚本の工夫を見たあとでは、いささかすんなりと終わった感があり、少し物足りない。   では、どうすればいいのかとなると、よくわからないが、たとえば、見る者の意表をつく、胸のすくようなセリフで津雲が喝破し、三國家老がもっと打ちひしがれるといったシーンとかあれば、もう少し盛り上がったような気がする。そのうえで、歴史上の「記録」ではそんなこと一切なかったとする“虚構性”を見せつけたほうが印象がより鮮やかになったような気がする。   40年前の映画なので評価がすごく難しいけれど、いちおう7点也としておきます。仲代さん、昔のほうがうまかった?
[DVD(字幕)] 7点(2005-07-14 01:22:31)
18.  隠し剣 鬼の爪 《ネタバレ》 
すでにみなさんお書きですが、日本を代表するとされる映画監督が二番煎じ、しかも自作のパクリをしてはいけません。細かい部分は違うでしょうが、概していえば同じですわ。貧乏侍がいて、なぜか心が通じ合う可憐な女性がいて、お家騒動が起こって、藩命によって決闘するハメに陥り、辛くも勝って、穏やかな終焉を迎える……。なので私は、作品の内容うんぬん以前に、どうしてこれほど同じ作品をつくるのか、つくれてしまうのかという点に疑問を感じてしまいます。映画会社からのリクエストやしがらみもあるでしょうが、映画監督という職業がクリエイティブなものであり、それに矜持をもつというのなら、やっぱりやっちゃいかんでしょう。これだったら、「たそがれ清兵衛2」としてもらったほうが潔かった。  立ち回りとかは真田のほうがうまかったし、永瀬侍はうらびれ方がちょっと足りなかった? 松たか子は好演してたと思いますが、いかんせん華がありすぎ(笑)。必殺技「鬼の爪」はカッコよかった(爆)。
5点(2005-02-16 06:57:36)
19.  風の谷のナウシカ 《ネタバレ》 
「ハウルの動く城」を見たあと、改めて本作を見直した。アニメーションこそ前者にひけをとるものの、作品としてのクオリティは比較にならない。制作されて、すでに20年。が、いまなお感動はまったく色あせない。映画の魂は、決してハード面の技術ではないことを教えてくれる。  終盤、オババが「いたわり」と「友愛」という言葉を口にする。それが、すべてをいいあらわしている。武に武を重ねるだけでは、安らかな世界は築けない――そんなきわめてシンプルでありながら、しかし21世紀のいまなお、人類は学べていない真実をこの映画を見た人は、改めて自分の胸に刻まないではいられまい。  ストーリー(脚本)も大変よくできていて、初見のときは、脅威の存在としか見ていなかった腐海の真の意味が明かされたときなど、思わず「あっ、そうだったのか!」と声を出しそうになってしまった。またオームなどのキャラクター類も、のちの媚びたようなものと違い、好感がもてる。  アメリカやドイツでも繰り返し上映され、多くの人の心をうった。日本が世界に誇る名作である。惜しむことなく満点を捧げたい、ということで10点也です!
[ブルーレイ(邦画)] 10点(2004-12-08 23:44:29)(良:1票)
20.  ハウルの動く城 《ネタバレ》 
面白くないことはなかった。が、期待したほどでもなかった。すでに見た人たちの評価が必ずしも高くないことは知っていたが、「なるほど、これはたしかに」と思った。  とにかく、登場人物の行動とストーリー展開の必然性が弱い。弱すぎる。なぜ、ソフィーは老女になった自分をあんなに簡単に受け入れられるのか? なぜ、ソフィーはハウルを愛するようになるのか? なぜ、憎むべきはずの荒地の魔女とも手をたずさえて暮らしていけるようになるのか? 本作では、そうした諸点に説得力ある理由なしに、「好ましい結果」だけが唐突に示されている。「老女もいいわね」「ハウル、愛しています」「あんたも頑張って」、と。しかし、ほんとうは「好ましい結果」そのものより、それに向かって努力しようとする「プロセス」のほうが尊く、大切なのではないだろうか。人は、どんな葛藤を乗り越えて、どんなふうに考えて、どんな涙と汗を流して、逆境に立ち向かい、ついには敵をも愛せるようになるのか。このもっとも大事な「プロセス」が本作には決定的に欠落していた。また、私は今回のヒロインには、さほど共感できなかった。冷静に考えたら、ソフィーは掃除以外は、ほとんど何もしていないから(笑)。終盤の「引っ越し」劇にいたってはまったく理解不能。  もう、ジブリは終わったのか? 『ナウシカ』や『ルパン三世・カリオストロの城』が素晴らしかっただけに、新作が出ると見るが、アニメは素晴らしいものの、必ずしも期待を満たしてはくれていない。頼むから、こんどつくるときはシンプルにしてくれ~。ということで、6点也です。PS.賠償千恵子さんのソフィーは、私にはキツかった。ラストの歌も不要。
6点(2004-12-05 23:43:43)(良:2票)
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