1. 96時間
《ネタバレ》 この映画は、孤独な男が娘を見守り続ける平穏から始まる。 誕生日、ビデオ、母と娘を映す誰かの視点・暗い部屋で見つめる写真。 プレゼント、パーティー、抱擁、繰り返される撮影、馬、プレゼントの差。 扉を開けたら押しかける仲間たちの慰め、護衛仲間とトランプ 電話。 激しい戦いが起こるだろうと期待を抱かせるのは、10分を過ぎた辺り。 優しき父親は危機を察知すると仕事人の顔つきになり、キャメラも微かに揺れ出し不安を煽るようになり、押し寄せるファン、影に潜む刺客を取り押さえ守り抜くボディーガードの身のこなし。 一息、カフェで家族団欒…できない渡される紙とペン。 地図、別れの撮影、「電話してね」とお父さんは心配なのです。 ナンパ、観客に予告してしまうもの、「裏窓」さながらに窓の向こうで目撃するもの、嘆きを聞いて即座に行動に移るプロフェッショナリズム、アドバイス、ベッドからの視点・叫びだけが伝えるもの。 繰り返し聞いて得ようとする手掛かり、募らせる憎悪。 手掛かりを得るためなら壁を這いガラスをブチ破る! 残されたもの、推理、想像、情報収集、“鏡”に映っていたもの。 初対面に鉄拳浴びせまくる捜索者、巻き込みまくる大迷惑、狩人は車の中でとっ捕まえて殴りながら尋問、車を盗みまくる追跡、犯人も橋から飛び降りてまで必死、空回り。 女に執拗に絡むのは獲物を吊り上げ“信号”をつけるため。 腕に刺されたもの、布に覆われたもの。巻き込まれた女、女、女たちの顔、顔、顔。 斜面を敵の車ごとブッ転がしながら駆け下りるチェイス、窓に落ちるもの、壁だろうが建物ごとブチ破る。中指を立てる報告。 配線イジッてまた盗車。 ハンガーを折り曲げて吊るす治療、電話の行方。 手に刻まれた印、取り引き、声の“一致”。 机をひっくり返し、敵の得物で大暴れっ!!容赦なく拷問、膝にブッ刺す電気椅子、唾には電流でお返事、放置プレイ。 洗面所に隠していたもの、手から顔面に浴びせるもの、容赦なく引き金を引く覚悟、平手打ち。 オークション、窓の向こうで見たもの。 買い物、お約束…あるいは娘を救いたいがために信じられないパワーを発揮したのか、蒸気。 橋の上から船に飛び乗り、武器を手に入れ、扉の窓、扉越し、閉鎖空間における一騎打ち。 敏を割りまくり、足を引きずってでも迎えに行く! 締められる扉とともに終わる物語。 制作はあのリュック・ベッソンだ。 「レオン」で「リバティ・バランスを射った男」のクイズをジャン・レノに出題させたあのベッソンである。 ベッソンと監督のピエール・モレルはジョン・フォードの傑作「捜索者」も見ているに違いない。 [DVD(字幕)] 9点(2016-12-15 04:18:44) |
2. ミッション:8ミニッツ
《ネタバレ》 この映画は、もしも運命を変えることが出来るなら…という願いも込められた作品なのだろう。 変えようと足掻き続けた者の、それを見守り続けた人々の表情と葛藤。 海岸沿いにそびえる摩天楼、列車、窓にもたれかかり眠りから目覚める男。 相席で話しかける者、胸ポケットから取り出すもの、電車内で蠢く人々、窓に映るもの、鏡、写真、列車内を奔る“風”が無情に告げる別れ。 目覚めた先で見たもの、窓の向こうで動く人々。 繰り返される光景と“8分”、視点変え、“変える”ための行動、登った先にあるもの。 ぶん殴ってでも黙らせたかった、救いたかった。 “戻る”度に刻まれる異変。 挨拶、聞き出す名前、人間観察、荷物、口づけ、中から外への追跡、隣に座った後にぶん殴る。 “出る”…いや“繋がる”ための足掻き。移動、懐中電灯でこじ開けるもの、紙に記る“印”、電話、駆け巡る記憶、焔。 突き付けるもの、扉が閉ざされるならこじ開けるまでよっ! ポケットの中身、車越しに倒れるもの。 選択、共謀、迫り来る時間、時が止まったように残され完全に切り取られる“一瞬”、箱の中身。 [DVD(字幕)] 9点(2016-12-15 04:16:08)(良:1票) |
3. モンパルナスの灯
《ネタバレ》 マックス・オフュルスが計画していた企画を、ベッケルが受け継いだ傑作。 人々が談笑し酒を嗜むカフェ、机の向こうを見つめ何かが終わるのをひたすら待ちわび、隣で見守り、窓の向こうで振り返り、何かを紙に書き続ける男たちの姿。 不満げな反応に酒代まで払うと言われ、それに紙を破いて返答する意地っ張り。この映画のモディリアーニは芸術家ではなく、酒と芸術に“酔った”ろくでなしとして描かれていく。 ベッケルの興味はモディ(モディリアーニ)の絵ではなく、彼そのものが破滅していく様にあるのだろう。「この物語は史実にもとづくが、事実ではない」と一応断りを入れて好きに描いてやろうという具合。 女と近づき寝るために彼女たちを描いているような気さえしてくる。熟れた御婦人も、うら若い乙女も、階段を力強く登り灯の管理も手ぬかりない大家まで心を奪われそうだ。 酒と雨を浴びるように楽しみ、貰ったばかりのマフラーもびしょ濡れにし、酒のツケはたまり放題、鍵が無いからといって体当たりでドアをこじ開け、酔った勢いで平手打ちを浴びせるなんてことも日常茶飯事らしい。 だが絵は売れなくても不思議と彼の世話をし“巨匠”と親しげにしてくれる親切な知人には恵まれる。 色男というだけじゃない。自分の好きなように絵を描き、それが曲げられるくらいなら殴り合いさえ辞さない覚悟、すべてに絶望した虚ろな眼差しを自身の絵にも描きまくり、己を貫くためなら死んでも構わないという危なげな姿をみんな放っておけず駆け寄ってしまう。だがその優しさも過ぎれば単なる甘やかし、モディを破滅に向かわせる原因の一つにもなっていく。 でも暴力を振るわれても隣に座り、甘い声で謝られてしまったら…モディに関わる女性たちは何もかも寛容に、気づけばほつれたボタンを付け、マフラーを首に巻き、一夜を過ごし肉体まで許してしまうのだ。繰り返される口づけのような抱擁。 閉ざされた扉を叩く虚しい響き、画塾に通い詰める人々のタッチとそれぞれのモデル、出遭った瞬間に惹かれ合い絵によって結びつく恋、扉を閉ざす待ち伏せ、鍵を閉める沈黙、ダンスホールで踊る人々を反射する鏡、外人部隊の国だからか黒人もアジア人も自然に溶け込む街。 葛飾北斎のように絵を広告として活用することを選んだ者も入れば、モディのように金で思うがままにされることを許せなかった画家たちもいただろう。 尊敬するゴッホを侮辱されたと思い“苦悩を忘れるためだ”と情熱を持って擁護する。表に裸婦の絵を置いて歓迎しているとは思えない態度だった者が、愛する者のために売り払い“かなぐり捨てる”ことが出来なかったくだらねえプライドが、あの瞬間だけ光り輝いて見えた。街の片隅でヴァイオリンを弾く孤高の奏者に向けたあの一瞬の輝きを。 女はそんな男を最後まで慕い続けた。札束も身も投げようと狂っていた男を正気に戻す女の眼差し。ベッドで睡眠を貪る傍らで内職までして尽くす。 その視線を誰も向けてくれなくなり、絵を突き返され金を“恵まれる”ことが繰り返された瞬間…高すぎたプライドは崩れ去り、絶望に向い歩み始めてしまうのだ。 薄れゆく中で見たもの…。 そんな彼等を嘲笑うように、黒い帽子姿で現れる死神のような画商。 くたばるのを待つように見守り続け、胸像を投げ破壊された窓ガラスの向こうでさえ挑発を続ける不敵な笑み。とぼけた表情で挨拶をし、馬車を走らせ、札束のように掲げまくる絵、絵、絵、顔、顔、顔! [DVD(字幕)] 9点(2016-12-01 09:26:29) |
4. かたつむり
《ネタバレ》 ルネ・ラルーの短編。 後の「ファンタスティック・プラネット」等に繋がる摩訶不思議な空間。 揺れる球体の上に立つ無数のものたち、揺れが止まりオープニングへ。 球体に近づくと街、畑に。 水を撒くもの、如雨露に座り込み植物を見る。 木の枝で支えを作ったり、歩きまわったり、釘を刺して磁石で吊るしたり、風船で吊ったり。違う、そうじゃない。 涙を流すとその涙で突然元気に。 飛び踊るように喜ぶ。男も玉ねぎをあてながら涙を流しまくる。曇り空、誰の骨?、自ら金槌を打ち付ける機械を背負い込んでまで続ける。 成長していく作物、家を呑み込むように。 無数のかたつむりの出現、消え失せるもの、巨大化する恐怖、移動して車や電車を破壊しまくり人間を殺しまくる。伸縮する触角、押し寄せる恐怖。 静かな街と夜の営みを邪魔するように侵入する来訪者たち。 かたつむりの体ごと呑み込まれる。 触手のように伸び、誘い、絵を点滅させて吸い込むように。 逃げ遅れるもの、亀裂が入り破壊される街、飛び散る瓦礫、廃墟となった街。 ゆうゆうと過ぎ去る災害。 災害は性行して数を増やし、糸を張り、沈黙する。 次の人間はビルを作り、畑を耕し、次の食を欲するものたちを呼び寄せる。おい、じじいwwww [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2016-09-09 16:23:23) |
5. 死んだ時間
《ネタバレ》 ルネ・ラルーの短編。 後の「ファンタスティック・プラネット」等に繋がる、石ころのように転がるありとあらゆる死、死、死が詰め込まれた内容。 実写、暗闇から近づくと現れる星、日本の子供たちが遊ぶ様子、おもちゃの銃を撃ち合うごっこ遊び、遊びが本物の銃を握りしめる殺し合いへ。 戦争、燃え上がる飛行機、砲撃、爆炎、突撃する兵士、突如頭を吹き飛ばされたかのような男と廃墟のアニメーションに切り替わる。拡がる地獄絵図。 暗い雲に覆われた空、四肢を吹き飛ばされた瞬間のまま固定された人、人、人の形をした人もの。血はないが人形…いや石のように固まった命。 下を吹き飛ばされた家、死体のように折り重なる脚脚脚、胴体だけが残り赤ん坊が吸い付こうとする裸体、瓦礫に埋もれ何かを手に持つ腕、瓦礫の中から何かをついばむカラス、首を吊らされた損傷遺体。 口づけだけが残る恋人、水の中から手を伸ばす穴の開いた手、削られた空間に火が灯る遺体。 死体に剣を突き刺す躯骨と豚の上に君臨する黒い体躯の者、そこに集う人々。祈るように。 貯金箱?顔を覗かせ見つめる包帯の男、松葉杖をつきながら近づく男に敬礼。 突如実写の魚が泳ぐ海の中へ。 引き釣り回される魚、飛びまわり撃ち殺される鳥、剣を突き立てられる闘牛、暗殺の瞬間が描かれたイラスト、短剣、拳銃、床に転がる遺体。 橋走る機関車、謎の露出狂女、箱に閉じ込められた者の山、その下に拡がる空間に座主もの、見つめ合う恐怖に怯えるような視線と冷めた視線、人間跳び箱、飛び越えた先に飛び込む、火にくべられる脚、廃城? 実写の処刑台、絞首刑、銃殺、斬首、首が地面に斬り落とされる瞬間(閲覧注意)、電気椅子。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2016-09-09 16:22:29) |
6. 猿の歯
《ネタバレ》 ルネ・ラルーの短編。 実写、道を歩いていく人々、アコーディオンを弾き、一軒家に集まり楽しそうに作業に励む人々。 ナレーション、会議、紙、絵の中のビル群へ。 不気味なデフォルメ絵と音楽、カラフルなビル、自転車をいじるもの、扉から出てポツポツ歩く者。 歯医者、抜かれた歯がおざなりに置かれる狂気地味た空間。歯を一本一本抜く、結婚、食事、家族を一人ずつ抜かれていくような悪夢へ。 抜かれたあとは穴だらけ、穴は戦場になり、そこでもまた一人に。孤独に苛まれる姿、抜かれた歯の行方、眠るものを抱えて向かう先、ドイツもコイツも恐ろしい歯だこと。 何をする気だったのか、自転車で通り過ぎる悪魔、押し寄せる警官、追跡、家の中に入り、飾りのマネキン?、逃亡者は肉になり警官の追跡を巻き、、警官は子供になり身元がバレないようにする。郷に入ったら郷に入るということだろうか。 階段を登る、男は人体標本に。獲物を見つけたぞとばかり教科書や文房具を放り出し警官に戻る姿、教師の睨みで子供に戻る。 ぎこちない動き、窓から見つめる視線、脱ぎ捨てられる半身、鏡、涙、笑顔の写真、ベッドにうずくまる孤独。ビルに囲まれた小さい家、ひっそり近づく悪魔たち、尻尾をなでながら口に突っ込みまくる。 口を開けて自転車を寂しそうに漕ぎ続ける。悪魔は春の季節も歩き続ける。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2016-09-09 16:21:34) |
7. 黄色い星の子供たち
《ネタバレ》 フランス人は、フランス革命の頃から同じ国の人間同士で差別し、告発し、殺し合ってきた歴史を持つ。 ある者は恐怖に屈してしまい、ある者は恐怖に抗うために戦うことを選んだ。 かつて赤狩りでアメリカを追われたジョゼフ・ロージーという男がいた。 彼はフランスでヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件(ヴェル・ディヴ事件)について「パリの灯は遠く」で描いた。そこには理不尽な暴力に対する抵抗と国を追われた者の共鳴があったのだろう。 そしてこの「一斉検挙(黄色い星の子供たち)」は、フランス人の女性ローズたちによる一つの告白なのだ。 「星」によって差別される日常から映画は始まる。 追い詰める側はあくまで仕事として、作業を繰り返すように政策を進める。まるで感情のない機械のように。ユダヤ人にしてみれば、彼らは自分たちを引き裂き暴力で屈服させようとした恐ろしいマシーンも同然。服をはぎとり、容赦なく殴り蹴ってくる。 彼らも人質を取られていたのだろう。だがそんなものは言い訳だ。だからこの映画にも追い詰めた側の葛藤はあまり描かれない。 「家族を人質にとられててね(棒読み)」 そうかそうか、テメえの面に一発ブチこまれて欲しかったぜ俺はよ。 ヒトラーも家族と団欒しながら何万の人間の四肢をもぎ首を引きちぎる政策を進めていく。 対して、追い詰められる側は感情豊かだ。 歌い、踊り、走り、語り合い、愛し合って。あの小さな子が走る度に軍人や警官に銃殺されるのではないかと何故かハラハラしてしまった。あの子は妖精のように場を和ませ、「この子だけは死んでほしくない」という活力を人々に与えていた。 ユダヤ人狩りは加速していく。公園や職場からの追放、警官隊の不気味さ、銃殺覚悟で生き延びろと叫び続けた御婦人、競輪場に家畜のように押し込められる理不尽さ、医者の無力さ、糞溜めの中に託される希望、消防士たちの勇気、貴重な配給食糧をブチまけてまで脱出者たちを送り出す子供たちの覚悟、走りゆく列車から力なく垂れる手、手、手・・・。 ローズさん、貴方は優しいね。生き残った人々の顛末は多少描いたが、死の描写は少なかった。 彼らを追い詰めた(自殺?何言ってやがる、追い詰めたんだろうが)人々のその後までは描かれなかった。 それ以上追及しなかったのは、あくまで生き延びた人々の体験に沿った映画だからなのだろう。 二度と会えないと思っていた人との再会・失神するほどの歓喜が肉体を突き抜けるほど、死んでしまった人々の分まで何がなんでも生きてやるという瞬間に勝るものは無かったのだと思う。 [DVD(字幕)] 8点(2015-12-23 22:11:37) |
8. メリエスの素晴らしき映画魔術
《ネタバレ》 ジョルジュ・メリエスに関するドキュメンタリー映画。 冒頭の「月世界旅行」における月に近づいていくシーンに始まり、1890年代の世紀末のパリの様子、メリエスの生涯や映画環境の変化、リュミエール兄弟、チャップリンに影響を与えたマックス・ランデー、チャップリン、メリエスの様々な作品のワンシーン、アイデアを書いたメモやイラスト、生前の写真や撮影風景をメリエスの肉声を交えながら映していく。 それを手回しのキャメラで見せ、聞かせてくれるような演出が面白い。 メリエスのアイデアが残されたイラストで幾つか気になったのが、首を切った筈の人間が追いかけてきたり、布をかけて女性を消す手品(「ロベール=ウーダン劇場における婦人の雲隠れ」)のタネなど。 実際のマジシャンだったメリエスの豊富なアイデアには驚かされる。 監督したコスタ=ガブラスも語り、ジャン=ピエール・ジュネ、ミシェル・ゴンドリー、ミシェル・アザナヴィシウス、俳優のトム・ハンクスまで様々な人間がメリエスについて語る。 サイレントのフィルムに爆発音とかを入れたフィルムもあったな(このドキュメンタリーのために付け加えたのだろう)。 撮影当時を再現しようとする試みも面白い。 14分を過ぎたあたりでいよいよ「月世界旅行」の話題に。メリエスを代表する映画と言ったらコレだし、自分でカラー化までしちまうんだからメリエス本人もかなりの思い入れがあっただろうな。 スペインのメリエスことセグンド・ド・ショーモン(Segundo de Chomón)によるリメイク「Excursion dans la lune」まで取り上げるんだからガブラスたちも凄いぜ。 ジュール・ヴェルヌの原作の挿絵、もう一つ映画の元になったハーバート・ジョージ・ウェルズ(H・G・ウエルズ)の作品群、エイリアン。 再び挿入される月に近づいていくシーン、トム・ハンクスによる月面に着陸した探査機を背景にした語り。 当時の映画館に詰めかける人々の表情、エジソン、ニューヨークの摩天楼。当時の人々が映画で夢を描いたように、現代を生きる我々は過去の作品に懐かしさを覚え、今を見つめ直す。 「月世界旅行」のカラーフィルムの修復風景。 色鮮やかなカラー、1カット1カット丁寧に着色していく。 空を飛ぼうと挑み続ける人々の姿、宇宙の前の大空、アニメーション、進化していく映画、移りゆく時代のうねり。まるでチャップリンがあの光景を劇場で見ているような編集が面白い。 火災、風刺画、トーキーの時代、見る影もない晩年のメリエスの姿が見ていて辛い。葬儀の一部を収めたカラーフィルムから現代のロケットの打ち上げへ。 劣化してしまったフィルムの様子は寒気がする光景だ。溶けて変色してしまったフィルム。 それを防ぐための作業風景。 フィルムを透明な鍋に入れて、スープのように保存し、フィルムを傷つけないようにフィルムを差し込んで少しずつ剥がし、それを一枚一枚カメラで撮影していく。 デジタル技術の進歩はよりフィルムを蘇らせられる良い時代になったと思う。切り貼り、気の遠くなるような作業、専用の洗浄液・・・どれも映画が好きだからやり遂げられるのだろうな。 最後はカラーフィルムで「月世界旅行」の“あの場面”をもう一度映して終わる。 [DVD(字幕)] 9点(2015-07-30 15:58:55) |
9. 世紀末の印象派
《ネタバレ》 メリエスによるマジックもの。 台の上に立たせた女性の人形を本物の女性に変え、お次は布をかぶせて台の上の筒の中に瞬間移動させる。 今度は女性を担ぎ上げたかと思うと粉微塵になって消えてしまう。 マジシャンは自分をテレポートさせたり、先ほどの女性に早変わりしたり、また元に戻ったりを繰り返し煙と共に消え去る。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-30 15:42:00) |
10. 青ひげ
《ネタバレ》 宮殿らしき場所に集まる人々、大金持ちで豊かな髭をたくわえた「青ひげ」が熱弁を奮っている。青ひげは書類を蹴り上げたりとやりたい放題。 調理場の人々に御挨拶、運ばれていく料理(ハリボテ)たち、みんなが宴会を楽しむ中で一人静かに本を読んで過ごす新妻。 5分が経った頃、本の中から突然悪魔が飛び出してくる。地下室で見てしまったおぞましい光景、そこに先ほどの悪魔も現れる。彼女は8人目の犠牲者として連れてこられたのである。 大きくなる鍵、謎の女性の精?が現れそれに祈ると鍵は小さくなり精も消える。 彼女の寝室に現れる7人の亡霊と悪魔、悪魔を振り払う銃士の姿、亡霊たちは8つの鍵に変わり彼女を苦しめるが、そこに先ほどの精が現れ鍵と悪魔を消し去る。 露わになる青ひげの本性、凶刃が迫るその瞬間、ハリボテを突き破って現れる救いの銃士たち。 ぶっ刺されても頑丈な青髭、またも現れる精と七人の亡霊たち・・・って全員生き返っているし!御丁寧に挨拶までしてお持ち帰り。 すべてを失った青ひげは絶望のうちにくたばり、周囲の建物は取っ払われ、そこには青ひげの財産をすべて手に入れたヒロインたちの姿があった。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-30 15:41:02) |
11. 宇宙飛行士の夢
《ネタバレ》 ジョルジュ・メリエスの短編「月まで1メートル(宇宙飛行士の夢)」。 巨大な望遠鏡、勉強中の学者、そこに現れる悪魔と謎の女。現れたかと思うと消え、学者が黒板にメモを書くとそのメモにイタズラをし、地球と月をくっつけて「人」にして小馬鹿にする。 学者の道具は次々と消え去り、望遠鏡も巨大な月の顔に食われてしまう。傘を差したら吐く息に溶かされ、子供が二人飛び出すわ遠のいて箒をかわすわやりたい放題。 すると月が美女に変わって降りてくる、三日月の椅子、美女に振り回されてとうとう窓さえ消滅し閉じ込められ、謎の像が出現する。 突撃した爺さんは月に飲み込まれてバラバラ、そして女王の手によって蘇り、悪夢のようなひと時が終わる。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-30 15:39:36) |
12. ガリヴァー旅行記(1902)
《ネタバレ》 ジョルジュ・メリエスの短編「ガリバー旅行記(ガリヴァー旅行記)」。 メリエスの作品で「月世界旅行」と共にクローズ・アップが使われた数少ない作品の一つ。今回はカラーフィルム版を鑑賞。 いきなり巨大な老人が街の中に現れて徘徊している場面から始まる。いや、ランプで辺りを照らしながら歩く彼にとっては「街が小さい」のだろう。どうやらこの爺さんがガリヴァーらしい。 彼は気づくと拘束された状態で寝ており、橋の上では複数の小さな人々がガリヴァーを見下ろし、手に持った武器で威嚇している。男の尻に矢が刺さりまくり、そのショックでガリヴァーは目覚める。 街の住人に受け入れられたガリヴァーは、彼のサイズにあった椅子や机を用意してもらい食事を堪能する。巨大な樽を牽引し、梯子をよじ登りリレーで飲み水をコップに注ぐ人々。 そこに現れた王様の一向、彼らが運んできた籠をヒョイと持ち上げ、梯子をよじ登ってきた王様?らしき人々がお姫様?を紹介し談笑を交える。直後に建物で火災が発生、ガリヴァーも机の上の水が入ったガラスの瓶?を噴射して消化を手伝う。 その次はいきなりカードの賭けを楽しむ人々のクローズ・アップ。一体何なのかと見ていると、机の上にガリヴァーの姿が現れる!今度はガリヴァーにとって「大きな」国に来てしまったようだ。巨大な人々に囲まれて何かを祈るように喋るガリヴァーの姿、彼の声は巨大な人々には小さすぎて届かないようだ。梯子を上るが手の風圧で簡単に転げ落ちてしまう。上には上がいるものだ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-28 17:16:21) |
13. 地獄のケーキウォーク踊り
《ネタバレ》 「地獄のケークウォーク踊り(地獄のケーキウォーク踊り)」。 鋭く尖った結晶がひしめきあうような洞窟、薄い布をヒラヒラとまとった二人の女性が画面を横切っていくと、その次は複数の女性が同じように駆けていく。 すると洞窟の奥の結晶たちは引っ込み、白い煙と共に悪魔たちのケークウォークダンスのはじまりだ。でんぐり返しに松明を持った悪魔たちの狂騒、髭ぼうぼうの賢者?みたいなオッサンが悪魔に早変わりして踊り、火が燃え盛る中を女性のダンサーたちが次々に現れ踊り続ける。女性たちの上を火玉が飛び交い、薄暗い洞窟を照らすような真っ白い衣装。黒い肌が際立つ。 お次は巨大なケーク(ケーキ)が神輿のように担がれてきて、ケーキを吹き飛ばすように悪魔の御登場。マントを奪い合っていた思ったら発火して二人の男は炎に包まれ、悪魔が笑いながら踊り狂う。あまりの狂いぶりに悪魔の脚や腕は肉体を離れて踊り続け、悪魔は木端微塵になる。 華麗に踊り明かす人々もまた灰燼と化し、最後の悪魔が奈落に消えて辺りは地獄の炎に包まれる。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-28 17:15:07) |
14. 化粧の王様
《ネタバレ》 黒いボード?のようなものと共に現れるシルクハットの男。 ボードに絵を描き始め、描いた髪を鬘(かつら)を被るようにつるつるの頭の上に出現させるのは監督のメリエス本人だった。様々な髪形や髭、服装をまとっていくメリエス。 遂には悪魔と化し、白い布をまとい消え去ってしまう。悪魔の造詣にメチャクチャ気合い入ってて思わず笑ってしまった。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-28 17:14:08) |
15. 飲んだくれのポスター
《ネタバレ》 様々なポスターが貼られた広告スペース、男が中央の空いたスペースに新しいポスターをデカデカと貼る。男たちが去ったその瞬間、それぞれのポスターが実物の人間となって動き出す。 ダンサーとそのアシスタントはポスターから飛び出して他のポスターの住人と会話を交わしたり、酒を飲んだり、化粧品を見せてもらったり、他の女性にチョッカイを出すアシスタントを蹴ったり、料理を作っていた男は粉を降らせ、別の男は食器を雨のように降らせる。通行人が通りかかると瞬時に元に戻り、そう思うと後ろを振り向いた男に全員でちょっかいを出したり。 駆け付けた警官たちに大量の粉を浴びせてやりたい放題だ。警官たちが躍りかかると彼らはポスターに戻り“逃げ込んで”しまう。 遂にはポスターのスペースそのものが倒れ、中から格子の向こうでゲラゲラ笑う彼女たちの姿が映し出される。格子に引っ掛かった警官の背中に水を浴びせたり、ポスターを突き破るようにもがく警官たちと共にカーテンコール。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-28 17:13:09) |
16. 悪魔の下宿人
《ネタバレ》 今回はカラーフィルム版を鑑賞。 男がいる部屋に入ってきた老紳士、紳士は部屋にいた男に案内される。 何やら話し合い、男が出ていった瞬間、黒衣の紳士は部屋で作業していた別の男に掴み掛り窓の外へ放り投げてしまう。 梯子をなぎ倒し、鞄を開き白い布を取り出す。布をバサッと広げた瞬間、下にテーブルが出てそのまま布を支え、鞄を机の上において様々なものを出しはじめる。まるで四次元ポケットだ。 折りたたまれたハリボテは瞬時に実物に変わる。重そうな宝の箱を開け、タンス 扇子を時計に変え、ソファ、暖炉、人形、燭台を二つ、複数の絵を放り投げながら飾る。さらには先ほどの宝箱の中からピアノや大小複数の鏡、食器類、複数の椅子 とうとう人間の子供や妻といった人々まで出現させて引っ越し祝いの食事。 そこに冒頭で男を案内してくれた男が差し入れにかジュースらしきものを持って現れ、目の前に広がる光景を見て仰天する。黒衣の男たちはその様をゲラゲラと笑う。部屋中の家具が一人で動き回り、男をさらなる混乱が襲う。 黒衣の男はまた引っ越すのか、せっかく並べた家具を大慌てで例の宝箱に一つずつしまっていく。宝箱はブラックホールのように次々と荷物を吸い込んでいく。 駆け付けた警官まで担ぎ上げてピアノの中に押し込んでしまい、逃走用の梯子&最悪の“置き土産”まで残す用意周到振り。正に悪魔のような下宿人だった。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-28 17:12:04) |
17. 魔術師(1898)
《ネタバレ》 黒い衣装をまとった魔法使い風の男、手を翳して机や箱を出したかと思うと箱に飛び掛かるようにして消え、箱の中から白い道化師のような男が現れる。 道化師が椅子に座ると、机は白い布で包まれその上に食事のようなものが出てくる。道化師が味見をして食べようとしたら何もかも消えてしまう。 道化師はすっ転び、その後ろに髭面のイカツイ男が突然現れる。 男が道化師の肩に触れた瞬間、何の脈絡もなしに胸像の前で考え込むギリシャ人の哲学者?風の男が現れる。男が胸像を台の上に置いて砕こうとしたら、胸像は生身の女性に変わり「何すんのよ!」と言わんばかりに男をぶん投げてしまう。 そして像の全身像のようなポーズをした女性が出現する。抱き着こうとする男をかわすように次々と別の女性が現れる。最後には何もかも消え、突然現れた男に後ろからケツを蹴られて終わる。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-28 17:11:07) |
18. 中国の魔法使い
《ネタバレ》 中国風の門を背景に、中国人の格好をした胡散臭い男が登場する。 傘を振り回し 傘で隠した部分から椅子を左右に一つずつ出現させる。男は傘を放り投げて扇子を傘に変えたりと、傘から次々とアイテムを出す。 一つずつ出した三つの提灯を犬に変えたり、犬を可愛がっていたと思ったら今度は化粧の濃い女性になる(戻して)、お次は傘とマスクで頭を覆った男を召喚。彼は魔法使いの助手となって魔法使いのマジックを手伝う。文字が書かれた2つの四角いものを一緒に運び、突き破る瞬間移動。 残りの紙を破り、木の枠組みだけになったものを転送装置のように使うアイデア、女性を担いで布に包んだかと思えば瞬時に複数の鶏と入れ替わる。 最後はアシスタントと女性と共に別れのご挨拶。アシスタントの布が首にからまってしまうギャグで締めくくる。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-28 17:10:03) |
19. 黒い悪魔
《ネタバレ》 窓から髭を生やした悪魔が一匹現れ、他人のベッドに寝転がる。 悪魔は何かの気配に気づいたのか姿を暗まし、そこに家の住人と思われる男女が4人入ってくる。男女は談笑して部屋を去っていき、家の主人らしき髭の男がそこに残り着替えはじめる。どうやらこの部屋は男の寝室のようだ。彼はこの後散々に肉体を床に“ぶつける”ハメになる。 男が畳んだ上着をしまおうとした瞬間、突然タンス類と机が入れ替わってしまう。男は仰天するが尚も服をタンスに入れようとする。今度はそのタンスを持ち上げるように机が元の位置に瞬間移動する。 男が椅子を使って入れようとするがさらに机が増えて高さが上がっていき、男がタンスをよじ登ったと思ったらすべてが消えてしまう。 男は床に叩き付けられ、服を別の場所にかけようとするが今度はその服が消えてしまう。後ずさりをするとさっき消えた筈の机にぶつかる。男の背後にはタンスも元の位置に戻っている事が確認できる。と思うと座ろうとした椅子が消えたり増えたり、逃げる男を追うように増殖する椅子、減ったり増えたりを繰り返し男をもてあそぶ。 担ぎ上げた椅子が無尽蔵に増えていくかと思うと、冒頭の悪魔が再び姿を現す。 悪魔は男を挑発し、男は箒を握り悪魔めがけて振り回すが、すばしっこい悪魔を追いかけるので精いっぱいだ。 悪魔もまた消えたり出現したりを繰り返し部屋の中を引っ掻き回す。とうとうベッドに火をつけて焼き尽くす。 パニックになった男を他の住人が部屋から追い出していく。誰もいなくなったベッドを悪魔が占拠する場面で終わる。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-28 17:08:35) |
20. 地獄の鍋
《ネタバレ》 今回はカラーフィルム版を鑑賞。 ぐつぐつと煮えたぎる風呂のような鍋、三つ又を持った悪魔が姫?らしき女性を連れてくる。 白い布を取り出して王女をくるみ、そのまま鍋に放り込んでしまった。お次は従士?を放り込んで縛り付けていてもう一人の従士も鍋に。 悪魔は長い棒で鍋をかき回し、すると鍋から人の形をした煙がはばたくように3つ出現する。化身は火の塊となって悪魔たちを追い回し鍋を破壊する。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-28 17:06:51) |