1. かくも長き不在
映画『かくも長き不在』に関しては生まれて来る前の作品ですが、 修行不足の方々に対して少しでもお役に立てればと思います。 便宜上、この物語は序章プラス4つの重要な場面で構成されているものとし、 主演の二人(テレーズと浮浪者の男)の位置関係を中心に説明すると判りやすいんじゃないでしょうか。 まず序章。オープニングでは小説を読んでいる時に誰もが思い浮かべるイメージを印象的な映像として映し出す。 それはあたかも絵画や写真を観ているようで、これから始まる物語に否が応でも期待してしまうし、決してその期待を裏切らない。 ①彼女はカフェの女主人として働き、接客姿勢は少々ぶっきらぼうで男勝りな印象を受けるし、また、 恋人がいることから、戻ってこない夫を待つだけの女ではない自立した女性を表現しているようである が、どことなく陰のある暗い表情を浮かべているような気がする。 そんな折りに、ナント、長い間戻ってこない夫にソックリな浮浪者の男が目の前に現れる。 彼女の記憶の片隅にある、忘れようにも忘れられないどうしても引っかかっていることを解決してくれそうな出来事だ。ここから忘れかけていた時間を取り戻そうと 彼女は変化していきます。 ここでの二人の位置関係は手が届きそうで届かない距離にある。 そこで彼を店に連れて来ようと試みるが、男勝りな性格は鳴りをひそめ、 第三者を介して行い自分は店の裏に隠れているといった姿はあたかも思春期の 恋する女性のようである。 ②一緒に食事するシーン。「チーズ好きでしょ?」過去の記憶が走馬灯のように駆け廻る。 もう彼は手を伸ばせば届く距離にいる。 夫に違いない。でも、様々な感情が入り乱れる。 ③一緒にダンスするシーン。 とうとう彼に手が届いてしまった。ふと彼の後頭部に手をやると大きな傷がある。 これは彼が記憶を失ったんじゃなくて、ナチスによってロボトミー手術を施されたと僕は勝手に解釈します。 この時、彼にもたれかかり哀しい表情を浮かべる彼女にはどうしても心が打たれてしまう。 彼女にとって、もはや夫でも夫じゃなくてもどちらでも構わないんでしょう。いや、話の流れ上、夫であって欲しいと思います。 ④ラストでホールドアップする男。 戦争シーンなんてなんにも無いにも関わらず、戦争の悲惨さはひしひしと伝わってくる。 反戦映画・恋愛映画・ドラマとして胸を張ってオススメします。 9点(2004-12-09 14:06:39)(良:1票) |
2. ひまわり(1970)
映画『ひまわり』に関してはリアルタイム世代じゃないけど、「ひまわり・ひまわり・ひまわり」とみなさんがあまりにも連呼している ので、「ひまわり」とは何か?自分なりに考察した結果、ズバリ「ひまわり=S・ローレン」を表しているのではないかと思えました。 太陽に向かって、力強くまっすぐに伸びていくひまわりの姿は彼女のイメージにピッタリであり、決して顔がデカイと言う 意味ではない。 映画に登場するキャラの濃いジョバンナ・やさ男のアントニオ・ロシア人女性に共感できたりできなかったりするのは仕方の無いことだし、観る側の自由である。 むしろ、その方が映画らしくて興味深いことだと思う。ただし、本作の主体はS・ローレンなので、映画『アメリカの夜』のレヴューでも書いたが、 共感できないジョバンナに対して、‘なぜ、彼女はこのような行動をとったのか?’を先に考え、受け入れようとすることから始めると、 少し強欲・傲慢に見えたとしても、戦争という名の狂気の世界を力強く生き抜いた一人の女性として、 御世辞にも綺麗とは言えないかも知れないが、パニック状態で動揺する彼女の姿が可愛く見えてきて、意外と素直に受け入れることができるんですよ。 そのように、一人の人間として人を(映画を)好きになることができれば、今まで共感できずに敬遠していた映画が別の映画に見えてくるかもしれませんよ。 だって、映画の主人公は多少欠点があった方が面白くて愛着が湧くし、だいいち完璧な人物じゃつまらないでしょ。 もし、ロシア人女性を主体とし映画を一本作るとすれば、彼女のイメージには「すずらん」がピッタリなので、映画『すずらん』 が出来上がりそうな勢いであるが、ヒットするかどうかは微妙である。また、はなことばは割愛するので各人で調べて下さい。 最後に、スクリーンいっぱいにでてくるひまわりであるが、これを現実の世界に置き換えて自分の目で見ても、余計なものまで見えてしまったり、 臭いにおいがしたり、周りがうるさかったりと実際には映画の世界のようにうまくは行きません。 ひまわりしか目に写らない素晴らしい映像マジックだと思う。 以上の通り、ジョバンナに共感できなかったと本作に低い点数を付ける人達が少しでも減ってくれることを期待します。 8点(2004-03-27 17:23:54)(笑:2票) (良:2票) |
3. 映画に愛をこめて/アメリカの夜
映画『アメリカの夜』に関してはリアルタイムで観賞した世代じゃないので、偉そうなことは言えないけど、昔、友達がジェフ・ベックの 「♪ブロー・バイ・ブロー」がギター弾きの教本であると言っていたが、本作はまさしく映画における教本だと 言えるんじゃないでしょうか。 現に僕は、本作を観てから今までの表面的な視点でしか評価できなかった映画を、もっと、より深く自分の中の価値観が一皮向けた(成長した) 視点で評価できるようになった気がした。 それで、本作以降、本当の意味で映画にのめり込むようになったと思う。 学習したのは、①実像と虚像の世界(見えているものと実際の違い)、②カメラアングル(見せるものと見せないもの)、③映画人の苦労、 ④出演者の一人に共感できるかできないかじゃなくて受け入れることから始め、その人を好きになることの方が大切であること。⑤などなど と、書いているときりが無いほどいっぱいある。 そのように、本作はトリュフォー監督の映画にかける愛情・情熱が120%詰まった間違いなく映画史に残る傑作だと思う。 大好きなシーンは、注文した文献の小包を開けると、恐らく監督の敬愛しているであろう ベルイマン、ロッセリーニ、ゴダール、ヒッチコック、ハワード・ホークス等といった巨匠達の名前がパラパラと出てくるところ。 また、フェランの夢の中の白黒映像で少年が『市民ケーン』の写真を杖で盗むところ。 そして、好きなセリフはアルフォンスの「女は魔物か?」が、自分に置き換えてみても、生涯忘れられない名セリフとなった。 以上の通り、映画ファンを語るなら『ニュー・シネマ・パラダイス』を観る前に、ぜひとも観ていただきたい珠玉の一本だし、面白いか面白くないかを抜きにしても 観て損はないと思いますよ。もしかしたら、新しい発見があるかも?ただし、くだらないコメントはやめて下さいね。 ちなみに、監督役は似てるんじゃなくて、トリュフォー監督本人でしょ。 9点(2004-03-27 16:56:36)(良:1票) |
4. ブーベの恋人
下の方々の点数が低くて、非常に残念だけど、僕は大変面白かった。ちなみに『ブーベの恋人』は『ブーベの変人』ではない。また、ブーベは女性でもない。第2次世界大戦末期のイタリアが舞台でこむずかしく感じるが、現代に置き換えると長距離恋愛は難しいって感じでしょうか?僕は完全にブーベに感情移入しながら観ていました。最近では、あまりみられなくなった純粋な‘待ち系’の恋愛映画でしょう。本当にあの音楽も心に染み入ります。ところで、マルク・ミシェル演じるステファノの気持ちになって考えると、途中マーラの感情がグラグラになった時、強引に引っ張っていたら成功してたんじゃないかと思うけど、どうでしょうか? 8点(2004-02-08 18:06:46) |
5. ターミネーター2
一作目と趣向を変えて、前回敵でしたけど、今回は‘味方になりました’みたいな作品で、J・キャメロン監督に制約(一作目には確実にあった)をなくして作らせると、さすがに完成度の高い作品が出来上がる。ジョンが感情のないターミネーターに「人を殺すのはよせ。命の尊さをわかってないんだな。人は傷つくし恐怖も感じる。それを学ばなきゃ。」と人間の感情を教えようとするシーンは、テクノロジーと人間性を融合させたいというキャメロン監督のメッセージが聞こえてくるようだ。ただ、どうしても僕が本作に感情移入できない点が3つある。①サラが一作目の時より、明らかに飛躍的に強くなりすぎである。②ターミネーターが喋り過ぎである。③どうしても、T-1000よりもシュワ氏の方が強そうに見える。シュワ氏よりも強いT-1000役は曙あたりが個人的にはいいと思うのだが・・・。最後に、ほぼ完璧に見えるSFXだが、ラストシーンで転倒したタンクローリーからターミネーターが飛び降りる瞬間にターミネーターを吊っているワイヤーがはっきりと見えている。普段「テクノロジーはアートだ。」と語るキャメロン監督らしからぬ痛恨のミス・ショットである。ちなみに、特別編では、きちんと修正されている。 5点(2004-02-08 16:15:22) |