1. 岸辺露伴 ルーヴルへ行く
《ネタバレ》 中盤までの雰囲気はすごく良いんですけどね。露伴のアトリエ、年代を経た旅館、山の緑と謎の女。画のレベルがミステリー映画のクオリティとして文句なし。わくわくしました。 でもパリに舞台を移してからは、撮影に制約があったんでしょうか、今ひとつせせこましい演出になってしまってせっかくルーヴルと謳っていても看板倒れな感じです。黒い絵が怨念パワーを炸裂させるシーンも陳腐。露伴さん自前の能力ここでこそ発揮しないと。あれ、使えないの? 時代劇もちょっと長い。あんなに丁寧に謎明かししたら怖くなくなる。昔黒に取り憑かれた絵師がいました、禁忌を犯して処罰されました、とざっくり数カットで収めた方が見る側の想像がふくらんで怖かったような気がする。 オカルトもどきの食い足りない出来になっちゃいましたが、高橋の仕事がさすがです。評判通り。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-11-21 22:27:34)★《更新》★ |
2. 侍タイムスリッパー
《ネタバレ》 脚本の出来が良いです。面白い!定番の「タイムスリップで生じる時代ずれが引き起こす笑い」も上手いんだけど、コメディにとどまらず幕末に侍として生きた男たちの生きざまをも見据える胸アツかつ骨太な物語です。 上手い役者と、すごく観易いカメラと、流れるような殺陣。 本作の殺陣のシーンは白眉と言っていい。ここ数年に観たアクションもの全般の中でも飛び抜けて迫力があって美しかった。「あの夜の続き」である決戦は手汗がにじむほどの、どえらい緊張感がありました。劇中スタッフが「本物の侍がいる」と言ったけど、山口馬木也も冨永ノリマサもほんとに140年前の日本人に見える。彼らの放つ凛とした武家人の気概に酔っ払いそうになりました。 館内の皆と一緒に笑い、息をつめて見守ってそして(少なくともわたしは)泣いた。 ラストのオチも思いがけなくて洒落てて(?)、もうひと笑い。うまいなあ! 低予算でも映画への情熱が連鎖してこんなに素敵な作品が作れる。他国の豪勢な作品と比べてどうこう言う必要全く無いよな、とここ数年邦画に誇りと喜びを再び見出すことができてとても嬉しい。(でも予算はあるに越したことはない) [映画館(邦画)] 9点(2024-09-28 23:40:28) |
3. お早よう
《ネタバレ》 ちょっと前の日本と日本人を知るのに小津映画ってうってつけで。カラーで撮られていることもあって、ほかの小津作品に漂う「しみじみ感」は薄くて断然陽気。 昭和三十年代の東京(の郊外)ってあんなふうだったんだねえ。近隣との距離が近い近い(笑) 「ちょっと○○さーん」と呼びつつ戸を開けて現れる。インターホン(むしろ呼び鈴)、だーれも(押し売りさえも)鳴らさないの。この人間同士の近さって失われて久しい。煩わしいけどちょっと懐かしくもあります。 高度経済成長期へ差しかかろうという時期の息吹も感じます。家屋の中に物が多いし、子どもへの教育熱心さがどの家庭からも伺える。 皆文句を言いながらも元気いっぱいで明るい。テレビ買って!とだんまりストライキを子どもができるのも、暮らしに余裕があることを子供心にも肌感としてあったからでしょう。社会全体が右肩上がりだった活気が伝わるなあ。 それに、この時代の人物らは戦争を経験して生き抜いた世代なのですね。ご近所の詮索をして噂話をするのも解放されたのびのびした空気の中でこそ。 そしてさすがとしか言いようのない杉村春子。キッツいなあ相変わらず。息子かわいそうパンツくらい出してやれよ笑。「そーんなに厳しくしなくてもいーんじゃないかあ」とわたしの感想も心なしか笠さん風のんびり棒読み台詞になりました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2024-09-16 13:08:57) |
4. ブレット・トレイン
《ネタバレ》 ハリウッド映画を観た時の、外国人から見た日本ってこんなんなのかあという驚きが21世紀版にアップデートされた感覚でした。 いやー、参ったな。一々手を合わせる仕草とか邪悪なゆるキャラが車内にいるとかはまだしも、時々差し挟まる日本語のフォントが嫌だな。 それはともかく中盤まではクセ者だらけの暗殺者らがすれ違い、邂逅したりするプロットは伊坂作品ぽくてちょっとわくわくしました。 終盤に向かうにつれガチャガチャした凡庸なアクションムービーになっちゃったのは残念。 ヤクザに日本刀、血しぶきを盛大に上げての活劇はタランティーノに大いに影響を受けていることは想像に難くない。だけど制作センスが決定的に違っていると思う。走行中の新幹線の窓をぶち破って車内に侵入するなどといったあまりに荒唐無稽な筋はタラならやらないはずです。リアリズムと虚構のギリギリの線をつく、その塩梅はやはり感性がモノをいうのでしょう。 選曲も残念だ。真田の殺陣のBGMにHEROって。そうじゃない感が強すぎる。タラなら梶芽衣子だもん。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-08-31 22:41:34) |
5. 隠し砦の三悪人
《ネタバレ》 逃走型エンタメの分野を確立してしまっている。黒澤監督の才をこれまたひしひしと感じる一本。 配役が完成してるもん。命がけで逃げるはお姫様と有能な従者。トラブルを呼び寄せるマヌケな二名はお笑いも担当。それに外部からの協力者。 敵方が攻め寄る演出は音から迫り来るものだったり、突然ひらけた視界に大軍勢だったりとほれぼれするような垢抜けっぷり。和を感じる音楽も良かった。 腹の座った六郎太の戦術には唸らされ、思わぬなりゆきに手に汗握る。映像もほんとに戦国の世を観ているよう。 見事な作品であるのは間違いないけれど、上原美佐の棒台詞が浮いてしまうのは残念。でも彼女を弁護するならこの時代の若い女優サンたちってこんな感じの一本調子なお芝居台詞が多いなと常々感じてまして。女性の話し方が大きく変わったのは時代の方なのではないか、と思ったりしてます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-06-30 22:43:41) |
6. 南極料理人
《ネタバレ》 ”特に何も起こらないお話”というのが嫌いではありません。好感を抱くその手の話は愛すべきキャラクターがいたり、人物らに共感できて分かるわあー、となったりします。 本作は愛すべきキャラとしてラーメン大好き隊長のきたろうがその役を担っていて、まあ彼とラーメンエピソードのとこぐらいでした良かったのは。 どうも細部のところどころが、個人的に監督のセンスと合わなかった。日本で待ってる人たちって、あんなに冷たいもんかな。国内の単身赴任とだいぶ違いませんか南極に家族がいるってのは。普通にもっと心配してそうなものだけど。隊員たちのごはんの食べ方もがっついていて「食べることだけが楽しみ」な演技をさせられているみたいで稚拙な演出に感じる。 宇梶さんのくだりは笑うとこなんだろうか。あまりに可哀想であんな風にさらっと流せなかった。 極めつけは西村くんの娘。お父さんを足で蹴るなんて何事ですか。これはだめです。作品としても役者にそんなことをさせるのも。 まったりとしてシュールな作風で雰囲気は良いんだけど、引っかかるとこが多すぎました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-04-26 23:29:09) |
7. Mr.ノーバディ
《ネタバレ》 ぱっと見くたびれた親父が実はバリバリの殺し屋でした、ってギャップの妙味がこの手の映画の肝。息の上がってるジョン・ウィック、という画ヅラながらボブ・オデンカークは健闘賞もののアクションをこなしてます。(もっとも、”頭脳派”のソウル・グッドマンの方がハマリ役だったとは思うけど。) 地味なおっさん大暴れカタルシスが、もっと弱者であるはずの老人ホームのじいちゃんまでがキレ良く参加することによって倍になるとは笑。ロイドじいちゃん、ホームに世話にならなくても全然大丈夫そう。 全体としてこちらの期待通りに無双に暴れ散らかしてくれて、さっぱりした気分で観終えることはできました。でも難を言うとこの種の映画作品の型通りでストーリーに意外性が無さすぎな気もします。観たことあるなあと思わせては負けでしょう。 冒頭の「満身創痍で猫にエサ」のシーンの掴みは万全なだけに、展開するにつれ普通になっていくのはちょっと残念でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-03-20 23:12:45)(良:1票) |
8. カラオケ行こ!
《ネタバレ》 面白かった!普通ではまず接点のない中学男子とヤクザの兄ちゃんが関わることで発生する事象の数々を、まあ上手に笑いに変換してます。強面のチンピラが腰低く中学生にビールを勧めてくる、ベタだけどその画ヅラに笑えます。口のあるキティちゃんはツボにはまっちゃった。 視点は中三の聡実なので15歳のリアルとともに物語は進行。ジュヴナイルな瑞々しさが本作の魅力の一つに感じます。彼が中学生活で心を注いできた合唱部の仲間や担当教諭らもキャラ立っています。めんどくさい後輩に、掛け持ちで所属する映画部という大事な場所。客観的に見られるようになってきた愛すべき両親。まだまだ狭い中学生の世界に突如ぐいぐい押し入ってくる別世界の大人。困惑する聡実を演じた斎藤くんは当て書きかのように違和感なしです。 「気の良い兄貴」的な懐っこい若頭狂児役の綾野剛は、(関西弁の難しさに足を引っ張られてる感があるけれど)魅力的な造形に仕上がってます。スタイルが良いのでちゃんとスクリーン映えしますし。でもでも、なぜに狂児がカラオケ大会最下位なのよ?序盤の「紅」だってわりかし上手じゃないですか?この場面はもっと音外してくるものと思ってましたのでやや拍子抜け。演出的にどうなんだろうとは思いました。 カタギの中学生には優しくても、ヤクザですからいつマジでおっかない側面を出してくるのかと内心冷や冷やしながら観てたのだけど、最後までハートフルな空気感でした。「カラオケ大会が終わったらLINEも通じなくなった」と聡実の台詞。ヤクザの自分がいつまでも未来ある15歳に関わっていては良くないと狂児が身を引いたのでしょうね。実にハートフルです。 [映画館(邦画)] 7点(2024-02-05 15:39:51) |
9. 白い巨塔
TVドラマの唐沢財前版は観てましたので、「本家」のこちらはどの程度ドロドロしてんのか、と大いに興味を抱いての鑑賞です。 映画版はやはりドラマより展開が早い、というか忙しいな。台詞説明も多いし。でも大学病院という高みで展開する権力争いのえげつなさはいかんなく描写され尽くしてて、わかっていても充分げんなりしました・・。 時代が古い分、洗練されることなきむき出しの欲望と言いますか、財前の義父は特に大迫力でしたねえ。 やっぱり古さが感覚に合わない部分もありまして、女優陣の演技やキャラ付け、台詞回しはもう絶滅した仕様のものですね。そして何気にホステスもお嬢様も強烈に毒舌。なんでなの笑。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2023-12-11 22:52:13) |
10. ゴジラ-1.0
《ネタバレ》 「シン・ゴジラ」で怪獣モノから一気に垢抜けた感のあるゴジラ映画。シン・ゴジラも本作も、その時生きている人間社会のリアルを丁寧に描くことに成功していますよね。 三世代前の日本社会の情操を描くならやはり山崎監督でありましょう。映像技術の高さもあって、(まあちょっと小綺麗な気もしますが)焼け野原になった帝都の真に迫ること。例えば澄子おばさん。生来気の良い人である彼女であっても、家族を失う戦禍にあっては他者に当たらずにいられない。そして家が焼失しても、人はその土地で再建をするのだなあと感じ入りました。実際東京はそうして立ち上がってきたのでしょう。 敗戦直後なので戦力は米国に接収されてしまって残ってない。帝国軍は死んだ。米国もソ連を気にして動きたがらない。ならば民間人の俺らでなんとかしなければ、という戦後という社会状況をふまえてのシナリオには非常に説得力がありました。巨大水圧作戦で戦うとはあったま良いなあと素直に感嘆しました。 人間ドラマは正直時代錯誤なまでのベタなウェット感であふれているのだけど、むしろそこが戦後にハマってて悪くなかった。ワタシは伏線になど(たいてい)気付かないので終幕は泣けました。 そして画もゴジラも素晴らしい。邦画でこのレベルのVFXを観られるとは。ジュラシックパークと同年に角川REXを経験した身としては、この快挙にも泣きました。ゴジラを徹底して悪役にしたのも良かった。豪快かつ爽快なまでの破壊っぷり。尾の一撃で巻き起こる塵旋風の描写も、海戦での波のうねりも固唾を飲む迫力でした。 役者陣も良かったなあ。シン・ゴジラでドラマを壊したようなタレントがいなくて胸をなでおろしましたよ。もうね、中でも安藤サクラが凄い。客受けの悪い損なキャラを引き受けた神木もえらい。ベテラン吉岡や佐々木らも手堅くて安心して観られるこの幸福。 戦後の人情噺にゴジラをミックスさせるとは、時代は古くとも切り口が新しい。 不朽の名曲に乗せて新たに生み出された21世紀のゴジラ映画。65年オリジナル版に比肩する傑作が誕生したことは実に喜ばしい。 [映画館(邦画)] 9点(2023-12-02 15:17:13)(良:3票) |
11. AKIRA(1988)
《ネタバレ》 わたしの知る(そんなに数は多くないけど)日本アニメの中で一番‶かっこいい”のが本作。 猥雑なネオ東京のブレードランナー味、狂気の度合い強めな暴走族、政治屋。一見無秩序な近未来都市を疾走する金田のバイクの鮮烈さ。 カオスで暴力的な社会にさらに暗い影を落とす圧倒的エネルギーの存在と、その中にあっても尚信じるに足る金田の熱さ。対照的に心に刺さる鉄雄の卑屈。 硬質で容赦無くて美しい。どこに連れていかれるのかどきどきした。 クール・ジャパンの代名詞のようなAKIRA。30年経ってもこのジャンルでAKIRAを超える作品をわたしは知らない。 空を切る真っ赤な金田のバイクを、わたしは本当に東京オリンピックの開会式で体感したかった。MIKIKO案が見たかった。 [ビデオ(邦画)] 8点(2023-10-06 23:19:31) |
12. スクリーマーズ
《ネタバレ》 いやあ、意外にも?引き込まれて観てしまいました。B級ならではのしょーもなさ感はふつふつとしてますけど面白いです。ブレードランナーやエイリアンといった一級クラスの重厚感とは比べ物にならないけれど、異星の風景や制御不能になったAI武器の怖さなどは、きちんと映画レベルの画を見せてくれます。 ・・にしても、発想が自由にぶっ飛んでいくのでこちらの予想のことごとく上を行かれる楽しさがこの作品の魅力。まさかねえ、思わんよ金属製の移動式丸ノコが人間の姿にそれも勝手に進化するなんてさ。「血が流れれば人間」の大前提も後半には引っくり返しちゃうしさ。敵に惚れたゆえ自身の使命と葛藤するなんて高度な感情まで獲得しちゃうなんてさあ。あ、それにNEB社と連合軍の関係はもとより、連合本部のシリウス切り捨てのサイドストーリーはどこ行ったの。 もう、伸び伸びと製作が自由。こりゃあ、無機物であるはずのぬいぐるみにも寄生できちゃってるのかもよ。地球危ういじゃん。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-07-28 22:51:15) |
13. 座頭市血煙り街道
《ネタバレ》 もはやキャラクターと化した勝新の座頭市。本作は子どもと絡んでの安定の人情噺で泣かせます。もうベタでもいい。むしろベタを求めます。「ああーとんだことに関わっちゃったなあ」との市のボヤキを聞いて嬉しくなる。子どもを親に託して隠れて泣く市と一緒に泣く。時代劇、楽しいな。 そうそうたる女優陣の若き頃が見られます。それに近衛十四郎氏を見て息子の松方弘樹氏を想起する世代の方が今や多いでしょうね。そっくりなんだもの。どうにもバラエティ番組に出ていた松方氏の陽気ぶりがチラついて、集中を削がれちゃった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2023-04-13 23:14:40) |
14. THE FIRST SLAM DUNK
《ネタバレ》 今また大好きな湘北高校のみんなに会えるとは。原作者の井上氏が手がけているとあっては見逃すわけにはいきますまい。 驚いたのはアニメーション技術の進化。その洗練されていること。特筆すべきは試合のシーンで、動きの自然なことはアニメを観ていることを忘れそうになるほどです。 原作の漫画作品が画力もコマ割りのセンスも大変高いので、読み手としては脳内でキャラクターを容易に動かすことができていました。でも実際この目で動く彼らの山王戦を観ることができたのは、想像よりも一層の迫力を伴ってもう圧倒的。幸せな体験でした。 宮城リョータのエピソードを深掘りしてきたのにも驚きました。りょーちんは花道と気の合う一つ上の良き先輩でコミカルパート担当のイメージだったので、こんなにずっしりした背景を持たせたのは意外に感じました。でも、そうだ彼は背の小ささを抱えながらも有能なPGとして健気に務めを果たして来たんだった。それだけのバスケへの愛着を抱いていたのは何故か、種明かしにもなっているのですね。 試合が途切れる度、リョータのエピソードが挿入され桜木や流川にしわよせ(?)がきて出番が少なめ。花道流川好きには物足りないかも。この二人の丁々発止の関係がずーっとあったからこそ最後の得点シーンが生きるので、そこはちょっと残念。 [映画館(邦画)] 9点(2023-03-07 23:44:43)(良:1票) |
15. 劇場版 鬼滅の刃 無限列車編
《ネタバレ》 わたしは原作ファンで、TVアニメは観ていません。日本中が沸騰した感のある本作を、鬼滅アニメ作品として初めて鑑賞しました。 良くも悪くも原作通りの印象です。声優さんの好き嫌いは個人で違いますからスルーするとしても、コミカルなシーンまで漫画のコマそのものをはめ込んでしまうとやっぱりテレビ感が出てしまうので、映画作品としての評価はちょっと下がってしまうかな。 でも、無限列車エピソードは煉獄杏寿郎の物語。本作の制作陣もそこのところを良く心得ていて、物語の佳境であるラスト20分猗窩座との死闘シーンは原作のページ数の制限を十二分に補ってくれるものでした。 炭治郎が「目で追えない」と言った炎柱の太刀筋、紅く煌めく炎刀、翻る白い羽織、とアニメーションならではの動きと色彩が最大限の演出をもたらします。音楽も良かった。猗窩座あ、アンタもすでに煉獄ファンじゃん。ネットでいじられまくりなのが可笑しい。 つくづく吾峠氏は卓越したキャラクターを作り上げたものだなあと思います。煉獄杏寿郎、歴代炎柱を輩出してきた名門の出でノブレス・オブリージュの信条に生きた強き人。後輩に見せた優しさ、心の広さは我々に滂沱の涙を流させて止みません。 煉獄さんを失った喪失感をどうやって埋めれば良いのでしょう。心の虚脱感未だに深刻な読者がここにいます。 [地上波(邦画)] 7点(2023-02-16 23:18:27) |
16. 座頭市物語
《ネタバレ》 邦画No1のハードボイルド味。情感は完ぺきに和のテイスト。抑えめの友情、仁義、淡い悲恋。良いなあ控えめなケレンみ。 剣術のレベルが超人的な市の、その技が三回ほどなのも良いです。あまりに連発されるとありがたみが減っちゃいますもんね。「見世物じゃねえや」です。 勝新の市は文字通り唯一無二のキャラクター。親分には(一応)へりくだりつつ、腹の中では高く買っちゃいない。そのトボけ具合と真人間としての気骨。この役をその後も誰一人ものにできていないのもむべなるかな。 天地茂の愁いを帯びた平手の存在感もおたね役の万里の美貌も、組の下っ端らのこすっからさも皆その役柄にピースのようにぴたりとハマる。観ていて快感です。 江戸の町がリアルに感じられる美術も撮影も素晴らしいと思いました。夜道は闇が深いし、人物が提灯を手渡す気遣いをしょっちゅう見せるところに日常の考証の行き届きを感じます。乱闘の際は貧しい町民の家屋の壁戸がばりばりと破られたり。市がおたねを避けて街道の脇の小高い藪の中を行くラストシーン。上から小さい彼女を見下ろした画がほんとに‶土の道だけ”で、確かに往時は馬や人が通るだけの、土ぼこりの舞うそこが街道だったのだろうなあとそんなことを思いました。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2023-02-03 23:07:49) |
17. ワンダー・ボーイズ
《ネタバレ》 ‶中年オヤジの悲哀”もこういう風に描くと湿っぽくならなくて良い味が出るもんですね。年食って経験を重ねた分、人を食ったような動じない中(高)年マイケル・ダグラスが右往左往するんだけど、そこに絡むキャラが自閉症トビー・マグワイアや自己中編集者ロバート・ダウニー・Jrとかで「真っ当」じゃないのでほとんどカオスです。ダグラスの不倫相手というのがフランシス・マクドーマンドというのが絶妙に現実味があって、うっとりしないというかなんというか。 ペット殺しやら女房の家出やら不倫相手の妊娠やら、穏やかじゃない現実に振り回されてるけど打ちのめされないダグラス教授のとぼけた立ち居振る舞いを見ていると、なんか色々と気持ちがラクになっちゃうような気がしてきますね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-20 22:22:50) |
18. デッドマン(1995)
《ネタバレ》 ‶退屈映画”は世に数あれど、観続けるのが苦痛になるものと意味は分かんないながら観入ってしまうものとあって、わたしにとってジャームッシュ作品は後者なのです。 不条理に巻き込まれて命が抜けそうな男(いや実はもうdead manなのか?)と、彼の魂を平穏に送り出そうと手助け(?)するネイティブアメリカン、ノーバディ。 この作品を正確に解説する術も技量も持ち合わせていないのですが、そうだな生と死のあわいを行ったり来たりしているかのような映像美とか、ほんとにあの世に片足突っ込んでいるような形相のJ・デップがハマっていて目が離せないとか、マトモな人物が出てこないそのシュールさの塩梅が個人的に好みであるとか、なぜこの映画が良かったのかと聞かれればこんな感じで要領を得なくなってしまうんだけれども。 ジャームッシュ贔屓の点数であることは認めます・・。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-03-04 23:26:31) |
19. ナイト・オン・ザ・プラネット
人間てのは日々他愛のない時を過ごしているもので、誰にでも覚えのある‶さして意味のない”でも”確かに生きてた”瞬間を刻むのがジャームッシュ。ツボるかツボらないかはほんと人によりけり。そんな彼の映画がこんなに高得点とはちょっと驚きです。 わたしが好きなのはロスとニューヨークかな。ドライバーさんたちの中では一番ウィノナがキュートでよかったな。 [DVD(字幕)] 6点(2022-02-02 16:58:05) |
20. 誰も知らない(2004)
《ネタバレ》 わたしは冬になると着込んだ子どもを見るのが好きです。三頭身がもこもこしている姿が単純にかわいいということもあるけれど、子どもに寒い思いをさせまいという親御さんの愛が感じられるからです。 だからこの映画はきつかった。ネグレクトという暴力にさらされる4人の子どもたち。下の妹は外出するための靴すらないではないか。 社会に衝撃を与えた事件でしたから、よく覚えています。冒頭で監督が述べているとおり、この作品は実事件をモチーフにしたものですから、報道された内容よりマイルドではあります。 映画はドキュメントではなく出来事の本質を訴える媒体であると考えるに、本作はその役割を果たしていると思えます。陰惨な描写のみに終わってしまえば観る者の心を折ってしまうし、それは監督の狙うところではないでしょう。 子役がお芝居しているように見えないこと、特に柳楽優弥の瞳の饒舌さには心を射抜かれました。柳楽が全身で訴える傷だらけの13歳。明を思うと心の震えが止まりません。 「誰も知らない」のではダメなんだやっぱり。明に手を差し伸べることができるなら、お節介おばさんに積極的になろうと思いました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-01-12 23:34:06)(良:1票) |