1. ブレット・トレイン
《ネタバレ》 ハリウッド映画を観た時の、外国人から見た日本ってこんなんなのかあという驚きが21世紀版にアップデートされた感覚でした。 いやー、参ったな。一々手を合わせる仕草とか邪悪なゆるキャラが車内にいるとかはまだしも、時々差し挟まる日本語のフォントが嫌だな。 それはともかく中盤まではクセ者だらけの暗殺者らがすれ違い、邂逅したりするプロットは伊坂作品ぽくてちょっとわくわくしました。 終盤に向かうにつれガチャガチャした凡庸なアクションムービーになっちゃったのは残念。 ヤクザに日本刀、血しぶきを盛大に上げての活劇はタランティーノに大いに影響を受けていることは想像に難くない。だけど制作センスが決定的に違っていると思う。走行中の新幹線の窓をぶち破って車内に侵入するなどといったあまりに荒唐無稽な筋はタラならやらないはずです。リアリズムと虚構のギリギリの線をつく、その塩梅はやはり感性がモノをいうのでしょう。 選曲も残念だ。真田の殺陣のBGMにHEROって。そうじゃない感が強すぎる。タラなら梶芽衣子だもん。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-08-31 22:41:34) |
2. ロスト・チルドレン
《ネタバレ》 濃密に完成された世界に魅せられてしまった。実はジュネ監督の「アメリ」も「デリカテッセン」も肌に合わなかったので全く期待しないでの鑑賞だったのですが。 なんて毒々しいまでに甘いんだろう。描きこまれた絵本をパラパラとめくるのに近い心持ちでした。輝くリンゴ。海の緑色。女の子の赤いスカート。金糸銀糸で織り込まれた大ボスのジャケット。暗いけれど艶がかってるような、あの画面はどうやって撮るのだろう。 クリーチャーと言った方が近い大人たちと、対比をなすように天使のように美しい子供たち。 気色悪くて魅惑的で映画酔いしそうです。好きな人とそうでない派に二分される作品でありましょう。 だいたいね、向こうのオモチャってそもそも可愛くないというか。冒頭から登場の近衛兵の人形、あの顔怖いなあ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2024-07-01 22:34:36) |
3. スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜
《ネタバレ》 ・・ちょっと、勘弁してくださいよ。鑑賞中はもうずっと生理的嫌悪感との闘い。サスペンスとの触れ込みだから観てみたけど(たしかにすごくサスペンスフルだけど)、それ以上に変質味が強いので苦手な人は要注意です。 まあこう言っちゃナンですが変態キャラによくハマる役者を使ったものですね。 表向きは親切無害な管理人面だけど、一皮むけば・・のその切り替え具合がホント上手い。現実にもいそう。ぶるぶる。 このオッサンさあ、自分だってリア充社会からのつまはじきのくせに、独り身の老婦人にはマウント取りやがんのね。解雇されてもう社会的付き合いが必要無くなった途端に見下した侮蔑発言を浴びせるその卑劣なこと。いきなりの攻撃を食らった高齢おばさんの引きつった表情が辛くて見てられなかった。腹立つなあ変態のくせに。 感想としては不愉快100%だったので0点を付けたい位なのだけど、‶すんでのところでバレそう”といった緊迫演出等はレベルが高いし、「全てお見通し」な厄介キャラ(男から見て)の女の子を配置しているのも話にピリッとスパイスが効いてて巧い。なので差し引きしてこの点数で。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-03-14 22:59:38) |
4. レッド・サン
《ネタバレ》 ネームだけで大迫力な面子。重量級の役者を揃えておいて、軽快な活劇に仕上げているのが素晴らしいですね。 三者それぞれがハマった役に収まってるんですよ、これは脚本の当て書きかと思うほどに。ドロンは小ずるい悪党顔だし、ブロンソンのやんちゃぶりに我らが三船の揺るぎ無さ。 外国人の侍観がよく分かる映画でもあります。武骨で己が信条を容易に覆さない。凛として清潔な三船演ずる黒田は外国人のみならず日本人も憧憬を抱くラストサムライでありました。 その黒田にゴーシュ殺害を翻意させるべくちょいちょいブロンソンが仕掛けるのが可笑しい。黒田の気配察知能力の鋭さにブーツ奪還し損ねて「この辺は蚊が多くて寝れやしない」とごまかしたり。剣術の見事さに圧倒され、じゃあ素手で、となっても体術でも容易く引っくり返されるガンマンの図。笑った。こんなに日本人にサービスしてもらえるとは思わなかった。 小競り合いしながら同行してきたリンクと黒田。男の友情がほとばしるラストは胸熱。泣けました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-04-02 23:36:34)(良:1票) |
5. 夕陽のガンマン
《ネタバレ》 キャラが粒立っていて、台詞と演出が粋。ちょっと無理矢理感のあるストーリー展開でも、人物の魅力で引っ張って行ってくれます。 イーストウッドとリー・ヴァン・クリーフ、つかず離れずの二人。この頃はまだ若いイーストウッドがリーにヒヨッ子扱いされているのが微笑ましい。かのハットの撃ち合いで気持ちを測る場面は渋くて心ときめきますね。 なにしろ役者の顔が皆良いのでさしものイーストウッドもややかすみ気味。二枚目枠ならば立ち姿も素敵なリーに軍配が上がりますし、ならず者連中の脂ぎった悪人顔の群れったら迫力満点です。特筆すべきは何といってもクラウス・キンスキー。やはりあの顔は凄い。途中退場が惜しまれます。個人的にはこの映画での顔№1でありました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-02-20 21:21:28)(良:1票) |
6. 恍惚(2003)
《ネタバレ》 *以下ネタバレしてます! E・べアールの露出度高めな娼婦ぶりだとか官能の側面ばかり話題に上った本作ですけど、実のところコレ夫婦の停滞期を迎えた中年女の屈折した心理の深い奥底まで潜り込んでいまして、ある程度の年齢と高めの映画鑑賞眼を要求される難しい作品だと思いました。 娼婦を夫に当てがってその内容を知る。屈折妻と娼婦の仲も妙に馴れ合って不可思議な友情らしき感情すら生まれるのがスリリング。またべアール演じるナタリーのキャラクターが、妙に雇い主のカトリーヌに対して義理堅い?ところも見せるものだから観ている我々もちょっとばかりナタリーに信を置いたりしてしまうのです。 こんなこんがらがった関係を自身で理解して演じるなど、アルダンとべアールクラスの力量のある役者でないと無理でしょう。そう、E・べアールでないとダメなのです。撮影当時38歳だろうと。(そしてちゃんと20代に見える!魔女なのかな) 本音では女として‶上から目線”だったナタリーは、プロのプライドを傷つけられたこともあってカトリーヌに嘘をついていた。終盤、二人の女としての立ち位置が逆転した時のF・アルダンの曰く言い難い表情ときたら。全編通してアルダンはほんとに微細で多彩な表情を見せるので、気持ちを読み解くのにかなりの集中を要しました。 フランス映画ってこと恋愛に関するとステージが高くて、恋愛ドラマの主人公はまず20代の我が国と成熟度が全然違いますね。今作のヒロインらと同年代のわたしはカトリーヌの気持ちは全然わかりません笑。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-09-06 23:13:43) |
7. テリー・ギリアムのドン・キホーテ
《ネタバレ》 ドン・キホーテは児童書で読んで以来。子どもの頃抱いた「?」という不可思議な感想をまんま映像作品にしてくれたテリー・ギリアム。そう、元々のお話も整合性なんかなくてオチもどっか行っちゃってる「夢」そのものだもんね。 振り回される気の毒なサンチョことアダム・ドライバーとドン・キホーテその人なジョナサン・プライス二人の軽快な芝居っぷりが楽しく、この二人に引っ張られての鑑賞でした。 スペインのロケーションも素晴らしく、乾いた土と風、強い陽射し、これらの風土はドン・キホーテの世界には不可欠だと感じ入ります。むきだしの土色と岩の中にギリアムがこしらえた赤と金の濃い色彩の迷宮。この色彩のメリハリは強烈でちょっとぼうっとなりました。 そう、役者のお芝居、美麗な画。退屈しなかったのは間違いないんだけど、面白かったかと聞かれると微妙ではあります。そこはそもそもドン・キホーテですから、ということで。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-11-02 23:38:18) |
8. マローボーン家の掟
《ネタバレ》 ネタバレありありです。 ミステリアスな導入部、古い屋敷、隠された鏡、深い森と海。これだけ舞台装置が揃っているのだから、ああこれはゴシック・ホラーなのだなと思い込んだのが間違いのもと。現実では連続殺人鬼が報じられ、おやこれはクライム・サスペンスなのか?とその辺から困惑してしまいました。どうもジャンル分けの難しい作品です。多重人格まで動員されてはサイコサスペンスの要素も入ってくるしで。 なんとしても幻想系ホラーで押してほしかったなあ。個人の好みですが。屋根裏のイカレ親父が生きていた、というオチには心底がっかりしました。殺人犯がしつこく生き延びていただけか。生きていては実体があるわけで幽玄のはかなさも耽美も何もない。 鑑賞するにあたって、監督が脚本を手掛けた前作「永遠のこどもたち」の印象を引きずり過ぎたかもしれないです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-05-22 00:19:56) |
9. ビリディアナ
《ネタバレ》 つまりこの監督が脚フェチでキリスト教嫌い、ということがよくわかる映画ですね。 敬虔なシスタービリディアナが修道院から一般社会へ出た途端に遭う不条理な暴力の数々。叔父のセクハラに始まり、施しをした乞食らには恩をあだで返される始末。強姦についてはいずれも「未遂」に終わってるのだけど、貞操観念が岩より硬いシスターである彼女にとってはPTSDものの大ショックでありましょう。「なんて日だ!」と叫びたくなったのでは。そしてとうとう彼女は神の教えに拠って立つ世界を捨て、世俗へと降りてくるのでした。 なんかねえ、観ててキツかったですね。乞食らの乱痴気騒ぎは胸が悪くなるほどの嫌悪感が湧きます。人間の汚い部分をこれでもかと晒して神のしもべを凌辱するルイス・ブニュエル。こりゃ教会激怒、上映禁止にもなりますわ。これが神社の巫女さんだと考えてごらんなさいよ。「怒られろ」と思うでしょ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-06-14 23:40:53)(良:1票) |
10. MAMA(2013)
《ネタバレ》 お化けがついてきちゃう、というよくあるパターンに「切なさ」をプラスしたところが、凡百のホラーとはちょっと一味違います。 かつて迫害されて我が子を失ったMAMAの、まあ人違いかつ筋違いな執着母性がこのオバケの本質。凶暴な振る舞いも、わが子を守るためと思えばMAMAにも一分の理がありましょう。 叔母さんの身体を乗っ取ったのも、この世での「本体」が欲しかったのかもと考えると、あのかくかくした動きには哀れすら漂います。MAMA、ソレ上手くいってないよ・・。 全体の落ち着いた色彩やトーンはいかにもギレルモ印。才女のイメージが強かったジェシカ・チャステインが気のいいロック姐御を演っててびっくりしました。演技力の幅の広さを感じましたね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-07-18 20:03:01) |
11. オール・アバウト・マイ・マザー
《ネタバレ》 女性賛歌と評価されているようで。確かに登場人物は女(または自覚が女)ばかりだけど、女だから頑張ってる、というよりこのシチュエーションでは誰だって一生懸命生きるんじゃないのかな。 タイトルが「母について」なのもちょっとどうかな。母親であるというアイデンティティはマヌエラの行動や生活にさして影響していないみたいだったけど。「お母さん」のあり方がどう描かれるのかと期待して観たから、その点は予想と全然違う話でした。 ボランティアで世話してる女装男の子を孕むシスターとか、同性の付き人との恋情に悩む舞台女優だとか、この監督ならではのぶっとんだキャラばかりで共感もなにもただただひえ~っと眺めるばかりでありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-06-20 21:51:40) |
12. ジュリエッタ
《ネタバレ》 突然姿を消した娘に囚われ続ける母親。わけも分からず去られる辛さは想像つくし、男との約束を反故にしてまで”母であること”に執着するノイローゼ気味の行動も、まあ理解できるような気はします。 けどこの映画娘からの視点が一切無いんですよね。不気味な家政婦が一枚噛んでいるのは分かるけど。あんなに健気にお母さんを支えていた(ように見えた)のにふいっといなくなる。その心の内が描かれなくて、ドラマとしてはちょっと物足りなかった。 ジュリエッタ役を二人の女優で回すのもどうだろうか。印象がけっこう違いませんかこの二人。私はなじめなかったな。 「大好きな仕事に戻りたい」宣言をしていた若きジュリエッタがいつしかべったり子供依存症に。このあたりの変化も台詞で説明されただけ。 色彩感覚が独特なアルモドバル仕様で、巷の高評価の理由は大半がそのセンスを高く買っているみたい。でも人の気持ちを深く掘り下げたドラマが好きな小うるさい客(=ワタシ)には今ひとつでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-05-08 17:29:44) |
13. マシニスト
クリスチャン・ベール、激ヤセと激太りを繰り返してスクリーンに登場するこの人を見てると、正直役者根性というよりは珍奇な執着性質を感じてしまうのは私だけか。 画は暗いし汚いし、訳はわからなくしてあるしで、まー気色の良くない映画だけど気色悪さの八割方はベールその人が請け負っているような。そんなにアバラを強調すべく裸にならんといてください。怖いなあ。 むしろ役者としてあっぱれと思ったのはJ・J・リーの方。年増の娼婦を演ってますが、くたっと崩れた感じのまあ巧いこと。元々「キレイな」役なんか受けない演技達者な女優ですもんね、乳出しも厭わず、えらいです。 話は皆さん言ってるとおり、オチがえ、こんなもんかと思うくらいシンプル。肩透かしな気分になりましたが考えようによってはリンチ監督みたいに迷宮に置き去りにされるよりは、謎全部氷解の方がストレスなくて良いのかも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-04-03 16:45:58) |
14. 私が、生きる肌
《ネタバレ》 イヤイヤイヤ・・。いろんな映画観てきたけど、このキワモノ感、ちょっと類似品が思い出せないなあ。グロいのかと思ったけど画はきわめて美しく、血は流れてもさほど嫌悪感もなく。 バンデラスは終始どシリアスな演技で「愛」のカタチを大真面目に問うているような気もするが。なんですが。いやいやでもちょっと、と突っ込まずにいられない。亡き妻そっくりの身代わりって男かよ!!!しかも彼あんなに人生破壊されちゃうほど罪深いとは思えないよ。可哀想だしもう。(ちょっとタイプ)そもそも奥さんてサ、浮気してトラ男と逃げてたんだよね?バンデラス先生、そのへんはどう気持ちの整理をつけているわけで?なんかもう必要以上に眉間にしわ寄せてクソ真面目にヘンなことやってるバンデラスの顔見てたらおっかしくなっちゃって。変な息子二人も持っちゃったオカーサンも奇妙だったなあ。キャラクターもコンセプトもいちいち強烈で、そういう意味では忘れ難い作品ではあります。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-12-13 19:27:42) |
15. キカ
うーん 変態監督と呼ばれようと気にしないアルモドバルの肝の太さは感じるけど、個人の好みと合うかどうかはまた別の話で。色彩もヌードも性行為もどぎつくて、面白いと思ってるのは作ってる側だけなんじゃないかな。警官二人で強姦犯を引っ剥がそうとする画なんか最たるもので、上から精液がぽとり、とかこういうのを笑う感性は私には無いや。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-11-28 23:57:28) |
16. それでも恋するバルセロナ
《ネタバレ》 ここ数年ヨーロッパの各都市を舞台にしているアレン監督。それぞれの街への監督の解釈が反映されてるようで、どの作品も「その都市ならでは」な趣があります。 今作はバルセロナ。スペインは情熱の国、代表女優はペネロペ・クルス。ペネロペといえば”ハモンハモン”、あの突き抜けた色情模様にアレン監督もアテられたのでしょうか。枠の無い自由奔放な感情のほとばしりは、件のスペイン映画に通じるものがあるような。 南欧の熱情に翻弄されたアメリカ女子二人。結果一人は自らの結婚に納得できない心を抱え、もう一人は完結せぬ自分探しを継続中、と帰途に就く二人の表情は冴えない。このへんのシニカルな結び方は、アレンらしい。 あと、女優らがとても綺麗に撮られています。女性大好きな監督の手腕のほどがうかがえます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-05-22 23:31:54) |
17. 記憶探偵と鍵のかかった少女
《ネタバレ》 M・ストロングが美少女に振り回されっぱなしのナサケないおじさんになっちまってる・・。あーあ。なんでこう男の人は”魔性の”美少女に弱いかね。記憶を辿らずとも、彼女が嘘ついてんの一発でわかるじゃないですか。私は女だからこの娘の言うことより、周囲の証言の方を信用したよ。しかも、記憶を自分で改ざんできるのなら、そこへ潜る意味無いじゃないですか。物語の大前提を自己否定しちゃってる。 映像はダークで思わせぶりに妖しいのですが、話の骨格に突っ込みどころが多くてノレないです。あの娘16才で家を出たはいいけど、どうやって自活すんのかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-01-18 17:34:20) |
18. マーシュランド
《ネタバレ》 猟奇事件は田舎で起きる。今作の舞台はスペインはアンダルシア地方であります。アンダルシアにはこんな湿地帯があったのか、と瞠目しました。両サイドに延々と広がる沼地の中を走る一本道。走り抜ける車に覆いかぶさるような水鳥の群れ。しっとりしつつ、広々したロケーションはなんとも目に新しく、映画全体が陰鬱ながらも目を引く美しさがあります。少女たちは美しい娘ばかり。彼女らが殺害されてしまった事を、撃たれて血を流している水鳥のショットとだぶらせていたり、隠喩のセンスもなかなかです。 殺人犯の真相はかなりあっさりしているといえます。何故ならこの話は、事件の犯人が分かったところで結、としていないからです。 信頼していた同僚に対して生まれた黒い疑惑。打ち消したい、との思いは証拠写真を破らせる。けれど若き刑事ペドロに生まれた疑念はおそらく一生晴れることは無いと思われます。 思えば最初からフランコ政権の爪あとを所々差し挟んでいたのでした。 このラストの衝撃はおそらく日本人の私よりスペインの人たちに、よりダイレクトに伝わるものでありましょう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-09-24 00:02:15) |
19. パフューム/ある人殺しの物語
《ネタバレ》 あの急転直下摩訶不思議な処刑場のシーンになるまでは、絶対嗅覚シリアルキラーの変態人生物語だと思っていた。 違うんだ・・。 つまり彼は本当のところ人外の者(作中では天使だと言われていた)だったのですね。そう考えると、彼が去ると災いがふりかかるという座敷童的な現象や、体臭が全く無いこと、子供たちだけは彼の特殊性に気付いていた、というエピソードもすとん、と落ちるのです。 彼は愛を与えにやってきた天使。彼を糾弾していた最右翼のA・リックマンすら心溶かされてしまった。天の者にとっては死は単に生まれる前に戻るということでしょうから、人間規範での罪悪感など無いのです。 愛のかけらも無い生まれ場所へと戻り、自ら撒いた愛に包まれながらこの世を去った。食すという行為は愛の究極型といいますし。 まさか猟奇的な殺人行為が愛の話になるとは。こりゃもう常人では考えつかないトンデモな原作&脚本。 けれど、打ち捨てられた死体が妙に美しく撮られていたり、ローラが最後に見せる表情が全く怯えの無いものであったりと、伏線はたくさん張られていたような気もします。 美術は本当に見事で、18世紀のフランスの風俗そのもの。(いや知らないので多分だけど)話もびっくりだけど、眼でも楽しめる一品であります。 [DVD(字幕)] 8点(2016-09-16 23:48:16)(良:1票) |
20. ワイルド・スピード/EURO MISSION
《ネタバレ》 いかに派手にアクションをかますかが焦点になってきたシリーズ6作目、ついには戦車やら飛行機まで参戦してかつてのクルマ愛はどこへやらといった趣きである。 ストーリーはとりあえず脇に置かれているカンジで、観てるこちらも「あれ、今これって何が目的なんだっけ?」と度々思うシマツ。もっともそんな観賞態度でも全体通しては大した支障も無いのがFFシリーズの良いところ。 死んだはずのメンバーが戻ってきて、代わりに二人ほど卒業。ここらへんのキャストの入れ替えって何か業界の力関係が働いてんのかなーといらん勘繰りをしたりもする。個人的にレティって余人を持って変え難いとは思わないんだけどな。 男優陣は各々役割がうまいこと性格分けされているけれど、女優らはキャラがかぶってるのも気になる。外見も性格もそっくりさんがシリーズごとに増えてゆく印象なんですが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-08-25 00:45:30) |