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1.  息子のまなざし
本作は、年々増えつづける少年犯罪と更生といった極めて今日的な問題を扱うことで、人間とは果たしてどこまで寛容になれるのかといったテーマを我々に問いかけてくる。ここでは法律の問題には殆んど触れられておらず、職業訓練所の指導者と更生しようとする少年といった、あくまでも被害者側と加害者側との直接的な関わり合いを描いてゆく。本作の一人称のスタイルを強烈に印象づけているのが、主人公の肩越しから片時も離れようとしないカメラ。背後霊のように全編に貫かれているその視線は、まさしく亡くなった(殺された)息子のまなざしであり、何も事情を知らない少年をひたすら凝視していく。お互いに実に残酷な設定ではあるが、あくまでも更生の指導者という立場をわきまえ、苦悶しながらも理性で感情を抑え、自らを宥めて少年と接していくうちに、ひた向きな少年の姿に心が揺れ動くという難しい役どころを、O・グルメは淡々としかし的確に演じきる。そして、効果音を含めた音楽などを一切使わずに、これほどまでの緊張感・切迫感を生み出すという、その演出力の凄さ!映画はシートで巻かれた材木にロープを架けた瞬間、唐突に終わる。(その時画面は既に二人を撮らえている。主人公の肩越しから離れて・・・。)その少し前、車のトランクにロープが無造作に積まれる場面がある。さり気ないだけに余計想像力を掻き立てられる描写だが、我々自らの人間性を試されているような、実に意味深いシーンだと言える。このように、まったくと言っていいほど作為的な部分がなく日常を淡々と描いてゆき、リアルであるという以上に極めて現実的である本作には、演出の原点を見る思いがする。本作が傑出した作品であることに何ら異論は無い。
9点(2004-05-03 16:09:19)(良:3票)
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