1. NIMIC/ニミック
ネタバレ 当たり前の日常。家族で一番早く起き、朝食用の茹で卵を作る。オーケストラのリハーサルに行き満足した演奏が出来ないまま帰路に着く。妻との間に、そして子どもたちとの間に何があるのか?冷めてもいなければ温かさもない日常。チェロの演奏もまた然り。日々リハーサルを積んでもそこには新たな喜びもなければ達成感もない。 そして、特に必要性もないまま唐突に発した「今何時?」という一言。聞かれた女はその時点で彼と同期する。或いは入れ替わり始める。そして、彼と同様に彼女もまた誰かに時間を聞く。その上で彼女は彼を追う。否、追っているようでいて追ってはいない。それは彼女は彼だから。自宅の鍵も所持している。夫として父親として家族に受け入れられる。更にはオーケストラにも受け入れられる。そのことは即ち彼が存在を失ったということなのか。しかし、彼は誰なのか判らないまでも少なくともそこに存在する。そして、もしかしたら彼女がそうだったように、彼もまた失った存在を取り戻すべくNIMICを求めるのでしょう。誰かに時間を訪ねるカットこそありませんが。もしかしたら連鎖を断ち切る?そんなことはなさそう。 タイトルの「NIMIC」はルーマニア語で「何もないこと」らしい。何もない彼女は全て揃っている(機能しているか否かは兎も角として)彼になり、彼はいったん「NIMIC」となって行く先を求める。存在は本質的には限りなく不安定かつ流動的であって、見極める間もなく移ろいでしまうものなのだ、といったメッセージなのでしょうか? 日々の生活の足元を揺るがされるような不気味さが漂う、単調ながら不安と期待が綯い交ぜになった短編作品でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-11 00:09:53) |
2. ロブスター
ネタバレ 近未来SFなんですね。未来の世界は今と違ってこれこれこうなっていますみたいな一つの定番。ここでは子孫を残せない独身者は社会悪、ということのようです。今の世界で常識化しつつある「多様性」とは真逆の世界。現実世界にシニカルな視線を向けたダークファンタジー、或いはダークコメディといったところでしょうか。 キライではありません。一見奇抜さを求めて思い付きのままに作られた作品のように思えなくもありませんが、考え抜かれたプロットに基いた作品であることは間違いないと思います。ただし、テーマが解りにくいことも間違いない感じ。おそらくは「愛」なのでしょうけれど、設定が設定なだけに少なからず歪んだ愛のような。 この世界では「似たもの同士こそが夫婦のあるべき姿」のようですね。意外と古風。ホテルでの一連のプロセスはそのフィルターということでしょう。支配人のカップルが理想型とも思えないあたりはコメディ要素かと。 で、生き残るためには、幸せになるためには、愛する人と同じ特性を身に着けなければならない。少々問題ありのキャラ設定である主人公は、愛するが故に自ら失明の道を歩んだのか。多分答えは「否」のように思えます。彼にはそこまで出来ないでしょう。そしてロブスターにされたかの如きエンドロール。 繰り返しますが嫌いではありません。敬愛する故デヴィッド・リンチ監督の描いた不条理劇を愛する私。不条理風なこの作風も嫌いではない訳です。だいぶ異なる作風ですが。 絶賛したいところです。ただ、冒頭の馬射殺と中盤の主人公の元兄の犬惨殺とウサギの受難には許し難いものがあります。愛するサメ映画の鉄則(ただし一部の作品にのみ通用)「犬は死にません」を見習って欲しい。これはいけません! まるで別人の如きコリン・ファレルさんの演技の素晴らしさ(太ったのは役作り?)の分を考慮しても、動物殺しのマイナスの方がデカいので7点止まりとさせていただきます。 (追記です) 書きたい小ネタは多々ありますが、どうしても書きたいのを追記します。 ①ホテルの従業員の女性がデヴィッドを助け「何でだか分からない」みたいなこと言いますが、そりゃ毎日あんなことやってたら情が移りますって。 ②プールのシーンの背泳ぎ。今まであんなに官能的な背泳ぎを見たことがないです。あぁなんと艶めか美しいこと。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-10 18:45:11) |
3. ビーキーパー
ネタバレ 素晴らしい!これぞジェイソン君!彼は無敵で良いのです! 今回は終盤に怪我しちゃいましたが(よくよく考えればラスボスに弾を打ち込んでるのに防弾ベスト部分を撃って頭を狙わなかったのはラストバトルに向けてのお約束?)、そこに至るまでの間にも普通だったら(既に状況が普通じゃありませんが)せめて掠り傷ぐらい負ってるだろうに無傷でスルー。やっぱヒーローは無敵じゃなきゃいけません。お約束めいたピンチやら名誉の負傷やらは無用!これでいいのです。 今回は関係ない下っ端とかFBIとかもだいぶお亡くなりになっちゃいましたが、正義のためなら仕方ない?いやいや、ちょっとFBIとかヤリ過ぎちゃいましたね。でも、やっぱ仕方ないですね。てか、考えちゃいけないですね。 兎にも角にもジェイソンこそが正義!法令遵守に拘泥してたら正義は守れません。ジェイソン流のコンプライアンスですね。正しいです。 シリーズ化して何本も、とまではしないまでも2か3ぐらいまでは観たい作品。どうか無理せず同じ路線で。ちょっとだけ中身を変えてくれるだけで良いのです。うん、今回はヒロインとの間に色気なしでしたから少しだけその辺も足すとか。ジェイソン君のキレが維持されてる間に(まだまだ大丈夫ですよね)、是非とも楽しませて欲しいところです。期待! [インターネット(字幕)] 9点(2025-04-08 23:56:34)(笑:1票) (良:1票) |
4. エイリアン・バトルフィールド
ネタバレ ストーリー的にもかなり雑ですが、何よりも映像があまりに雑。どっかからか借りて来た映像や恐らくはソフトに殆ど丸投げで作ったCG。エイリアンとかロボットの動き、或いは宇宙船内の様子は、他のB級SFホラー作品のそれとソックリ、てか殆ど同じ。同じプログラムで作ったとしか思えないです。 見た目がそんななのでストーリーはどうでもよくなってしまう感じでした。それでも、一応振り返ってみれば、墜落した(撃墜された?)異星人の宇宙船と搭乗していた異星人が米国政府に持ってかれる。定番のエリア51ものです。異星人の指揮官は原則不戦の方針。まともに戦ったら簡単に勝っちゃうよ、という考えから親切にも人質返せば去るよと停戦を申し出てくれる。が、小規模の戦闘で少し勝ったからって米国は強気。停戦なんてとんでもない、こっちは絶対有利、全滅させてやる!とばかりに都市部の上空でも平気でUFO爆破撃墜。おいおい一般市民が下に居るってのに。その後は似た状況の繰り返し&何故か飛び入りで他の星の軍まで参加しての戦闘&お約束だから盛り込まなきゃ的な仲間割れ、更には家族ドラマ、更には謎の解説口調のオジサン。カオスです。そして最後には、人類の半分が死んでしまうと承知の上で米国大統領は世界各地(の上空にいるUFO)への核攻撃のボタンを押す。かくして地球上は焼け野原。 と言う訳で、全てにおいて雑な1本。それでも何とかストーリーなり映像なりを工夫して仕上げてやる!という気概が見えれば良かったのですが、残念ながら見るべき点はないままでした。走り出してから現場での思い付きで作り足していった感じです。なので、個人的最低点の1点です。 [インターネット(字幕)] 1点(2025-04-07 13:48:12) |
5. Tea for Two(原題)(2015)
ネタバレ ハートウォーミングなショートフィルムですね。あまり背景は説明はされず、二人の行動・言動、アップで映し出される時計、そしてカフェの店員の眼前から消え去る二人。更には明かされる若い二人の名前。観る者はそれらのパーツを組み合わせてラストシーンに至って気付かされます。あぁ、若い二人は初老の二人の出逢いの頃の姿なのか、と。 何故、過去に遡って若かった二人の出逢いを導かねばならないのか?見る限り初老になっても仲睦まじく見えるジムとアリスなのに。もしかしたら、すれ違い知り合うことのなかった二人が初老になって偶然出逢い、語り合ううちに過去のすれ違いに気付き、方法はどうあれ過去に遡って出逢いを創出したという物語?個人的にはそんな印象でした。違うかなぁ? だとすれば短編だからこその洒落た物語ですね。だって、二人には既に生きて来た人生がある訳で、そこには数多くの人々との関わりもあれば社会との関わりもあった筈。所謂タイムパラドックスが生じるかも知れないですね。あくまでも過去を変えることが可能だとする説に立っての話ですが。 過去は変えられないという説に立てば、人生をやり直す物語。ただし、初老になったジムとアリスにはその行く末を見ることも知ることも出来ない。自由に二つの世界を行ったり来たり出来ない限りですが。 いくつになっても夢を見続けていましょう、そんな語りかけを感じた小品でした。 (追記)字幕は全く意訳なしの直訳です。なので相当激しく違和感ありますが、字幕があるだけでもラッキーとの思いで観賞しました。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-04 11:42:43) |
6. オールド・リベンジ ~やられたらやり返せ~
ネタバレ 滅茶苦茶ひどい目に遭って身近に犠牲者まで出てついに堪忍袋プッツン。虐げられし弱き者は反撃し敵を容赦なく皆殺し。まぁリベンジものの鉄板的展開です。皆殺しにされる側はまるっきり同情の余地のないヤツラだから、観ている者は普通だったら胸がすく思いで少々血生臭くても後味爽やかです。 が、本作はちょっと違うのですね。被害者側はか弱きシニアなんだけど、主人公夫婦は少々曲者。冒頭からイマイチ感情移入出来ない。でもって加害者側は超胸糞ワルイ奴らなんだけど未成年。警察も少々偏向気味ではあるものの一応は法を順守するスタンスで寧ろ悪ガキを擁護する。 ここでどう考えるか、どう受け止めるかによって本作の評価は分かれるところだと思います。散々な目に遭わされてて、やってることはモロに犯罪なんだから未成年だからって許されないでしょ派なのか、いやいや未成年は更生させなきゃいかんでしょ、未来があるんだから守って正してあげなきゃ派なのか。 正直なところ個人的には前者。なので本作の展開は胸がすく思いではあります。けれどもリベンジもまた犯罪。しかも倍返し。いやそれ以上に返してるし。なのでそれ相応の結果が伴わなきゃいかんとも思うのです。いくら汚職してるからって警官まで手にかけてるんだし。ハッピーエンドは如何なものか?まぁ現実的に考えれば、この夫婦が過ぎたことは忘れましょ♪みたいに余生を幸せにのんびり過ごせる訳はないだろうし、どこかで必ず報いを受けるんじゃないかとも思えますが。 要は、ある意味痛快な復讐劇だけれど後味は超が付くほどワルイという作品。もう一度観たいとは思えないかも。作り手のミスリードには引っかからないぞ、みたいにも思えたりして。(邦題もまた然り) ちなみに、冒頭で実話ベースみたいに紹介されますがホントかな?そうだとしても相当デフォルメしてますよね? [インターネット(字幕)] 5点(2025-03-18 21:28:28) |
7. ブリジット・ジョーンズの日記
ネタバレ 封切り当時に観たつもりでいたものの、改めて確認したら未見。今更ながら、とあるキッカケもあって観賞しました。 王道ですね、ラブコメの。洋画ラブコメのベスト10みたいなランキングでは間違いなく入って来る作品なので当然といったところかも。ラブコメの帝王とまで言われるヒュー・グラントさんが出演してるって点でもまさに鉄板的ラブコメ作品と言ったところでしょうか。 何気にレネー・ゼルウィガーさんがピンポイントで好みの女優さんということもあって、終始楽しんで観られました。まぁ、好みの女優さんがあられもない姿で幾度も登場したり、グラントさんにイイように扱われてる感があるのは必ずしも嬉しがってばかりはいられなかったところですが、彼女の魅力を最大限に引き出している作品という見方をすれば全部アリかなとも思えたりして。 基本、あまりラブコメ系の作品は観ないのですが(何故って感情移入してしまい過ぎるタチなので)今回改めて未見だった有名ラブコメを観賞してみて、やっぱ感情移入(今回はコリン・ファースさんに)し過ぎてしまいラストには涙ぐんでしまいました。いくつになっても単純すぎる自らを反省しつつ、高評価させていただきます。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-03-09 12:00:21) |
8. ベニー・ラブズ・ユー
ネタバレ 期待以上でした。何を期待?と問われれば言葉に窮してしまいそうですが、でもやっぱ期待以上でした。 チャッキーを始めとする(否、もっと歴史は古いかな?)殺人人形モノは当然の如くもっとおどろおどろしいし不気味。おおかたは「呪い」がかかっている。ところがベニーを突き動かしているものは「呪い」ではなく「愛」です。あ、殺人人形モノで「愛」で動いているものが過去にあった気がしないこともないですが、兎にも角にもベニーはジャックへの愛で動いているのですね。配給元のキャッチコピーだったかどなたかの紹介文だったか失念してしまいましたが、確かに「大人のトイ・ストーリー」なのかも知れません。 ただし、エゲツなさまで期待以上でした。個人的にスプラッター系は元々好きではないので、いくら人形の所業とは言え(否、人形の所業だからこそ)ヤリ過ぎ。ここには命の尊さは無縁です。存在しません。全てはベニーの価値観。気の向くまま。それって実はジャックの思い?ではないと信じます。あくまでもファンタジーホラーコメディですから。だいたいからして、考えてみればジャック以外の登場人物は悪人もしくは何も考えてない人々。あ、恋人のドーンも善人ですね。だから、ベニーが殺しまくっても全然同情しないで済む感じ。(ダメ?) なにはともあれ、本作から何か重要なメッセージとかテーマ性とかを受け取る必要はないかと。可愛くて「抱っこして♪」しか喋らないベニーが、無感情に血まみれで暴れまわることを「爽快」と受け取らない方は見ない方が良い作品でした。 ちなみにラストに再登場すると予感していた通り、エンドロール後にジャックの元カノが再登場。死ぬ前に出て来いって!と思わず同情。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-02-06 15:42:36) |
9. インフィニット・ストーム
ネタバレ 実話ベースと聞いてビックリするばかり。まさに決死の下山。てか生きてるのが不思議なほどのダメージに次ぐダメージ。個人的に登山の趣味がないので解りませんが、人間はこんなにも強いのですね。 そして明かされるヒロインを襲った過去の悲劇。なんとなく悲劇の内容は予想出来ました。冒頭、愛娘たちの愛くるしい姿に何故かうなされる彼女。寒風吹きすさぶにも関わらず窓を少し開けて寝ている。あぁもしかして火事かガス漏れか。予想させられるカットはありました。 一方、ジョン(仮)の胸に抱いた悲しみも予想出来るものでした。最愛の人を失った。自分も彼女のところに行きたい。迎えに来て欲しい。吹雪の山頂に軽装で佇み下山を拒む姿から見て取れました。 きっと二人は命からがら下山し、お互いの哀しみを語り合うことで前向きに人生を歩んでいくのだろうな。そんなことを思いながらの鑑賞でした。 つまりは、基本的には想定内に展開していく物語。そういう意味では「面白さ」には欠けるのかも知れません。ただし、これは実話だと言う。決して手に汗握る山岳アクションアドベンチャーフィクションではない訳です。だからこその感動でした。 ヒロインのナオミさんの演技は今更言うまでもなく、今回も素晴らしいものでした。少々年齢を感じさせるようになった風貌は年輪を重ねて魅力的ですし、命からがら帰宅して冷たいピザをビールで流し込み全裸になってバスタブに浸かるシーンは命そのものを感じさせてくれるものでした。そしてジョン(仮)役のビリー・ハウルさんもいいですね。死にたいけれど生きていたい、生きたいけれど死んでも構わない、そんな矛盾する心の動きが息も絶え絶えの表情の中に表現されてました。 少々地味な作品ではありますが、見応え十分の感動作でした。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-02-06 13:59:06) |
10. 彼方に
ネタバレ まさか!と思いつつも、短編作品だけにその一瞬はあっという間に訪れてしまいました。 理不尽な事故や犯罪によってもたらされる悲劇は途絶えることなくニュースから聞こえてきますが、この作品を観る直前にも連続してそのような事故・事件が起きました。それだけにリアルに映像化された悲劇は衝撃的です。主人公を襲った哀しみと喪失感は到底想像出来ません。 そんな絶望の淵にあって、家族との別れを契機にそれまでの生活に別れを告げながらも、新たな職としてタクシードライバーを選んだダヨは、人との触れ合いだけは失いたくなかったのかも知れませんね。 そして、結果としてその職業を選んだからこその出会いを果たす。それは自らの家庭には決してなかった家族関係。否、あったのかも知れない。見えていなかっただけかも。更には見ず知らずの彼に助けを求める少女。泣き崩れるダヨ。 彼はこれからどうやって生きて行くのか?好ましからざる家族関係を見せつけられた彼は、自らの幸せだった日々を思い出さずにはいられないはず。それは彼に未来を見せるのか?それとも更なる喪失感をもたらすのか? 鑑賞後、様々考えさせられた佳作でした。ただし、実際にこのような事件に出遭ってしまった人には、冒頭の悲劇シーンは厳し過ぎる気がします。他の演出はなかったのか?そこも考えさせられました。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-02-06 12:08:34) |
11. プー あくまのくまさん
ネタバレ 発想としては「本当は怖い〇〇童話」みたいなノリかなと。著作権OKだからヤッチマッタ感のみが感じられる作品。 じゃ、原作へのリスペクトのひとつもあるんかな?と思ってみても無駄。そもそもプーさんってぬいぐるみじゃなかったけか?原作をキチンと咀嚼してこそのパロディ。これはプーさんみたいなマスクを被った変態による猟奇事件ってだけです。 そうなってくると、個人的にはスプラッターやらスラッシャーは元々好きではないので登場するおバカキャラ(ほぼ全員)への感情移入の欠片も見当たらないおバカ作品としか見えず、何だか関係ないエピソードが無駄に盛り込まれてたり、とは言えその手のホラーのセオリーだけは辛うじて踏み外していないようにも思え、百歩譲って(譲る必要はありませんが)まぁ話題性優先のみで一発勝負のイロモノとしては成立しているかなと。 兎にも角にも一発勝負なんだから続編作るなよと言いたくなる超ヒマつぶし向け作品でした。(続編観ちゃうかも知れない自分も情けないが) あ、邦題は馬鹿らし過ぎて好きです。 [インターネット(字幕)] 2点(2025-01-31 09:45:36)(良:1票) |
12. 聖なる証
ネタバレ ホラーかなと思い観始めたらサスペンス?ミステリー?観応えのある1本でした。 ただし、実はこれ、時代背景を現代に持って来たら全然違う作品になってしまうというか、1860年代のアイルランドがどういう社会だったのか、英国との関係はどうだったのか、恥ずかしながらほぼ何も知らないままに観たので、実は半分も理解出来ないままに観てしまったのかも知れません。 何より、宗教的視点に欠けている自分。母親が何故にそんなことをしてまで娘を尋常ではない状況のもとに生活させたのか。おそらくは(間違いなく)娘より深い愛情を注いでいたであろう失った愛息への思いにオーバーラップする母親の宗教観。否、実のところは彼女の宗教観は自らの感情を封印するための手段に過ぎないのかも。 歪んだ愛情。地域社会の求める宗教観。合理的で科学的な思考に基く倫理観で対峙する看護師。とは言え人間的な弱さに脆さを隠し切れない看護師。そして、何より誰より主人公の少女。純粋に信仰心のみによって事態を受け入れているとは到底思えない辛い過去。登場人物の一人ひとりが丁寧に描かれていきます。 ラスト。純粋なハッピーエンドとは少しばかり、否、大いに違いますね。この3人を待っているのは新天地での幸福に溢れた生活なのか。3人それぞれの思いはこれで全て切り替えられたのか。残された者たちはこれからどんな思いで生きて行くことになるのか。考えさせられました。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-01-25 10:29:52) |
13. グランド・ブダペスト・ホテル
ネタバレ 評価が大きく分かれそうな作品。好きな人は好き!嫌いな人は嫌い!といった感じが皆様のレビューにも明確に出ていますね。 私は大いに気に入りました。色彩、セット、衣装、登場人物の魅力、豪華な出演者、そして肩の凝らない演出とスピーディな展開。どれをとっても文句なしでした。 最近観たアンダーソン監督の作品と共通しているところですが、登場人物の飄々とした多弁ぶり、二次元的で平板とも言えそうなカメラワークから不思議と感じられる奥行きの深さ、随所に辛辣で過激ささえ感じられる悲喜劇が敢えて感情を抑えているかの如く勢いよく押し進められていく。惹かれます。 特に注文なしということで満点献上します。 [インターネット(字幕)] 10点(2025-01-03 15:37:40)(良:1票) |
14. カンダハル 突破せよ
ネタバレ アメリカ万歳的なヒーローものなのか?今も続く紛争とそれによってもたらされる悲劇を描いた社会派アクションなのか?アフガンの混乱の背景を描くポリティカルアクションなのか?物語の背景といい登場人物の関係性といい、複雑すぎて観ていてなかなか集中出来なかったと言うか、テーマを絞り込めなかったと言うか。観終えてみれば「何だったの?」という心境になってしまったと言うのが正直なところです。 確かに悲劇の連続。それは直接作品で描かれている具体に限らず、その前もその後も始まりも終わりもない世界。絶望しかないような世界に思えてしまいます。更に、終盤救援に来た人物の死は何だったのか?正規の手続きなしに迫り来る追手を爆殺した判断は正義なのか?主人公は娘と会えて良かったね、なのか?何かモヤモヤとしたものが残ってしまい、作品中で描かれてきた悲劇が薄まってしまったというか、何とも消化不良で結局アクションシーンだけが印象に残った作品でした。 [インターネット(字幕)] 4点(2024-12-24 14:47:35) |
15. ロックド・イン/囚われ
ネタバレ ひとことで言えばドロドロ。いかにも本邦の2時間TVドラマにありそうな愛憎劇。 本心がイマイチ解りにくい女主。その女主を幼少期から慕い続ける養女。その養女に依存し続け、今や夫婦となった女主の亡夫の連れ子。ヤブなのか野心家なのか単なるエロオヤジなのかいずれにしても只管怪しい医者。そして、瀕死の重傷を負った女主から事の真相を聞き出すべく私立探偵ばりに活躍する看護師。登場人物が多彩です。 そんな登場人物が織りなす物語がシンプルな訳がない。けれども、意外と解りやすく物語は展開します。つまりは観ている最中は結構楽しめる。そこそこツッコミどころもありますし。されど、観終わった傍からあっさり忘れ去ってしまうような薄い物語。 特に深いテーマ性があるとは思えません。典型的な?エンタメ作品です。深く考える必要はなく感情移入も不要。決してツマラナイ訳ではありませんが、重苦しい雰囲気の割には印象の薄い作品でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-12-12 21:05:04) |
16. ワウンズ: 呪われたメッセージ
ネタバレ 序盤から中盤ちょい前ぐらいまでは、不穏な空気間に満ちていて「一体何が起きるのだろう?」みたいな期待感をもって集中出来ましたが、チラ見せしておいて先に進まない感じが続き、主人公の行動や言動には全く感情移入出来ず、一連の行動や言動は既に邪悪なものに惹き込まれてしまったからなのだろうとは想像しつつもどうにも歯痒いばかり。 一体少年たちは何だったの?オカルト書籍を実践したら何かを呼び出してしまった?そして、その呼び出されたものがスマホを通じてウィルに取り憑いた?キャリーも取り憑かれた?エリックに至っては宿主にされた? これだから悪魔系の作品は煮え切らない。何でもありの存在で、作品の終わり方も何でもあり。あのトンネルみたいなのは何?魔界に通じる穴? 種蒔きだけして突然終了の感が強い作品。序盤が良い感じだっただけに余計に残念な後味が残りました。雰囲気だけは悪くなかったので甘めの4点献上です。 [インターネット(字幕)] 4点(2024-11-01 23:57:13) |
17. ヘル・ディセント
ネタバレ ナチスとか旧ソ連とかを持ち出した秘密の研究施設という設定はかなり使い古されている感が否めませんし、それが地下施設というのも定番。恐ろしい研究からマッドサイエンティストが作り出した怪物、というのも同じく定番ですね。 ただし、本作は地下から逃げ出すことが出来ないままに一人ずつ犠牲になっていき、最後は主人公と怪物の一騎打ち!みたいな定番スタイルではなく、一旦は襲われて負傷しつつも地上に脱出し、新たな仲間たちとともに地上戦を繰り広げる。そして、僅かな戦力となっても怪物の撃滅のために再び地下へと攻め入る、という3回戦マッチ的な展開はスリリングで緊張感が途切れることなく楽しめました。お約束的ではあるものの、きちんと人間ドラマが盛り込まれているところも好感です。6点よりの5点を献上します [インターネット(字幕)] 5点(2024-10-09 15:12:39) |
18. ノー・ウェイ・アウト
ネタバレ 前半から中盤にかけては、不法移民?密入国者?の貧しさ、逃れようのない苦しさがジワジワと画面から溢れてきて息苦しいような絶望感が伝わって来ました。終盤にならないとヒロインがメキシコでどんな辛い暮らしをして来たかが解らないのが少々残念。少しだけ頭出ししておいてくれればヒロインに感情移入しやすかったかも。 そして、このまま社会派風味のホラーの線で行くのかなと思いきや、冒頭の遺跡発掘シーンが繋がって来てオカルト風味に。あの「箱」の虜となった親子二代。更には何とか戦い抜いたかに思えたヒロインも結局は逃れられなかった、取り込まれてしまったということですね。折れていた足が突然治り、身体中に力が漲り、心も安らいで行く。それはある意味、彼女が求めていたものだったのかも知れません。バッドエンドなのかどうなのか?やっぱりバッドエンドなのでしょうね。 ありがちなシチュエーション、そしてプロットと言えるかも知れませんが、出演者の真に迫った演技と思いっきり不気味な演出、そして最後に登場する怪物なのか悪魔なのかそれとも人間の欲望の具現化なのか、いろいろ解釈出来そうなクリーチャーの気持ち悪さが相まって、短めの尺ながら見応えのある作品でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-02 16:53:07)(良:1票) |
19. aftersun/アフターサン
ネタバレ あまりにも淡々と進む物語。ほのぼのとした父娘のヴァケーション。娘と二人きりでこんな風に仲睦まじく休暇を過ごすなんて何て羨ましい!などと呑気に眺めていました。 でも、何か引っかかるんですよ。時折挿し込まれるカット。父親の心の闇を映し出すようなカット。この平穏な時間、幸せな日々はある日突然崩れ去るのでは?という漠然とした不安。 ラスト近くのシーンでは、娘を置いたまま夜の海に走り出す父親の姿から「もう彼は帰らないのか?」とさえ思ってしまいました。一方、現在のソフィの表情からも不安しか感じられません。古のビデオの中に残る父の姿から彼女は何を見出したのか? 愛する父親との忘れ得ぬ幸せな日々。永遠に続いて欲しい濃密な時間。しかし、その裏側でじっと息を潜め続けていた父親の心の闇。思春期だった娘。そして今、その頃の自らの姿を見つめ直しつつ気付いてしまった父のもうひとつの素顔。 シンプルな構成の作品の中に塗り込められた人の心の在りよう。難解?或いは作品世界に入って行くにあたってのハードルの高さ?観る者を選ぶ作品?それとも観る者が選ぶ作品?個人的には余韻を楽しめる好きなタイプの作品ですが、賛否両論なのでしょうね。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-08-17 22:52:51)(良:1票) |
20. 夜の来訪者(2015)<TVM>
ネタバレ 原作や舞台、他の映像化作品は未読・未見です。てか殆ど予備知識なしに鑑賞しました。 濃密に絡み合った人間関係とそこから生まれる悲劇性。どことなく本邦の2時間枠TVドラマとの共通性を思わせる雰囲気ですね。「え¨~!そこで繋がる?!」みたいな意外性というよりお約束感に満ちつつも、決して破綻することなく展開していく物語には、約1時間半の尺とは思えない魅力を感じました。 物語の中心をなすグール警部。登場シーンから妙に謎めいていて、かつ威厳に満ちて誰一人抗うことを許さない姿には、途中から「この人は人間ではない?」という雰囲気を感じました。結局、人間ではないような?かと言って「神」とも思えず、いったい何者だったのか?謎です。強いて言うならば、この存在は若干反則的と思えないこともなかったりしますが。(悪魔やエイリアンが登場すると何でもありになってしまう物語と近しいものがあるかも) ただ一つ言えることは、警部は集まった者たちに自らの犯した罪を見つめ直し悔い改めることを促したのだろうということ。(実際、直接的に台詞にもありましたが)しかし、それは叶うことなく結局予言的に警部が示した悲劇は現実となってしまったということ。原作が生まれた時代であれ現代であれ、暗喩的に社会、或いは個々の生き方に対する何らかの警鐘を鳴らしているように思うところです。 何度もリメイクされていることを納得の作品(原作?)でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-25 16:24:48) |