1. ミッション:8ミニッツ
《ネタバレ》 (以下は私個人の解釈です。誤読ご容赦ください。)結末に戸惑いました。何が起きた?どういうこと?キスシーンで終幕ならば、すんなりと腑に落ちたのに。このような感想を持つのは、監督の仕掛けたミスリードにガッチリ嵌っている証拠。“これはタイムマシーンではない。過去は変えられない。”博士の説明には説得力がありました。米軍開発のプログラム。複雑な機械の数々。小難しい理論。オカルトよりサイエンスの方が受け入れ易い。“死者の記憶って何処に存在するの?”という至極当たり前の疑問が『権威』や『固定観念』の前に掻き消されてしまいます(これが水晶玉を持った老婆の説明だったら、観客は頷けたでしょうか)。そんな中、真実に気付いた者が一人だけいました。それが主人公。いや、正確には半信半疑といったところでしょうか。漠然とした違和感。それでも彼は目の前の大切な人を助けたかった。人生の残りが8分だから諦める?なら、いずれ死ぬ人の一生なんて最初から意味がない。彼精一杯の足掻きが、誰かの意思に従っていては辿り着けない真実を手繰り寄せます。爆破の起きなかった8分経過後の未来は、パラレルワールドではありません。現実世界における過去の上書き。生命維持を切るスイッチは、変更データのセーブボタンでした。死者の記憶干渉プログラムは、紛れもないタイムマシーンだったのです。それが証拠に、主人公は過去に飛ぶ最中、印象的なモニュメント(このフォルムにもメッセージが込められている!)を何度も目にしています。列車が無事到着した場合、2人が訪れるはずだった場所。主人公は能動的に、IFの未来をREALに変えたのです。素晴らしい感動がありました。さて此処で問題。スティーブンス大尉の魂は一体どうなるのでしょうか。ショーン教師の体を何時までも借りてはいられないでしょう。借り物は、持ち主に返さなくてはいけない。そう遠くない未来、彼女との別れが待っているはずです。モニュメントの前で「しばらくここに」。主人公の思いが切なく胸を締め付けます。本作はSFである以上に、人生賛歌の物語。チャレンジが道を切り開きます。「きっと上手くいく」憂鬱な月曜日をハッピーな1日に変えるのも、自分次第です。 [DVD(字幕)] 9点(2012-06-25 19:59:08)(良:3票) |