1. 幕末
《ネタバレ》 錦之助の竜馬は今まで観てきた竜馬の中で一番眼つきが悪い。やけにカッチカチな竜馬で余裕がまったくなし。貴重と言えば貴重な竜馬像か。吉永小百合がおりょう役というのも凄い配役。眉を剃ってお歯黒をつけているのは随分リアリティに拘ったねと感心はするが、やはりおりょうの強さが全く感じられずミスキャストだろう。他にも色々配役がイメージに合わないこと多数。ことは配役にとどまらず、竜馬が襲われるシーンで竜馬が思いっきり人を斬っているのでびっくりだったり、ラスト近くのシーンで長々と竜馬が天皇制の廃止を唱えているのにはかなり違和感がある。監督の個人的思想を竜馬を通して言わせられては、さすがに堪らない。映画としてそこそこ観ていられるものの、竜馬に対して思い入れがある自分としては受け入れ難いものだった。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2010-07-24 03:29:43) |
2. ユメ十夜
一応夏目漱石原作。映画もそれを大きく見出しに打ち出しているが、内容はもう原型を留めていないものが多い。原作からインスパイアされて製作されたオムニバスという感じ。原作が原作だし、あれをそのまま映像化しても面白くなるとも思えないので、話をアレンジするのはいいが、正直言ってあまり良質にアレンジされたものが見当たらない。妙にホラーチック、グロテスクにアレンジされたものが目立ちます。単純に面白くないものが殆どなんですな。こんな中に市川崑監督が参加していることにちょっとびっくり。彼の映像化したものはかなり原作に忠実。この話を選択したのは最良だったでしょう。他には、宮籐官九郎の運慶の話が面白かった。一応ユメの順番は原作と同じなので原作と対比して楽しむことも出来る。が、残念ながら楽しめる出来ではありません。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2009-09-01 05:37:17)(良:1票) |
3. 学校
内容は単に生徒たちの背景を断片的に見せていくだけのものだが、様々な事情を抱えて夜間中学へやって来ているということだけで興味を引かれる。基本的に見せるだけなので、突っ込みは浅いが、それらをどうこう解決しようとかいうタイプの映画ではないのでこれで良し。西田敏行と荻原聖人のやりとりも楽しい。学校の本義というのは勉強だけではなく人と人との触れ合いにあるのだと語りかけるような映画だった。 [DVD(邦画)] 7点(2009-09-01 05:18:56) |
4. 新・夫婦善哉
前作から何故か8年も経ってからの続編。続編といっても100%オリジナルですよね?数年前に未発表の正当な続編が発見されたらしいけど、当然この映画とは無関係でしょう。話は東京に女と一緒に逃げてしまった旦那の話がメインで、もうオリジナルの面影もない。延々とダメ男の乳繰り合いが描かれたりする。その愛人と妻との夫の取り合いを描かれても、それはもう夫婦善哉とは言えない。原作の呪縛がなくなったことでなんとなく役者さんものびのびやっているような気もするが、ここまでカラーが違うと何も夫婦善哉の冠を使わんでも良さそうだ。単に前作のキャラクターを使っての人情喜劇を作りたかっただけに見える。最後の未遂事件もなんかイメージが違う。うーん。8年経って、これを作る意味があったのか甚だ疑問だ。出演陣は微妙に脇が豪華になってる。グレードアップしたのはこの点だけね。夫婦善哉の善哉をしっかりビジュアルとして見せてくれたことは嬉しいが、これは前作でやって欲しかった。今作でやられても、やはり時遅しの感は否めない。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-05-24 04:28:14) |
5. 夫婦善哉
原作とは随分違う。始めは良い感じにアレンジしているなぁと思ったが、だんだんテーストの違いが気になった。もともと、森繁久彌はイメージとは違う。寧ろ蝶子の親父さんのイメージに近いか。もう少し細身だとなぁとか。放蕩感も随分薄い。原作では何度も金を使い込んで本当にどうしようもないボンボンだったが、この映画ではうっすらその印象を見せるだけで大人しい。どもりも殆どない。うーん。既に書かれている方もおられる通り、妙に湿度が高めなのが何より気になる。題名にもなっている最後の夫婦善哉のシーンも何故か夫婦善哉を単体として映してくれない。それはしっかり撮ってくれないとなぁ。そしてそのあと原作にはない湿っぽい人情劇が続くのも蛇足としか言いようがない。やはり原作とは別物という割りきりが相当必要のようだ。原作知らなければ普通の人情喜劇として楽しめるだろう。森繁さんは上手いし面白いしね。という訳で、原作は度外視して、レヴュー内容に反した、この点数。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-05-24 04:14:46) |
6. 荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻
《ネタバレ》 初っ端講談通りの敵討ちを再現してから、史実はこうではない、それでは史実に乗っ取って再現してみましょう、という流れの随分風変わりな出だし。ナレーションたっぷりに現代の(といっても1952年の)鍵屋の辻を解説したりもする。そして本編に入ると一応の経緯の説明が入るが、音声が聞き取りにくい上にあっさりしているので判り難い。要するにAの父親がB家の人間を殺してC家に逃げ込んだが、C家はAの父親を引き渡さなかった。そして今AがC家の人間を殺してしまい、今度はB家に逃げ込んだという話だったような。自分の親父に恨みがあるB家に逃げ込むAも凄いが、それを匿うB家も凄い。なんでそんなことになるんだろう。そういった説明はなされないので謎のまま。まあ、又右衛門の置かれた複雑な状況の方が重要なので、こんな経緯はどうでも良いっちゃぁいいんですが。作品自体は正直退屈。しかし決闘直前の緊迫感は相当に高い。この緊迫感は中々ない。ここだけで見応え十分。ただ続く決闘シーン自体はややあっさりとしていて、グダグダでもある。しかしこれは狙ったグダグダ。主人公以外は皆怯えていて、それが故のグダグダ。これが逆にリアルなんだろうし、良いのだが、グダグダを見せるにしてももう少し上手く見せてくれてもいい。脚本は黒澤明だが、ここらあたりを見てもなんか違う。これは監督の個性が出たというものだろうか。緊迫感は高評価だが、残念ながら全体としては現代の鑑賞にはやや堪えない点の多い映画という印象が強い。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2008-10-20 21:39:47) |
7. 八甲田山
《ネタバレ》 完全版なるものの方を鑑賞。どこまで史実に基づいているのかは謎だが、単純に長いだけで面白くは無い。二人の隊長の対照的な運命はそれだけで面白くあるはずなのだが。山に入ってからが雪降ってるし帽子被ってるしで、誰が誰だか良く判らなくなる。高倉の隊の映像なのか、北大路の隊の映像なのかも時々分からなくなる。もう少し編集なり構成なりでどうにかなるはずだが、その編集自体が非常に稚拙。なんでそんなカットが入るんだ?ってことも少なくない。ばらっばら。これでは編集の技量でなんとか、などとは望むべくも無い。とにかく散漫に映像を並べてある。三時間弱もかけて、どこまで脚本通りに撮られているのだろうと疑念すら沸く内容。やけに叫びたがる演出は悲壮感を出したいが故か。メリハリなく、逆効果ですよ。氷を蝋で表そうとするのはいかにも時代ですな。撮影は大変だったろうなぁとは思うものの、作品はその労力に応えるものになっていなかった。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-10-20 21:10:48) |
8. あしたの私のつくり方
とにかく良く喋り、よく説明してくれる。映像表現ではなく、あえて言葉で直接的に表現するというのが狙いなのだろうか。しかしこれがどこかの心理学系の本から引用したんじゃないかと思えるほどのお定まりの台詞や表現で閉口する。人物像もただありがちというより、度を越したステレオタイプ。ここまで定型で打ち出す必要があるんだろうか。こうも作られてはメッセージを受け取る気分にもならない。それでいて妙に家は金持ち住まいってのは何故だろう。身近な問題として描きたいなら、もう少し生活レベルを抑えては如何。そして演技力の低さ。無意味な微笑の演技が蔓延していて、さすがに鼻に付く。大体「友達は大切にしなくちゃね」と言いながら名前も明かさずメールを出すってのはどうなのよ。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-07-04 06:58:00) |
9. 暁の脱走
《ネタバレ》 あんな戦地で男を追い掛け回さんばかりの情熱を傾けるのも、それに対する周りの反応もやや違和感がある。そういった中で軍体制への批判をしてもなんだかピリッとしない。男と女の繋がりもいきなり前進してしまっていてびっくりする。二人の脱走に目をつぶった仲間の姿は感動的ではあるのだが、全体としては物足りず退屈。まあそれよりなにより、山口淑子の演技が粘っこく暑苦しくこってりしていて、息が詰まります。それでいてラブシーン何故かぎこちなかったりする。不思議なのはヒロインが主人公の名を呼び捨てにすること。普通「さん」付けしないかね。「さん」の部分の音声が潰れているのかと思ったが、どうもそうでもなさそうな。謎です。それにしても、やはり池部良は大根なのですね。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-07-04 06:49:42)(良:1票) |
10. あらくれ(1957)
《ネタバレ》 徳田秋声原作の小説の映画化。原作もまあまあだったが、こちらもまあまあの内容。それなりに原作に忠実に描かれていたような印象。この時代の女性を主人公にしたものに良くあることだが、逞しく自活するほどの活力があっても、なんだかんだ言って男から離れられない。こういう点がどうもいまひとつ心を惹かれない原因。時代的に女性一人ではどうしようもなかったのだから仕方ないのですがね。性の相性についての直接的な話などもちらりと出てくるのも原作どおり。時代的にこの部分はぼかすかカットするんだろうと何故か勝手に思い込んでいたため、そのまま描いていることに妙に感心した。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2008-07-04 05:59:43) |
11. 江分利満氏の優雅な生活
《ネタバレ》 主人公はサラリーマンだけど、いかにも作家の頭の中のような話。冒頭から「面白くない」といいつつ始まり、理屈っぽいおっさんの語りが延々と続くだけだが面白い。映像表現も斬新で、外連味たっぷりに楽しませてくれる。こういう映画がこんな時代に作られていたんだということが驚き且つ歓びだった。ただ終盤、祝勝会から喋りに面白味がなくなってしまい、大失速。最後のこの感覚、本当に酔った上司に付き合わされている感覚と似ている。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-06-10 21:57:51) |
12. アルスラーン戦記
原作も未だに未完なんだそうで。アニメは1と2が映画で、3以降はOVAにシフトしたらしい。今回1と2を続けて鑑賞したが、とても評価できるような内容ではない。1も2も本当に物語のさわりだけ。少しづつ仲間が増えていくというような感じなんでしょうか。大仰な台詞に大げさなアニメ演出。やややりすぎ。絵もへぼい。キャラデザインからしておかしいような気がする。1と2も1時間と短いが、どうも一時間に纏めようとしてもかなり無理が出ているように見える。せめてそれぞれ一時間半ぐらいはつかってやるべきじゃないのかね。この出来では、OVA探してまで3以降を見たいとは思わせない。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2008-06-10 21:42:33) |
13. 恋するマドリ
《ネタバレ》 ちょっとした想像の何気ない挿入が上手い。設定は出来すぎではあるんだけど、まあ許せる。なかなか楽しく観ていられたが、空港へ追いかけるくだりがあまりにもグダグダ。あの場所におやじさんの登場とか脈絡なさすぎだし、やり過ぎが目に余る。そんなに一生懸命見せ場作ろうとしなくても成立する映画だと思うんだけどなぁ。テンポも良く爽やかで好感が持てる内容だっただけに、この点が非常に残念だ。 [DVD(邦画)] 6点(2008-05-31 18:12:01)(良:1票) |
14. 高校教師/もうひとつの繭の物語
題名通り、もともとのTV版とはまったくの別内容。TV版はまあ好きだったんだが、こちらは酷い。まさかここまで酷いとは。脈絡の無いシーンの連発。唐突な過去の述懐。なんだろこれ。ギャグだろうかと思うような無茶苦茶な展開。やっちゃえやっちゃえ式でなんでもありだ。皆病んでるって映画は数々あれど、これほど締まりの無い映画もない。素人が書いたとしか思えない脚本。これでいいのか野島伸司!、、って今更言われても本人も困るか。 [CS・衛星(字幕)] 0点(2008-05-31 18:06:36) |
15. ウィニング・パス
《ネタバレ》 ストーリーは至って普通。各要素は提示するだけで掘り下げが足りず、深みなし。最後は自分がシュートを撃たずに誰かにパスするのだろうと思ったら、自分でシュートを撃つんでびっくり。あそこはベタでも誰かにパスして、主人公の成長を表すべきなんじゃないのかね。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-05-01 23:48:29) |
16. 運命じゃない人
良い時の宮籐官九郎に三谷幸喜エキスが少し入ったようなイメージ。時間が微妙に何度も戻りながら真相、というかその裏側を明かしていくある種のザッピング的構成が絶妙。時間の受け渡しがとても上手く出来ている。観たことも無いような役者が殆どというのもこの映画を素直に楽しめるポイント。良作です。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-04-20 18:22:00) |
17. がんばっていきまっしょい(1998)
《ネタバレ》 期待したのだが、これがいたって普通。というかあまり出来が良くない。何もこれといってアイデンティティとなるものを持てていない主人公が、漠然とボートに惹かれてボート部に入ろうとするが女子の部が無かったために自分で作ろうと企画。ここまではいいが、驚くほどにまったく活力が無い。自分で部まで作ろうというのにこのだらけ具合は一体何なのだろう。部員勧誘が具体的に描かれておらず、なんかいつの間にか面子が集まっているというのはいい加減に過ぎる。一人が参加してくれたおかげで芋づる式に集まったのだとしても、もっと丁寧に描かないと。ボート部の面子、それぞれをクローズアップすることもなく亡羊としたパイで終わってしまっているし。全体に前へ動こうという活力に欠けているため、肝心の終盤も盛り上がろうはずも無い。レースに勝って喜ぶのは当然としても、横に敗者が居る状態であの歓びの言葉の選択にセンスを感じない。レースも淡々。決勝以外はゴールシーンだけだしなぁ。観てて一緒に高揚する感じはゼロだよね。まあともかく、元気なタイトルから想像するような映画ではなかった。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-04-20 17:58:07)(良:1票) |
18. 太平洋ひとりぼっち
《ネタバレ》 今から50年近くも前にヨットで太平洋横断を成し遂げたという事実だけで凄いこと。実にあっけらかんとしてどんな困難にも前向きな態度や台詞で乗り切っていく姿に堀江謙一という人のキャラクターを十分感じる事が出来る。目的地に着いて、外国人に囲まれ英語の質問で捲くし立てられ、辟易するかと思ったらほったらかしではっちゃける。う~ん感じる関西魂。海外でのもてはやされぶりと、日本で家族が申し訳なさそうに会見している姿の対比も面白い。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-04-06 22:04:02) |
19. 力道山
《ネタバレ》 もう少しちゃんとした伝記物かと思ったが独自の解釈が蔓延しすぎている。差別との戦いという側面を強く描きすぎでもある。やはり韓国製作ということが影響しているのだろうか。大体、力道山は自分が朝鮮出身であることを隠し通して死んだ訳で、そこにこうも差別問題を絡めて描かれては違和感ありまくり。もう少しやりようがあるだろう。これでは朝鮮人であることを誰にも言えない苦悩などは描きようも無い。子供がいたはずだが、子供の姿はなし。再婚をしているはずだが、その面もなし。弟子だった馬場や猪木も登場しない。猪木くらいは登場させて欲しかった。これを単に「信じられるものが何もなくなってジタバタとして堕ちていく英雄の末路を描いた映画」として捉えて観ればそれなりに見ていられるのかも知れないが、力道山の伝記物として捉えるとなんとも言いようの無い出来だ。主演のソル・ギョングは貫禄もあり力道山に相応しく思える。さすがに日本語はたどたどしいけど許容範囲。身体を張ったプロレスシーンも含めて本当によく頑張っています。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-04-06 20:44:27) |
20. 座頭市逆手斬り
《ネタバレ》 シリーズ11作目。ストーリーは標準レベル。特別熱いものは無い。今回は何と言っても藤山寛美との絡みが見所になるんだろう。そこは面白いものの、やや藤山寛美に持ってかれすぎな点がちと残念。中盤の殺陣は中々良かったが、肝心の最後の殺陣がいまひとつ。工夫しようという意識は感じるが退屈な部類。上映時間が78分。この監督の座頭市は尺が短いのね。 [DVD(邦画)] 5点(2008-04-06 19:29:22) |