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1.  エッセンシャル・キリング
すべてが終幕へと誘っている。 つまりひとりの男の死への誘いである。 そのための物語であり、その物語しか用意されていない。 つまりシナリオに書いてあるのだ。 男が雪の中を歩いてきて、地面を掘り返し、蟻を食べる、と。 そう書かれているから、そう撮ったのだ。 それをどう撮らえ、どうモンタージュしたか。 どう歩けば過酷であり、どのように歩けば死を感じさせられるのか。 ただそれだけに試行錯誤し映画を作ったのだ。 ただそれだけの純粋な映画なのだ。 映画の贅沢の極みである。
[映画館(字幕)] 9点(2011-12-08 02:51:18)
2.  倫敦から来た男 《ネタバレ》 
冒頭の長回され続けるあのショットの途中、船上で男ふたりが何やら会話をする。記憶が既に朧げだが「2分経ったら・・」とか「Be Careful・・」といった会話をするが、このときの台詞がオンでいいのか疑問だ。少なくとも硝子越しに撮られているのだし、これがオンだとあの密談が主役の男、マロワンに聞こえていたということになる。勿論、その後の大声での騒動などは、大声であり、マロワンの目撃のショットであるからオンで正しい。しかし、あの密談はオフでなければならないはずだ。 長回しというのは断絶されない時間の証明だ。それは映像だけでなく音にも同じ意味になる。であるからこそ、ひとつのショットの中で定まらぬ音の演出がされているということ、これは明らかに間違っていると断言できるものだ。 そんな冒頭の緩慢な長回しを見ているだけで疲労感覚えた。シンメトリーにフレーミングされた船の先端を途轍もない遅さでクレーンアップしていくのに何の意味があるのか。何の意味もない。あまりにも緩慢なカメラの動きと人物の動きは物語やサスペンス性を宙吊りにし、ただ、ハイコントラストなモノクロームの世界を演出するだけだ。しかしそれはそれで正しいのだ。これがタル・ベーラのスタイルだからだ。 タル・ベーラと言えば450分の「サタンタンゴ」や鯨が出てくる「ヴェルクマイスター・ハーモニー」といった映画が有名であるがいずれもモノクロである。彼は自分のスタイルというものに忠実である。1.66:1、モノクロ、長回し、長尺。いずれも時代性としては後退的なものだと言っても過言でない。自分の世界にのみ生きる閉ざされた映画作家であると見られることも恐れず、スタイルを忠実に貫く。映画はこういった作家を受け入れるが、個人的にはそこに何も感じないわけで、一刀両断にしてしまえば、アンゲロプロスのほうが巧く、より感動的であるということだ。
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-22 01:02:03)(良:1票)
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