1. リアル・スティール
《ネタバレ》 本作では「ロッキー」を連想される方が多いようですが、それに加えて私は「オーバー・ザ・トップ」も思い出しました。つまりこの映画、本質的にはスタローンイズムに溢れたB級素材なのです。しかも舞台は「ローラー・ボール」を思わせる未来のハイテクスポーツで、こちらもまた、いかにもなB級設定。特に「ロボット格闘技」なんて面白いと思いますか?格闘技を含めたスポーツ全般は、神から与えられた肉体という制約条件の中にあって人間がいかに身体能力を向上させるかが、その面白さの原点であるわけです。設計次第でスペックをいかんともできるロボットにスポーツをさせたところで、それが面白いわけがありません。そんなこんなでこの映画は絶対につまらないだろうと踏んでいたのですが、見て驚きました。文句の付けどころがないほど面白いではありませんか!脚本・演出・演技という映画の基本的要素が非常に安定していたおかげで、この企画は奇跡的なまでに化けたようです。主人公は息子の存在すら忘れているほどのダメ親父なのですが、同時に適度な愛嬌があるため観客から嫌われるギリギリのところで味のあるキャラクターとなっています。その息子もまた、父親に向かって悪態をつくクソガキなのですが、ウザくなる一歩手前でこれを個性としているきわどいバランス感覚はお見事でした。役者のハマり具合も完璧で、憎たらしさと可愛げの絶妙なバランスを見せた子役のダコタ・ゴヨの演技には目を見張りました。。。 そして素晴らしいのがロボット格闘技の場面で、前述の不安が帳消しにされてお釣りがくるほど燃えましたとも。スポーツ映画としての本作の構成は抜群に優れています。まず前半で主人公が所有するロボット2台に負け戦をやらせるのですが、足を飛ばされ、首をもがれるという容赦のないやられっぷりを観客に見せておくことで、その2台よりも華奢なATOMのバトルの緊張感を高めています。最後には勝つとわかっていても、ATOMも同じ目に遭わされるのではないかと冷や冷やさせられるのです。やられてやられていよいよ反撃に出る場面では、スポーツ映画らしいカタルシスを存分に味わえます。最強のハイテクロボvs職人気質のローテクロボというありがちな対比も存分に映画に貢献しており、ここまで熱くなれる映画は久しぶりでした。ま、この構図は「ロッキーⅣ」そのものなんですけどね。やっぱりこの映画はスタローンイズムの塊なのです。 [映画館(字幕)] 9点(2011-12-16 16:14:30)(良:1票) |