1. 美しき小さな浜辺
《ネタバレ》 冒頭に戦災孤児について記されており、監督が彼等への激励を籠めた作品にも思えます。ジェラール・フィリップが何者かが早くに分かり彼を追ってきた男がどう絡むのか興味を惹かれました。全編で降り続く雨の中傘もささずに歩くジェラール・フィリップのやるせなさは、ジーン・ケリー「雨に唄えば」の濡れて行こうや! とは対極な姿でフランス映画界の至宝が魅せてくれます。訪れた時点で覚悟を決めていたかのような結末が堪りません。湿度100%ながら見応えある良作。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-05-30 14:11:37) |
2. 嘘をつく男
《ネタバレ》 お目当てトランティニャンは率直に言えば与えられた台詞を発しているだけなのですが、贔屓目で言えばこの無機質で淡々としたキャラクターに当てはまっています。自分は村の英雄ジャン・ロバンだと言ったかと思えばジャンの親友ボリス・ヴァリサだとも言う。ゲージュツ的な描写で描かれるジャンの帰還を待つ妻、妹、家政婦(三人とも微妙なお顔・・ゴメン)との絡みに辟易。嘘をつくというか矛盾まみれなオハナシが延々と続き、メチャクチャな時系列と併せて寝落ち寸前。当時のチェコスロバキアに於ける人間の本質、英雄か裏切り者かを問うたようにも思えるのですが、ついてゆけなかった作品です。 [インターネット(字幕)] 4点(2021-08-31 11:37:43) |
3. 海を飛ぶ夢
《ネタバレ》 ラモンの一言一言から滲み出る聡明さに唸らされます。そんな彼だからこそマヌエラを始めとする家族に感謝の気持ちを一言も残さない事に許せないというか幻滅です。車を見送るマヌエラの万感こもった姿に泣けてしまいました。35歳というのが信じ難いハビエル・バルデム円熟の演技に+5点。 [DVD(字幕)] 7点(2020-10-16 01:18:05)(良:1票) |
4. うたかたの戀(1936)
喋って動くフランス人形のようなダニエル・ダリュー(当時18歳)の美しさが全ての作品。物語はノブレス・オブリージュのノの字もないルドルフの情けない言動に白けっぱなし。「しっかりせんかい!」名匠リトヴァク監督もう少し演出のしようがなかったか。暗殺説等事件の真相は謎のままという史実に救われる。 [DVD(字幕)] 5点(2018-09-26 15:31:00) |
5. 裏切りのサーカス
《ネタバレ》 人物の分かり辛さ、テンポの悪さ、抑え過ぎる演出にしんどくなりながらも「もぐら」の正体知りたさに最後まで鑑賞。鑑賞後はしんどいと思った点が本作の味わいに思えました。原作があるそうで、もぐらになった動機やもぐらと同性愛者の関係、一度も顔を見せなかったカーラとアンなど掘り下げて欲しかった点を確かめたくなりました。 【2018.2.14追記】 原作を読みました。500㌻超、映画同様解り辛い内容で心踊らされる事のない文章を行きつ戻りつしながらで3日かかるも、先に映画を観ていたおかげで読み切れた。 内容が把握出来た状態で再度鑑賞。 エンドロール冒頭で撮影開始直前に他界したという脚本家ブリジット・オコナーに捧ぐとあるのが頷ける極限まで削ぎ落とし、新たに肉付けした脚本が実に見事。 諜報機関に身を置く者の生き様を見せられる。 全編を覆う忠誠心と裏切り プリドーが愛するヘイドンに落とし前をつける姿は前回鑑賞時で最も印章深かったが、状況が呑み込めた今回はプリドーの胸中がこの上なく切ない。 この二人を上回るのがスマイリーとカーラであって、スマイリーがギラムに語るカーラを西側へ寝返るよう説得した昔話が圧巻。 愛する人に「行かないで」と懇願するようでもあり、一言も発せずに「裏切るくらいなら死を選ぶ」と帰国したのを狂信者呼ばわりするものの己の浅はかさ小賢しさを恥じているようでもある大写しの表情に息を呑む。 いぶし銀英国男優ここにあり。ゲイリー・オールドマン、ジョン・ハート、マーク・ストロング、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、トビー・ジョーンズ・トム・ハーディ。 私が一番惹かれたのは顔を見せなかったカーラ。演じられるのはポール・スコフィールドあたりなのだろうか。 クリスマス・パーティを回想する女々しさ溢れるスマイリーがラ・メールをバックに気骨ある亡きコントロールの席に就いたラストに拍手を送りたい。 一度の鑑賞で解らなかったので10点とは言えないが、手間暇かけて素晴らしさが解った稀有な作品に敬意を表して前回より3点を上積み。 [DVD(字幕)] 9点(2013-01-19 23:27:24)(良:1票) |