3. アフターショック
《ネタバレ》 バイオレンス・サバイバル・ホラーと言えば、『マッドマックス2』や『ザ・ロード』など文明崩壊後の近未来が定番です。ところが、本作では現代劇ながら巨大地震を使って即席の終末世界を創り上げました。パラダイスから急転直下、登場人物と観客は脱獄囚蠢く地獄の一丁目に放り込まれます。天災と人災のダブルパンチ。では、どのように行動するのがベストだったのでしょうか?結果論的に検証するならば、とにかく高台に逃げるべきでした。囚人相手なら戦って生き残る可能性がありますが、津波に飲みこまれたらノーチャンスですから。しかしこの選択は現実的には無理な話。来ないかもしれない津波より、まずは目の前の危機回避が優先。しかも囚人たちは銃で武装していました。逃げるより他に道は無かったでしょう。そして何より問題だったのは、主人公たちが腹を括れなかったこと。例えば仲間が壁の下敷きになった場面。“見殺しにして逃げる”のも正解、“囚人を全力で迎え撃つ”のも正解だったと思います。でも彼らが選択した“ジャッキを探しに行く”は一分一秒を争う状況下では有効な打開策とは思えません。ほぼ現実逃避に近い悪手でした。中途半端な選択と決断の鈍さは、彼らがまだ自らが置かれた危機的状況を認識していない証。ここはもう法治国家ではなく、弱肉強食の無法地帯なのに。そういう意味では、ヒゲデブを撃ち抜いた地元民の母だけが、家族を守る信念に基づいた覚悟を示したと言えるでしょう。おそらく善良な市民は、誰ひとり生き残れない筋書き。その隙の無さはお見事ですが、救いの無さもまた一級品と言えるでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-06-21 19:57:48)(良:1票) |