1. ザ・バニシング-消失-
《ネタバレ》 久しぶりに「最後はどうなるのか?」と楽しみながら見ることができた作品。 悪を裁くことより好奇心を優先させた男の末路、これがなかなかにシビア。 流石に哀れ過ぎる結末。 夫が妻のその後を知りたいのは当然のことだ。 事実を知りたいという好奇心を、この作品はストーリー展開にうまく活用しており、見ているこちらもそれを知りたいという好奇心に巻き込まれていく。 殺された男の気持ちと、見ている自分の気持ちとが、事実を知りたいという点において、完全にシンクロしてくる。 人間の持つ好奇心というものの扱い方が実に見事だ。 [インターネット(字幕)] 8点(2023-09-09 18:51:30) |
2. 春の惑い
原題は「小城之春」。 邦題が悪い。 それはともかくとして、原題の通り、狭くて閉塞的な邸宅の中で巻き起こる、愛情に関わる心理的葛藤を主に描いている。 これって題材として悪くはないのだが、この邸宅内での出来事を、何とか別の方法で解決できそうな気がして、ストーリーの流れに、苛立ちを感じた。 私がそれぞれの人物の立場なら、もっと他の方法を試していたと思う。 例えば、邸宅の夫婦について言えば、もっと早い段階で、冷めきった夫婦関係を解消して離婚をするとか。 それを時代的背景が許さなかったというのならば、仕方ないが。 そして友人の医師の立場なら、再三、若奥様の据え膳を拒否しているわけで、受け入れるつもりがないのだから、早々と邸宅を後にした方が良い。 色んな面で、各登場人物達の立ち振る舞いについて、納得がいかない点が多い。 これを観ていると、物語を面白くするための、作り手側の工作と勘繰らざるを得ない。 繊細なテーマだけに、もっと脚本を繊細に、緻密に作ってほしかった。 それと、物語には直接関係がないのだが、ビデオソフトの画質が悪すぎる。 せっかく撮影担当が、名手のリー・ピンビンなのだから、画質がもっと良ければ、評価も上がったかもしれない。 [ビデオ(字幕)] 5点(2012-11-12 00:28:55) |
3. トウキョウソナタ
細部にリアリティを欠き、更には突飛すぎるストーリー展開に難あり。 ただし、序盤は面白く、サラリーマンの悲哀を面白哀しく綴っているのは、まるで他人の不幸を覗き見しているようで楽しめた。 家族のエピソードを切り捨て、香川照之の失業物語的な内容に絞ってくれたら、もっと秀作になったに違いなく、そう考えるともったいない作品であった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-03-22 03:13:28) |
4. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 なんだろうなぁ、結局、消化不良な感じで終わってしまった。 大体、息子を救うために覚悟をしたんだから、潔く首をつりなさい!って感じ。 しっかし、ビョークは歌声はいいが、顔はマズイ。 映像に耐えられるか耐えられないかのボーダーライン。 これがそもそも消化不良。 あと、この監督は人間の悪い部分だけを抽出しようと躍起になって演出している気がする。 そうじゃなく、むしろ良い部分だけを抽出してほしい。 悪い部分だけ見させられても、不愉快な気持ちにしかなれない。 最後の絞首刑シーン。 底が抜けて、首が絞まってご臨終。 ここまで映像にする意味は? 狙いがよく分からん。 つまりこの監督は、観る者を不快にさせることを意図的に狙っているような気がする。 実に悪趣味な監督だ。 [DVD(字幕)] 3点(2009-01-01 01:01:22) |
5. 電化生活
ベタな内容だが、ほのぼのとした雰囲気は味わうことができた。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2008-02-22 20:55:26) |
6. 恐怖のドクター・バード
別に「恐怖」という程、怖くはありませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2008-02-22 20:52:20) |
7. コックと泥棒、その妻と愛人
ここまで生理的に受け付けない映画を創ったピーターパンに敬意を表して1点で!! [ビデオ(字幕)] 1点(2007-10-08 14:51:32) |
8. 10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス
ジム・ジャームッシュの「女優のブレイクタイム」がベスト。 これでジャームッシュのファンになりました! [DVD(字幕)] 6点(2007-09-21 08:15:32) |
9. 10ミニッツ・オールダー イデアの森
イジー・メンツェルの「老優の一瞬」が個人的にはベスト。 [映画館(字幕)] 7点(2007-09-20 23:26:02) |
10. インビジブル・ウェーブ
《ネタバレ》 『地球で最後のふたり』は私にとってマイベストな映画。 その『地球で最後のふたり』と同じ監督、同じカメラマン、同じ脚本家、そして主演も同じ浅野忠信で撮られた本作。 『地球で最後のふたり』で感動し、「次回作も同じスタッフで撮る」というニュースを入手してから待つこと、実に3年余り。 監督がペンエーグ・ラッタナルアーンで、撮影がクリストファー・ドイルで、原作・脚本がプラープダー・ユンで、主演が浅野忠信。 この『インビジブル・ウェーブ』という作品を観るために、私は3歳も歳を取ってしまったのだ。 冒頭で、“ボス”の妻を毒殺した浅野忠信は、“ボス”の手配した船に乗って、香港からタイのプーケットへと渡る。 ここからいよいよ、私の大好きな“ロード・ムーヴィ”のはじまりはじまり。 えらい汚い船で、何故か人気(ひとけ)が感じられない。 誰もいないのだ。 間接的に窓の向こうに人影が見えたり、部屋を船員などが訪れたりはするが、基本的に浅野忠信以外の人間が出てこないのだ。 これがとても気味悪く、奇妙な雰囲気を演出することに成功していた。 あ、そういえば、エレベーターの中でも浅野忠信の旧友と名乗る奇妙な日本人男性と遭遇したっけ。 ここでの浅野忠信の振る舞いやリアクションがとても良かった。 別に普通に聞いてる分には、特別、面白くもない会話なのだが、浅野忠信のリアクションが面白かったのだ。 この辺りは浅野忠信ファンでないとなかなか理解してもらえないところなので、詳細な説明は割愛させて頂く。 逆に、浅野忠信ファンならば、この奇妙な男性に対する浅野忠信のとぼけた対応に注目すべし。 これを演じた浅野忠信、そしてこれを演出したペンエーグ監督はさすがのセンスである。 そして音楽。 『地球で最後のふたり』と同じ感じの音楽が本作でもずっと流れ続ける。 同じ感じの音楽なんで、おそらく同じ人が音楽を担当したんじゃないかと思う。 静かなBGMだったが、ペンエーグ監督とドイルが描き出す世界観に見事にマッチしており、これまた最高であった。 ロード・ムーヴィちっくなところも良かったし、ドイルの撮ったアジア各国の映像美も感動したし、浅野忠信の魅力も十二分に発揮されていた久しぶりの作品だった。 ただ、ストーリーにそれ程の厚みはないし、話も淡々とゆっくり進むので、人によっては退屈な映画に感じてしまうかもしれない。 [映画館(字幕)] 7点(2007-09-10 09:51:07) |
11. 地球で最後のふたり
私が生涯観てきた作品の中でナンバー1の作品。 この映画を観て以来、監督のペンエーグ・ラッタナルアーン、撮影のクリストファー・ドイルの「ふたり」に、強い関心を持った。 内容としては、それほど難解なものではない。むしろシンプルなストーリー展開だ。(最後の部分とか、一部、解釈の分かれそうなシーンはあるが。) この映画を観たのは、2004年の夏だった。 渋谷のミニ・シアター「渋谷シネ・アミューズ」の、レイトショーでの公開だった。 2004年と言えば、その年の2月に、10日間ほど、タイに旅行に行った年でもある。 タイに行った直後に、タイの映画に出会ったわけである。 私はこういったパターンに弱い。その映画が描く土地や舞台が、自分が過去に行ったことのある場所だったりすると、大抵は惹かれてしまう。 (ラストエンペラーは中国の紫禁城が主な舞台であったが、とても気に入った。それは、過去に自分が紫禁城に行った経験がある為だと思われる。) 監督のペンエーグ・ラッタナルアーンの影響か、それとも撮影のクリストファー・ドイルの影響か、もしくはその両者の組み合わせの妙による影響かは分からないが、とにかくこの映画の醸し出す雰囲気に酔いしれてしまった。 基本的には、ラブストーリーなのではあるが、自殺願望の強いバンコク滞在の神経質な日本人が主役であったりと、決して爽やかとは言えない。主人公ケンジの部屋の中が、かなりの時間を費やして描かれており、開放的でもない。 しかし、中盤から後半にかけて、海辺のシーンや屋台のシーン、ドライブするシーンなどが登場する。室内の鬱積した雰囲気から一気に解放される感じである。こういう展開は、最高に好きだ。特に、ヒロインの住む家の撮り方なんて最高だ。タイのパタヤの緑が刺激的である。 ただ、そう言った個人的好みの流れの中で、苦手なシーンもある。 それは、日本のVシネマ的ノリの、日本人ヤクザが登場するシーンだ。このシーンは、監督が意図的にねらって挿入したと思われるが、私個人の感覚からすると、「雰囲気ぶちこわし的蛇足シーン」としか、感じられなかった。 しかし、その部分で多少のマイナスはあるにしても、私が今まで観てきた映画の中で、ナンバーワンの映画であることに変わりはない。 [映画館(字幕)] 10点(2007-08-30 23:37:05) |