1. かげろう(2003)
《ネタバレ》 どうもエロな描写を売りにしているようだが、実は非常にストイックで丹精な演出に貫かれた秀作だと思う。そして、本作に登場する唯一の情交シーンは、抑制の利いた語り口の中では異質なほど丹念に描かれていて一瞬違和感を覚えるが、観終わったあとに実はこの物語の核になっていることが分かり、かえって深い余韻を残す。 こんな映画をどこかで見たことがあるなと、ふと『完全なる飼育 愛の40日』を思い出した。男は過剰で不器用な行動を通してあるひとりの女を愛し(まるでそこに己の全存在を賭けているかのようだ)、やっと愛を勝ち得たかに見えたその瞬間、唐突にやってくる残酷なる運命。彼らはむしろ既に予感=諦念していたかのように(そうだ。確かにこの二作の彼らはそれを口にしていたはずだ)進んでその運命の渦中へと自らを投じる。どちらも愛される女性(運命の女!)の視点から描かれているのもよく似ている。さらに、一般の観客には不親切なほど肝心なことがあまりにも素っ気なく、ぶっきらぼうに描かれているのは、この二作の監督の資質が元々似ているからなのだろうか? しかし、ひとたび観てしまうと、いつまでも癒えない鈍い痛みのような感動が心の奥底に沈殿してしまう。私はこれらを『アフター・ダーク』などに連なる“孤独な魂のフィルムノワール”とでも呼びたい。 [DVD(字幕)] 10点(2005-04-22 14:37:07) |
2. ダーク・ブルー
《ネタバレ》 戦争によって、主人公は、祖国を失い、愛する女性を失い、愛犬を失い、親友を失い、そして己の自由をも失う。そんな彼にも幸福な瞬間はあった。収容所に差し込む暖かな日差しを浴びて、主人公が見た一瞬の夢=記憶。彼は亡き友と並んで夕日を背に受け大空を飛んでいる。しかし、そんなひとときすらも、一機の離脱=フレームアウトで一瞬に終わりを告げる。映画と共に。 [DVD(字幕)] 10点(2005-04-13 20:48:33)(良:2票) |
3. 2001年宇宙の旅
《ネタバレ》 初見は、高校生の時(例によって課外授業をサボって)、テアトル東京のシネスコ大スクリーンだった。そりゃあ腰が抜けるくらいめちゃくちゃ感動したもんさ。でも、何度か観直すと飽きるんだよね、残念ながら。それでも、猿人が投げた骨がくるくると宙を舞って、宇宙船に早変わりなんてシーンは、今観ても新鮮だと思う。まあパン・アメリカン社はつぶれち舞ったけど...(寒)。あと、猿人や月面や最後の方に出てくるあの黒くて細長い物体は、習字に使う墨にしか見えなくて困る。で、一番気になるのはラストシーンのあの巨大な丸い透明な物体にくるまった赤ん坊。地球にどんどん接近していくところで終わるのだけれど、地上じゃあ、スゲー騒ぎだろうなあ、あんなの近づいてきた日にゃあ。でも、オイラもちょびっと見てみたい気もする。 7点(2003-12-08 22:01:47)(笑:4票) |
4. ドッキリ・ボーイ/窓拭き大騒動
『大丈夫日記』に続いて、懐かしさのあまりつい投稿してしまいました。話は、ちょっと気弱なチェリーボーイが、掃除夫をしながら、さまざまなおバカでHな体験をするというもので、今となっては目新しいものではありません。はっきり言って、しょーもない映画ですが、まだ中学生になったばかりの頃の私にとっては、成人映画はおろか『エマニエル夫人』などさえ観ることはかなわず、こうした映画は有る意味貴重な存在でした。なにせ、恥ずかしながら3回も観に行ってしまったくらいですから。しかも、世界的にもヒットしたのでしょう。その後シリーズ化され、第3作目(教習所どッキリ・レッスン)も公開されました。もちろん、これも観ましたよ! というわけで、「もう一度観てみたい、あの懐かしのおバカ映画の部屋」に堂々殿堂入りとさせていただきます。 追記:やあ、ビデオが出てたなんて、しかもぐるぐるさんが観られたなんて、驚きです。しかも、呆れてます。借りるときは、ある意味18禁なやつより恥ずかしかったんでないの?ところで、私が一番好きなシーンは「泡......」お-っと、言えネエ言えネエ。 1点(2003-11-15 11:27:37) |
5. スペースバンパイア
《ネタバレ》 怖がりの私は、実はこの手のホラーが苦手なのだが、『鳥』でヒッチコックが、嫁姑問題を解決するために主人公の住む港町を鳥達に襲わせたように、本作では、一目惚れした女との愛を成就させるために、ロンドン中を火の海かつゾンビだらけにしてしまうという突拍子もない大胆な発想が気に入った。さらにラストでは、ジャン・コクトーの名作『美女と野獣』(ディズニーじゃあねえぞ!)に敬意を表するかのような演出には、思わず目頭が熱くなった。 9点(2003-09-27 15:13:48) |
6. シェルタリング・スカイ
《ネタバレ》 旅の途中でマルコビッチが正に息絶えようとしているその時に、カメラは一瞬小屋の外に出て「空(シェルタリング・スカイ)」を映し出す。その演出には唸ったが、その後の展開は、どちらかと言うと紀行映像で、ほとんど映画になっていなかったと思う。撮影監督のストラーロにおまかせで、あんた酒でも飲んでたんじゃないの?と邪推したくなるような弛緩した演出。「ベルドリッチよ、お前もか!」と思ってしまった作品。 6点(2003-09-27 15:03:13) |
7. 恋
《ネタバレ》 「あの時」から心を動かすことを一切やめてしまった老いた主人公の眼差しに、少年時代の彼を知るあの屋敷の姿が重なっていく。この映画は、このラストシーンに尽きる思う。 8点(2002-11-20 16:30:57) |