1. LOVELY RITA
初めて買った化粧品は濃い色の口紅だった。ちょっと失敗した。リタが運転手の気を引く為にした初めての化粧の、下手くそに塗られた濃い色のアイシャドウを見て、そんなことを思い出した。少女時代の擦過傷がひりひりと痛んだ。リタじゃないし、リタの気持ちは分からない。でも思えば、リタは確かに自分の中にいた。きっとそこの貴女の中にも。でもリタの近景はもう、私の遠景なのかな。バイバイ、愛しのリタ。 [DVD(字幕)] 7点(2006-06-03 11:24:44) |
2. ワイズマンとのピクニック
感情の介在しない団欒。草の上で伸びやかに動き回る家具たちは確かに愛らしい、でもそれを見て覚えるのは、皮膚の一歩下がざわめくような、不確定で不気味な予感。何かあるぞ~。オチに何かあるぞ~。ヤン爺は邪悪ぞな~。何というか10代の時分、笑いながら生徒を殴るキの字な先生を見て、ゾッとしたような感じ。視覚的に呈出しているものと内在しているものが一致せず、そこにはあるべきよう処理された正常な感情が介在していない、と感じるような。一般論ではないかも知れないけれど、私は感じたのは、そんなことです。 7点(2004-10-19 23:14:45)(良:1票) |
3. 恋人までの距離(ディスタンス)
吊り橋の上などの不安定な場所で異性と出会うと、人間はその不安定感と高揚感を恋愛感情と錯覚する、という実験結果がある。揺れる車内で異性と出会い会話していると、何かしら高ぶって来るのかも知れない。そういう旅の高揚感をちょっと恋愛感情と錯覚したところも絶対あるはず。お互い国に帰った頃には随分醒めていると思う(笑)。でもそれゆえに何だかリアリティと庶民性がある。その場に居合わせたような臨場感を終始楽しめた。 7点(2004-08-03 20:43:39)(良:1票) |
4. 石のゲーム
目で見るオルゴール。定刻になると、刹那の輝きを得たかのごとく踊り出す石たち。そして用済みになるとそれらは無感情に吐き出され、旋律の残滓と化し、味気も何もないアルミのバケツに遺棄される。そしてその後に訪れる、圧迫感を感じてしまう程の力強い静寂。何がどうという訳でもなく、何かが精神病理的。美しいけれど、何かが決定的に怖い。 7点(2004-07-29 19:23:07) |
5. ルナ・パパ
一概にファンタジーとは言い切れない、とてもノンジャンルな何とも言えない雰囲気の映画なのだけれど、その微妙な感じが決して不愉快ではなく、むしろ楽しい。ヨーロッパなのかアジアなのか中東なのか、一体この世のどこにある場所なのか、いつの時代の話なのか、それすらも分からない。本当に不思議な不思議な世界観。不思議で柔らかい雰囲気に翻弄されることに浸る映画。でもね、ストーリーは物凄く悲惨なんですよ(笑)。そこがまた、不思議なところで。主役のチュルバンがまた、とても可愛らしいんですよ。 8点(2003-12-30 19:45:17) |
6. ピアニスト
久々に心をえぐられるような衝撃を受けた一作。物凄く滑稽だけど笑えない。内臓の奥という奥まで乱暴に突かれるような凄まじい暴力性に溢れた壮絶な映画。長く切れ目のない悲鳴をひたすらに聞かされているようで、心拍数が上がる。痛々しいラストシーンには言葉を失った。男性は暴力性を外に向け、女性は内に向ける。生殖行為の形態と一緒。 10点(2003-12-08 21:07:08) |