1. 小さな恋のメロディ
《ネタバレ》 ダニエル(マーク・レスター)とメロディ(トレイシー・ハイド)の恋心は幼い。「一緒にいたいから結婚する」って殆ど幼稚園児の発想。しかも全く迷いがない。・・・この“まっすぐさ”がとっても清々しい。 「若すぎる」と説得する両親に対しメロディは叫ぶ。「幸福になりたいだけなのに!」と。 そして有名な駆け落ちシーンへとなだれ込んでいく訳ですが、もう理屈もへったくれもないのだ。この物語には「今」しかない。主人公2人の「今」の気持ちオンリーで突っ走る。彼らを押し留めようとする大人たちと手作り爆弾で闘い、トロッコに乗って逃げ去る。いやもうムチャクチャだけど、これこそが映画じゃないかと思う。自分が映画を観る理由もこれしかないって気がする。幸福になりたいだけ。 とても地球上の生物とは思えないエンジェルっぷりが眩しいマーク・レスターも、もちろん良いのだけど、彼の親友役ジャック・ワイルドがとにかく素晴らしい!表情もしぐさも身体の動かし方もいちいちキマッてる。メロディに夢中になって自分から離れていくダニエルを引き留めようとするシーンなんかホント切ない。この時のジャック・ワイルドの茫然とした表情が悲しすぎて、おばさん泣いてしまいました。 全編に流れる音楽もイイ。ミュージック・クリップのような話法が奏効している。「メロディ・フェア」の調べに乗って通りを歩くメロディ。酒場にいるパパに会いに行く、このシークエンスが私は好きだ。昼間からお酒飲んでる父親なんて・・・と不安がよぎるんだけど、人の良さそうなオッサンが出てきてニコニコしながら彼女にお小遣いを渡すのでホッとしてしまう。そうそう、ここに出てくる大人たちは皆、基本的にイイ人。そういうのも好き。 ちょうどこの作品を再見した時に、「資本主義が終ろうとしている」なんて言ってる本を読んでいた。1970年代をピークに長い終焉の時代が続いており、今は旧いシステムが終わらんとする斜陽の時代なのだと。そんなどん詰まりの閉そく感の中に生きる自分にとって、本作はとびきり眩しかった。「とにかく逃げちゃえ、なんとかなるさ」って、ぶっちぎりのハッピーエンドで終わるこの作品には、「未来」に対する圧倒的な信頼と楽観が感じられる。トロッコの行く先には「幸せ」が待っている。 この作品のノスタルジーが格別に染みるのは、今が「信じられる未来」を失ってしまった時代だから、という理由もあるのだと思う。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2017-07-29 00:23:30)(良:1票) |