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1.  ダークナイト ライジング 《ネタバレ》 
前作「THE DARK KNIGHT」ではジョーカーの狂気とゴッサムシティの住民を巻き込んで、壮絶な「善と悪」を描いた。今回の「RISES」でもベインがゴッサムシティを大混乱に巻き込むが、そこにゴッサム市民の「状況を解決する意志」は感じられない。状況を解決するのはBAT MANと警察である。ぼくが思うに、今回のテーマは「善と悪」ではなく、「ブルース・ウェイン個人の物語の完結」ではないだろうか。 BAT MANという存在はブルース・ウェインの悪を根絶するという気持ちから始まり(「BEGINS」)、それが「DARK KNIGHT」で善と悪という壮大なテーマに拡大され、そして「RISES」でブルース・ウェインの物語が終息する。それはBAT MANの終わりでもあるが、始まりでもある。意志を引き継ぐものがいることが描かれる。ぼくはクリストファー・ノーランのそのやさしさに感動した。テーマは異なれど、全作で人へのやさしさと善を信じる気持ちを感じられる。 ヒーローモノではあるが、ただの勧善懲悪ではなく、あくまでも人を描くノーランBAT MAN三部作。そこにきちんとヒーローモノのカタルシスを加え、豪華キャスト陣の素晴らしい演技が相まって、個人的には永遠に忘れられない傑作シリーズになった。こんな素晴らしい作品を作ってくれたノーランとスタッフ、そしてすべての作品で熱演を見せてくれた俳優の方々に感謝です。
[映画館(字幕)] 9点(2012-07-29 14:22:33)(良:3票)
2.  僕らのミライへ逆回転
人を殺せば観客を泣かすことが出来るとか、アクションシーンをてんこもりにすれば、観た後の満足感が得られるとか、そんな安易に作っていない。物語を簡単に考えていない。でもそれは逆にとても難しいのではないだろうか。ゆったりとした等身大の日常に、非日常の要素が絡み合い、そしてひとつになっていく。そのリズム、撮り方、エンディングと、近年観た映画の中では似た映画が思いつかない。それだけのオリジナリティがあって、感動を与えてくれるなんて、素晴らしい映画。ぼくは映画関係者ではないけど、映画関係者に観て欲しいなあ。
[映画館(字幕)] 10点(2009-01-28 20:45:41)(良:1票)
3.  007/慰めの報酬 《ネタバレ》 
クレイグ・ボンドの新作「Quantum of Solace」。「Casino Royale」の一時間後から始まるという、完全なる続編で期待も高まる。 冒頭からアクションシーンの連続! スケール感と予算のかけかたは前作を上回っているように見える。 しかし見終わってみると、残念ながらそれがネガティブに感じられるのだ。ボンドの行く先々で起こるアクションシーン。ヨーロッパや南米の景色は美しいけど、点と点でつながっていたり、ロケーションの必然性の薄さから、ストーリーに深みが感じられない。 またストーリー自体も見えない敵(世界的規模の秘密組織)、ボンドの復讐劇、そしてその組織が支援するボリビア革命と、短い尺の中に(2時間弱)要素がてんこ盛りで、フォーカスが絞りにくい。 なによりも問題なのが、ボンドが知力で勝負していないのだ。戦略を持たずに、いつも出たとこ勝負。取り巻く状況は悪化していくのに、打つ手もなく、多くの犠牲を出しながらも、結果論的に解決していく(最後まで説明されない状況もある)。 ああ、あのル・シッフルをブラックジャックで破産させた知的で勝負強いジェームズ・ボンドは何処へ。。。 ということで、個人的にはいまひとつ納得いかない出来。 ただし、トム・フォードのクロージングを着こなすクレイグ・ボンドは、今作でも半端なくかっこいい。
[映画館(字幕)] 4点(2009-01-25 16:01:52)(良:1票)
4.  007/カジノ・ロワイヤル(2006)
以前観ていたけど、新作を観るために再度観直した。 乱暴な言い方をすれば、「BATMAN BEGINS」「Jason Bourne」シリーズがあったからこそ、新しい007は生まれたのだと思う。 この作品はジェームズ・ボンドが007に昇格した頃の話、つまり長く続いた007シリーズが一旦リセットされる。 それに伴ってか、ボンド自身も酸いも甘いも経験した超人的なスパイキャラではなく、感情を表に出す、荒削りなキャラクターになっていて、さらにそれまでの破天荒なストーリー展開ではなく、リアリズムを追求した作風になっている。 この構造はリアルなバットマンを描いた「BATMAN BEGINS」と、ファンタジー色が強かったティム・バートン~迷走を極めた能天気ヒーロー物となっていた過去の「BATMAN」シリーズとの関係に似ている。 また、リアリティの範疇で描かれるアクションシーンや、臨場感のある撮影方法は「Jason Bourne」シリーズの影響を感じずにはいられない。 思えば「Jason Bourne」シリーズは、エポックメイキング的な作品だった。ストーリー、作風、アクションシーン、すべてが過去のスパイ物映画を陳腐に感じさせてしまうほどの完成度の高さで、個人的にはスパイアクション映画において「Jason Bourne 以前以降」で語られてもおかしくないのでは、とさえ思った。 新しい007はその影響を感じさせながらも、「ジェームズ・ボンド」という偉大なるキャラクターがいるからこそ、「Jason Bourne」の二番煎じにならないバランスを保っている。なんといっても、ダニエル・クレイグのボンドが魅力的なのだ。 公開前は賛否両論だったクレイグボンド。どちらかというと「非」の声が多かった気がする。「Tomb Raider」「Road To Perdition」「Munich」などで個性的な脇役を演じたクレイグだけど、ロジャー・ムーア~ピアーズ・ブロスナンと続いた甘いボンド像とはかなりかけ離れている。 当初はユアン・マクレガーに出演依頼があったらしいのだが、結果的には優しい雰囲気のユアンよりも、クールで職務遂行の意志を強く感じるクレイグのほうが、新しい007像を生むにはプラスに作用した気がする。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2009-01-25 15:57:52)
5.  スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師
ティム・バートン監督は好きなのですが、この作品はあまりいい印象を持てませんでした。「ビッグフィッシュ」「チャーリー」という流れから、自分自身が抜け切れていなかったのかもしれませんが、世界観とエンターテインメントとしては完成度の高いこの作品の観賞後、こころの中に残るものがなかったのです。 ひとそれぞれ映画に求めるものは異なると思いますし、監督だって表現したいものは作品ごとに変わるでしょう。その相性とも呼べるものが、今回は個人的に合わなかったのかもしれません。 ただジョニーら登場人物の演技は印象深かったです。みなさん、役に合ってましたね。
[映画館(字幕)] 4点(2008-04-30 14:18:18)
6.  Vフォー・ヴェンデッタ 《ネタバレ》 
哲学的な台詞まわし、雨、無限のコピー(というか当事者)と、「MATRIX」を思い起こさせるアイテムがそこはかとなく見え、ウォシャウスキー色が色濃く感じられる。 しかもV役は映画史に残る奇天烈キャラクター“エージェント・スミス”を演じたヒューゴ・ウィービング。これも「MATRIX」との共通項。 そしてなんといっても根底に流れるテーマ「REVOLUTION(革命)」。 もともと複雑な設定に加え、最終的には収集がつかなくなった状況を力技で収束させた「MATRIX」に比べ、遥かに理路整然と整理され、それゆえにストレートにメッセージが伝わってくる。 世の中を変えるのは、状況を変えるのは意思。 これは思想映画であり、「MATRIX」との姉妹作品であると感じた。 
[CS・衛星(字幕)] 9点(2007-08-26 22:54:38)
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