1. 4ヶ月、3週と2日
《ネタバレ》 これはルーマニアの独裁政権が引きこした特殊な物語ではありません。「男社会」に身をおく女性たちの普遍的な物語なのです。どこの国においても、女は子供を産む機械だ、という思想が根強く残っています。そして、いつの時代でも、どんな場所であろうとも、妊娠したことを家族に言えず、1人で悩みつつ、赤ん坊を生んで殺してしまい、逮捕される女性のニュースは、めずらしくありません。こういう話を聞いて、いつも悲しみと同時に腹が立ってきます。なぜ女性をこんな目にあわせた男が、逮捕もされずに、のうのうと、まっとうな社会人のふりをして生きていけるのでしょうか?それどころか世間は、傷ついた女性たちに、マグダラのマリアのように娼婦の烙印をおして非難しようとする。特にバカ女という言い方は許しがたい。逮捕されて当然の悪女だと罵る人間もいる。しかしどんなときも、原因をつくった男たちに批判は飛び火しない。これが男社会の正体です。中絶した女性に対して、責任のとれないことをするなと、偉そうに説教した闇医者がその典型です。彼はレイプまがいに女性と性交し、避妊もしなかった。自分の責任のとれないことをするなだって?バカ男の説教なんてクソ食らえである。こういう男は、女性をレイプしても、「男にすきを与えた女のほうが悪い」と、のたまうのだ。おまえはルーマニアにおいて、中絶禁止の法律は破るが、避妊禁止の法律だけは律儀に守るのか?おまえたちが男社会を利用し、女性たちを虐げているのではないか。闇医者はあらゆる男たちの象徴だ。女性を説教し、お金を搾取し、恫喝し、強制的に体を奪い、そして急いでいなくなる。もう笑うしかない。手に入れた男のIDカードを利用してそこらじゅうで借金をつくってやれ。それから主人公がルームメイトを必死になって助けた理由について1つ言いたいことがある。これは男社会に対する、女たちのジハード(聖戦)だ。主人公は友人のためではなく、ましてや自分のためでもなく、すべての女性のために行動したのです。「わたしが妊娠したらあなたはどうする?」と、オティリアが聞いたときの、男の言い分は死刑に値する。彼女は男社会に耐えるだけではなく、立ち向かう勇気を備えている。いつか男から盗んだあのナイフが役立つ日がやってくるでしょう。 [DVD(字幕)] 10点(2008-12-26 21:28:59)(笑:1票) (良:3票) |