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1.  約束の旅路 《ネタバレ》 
混乱必死なので簡潔にまとめます。◎イスラエル人(ヘブライ人)・・イスラエルを祖国とする人たち。。◎ユダヤ人・・ユダヤ教を信仰している人たち。イスラエル人の中には、他宗教を信仰する者もいるし、無宗教の左派もいる。従ってユダヤ人=イスラエル人ではない。いずれにせよモーセ作戦の対象者である彼らは、エジプト人からはよそ者と言われ、ユダヤ人からは「黒人」と言われてしまうわけです。黒人で、キリスト教徒で、しかもユダヤ人を偽るエチオピア人の主人公は悩みます。(この設定が難解だ)彼は叫ぶ。自分の祖国はどこ?自分は何人?しかし手紙を書く宗教家のおじさんや、養家の祖父の愛情があまりにも深すぎて号泣してしまう。彼らは主人公の正体を知っていたはずだ。しかしそれでも彼を愛していたのだ。青年に成長した主人公が警察で自分の正体を告白するシーンは、あたかも「罪と罰」のラスコーリニコフであり、彼は正体を隠す自分を罪人と思い込んでいた。恋人のサラだけは主人公の正体を知らなかったのでショックを受けた。だが彼女は言う。「白だろうか、黒だろうが、ユダヤだろうが、エジプトだろうが、わたしには関係ねえんだよ。おい、わたしはあなたという人間を愛していたのだ、なぜ10年間も言ってくれなかったのか?」この女、虚言癖が激しいが、じつは非常にいいヤツで本気で泣けてくる。差別というのは、知らない人が、知らない人を評価するときに生まれる。知らないからこそ、民族や肌の色、デブハゲなど、容姿で判断してしまう。しかし人が人と接するうちに、そんな記号の偏見は消える。差別があるから愛せないのではない。知らないから差別するのだ。母親は、我が子を捨てることで命を救った。その子は遠い場所でずっと母を想いつづけた。そしてラスト。主人公がエチオピアに帰還し、自分を捨て、同時に命を救った母親を抱きしめたラストシーン。ただ、ただ、ひたすら号泣した・・。もう言葉もない。紛れもなく名作だ。 
[DVD(字幕)] 10点(2011-09-20 19:39:45)
2.  ブラックブック 《ネタバレ》 
ナチスがユダヤ人をしつこく追い回すという典型的でありきたりなヒューマンドラマはいっぱい観てきたので、もう観たくありませんでした。しかしみんなのシネマレビューの評価は嘘をつきませんでした。一番面白いのは主人公のユダヤ人であるエリスが死にそうで死なないところです。素晴らしい。「戦場のピアニスト」のユダヤ人の主人公もかなりしぶとい男でしたが、エリスはそれを上回るしぶとさだと思いました。特に圧巻だったのが船の上でユダヤ人が棒立ち状態で射撃の的にされて皆殺しにされるシーンでした。まわりのユダヤ人は次々に倒れていくのにエリスには弾は当たりません。いや当たっているのかもしれない。不死身なのかもしれない。人間じゃないのかもしれない。未来からやってきたターミネーターなのかもしれない。本当にびっくりしました。またエリスが体に注射されて殺されそうになったときも凄かったです。エリスの体が動かない、これは殺られた!と思いました。チョコ食って、少しは体が動くようになりました。でもこの状態では空でも飛んで逃げない限り助からないと思いました。そしたらやはり飛びました。窓から飛びました。思わず拍手しました。すべてにおいて完璧な女でした。シガニーウィーバーに変わって是非エイリアンシリーズの主役になってください。驚きの映画でした。エリスの生命力を賞賛したくなりました。人間ってすばらしい! 
[DVD(字幕)] 9点(2008-04-22 18:24:58)(笑:1票)
3.  戦場のアリア 《ネタバレ》 
今日は特別の日だから殺し合いはやめて一緒にお酒でも飲みませんか? しかし明日になったら殺し合いを再開しましょう。 この話は本当に美談なのか? 戦争には決められたルールがあります。人質に暴行してはいけません、奇襲攻撃をしていけません、など。しかしルールどおりに割り切って行えないのが戦争だ。なぜなら戦争はスポーツではないからです。それがクリスマスの日だけ戦争をやめようと提案して、休戦できてしまう事実に私は感動するよりも、空恐ろしさを感じた。 スポーツ競技のようにフェアに戦争を休止できるならば、戦争もサッカーのように前半と後半にわけて戦えば良いのだ。こいつらのように戦争をゲーム化している感覚が恐いのです。クリスマスの日に戦争がしたくないなら、バレンタインデーも戦争をやるな。睡眠不足になるから夜8時過ぎも休戦しろ。クリスマスという言葉の美しさに誤魔化されがちですが、もし私が司令官でも、こんな感傷的な休戦をしている偽善を見せられたら、懲罰をしてやりたくなる。そもそも戦争という名目で、大量虐殺を一生懸命やっている連中が、アーメン、なんて祈って、泣きながらオペラなど聴いてどうする。
[DVD(字幕)] 3点(2006-11-25 18:39:38)
4.  ロゼッタ 《ネタバレ》 
少し前にフランスで若者が怒ってデモを起しましたが、その理由はフランス政府の若者に対する雇用政策が原因のようです。もしロゼッタがこの時代に生きていたならば、間違いなくこのデモに参加して暴れまわったことでしょう。日本の若者はフランスほど「仕事」に対する執着はないと思うから多分無関心でしょうね。 この映画は今こそ観るべきです。「仕事」というのは単に賃金を稼ぐための手段ではなくて、社会とつながりを持つための手段だと思う。 ロゼッタの場合は母親の存在が強烈な反面教師となっており、そのために「まともに生きたい」と願う気持ちが「仕事」に対する執着につながっているようで、母親との人間関係しか持たない彼女にとって「仕事」とは人とつながり、社会参加するための唯一の手段だったと考えます。彼女にとって「仕事」をクビになるということは、社会参加を拒否されることと同じ意味を持ち、自ら「仕事」を辞めなくてはいけなくなることは絶望を意味したのだと思う。絶望の中、ロゼッタが最後にとった行動は分かりにくかったけど、母親と一緒にガス自殺することだったのでしょう。しかしそれも失敗に終わり、ついにロゼッタは泣き崩れてしまうシーンが切ない。それでも絶望の中からひとすじの希望が生まれてきそうなラストがある。その結末の行く末は観客の想像力に委ねられていました。こういう映画はハローワークに毎日通っている飽き性で無気力な若者に見せるべし。働くことは素晴らしい。映画は人を救う。
[DVD(字幕)] 9点(2006-04-29 11:59:32)(良:1票)
5.  ノー・マンズ・ランド(2001) 《ネタバレ》 
国連が悪者あつかいされて皮肉られていたがそれはちがうと思う。「殺し合いが行われているのに、なにもしないことは戦争に加担しているのと同じことだ」と自分の組織を痛烈に批判した軍曹だけが善人のようにみえるが、よく考えてみるとアメリカの今やっていることと軍曹の行動は似ている。本人は良かれと思って積極的に行動しているが混乱は増すばかり。最後はごらんとおりの結末で3人を助けようとした軍曹の理想はあっけなく崩壊することになる。それではどうすれば良いのか?と言われそうなものだけど解決策があったら戦争などとっくの昔になくなっていたでしょう。戦争は理不尽だ。戦争を目の前にして行動しなければ批判され、行動を起せば軍事介入と色眼鏡で見られることになる。 ひじょうに印象にのこったのはラストシーン。2人が一瞬のうちに殺されたとき、それを目の前にした報道陣が「今の瞬間をカメラに撮ったか?」と嬉しそうに話していたこと。 それをみると「戦争映画」すらも反戦のメッセージを伝える意義と同時に、金儲けや出世のための手段であるという事実を思い知らされる。さいごは音楽を流さず無音のままエンドロールを迎えたらもっと良かった。
[DVD(字幕)] 6点(2006-04-29 11:33:32)
6.  ある子供 《ネタバレ》 
台詞以外に聞こえてくる音といえば車の生々しい排気音のみであり、余計な音楽がまるでなく研ぎ澄まされている。あの突然の幕引き、そして無音のエンドロールをむかえて軽い衝撃を受けたり戸惑いを覚えた人も多いだろうが、あの終わり方だからこそ想像力が刺激されることもある。泣きながら抱き合った夫婦はその後、妻が夫に離婚届の用紙をそっと突き出したのかもしれないし、再びやり直そうと言われたのかもしれない、それは分からないが想像力だけは膨らんでいく。1つの見方としては、男のほうは散々な目にはあっているが、罪の意識や再生の決意は見られないということ。しかし少なくとも監督はこの男の生き方を全面的に否定していないのではないだろうか?やはり最後は男に希望を持たせ再生を促しているように思えてならない。「ある子供」とはブリュノのことだと思うが、子供(ブリュノ)は成長が遅くともいつかは大人になれると信じたい。このブリュノの行動をみて「親失格の駄目人間」というレッテルを貼って、理解できないよと肩をすくめてしまえば、それだけで思考はストップしてしまい、それだったらテレビのワイドショーを眺めるのとなんら変わらない。単純にいい人間と悪い人間に区別できない人間の複雑さがこの映画にはたくさん詰まっている。「子供を売る」というセンセーショナルな話題で観客をひきつけ、「親になりきれない幼い大人」という地味な現実を描く。それが監督の狙いだろう。幼い親の姿を、台詞や音楽や効果音を多用せずに、映像のみで観客に伝えようとしている。まさにそれは映画的手法であり、観る者はそのメッセージをしっかり受けとめ、自分なりの答えを見つけ出そうと必死で想像力を働かせる。「ある子供」は間違いなくダルデンヌ監督の到達点のひとつだと思う。
[映画館(字幕)] 10点(2006-04-22 21:35:28)(良:3票)
7.  息子のまなざし 《ネタバレ》 
オリヴィエの台詞はわずかしかありませんでしたが、彼の強靭な体からメッセージを発していました。 テーマは「復讐」と「赦し」ですが、私はオリヴィエの「喪失」と「再生」の物語だと感じました。崩壊した夫婦のもとに、自分の息子を殺した少年が現れた。オリヴィエは驚いたのでしょう。夢の中では悪魔だと思っていた少年は、実際には息子と変わらない普通の少年だったのだから。 この映画のラストは実に印象的です。オリヴィエを「喪失」させたこの少年が、オリヴィエを「再生」させている。誰かを救うことは自分自身のためなのです。他人を救うことによって自分が救われる。たとえそれが最愛の息子を殺した人間であろうとも─。オリヴィエが少年を赦したのではありませんし、オリヴィエが少年を救ったのでもありません。その反対なんです、少年がオリヴィエを救ったのです!こんなことを言ったらオリヴィエに怒られるかもしれませんね。遺族が加害者を赦せないのは当然です。しかし赦すことによってじつは自分が救われるという真実は意外と知られていない・・。見ごたえ充分の人間ドラマでした。
[DVD(字幕)] 10点(2005-07-09 22:04:01)
8.  イル・ポスティーノ
透き通るような青色の海とペンキで塗られたような真っ青の空に挟まれた孤島で、牛のように穏やかに暮らす人々の物語です。 私の地元は常に鉛色の空で覆われている場所ですから羨ましく思いながら見ていました。 そうです、この映画を見れば誰もが詩人になれます(笑)  特にマンハッタンが舞台の騒がしくて刺激があり、混沌とした映画を見慣れている私には、まるで睡眠薬を飲まされたようにスリープしてしまいそうな映画でした。 景色と人間が理想的に描かれている癒し系の映画だと思います。 ただし、リアリティがあるかといえばNOです。 人間の葛藤がない映画は、ちょっと味気ない食べ物みたい。 毎回こういう映画を見ていたら、たまらないと思う。  こういう映画は心の中を掃除するつもりで時々見るときが一番楽しい。
7点(2004-03-14 13:50:14)
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