1. マーダー・ミー・モンスター
《ネタバレ》 う~ん、ほぼ怖くないという意味ではホラーじゃないし(つーか積極的に怖がらせようという作品ではそもそもない)、最後まで観ても結局ナニがどーいうコトなのかはサッパリ分からんという意味ではサスペンス・ミステリーにもなり切れてないし、でも他のモノでも更々ないし…ただただ気持ち悪くて奇怪(エログロも地味にタップリ)というニッチなジャンルの作品ですね。強いて言うなら雰囲気映画、ないしはアヴァンギャルド系の類いと言った方が近いでしょうか。 ただ、珍しいアルゼンチン産で、かつ舞台もそのアルゼンチンの田舎(山間部)なので情景自体は物珍しく、また地味に非常に美しく&興味深くもあります。緩慢でどこか寒々しい雰囲気自体も別に悪くはなくて、映画館とかで集中して観れたのならもしかするとある程度ホラーとしても成立したのかも知れませんね(ワケの分からないモノってそれなりに怖いですから)。どっかでまた上映機会でもあるよーなら、その時にでもどーぞ。 [DVD(字幕)] 4点(2021-08-05 23:01:56) |
2. マーターズ(2007)
《ネタバレ》 かなりハイレベルにグログロな映画で、拷問でズタボロになった少女らの「見た目」の悍ましさも然ることながら、特に話の内容の方が欧米映画にしては珍しく際立って悍ましい、という作品である(正直、頭がどうかしちゃってる、というレベル)。ただ、最大のポイントである「死後の世界を見るために『殉教者』をつくり出す」というアイディアは、あくまで個人的には説得力というか映画のコンセプトとしての質の高さを大いに感じるし、話の内容の方にここまで嫌悪感を感じられるというホラー、としても、だいぶん希少価値が高いとも感じられる。 その他の点にしても総じて色々と良く出来ているというか、巧みだと思う。特に、序盤からの訳の分からなさを意図的に残しつつ、パワフルにテンポ良く展開して段々と話が見えてゆく前半の展開運びなんかはホラー的に実に秀逸だと思うし、後半も単純にお話として相当に面白い。恐怖描写も、前半のキレの有る力技も、後半の陰湿な拷問の場面も、どちらも迫力や痛さ・エゲツ無さの点で出色である。全くの救いの無さも含めてネガティブ全開な作品ではあるが、ホラーとしては純粋に一流かと。もし今作が無かったら、2000年代のフレンチ・ホラー・ムーブメントの歴史的評価は、全く異なったものになっていたであろう。 [DVD(字幕)] 8点(2020-09-05 23:43:18) |
3. まぼろし
《ネタバレ》 「あなた軽いのよ」スゴく好きな台詞ですね。何とも艶かしいですし、含蓄が深いというか。軽いヴァンサンに対して、重いのは、躰そのものであり、それこそ愛でもあり、共に過ごした人生でもあり。今や「まぼろし」となった彼の存在を軽いヴァンサンを抱くことで逆に実感した喜びも含めて、二度のこの台詞には様々な感情を垣間見ることが出来ます。映画全体としても、マリーが実際、何をどのように考えて(捉えて)いるのかが少し判然としない(まぼろしを見る程に夫を今だ愛していながら、ヴァンサンと情事に耽ることも含めて)ことも、比較的単純な話に奥行きを与えている様に思われます。その意味では、本作のランプリングで一番良いなあと思ったのは、名状しがたい「有無を言わさない」感、だったかと思います(何とゆーか、細身なんですけど実に「凄み」のある系統の美人ですよね)。 ラストも、これ私大好きなヤツですね。ジャンにも見える人影を過ぎ越してゆく彼女には、我々とは違うものが見えているのでしょう。彼女は、もう戻らない。そう感じます。 [DVD(字幕)] 8点(2020-08-19 19:09:03) |
4. 満月の夜
《ネタバレ》 (主として貞操観念が)フワフワと掴みドコロの無い女がひとり。短気で独占欲の強い本命彼氏との同棲が気詰りで、別宅を構えて友達以上恋人未満の男(実は躰だけが目当てのゲスい不倫野郎)を連れ回しては煙に巻く日々。挙句、行きずりの男を連れ込んで夜を共にするも、事後罪悪感に苛まれ、アタシって罪な女…的に物憂げに佇む自己陶酔感溢れる浅薄な姿にいい加減イラっとし始めた矢先、急転直下のラストの一撃には実に見事な爽快感を覚えた(ザマァ見ろ!)。私の本作の楽しみ方が正しいのかは分からないが、個人的には十分に良作。 あと、主演のパスカル・オジェは(そうは言っても)ルックスは超絶美形でメッチャ好みなのですわ(特に超アンニュイな目付き)。夭折が何とも悔やまれる。。。 [映画館(字幕)] 7点(2020-02-16 03:59:34) |
5. 魔笛(2006)
《ネタバレ》 オペラ映画としては普通にまずまず以上だし、様々な試みもそのチャレンジ自体は十分に買える出来だと思う。大幅に筋を圧縮し、設定も大きく変え、映画でしか出来ない演出も多々盛り込み(全部が良いセンスという訳では無いが)、オペラでは詳細不明な試練とやらも戦場という設定を生かして多少は具現化できているなど、監督の狙いは良く伝わってくる。 しかし、映画としての全体的な出来は正直イマイチで、色々と妙に安っぽい演出も気になるし、後半はやはり退屈でオチも良くないままになっている。『魔笛』というコンテンツは結局、モーツァルト最高傑作の音楽こそが最大の魅力であり、演劇的な部分は二の次なのだなあと感じる。 [DVD(字幕)] 4点(2019-11-27 22:05:35) |