1. ムーン・ウォーカーズ
《ネタバレ》 キューブリックは人生最後の作品にイルミナティの存在を暴露する『アイズ・ワイド・シャット』を撮ったそうですね。 月面着陸捏造説の真偽は知る由もありませんが、宇宙飛行士の頭上から照明が落ちてきて月の地平線からスタッフがわらわらと出てくる動画は見たことがあります。なので、コメディということを了解しつつ、けっこう期待していたのですが、あまりの軽薄なイジリ様についていくのが困難でした。 ものすごい大金を用意しての初対面者との取引に、マヌケすぎる間違い。このあり得ない発端を見逃しながらハリポタのロンの演技を楽しんでいましたが、キューブリックがジャンキーのオカマで気違い染みたクリエイターにされちゃってるのを見たら「この映画の本当の意図は茶化しと揉み消し?」と逆に感じたほど(あれキューブリックじゃないなら私の勘違いで、あの人物の紹介シーンを見落としているかも)。 いずれにせよ、それほど笑えもしないし、成り行きにハラハラもしないし、ガッカリでした。 [DVD(字幕)] 4点(2016-10-30 00:20:45) |
2. 独裁者と小さな孫
《ネタバレ》 最後の浜辺のシーンで、一人のおばさんが叫んでたことが1番納得でした。酷いことですけど。 逆に「負の連鎖を断ち切るんだ」「踊らせるんだ」と自分の首を差し出した男の気が知れない。主張はしても良いが、自分の命を投げ出す価値が分からない。彼には家族も友もいないのか? 1番いいのは、あの孫を独裁者の目の前で殺し、独裁者にはずっと生き地獄を味わってもらうことでしょう。 こんな意見は褒められないこと分かってますけどね。 もう1つの考えは、独裁者を孫の目の前で最も悲惨な方法で長く苦しませて殺す。そして孫は一生生き地獄か自殺か。万が一、孫が復讐を誓って生きていかないように、長きにわたって孫の精神をくじく。 [DVD(字幕)] 1点(2016-10-15 16:40:56) |
3. フレンチアルプスで起きたこと
《ネタバレ》 大丈夫だと思っていた計画雪崩が眼前に迫る。横で恐怖に叫ぶ息子を抱くことさえもなく、2人の幼い子供と妻を置いて1人で逃げ出した旦那さん。あららら〜…。でも雪崩は寸前で止まり皆無事。そして飄々と戻ってきて、まるで何事もなかったかのように家族と食事…沈黙の食事…。自分のとっさの行動にショックだったろうなぁ…。でも、子供が聞いてない時にでも、なるべく早く奥さんに謝ればいいのに! 結局そのままヘラーっとしてるから、人前で奥さんが暴露し始める。「事実の解釈の違い」などと言い続ける旦那に唖然。そのあたりまでは「最低の旦那やな」としか思ってませんでしたが、だんだん奥さんのやり口に、ヤーな気分が募っていく。早い段階で夫が「怒ってるんだろう?」と問うても「いいえ」なんて言いながら、段階踏まずに他人の耳に入れていく。そんなら、食事に戻ってきた時すぐに怒れよ、と思ったりするのだが、夫も妻も突然の雪崩と、そこで起きた光景に、頭がグチャグチャで感情を正常に働かすこともできなかったんだろうなぁ。追い詰められた旦那が泣き崩れた後、10メートル先も見えないような視界の悪い中の家族四人のスキーが始まる。一体、誰が何を考えているやら不穏な空気にのまれながら一面真っ白な画面をヒヤヒヤしながら見守る。ハイ、お約束通りアクシデント発生! しかし、この映画はどこへ向かっていくのか、白い画面のごとくまるで先が見えず「計画的に奥さん殺害?」「逆に奥さんから旦那への復讐が?」「それとも幼い子供2人が孤児に?」とハラハラ。その顛末を描いたら物語は終わりと思いきや、雪山を去る帰り道にまたもアクシデント! 話の構造としてはすごく運びが上手いと思いました。しかし、一回観ただけではこの映画が何を伝えたいのかはよくつかめませんでした。おそらくテーマに「家族」があるとは思うのだけど、本妻とうまくいかず若い娘と遊んでるおっさんや、不倫に何の罪悪感もなく「自分の責任は果たしている」と自信満々のおばさん(彼女だけラスト別行動)を描きながら含んでいる主張は何なのだろう? これ、『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』のミハルコフが撮ったらどんな感じの映画になるかなーと思ったりしました。 [DVD(字幕)] 7点(2016-04-09 00:29:02) |
4. 死刑台のメロディ
《ネタバレ》 TSUTAYA発掘良品のおかげで観ることができました。感謝。 L・ジャフェ、L・サン=マルク 作の絵本(みたいなの)に『暴力から身をまもる本』というのがあるのですが、その中に「見たところ、そんなに暴力的に見えないが、生きていくのをさまたげるものがある(貧困、事故、病気など)」と書いてある部分があります。これを初めて読んだ時、目からウロコでした。このあたりの部分のことが、この映画のラストに力強く語られます。しかも、政治が死刑というシステムを利用して殺人という暴力を行使。冒頭から警察は制服を着た暴力組織。 1920〜1927年の出来事のようですが、観ていると今の日本を思わせる部分がけっこうあって怖くなります。もし社会的な状況にピンと来なくても、日本の映画『それでも僕はやってない』を観た人がそれを思い出すくらいの恐ろしさは理解できると思います。『それでも…』は痴漢冤罪の話で、その暴力を受けたのは一般市民という物語でしたが、日本の政治の裏側についてちょっとネットで調べると、政治に影響ある人物が痴漢冤罪で引きずり降ろされるというような話も出てきます。こちらの映画は政治的圧力として「死刑にして殺す」というもの。本当かどうかは別として、日本でも「あの死刑囚は実は冤罪で、その政治的裏背景は…」なんて噂もあったりします。この映画でロックフェラーの名が出てきたのにも「うひゃー!」と思いました。 僕は「アナーキスト(無政府主義)」というものには興味ないし、それで本当に人間社会がもっと良くなるのか疑問なので、死刑になった二人の主義にはさほど感じるものはないのですが、暴力的政治に殺されるにあたって、それでも未来に夢を託し続ける強い意思を描いた点を評価したく思いました。 アメリカの人種問題って『黒人差別』だけじゃなく、イタリア人もこんな酷い思いをしていたんだなと思いました。で、そういう人種問題のことを思うと、現在の日本に暮らす⚪︎⚪︎人たちのことも考えてしまうわけですが、そこは『宇宙人ワンさんとの遭遇』(こちらも同じイタリア産ながら人種や国家の問題へのベクトルは別方向)に見るような問題も含めて考えなきゃならないので、ホントに面倒です。 今の日本が置かれている状況を考えると、この映画を今見直す価値は大きいかと思います。たとえば人間を商材として扱う派遣の問題、それによって生じるワーキングプアと言われる人々、その一方でネットを使って詐欺まがいのことをしながら大きな不労所得をもぎ取っていく人たちがいたり、そんなあんまりな差異のなか「格差はあって当然」という理屈だけを植え付けるテレビ番組(それも日本人じゃない人々の息がかかってる)が飄々と存在していたりする事実について、考えてみるきっかけにはできるんじゃないでしょうか。 最近観た『瞳の奥の秘密』も加えて僕が考えたこと。死刑は廃止。死刑に値する重罪犯は一生「生き地獄」(殺人を抑止できる怖いリスクになるようなものを法で定める)。「生き地獄」は被害者または被害者遺族が与えても良い(どんな相手を怒らせたか、それも犯罪者のとった行動の責任)。冤罪であった場合は、誤判決に導いた者たちが一生をかけて冤罪者の幸福な生活を補償する(冤罪者のその後の人生、天国に出来るくらい目一杯)。冤罪者に自らの手で生き地獄を与えた被害者又は被害者遺族も罪に問われ冤罪者の人生を補償すると共に等価の生き地獄を受けなければならない(恨みで殺されるかも。だから復讐するなら慎重に考えて)。誤判決を下した最高責任者は冤罪者が刑を受けた期間「生き地獄」の刑、あるいは職務を継続して、その収入全てを冤罪者に支払う(自殺されたら国が冤罪者を補償)。…こんなリスク背負って他人の揉め事を裁いてくれる人いないですよね。でも人の生死や人生の質を決める責任者って、それくらいのリスク意識は持って確信の根拠をシッカリさせて責任持ってもらいたなぁ。少なくとも自らその職業を選んだ以上は! しかしこの映画や『ニューオーリンズ・トライアル』で描かれるように、証言者や陪審員の言を様々な形の暴力で変えさせる問題もあれば、幼児虐待のように言葉や記憶に正確性が欠ける者が巻き込まれるケースもあるし、痴漢冤罪などでたまにある嘘つき女や勘違い女の歪んだ暴力もあるし、証拠捏造する人間(それも警察だったり)もいるし、言葉で人が死ぬことだってあるわけだし、そもそも戦争が地球から消えてないし、暴力という問題はまだまだ今もなお複雑に課題が山積みだと思います。それに気づかせてくれた映画でした。 [DVD(字幕)] 9点(2016-02-18 22:20:17) |
5. 刺さった男
《ネタバレ》 工事現場に落ちて後頭部に鉄筋が刺さってしまった男の話。身がよじれるようなシチュエーションだけで紆余曲折を描いていくのだと思っていたら、ハイエナのようなメディアへの風刺や「なんでそんな話に?」なデタラメ噂や金儲けの話が織り込まれて予想以上に楽しめました。不況の中、職が見つからない主人公の「存在の価値」の話になっていて、結構真面目なつくり。ちょい考えさせられました。見終わって全体的な印象は『[リミット]』を思い出す感じ。ラストぐっと上がってくる作りではないから、人に勧めるには弱いかなと思いますが、オチを期待しなければ話の流れは面白かったです。 [DVD(吹替)] 6点(2015-09-03 23:32:39) |
6. アーティスト
《ネタバレ》 サイレントからトーキーへと移行していく時代というと、僕の頭に真っ先に浮かぶのは、チャップリンが『モダンタイムス』で歌を披露するシーンです。その次に思い浮かぶのは、サイレントのおかげで声が良くなくても人気者であれた人々がトーキーの登場で居場所を失っていったことです。しかしこの作品の主人公はどうやら声の質が見かけのイメージとギャップがあるヒドイ声というわけでもなさそうで、単に「サイレントは芸術、トーキーは見世物」的なよく理解できない偏見からトーキーを頑なに避けている感じにしか見えませんでした。サイレントだったはずの本作で犬の吠え声や主人公以外の人間の声が聞こえるシーンで、主人公のみが大声で叫んでも声が全く聞こえてこないという悪夢の描写は、彼が何をコンプレックスにしているのか理解できませんでした。その弱い部分を補うために、ミラーの無遠慮な世代交代のセリフを主人公の耳に入れるという「とってつけたコンプレックス」がプラスされているように思えて、全体的に乗り切れませんでした。そもそも、冒頭の上映シーンで、上映終了直後の舞台挨拶での有頂天でのぼせ上がった感じが「人気スターなんだな」と理解はできても好感持てず、その後の彼の転落にあまり同情できなくさせていました。どうも声にコンプレックスがあるとは思えない主人公だから、最後はセリフを喋るとか、歌声を披露するとか、そういう感じで終わるのかなと思っていたら、ミラーが「名案があるの」と言ったアイデアは「は?」という感じでした。はじめてスタジオで再開した時、二人はタップで踊っていました。その靴音が録音されるかされないかというだけ、というのは主人公がトーキーに対して何を意固地になっていたのか理解できないままですし、「コレ普通もっと早い段階にやるよね?」としか思えず、オチとして期待はずれ過ぎました。劇中劇では全く披露されない主人公の声が、本作のラストシーンで「喜んで」と初めてヒトコト披露されて終わって行くというのも、なんだか僕としては煮え切らない感じがしました。ただ、トーキー移行期のリアルタイムにこのようなテーマを扱ったものがあるのを知らないので、この時代にあえてサイレント主体にトーキー登場の周辺事情を描いて見せてくれたのは楽しめました。 [DVD(字幕)] 6点(2015-03-11 01:44:25) |
7. グランド・イリュージョン
《ネタバレ》 海外の大きなホールでマジックショーを観た時の「なんで? どうなってんの⁈」な面白さや不思議さは忘れていません。だから、この映画で見られるようなイリュージョンのテクニックは実際に再現できるのかもしれません。けれどCG全盛のこの時代に、映画でどんなマジックを見せられても「ただのウソ」にしか感じられない。たとえば、テレビでセロのマジック観て「スゲー!」って思えても、何ヶ月もかけてCG加工や映像編集したことが前提として当たり前の媒体でセロが登場して同じマジック見せても、僕はおそらく何も感動しない。というわけで、でっかいシャボン玉に入り込んで客席まで浮遊していくイリュージョンを実際のマジックで観たら鳥肌もんですが、映画でアレ観た瞬間「なんでもありやん」と興醒めしまくりでした。 [DVD(吹替)] 0点(2015-02-09 19:26:06) |
8. シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~
《ネタバレ》 分子料理って何? と思ってたら、あんまりな正体で「マンガか!」と思ってしまいました。そして変装して敵陣に乗り込むシーンで、完璧にマンガのノリなんだと理解しましたが、この無茶な描きのわりにそこまで全体がハジけてなくて中途半端な感じがしました。主役2人の生TV料理番組が良かったです。あのノリをもっともっと観たかったです。 [DVD(字幕)] 5点(2014-08-06 21:29:00) |
9. オンリー・ゴッド
《ネタバレ》 ゆーっくりズームとか、ゆーっくりパンとか、ゆーっくり歩いたり、とくに何の動きもない場面を何秒も見せたり、そういうタメのカットで全編出来上がっててイライラしました。なんか深遠なことしてるつもりになってるんでしょうけど、観てみれば馬鹿馬鹿しい限りのお話でした。普通に撮れば1時間内で収まるでしょう。街の警察を牛耳ってるおっさんがスゴイのだけは印象的でしたが「結局本当のところ誰を描きたかったの?」というくらい他のキャラに魅力がなく印象薄い。で、『エル・トポ』なんかで有名なホドロフスキーに捧ぐとか大きく字が出て終わる。なんか、「人を殺してみたい」とか言うような人間が、それの代わりにフィルムをオモチャにしてるのかな? と思いたくなるような作品でした。 [DVD(字幕)] 2点(2014-08-05 18:00:15) |
10. スノーピアサー
《ネタバレ》 ソイレント・グリーンみたいに配給される食料の原料はなぁ~に? 閉鎖された空間内で循環するなら考えられることは限られます。宇宙開発ではきっと避けられない問題で、ウンチやおしっこを虫や菌の力でまた口に入れられるものに循環させる技術は現実に存在します。長い長いスパンで考えれば、何の問題もない平和な社会構造であったとしても、人は必ずいつかは死ぬので、死体はエネルギー源として再利用せねばなりません。地球上ではそれが直接的でない形で大きな大きな循環系路を辿ってるに過ぎず、地球だって宇宙空間に閉鎖された有限のカプセルです。単純に2カップルを乗せた宇宙船が1000年かけて旅をするとなったら、1カップルが産んでいい子供の数はどれだけか、病死や不慮の事故も想定して人口管理しなきゃならないわけで、子孫は「あの人と結婚するのはイヤ」とか「誰とも結婚しない」とか我侭は許されないし、それと逆に口減らしも避けられない問題。話を面白くしたいなら、後部車両にゾンビがいればいいんじゃない? ゾンビが生態系の循環にどういう特別な役目を担うか描けたら最高だ。ジェイミーが話をつないで引っ張ってる感じだったのに、何にも印象残すことなく雑魚のように死にます。この命の軽い描き具合に、あとの人のこともどうでも良くなってしまいました。で、案の定どんどん軽く死んでいきます。ゾンビになって蘇るのかと思うほどです。子供が機械の一部とか、もうそこまでするならいっそメーテルと鉄郎も出してくださいな。「本当に外では生きていけないのか?」とか阿呆らし過ぎました。シロクマちゃんなんか出して「ね、感動的でしょ?」みたいな安い演出シラけまくりです。列車の中を階級制度の支配国家の縮図にしてるだけなのに、そこで解決できなかった者たちが、その外に解決を求めても、外でも同じことが繰り返されるに決まってるじゃん。もともと故郷的な親しみさえわかない崩壊した地球しか描いてないのに、「ここでまた命が目覚めるよ」と自然讃歌のごとくとってつけたラストの浅さに目が点でした。 列車内の格闘は『北国の帝王』の釜バトルの方が数倍面白くて迫力ある。 [DVD(吹替)] 3点(2014-07-29 09:31:41) |
11. あなたを抱きしめる日まで
《ネタバレ》 修道院の老婆に言ってやりたかった「あなたはどうやってこの世に生まれたのですか? あなたは自分の父と母をどう思っているのですか?」と。レストランでのジャーナリストとの対面では学のない女性として表現された主人公は、その後も三文小説の内容を長々とジャーナリストに聞かせたりする。ジャーナリストは学のない大衆を相手にした仕事が好きでない。そんな2人がそれぞれの目的のために行動を共にし、摩擦や葛藤がありながら徐々に物語が進展していく。主人公の学はなくとも人柄の温かさが光るレストランのシーンで、長く生き別れた息子の存在をジャーナリストがWeb検索で突きとめた場面はとても印象的でした。その直後に知る真実と、後から明らかになるもう一つの真実も、宗教的偏見によるヘイトクライムを象徴するものです。この映画の大きな背景にあるものは、きっとヘイトクライム。だから主人公は「許すことには大きな痛みを伴う」と言って憎むことをやめる。彼女は長く隠し事をして生きることの辛さと罪悪感を自らの体験で知っているし、自分の息子もまた同じような生き方をしていたことを知ったわけですが、そういう生き方をしなければならなかったのは、人々が自分を嫌ったり憎んだりすることを避けるためです。自分の人生を隠し事で生きづらくさせているものは世の人々のヘイトという感情だった。だから彼女は人を憎むのをやめる。これは、映画を観終わったあとに出てきた感想ですが、もしそればかりの描写で締めくくられたら僕はこの映画を好きになれなかったと思います。やっぱり、あの後ジャーナリストが「僕は許せない」と言ってくれるのが僕としては本当に救いでした。で、真実を明るみに出したくなかった主人公と、「これは個人的なことだ」と報道を自粛したジャーナリストは、隠し事をせず真実を人々に知らせることを願う主人公と「許せない」ジャーナリストとして同じ目的に向かえることとなるから巧い。「人を憎まず罪(行為)を憎め」みたいな言葉もありますが、憎んだり嫌ったりすることも多分大切。問題はその感情の使い方なんだろうと思います。そういうことを考えさせてくれました。 終盤で再び三文小説の筋を聞かせる主人公、もう彼女はちっとも学のないおばさんではないし、ジャーナリストも全く嫌がっていない。本当に学がないのはあの修道院の老婆のような人だから。 [映画館(字幕)] 8点(2014-06-28 10:47:42) |
12. 愛と哀しみのボレロ
《ネタバレ》 「ボレロ…べつに興味ないし…」と長くスルーし続けてきた作品をこの度鑑賞してみて、まず「観て良かった」と思うと同時に『愛と哀しみのボレロ』という邦題にちょっと怒った。原題は「百人百様」とか「人それぞれの人生」みたいな意味だと思う。決してボレロが題材ではない。この映画はアウシュビッツ含む戦争時代の悲劇の中を生きてきたいくつかの国の芸術家たちの人生を中心にその次の世代にまで及ぶ大河の流れを描いていく。そして戦争の悲劇に掻き乱されてきたそれぞれの人々が、お互いの人生の何も知ること無く「母の元で救いなく死んでいく小さな子供達を救うために」とチャリティー公演に集結するのである。その公演を観る側にも国境を越えた様々な人生があることが示されてもいる。静かにジワジワとグッとくる。ファンでもなければアーティストの生い立ちや人生の悲喜こもごもなど知らないし、そのアーティストの仕事を「たかが音楽でしょ 」「たかが踊りでしょ」的な軽い気持ちで接することは簡単。けれど、その人たちにも抱え引きずるものはあって、その自分の運命と対峙しながら日々暮らしている人間なのだということに思いが至る。「チャリティーとか言って結局ホントのところ売名でしょ。いいご身分ですこと」というような冷めた視線は向けられないなと思った。芸術というものにもっと敬意を持たなければと思えた。捨て子のエピソードが尻切れトンボで終わったのが残念。『奇人たちの晩餐』の主人公にこの映画で再会とはちょっとしたサプライズでした。 [DVD(字幕)] 7点(2014-04-05 09:44:38) |
13. 眼には眼を
《ネタバレ》 いい具合にガソリン切れたり、医師が良心で遠い村まで病人救いに足伸ばしたり、都合良く医者だけバテたり、計画を成功させる確立がかなり低いお話。「最後はどうなるのかな?」の興味でラストまで面白く見ることは出来ましたし、絶望的なラストカットも印象的でしたけれど、観ている間ずっと「めんどくせ~復讐の仕方!」と思えてあまりついていけませんでした。「タイトルはミスリードを誘うもので、実は復讐ではないオチがあるのかな?」と思ったほど、やり方が「めんどくせ~」でした。 [DVD(字幕)] 6点(2014-01-01 01:57:26) |
14. その男ヴァン・ダム
《ネタバレ》 Gaumontの笑えない引いてしまうロゴが嫌でした。でも「顔見えただけで何で犯人? 警察バカ?」と思ったら、やっぱヴァンダムがやっちゃてて…と思ったら…という演出は付き合える範疇でしたし、カメラワークに「おや?」と思ったら天井に登って行く演出もそこで独白する事ごとも引き込まれました。「なんで有罪?」と呆気にとられましたが、ラストカットがとても気に入りました。あの受話器の感じとか目の感じ、ヴァンダムに対する印象が変わりました。この人、劇中で自分の英語が下手と言ってたけど、英語がもっと上手だったら単純なアクション系ばかりじゃなく味のある役も貰えるのでは? アクションから少し離れた良い話にもっと出て欲しいと思いました。顔がどこかフリオ・イグレシアスに似てるとこありますね。 [DVD(字幕)] 7点(2013-07-26 20:14:12) |
15. ヒューゴの不思議な発明
《ネタバレ》 少年の持ち物を勝手に持ち帰ったり焼いた灰を返したりする大人のノリについて行けず、保安官のコミカル演出も浮いて白々しく、タンス上の引き出しの絵コンテ見つけられて泣くに至っては「どのくらいの年齢をターゲットにした映画?」とうろたえました。「全ての人に役割がある」みたいな言葉が出てきますが、イリュージョンの作り手と、それを受けるファンの役割ぽく「世界の何処かでファンが大事に保存しているよ」みたいな…それと「主要登場人物にもそれぞれ役割がちゃんとありました」という感じでラストは少女にストーリーテラーの役割を渡すけど、なんだか「ムービーメーカーのために存在するファンのみなさん、本当にありがとう」みたいな感じがしてドッと疲れました。人それぞれの役割って…そういうことかい。人ひとりひとりを機械の歯車や部品のように例えること自体に違和感ありました。 『キック・アス』でヒット・ガール演じてた女の子がノスタルジックな雰囲気の中でまた違う魅力を見せてくれます。 [DVD(吹替)] 4点(2013-07-25 19:53:17)(良:1票) |
16. フォーリング・ダウン
《ネタバレ》 我慢に我慢を重ねて、見ているこっちも鬱積して…そういう段取りができてる場合、主人公の感情が爆発すると「よっしゃぁ! それでいい‼︎」と思えて快感もありますが、そういうものは感じられませんでした。映画でこういうテーマをやるってのは、日頃自制して過ごしている市民の代わりに劇場の2時間だけ現実にできない鬱憤処理を疑似体験してもらおうって企画になると思うんですが、ブチ切れるってことそのものを2時間も描こうとしたってついていけないし疲れる。見境なくブチ切れる行為は大人気なく反社会的だから、主人公をヒーローにすることはできないだろうが、なにもあんな破滅的な終わり方させなくても…。ああいう締め方しか用意できない時点で、この映画の企画は失敗で存在価値が低いと思います。まさかこんな内容薄な映画でまともに銃社会の警鐘を鳴らす志なんて感じられませんし。反社会行動なのにちょっと共感しちゃう自分もあり 、だけど最後は冷静に目が覚める映画だと僕は『狼たちの午後』を思い出す。 [ビデオ(字幕)] 3点(2013-07-18 03:56:14) |
17. 黄色い星の子供たち
《ネタバレ》 「まさかね…」ということがこれから起こるということを知らない能天気な少年たちの日常から、暗雲がじわじわと覆い尽くして行く描写速度にリアリティを感じました。競技場に集められてもまだそれほど危機感が大きくない感じなど、ゾッとする感じでした。「なんかやばそうだよね」「でもまさかね」と、楽観視したり他人の善意を信じたりポジティブ指向だったりネガティブに捉えることを避けたり…普通はそれでなんとかなって行くものだけど、そういうフィーリングでいちゃいけない場合もあるということを思いました。と言っても、あの状況から騒いでも何も変えようがないのでしょうけど。だからこそ、手遅れになる前に、怪しい世の中の動きには「大人しく」していてはいけないのではないかと思いました。 [DVD(字幕)] 7点(2013-07-17 21:59:52) |
18. ピラミッド 5000年の嘘
《ネタバレ》 じわじわと、気の遠くなる超過去の歴史領域に踏み込んで行きます。それはたかだか何千年とかのレベルではありません。ものすごく面白くなっていきます。 もし現代の私たちの文明が衰退を余儀無くされ、何万年あるいは何十万年先に復興するかもしれない未来人のために何かメッセージを残そうとしたら、どうするでしょう? その時、私たち現代人の文明の痕跡など腐蝕で何一つ残らなかったとしたら… [DVD(字幕)] 9点(2013-07-16 16:05:38) |
19. 穴(1960)
《ネタバレ》 タバコが自由に吸えてることにビックリ。金のライターの件を考えると、ライターは使えないと思うのでマッチ? とにかく火が扱える [DVD(字幕)] 6点(2013-07-15 21:19:28) |
20. 100歳の少年と12通の手紙
《ネタバレ》 つまらなくはなかったですが、何がテーマで何が伝えたいことなのか、つめがとても甘い作品だと思いました。一日を10年に見たてて経験成長する少年の心の動きには無理があります。ファンタジーとは言ってもついて行けませんでした。イタズラが過ぎても優しすぎたり嘘や沈黙でごまかしたり、そういうことに少年が傷ついているからなんでしょうが、だからと言って口が悪くプロレスラーと嘘つくオバさんにそこまで惹かれたりとか、そのおばさんに院長がお願いごとをしたりとか、これもあまりにも…。このオバサン、なんで離婚して元レスラーらしき男と居たりするのか、愛とか優しさとか嫌いだなんて冷めてるのか、よく分からないし、分からないなりに彼女が結局変わって行くのはミエミエだけど、元レスラーらしき男とどうなる感じもなし、とって付けたような「私の周りには愛がいっぱい」にはポカンと冷めてしまいました。 [DVD(字幕)] 5点(2013-06-26 15:22:28) |