1. サイレントノイズ
《ネタバレ》 中盤までは、そんなに悪くはなかったと思う。 映像も綺麗だし、役者さんも悪くない。キートンのシワの微妙さは味わい深いし、お疲れ顔のデボラ・カーラ・アンガーもキャストとしては合っている。演出も編集も、それなりに洗練されている感じがして、そんなに悪くない。 …が、ちょっと脚本がイケてないんでは。ジョナサンがビルに単身乗り込んだ後の展開が決定的にイカんかった。悪霊をビジュアルで見せたうえ、直接襲ってきたりしたら、なんのために今まで小出し小出しにしていたんだか、まるで意味がないじゃないかー。 なんか、非常に惜しい一品だ。 [DVD(字幕)] 6点(2007-06-27 22:34:18) |
2. ザ・コーポレーション
《ネタバレ》 連中は、世界をどうしたいのか。 彼らの思い描く世の中とは、どのようなものなのか。 「連中」というのは、この映画にも登場しているマイケル・ムーアとか、緑の党の人たちとか、この映画の製作者のような人々のことである。 この映画では、「企業」を「人格」としてみた場合の精神分析を試み、立派な「サイコパス」である、と太鼓判を押す。 その後のもって行きかたは、「でも、企業のエラいさんは、一人一人は結構いいヤツなんだ。悪いのは個人ではない。所属している組織であり、機関なんだよ」とくる。 ??意思決定とは、人間がしているのではなかったか?誰かを庇っているのか。それが、この映画の「保険」ということか。 そして、教会や学校といった組織や、公共の組織は、「損をすることができる」から良い、とし、それができないから「企業はダメ」と言う。 ちょっと待って。その「損をした分」は、誰のお金で補填するの? さらに疑問なのは、「囲い込み(エンクロージャー)」が良くなかった、とし、土地や空気や水を「個人が所有」することは悪、と言っていることだ。 ??…ということは、彼らは、全世界が昔のソ連のようになったらいいな、と思っているのか? プライベートプロパティという概念は、それまでの「神の所有物」という共通認識と対比して生まれたのである。柵を立て、塀で囲い、異物を拒否する。囲い込みである。 これがいけないのだそうだ。…ちょっと待って。「私有化」は、モチベーションを高めるのではなかったっけ。その逆も真なり。人間とはそういうものであって、そういうものであったから、こういうことになったのではなかったっけ。 なんと、この映画で彼らは、「すべてみんなで共有したらいいじゃん」と言いたいらしいのである。 各企業の悪業と、それとは、一緒にしていい話なのか? 「企業悪を解決=みんなで共有したらいいじゃん」にひとっ飛びするとは、ものすごい離れ業である。そこまで言うなら、「歴史」をどう考えているのか、明確に語って欲しいものである。 最後にムーアは「オレのやっていることは、企業の首を絞めるナワになること。決してヤツらの側に立っているわけじゃない」などと言い訳する。やっていることに自信があるなら言い訳をするな。言い訳を。興ざめも甚だしい。正体見たり、という気分だ。 [DVD(字幕)] 3点(2007-03-21 13:42:09) |
3. サタンクロース
《ネタバレ》 こいつはいいぞっ。 ブレット・ラトナー。「天使のくれた時間」は豪華キャストなのに駄作であったが、「レッドドラゴン」は物語性があってよかったものだ。 で、このハチャメチャなブラックコメディ、スカッといたします。 なんといっても、見どころはサタンクロースの滅茶苦茶な暴れっぷりのキレの良さ。ここまでされると、「恐怖」ではなく「快感」になるということだ。 有り得ない登場の仕方に有り得ない暴れぶり、その割にはペンタゴンに懲りてラビには手を出さないとか、人喰いトナカイとか、ちょっとしたところにもこだわりが感じられる。こんなキャラクター、待っていたんだ。 残念なのは、主役の二人に魅力が欠けること。こういう話だから主役にティーンエイジャーを持ってくるのは仕方ないとしても、じいさんの存在感に比べ、ニコラスとメアリーの場面では面白さが全く感じられず、早送りしたくなるほどである。この二人のシーンには、脚本に工夫が足りない。 ビル・ゴールドバーグの圧倒的なアクションのキレには驚く。さすがレスラーにして、演技もそれほど悪くはない。 続編が待たれるが、頼むからティーンエイジャーを登場させるならこんなつまらない描き方をしないでくれ。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-21 12:51:56) |
4. ザ・フォッグ(2005)
《ネタバレ》 なんだかとても惜しい気がする作品だ。 これは、悲劇と夫婦愛の話であるから、怖いとかそういうことを期待してはダメなのだ。 なんといっても、現代っ娘としての自分と、よみがえる前世のブレイク夫人としての自分との狭間で翻弄されるエリザベスをどう描くかという脚本演出、そして女優さんのウデにかかっているわけだ。 それは、ニックのガールフレンドとしてのエリザベスと、19世紀に生きるやり手の商人ブレイク船長夫人としてのエリザベス、それぞれの男性の吸引度を秤にかけてもらわなければならない。 が、どちらも中途半端なんだよなあ。だいたいニックというのが単なるハンサムのスケコマシ、ブレイク船長とは、ハナから太刀打ちできぬ軟弱な奴だ。これでは、「どちらの男性を選ぶか」などと悩む必要もなし。ドラマにならない。ブレイク船長というのが…この俳優さんは誰だか知らないがこの作品の中では格の違う出色の出来なのだ。しかも、ほとんどセリフなどないに等しいというのに、そのたたずまい、もう、目いっぱい「19世紀」している。なんでもうちょっとガイコツじゃない通常の場面を増やして、エリザベスとの夫婦愛を表現しないかなあ。惜しすぎる。 そして、エリザベス役の女優さんというのが、役不足。前世の記憶がところどころよみがえるという場面の後では、自分でもワケのわからぬ「過去の夫」への思いに、とらわれている様子を表現してくれなくては。単に「何かマボロシを見ちゃったわ」とか思っている場合じゃないのだ。物語のキモなのだぞ。 子々孫々タタられても仕様があるまい、というような悪業を犯しておきながら、リベンジに来られたと思ったら、妻を取り返したら気が済んで帰っちゃった、というオチにするならば、それほどの「夫婦愛」をきっちり描いておいてくれないと。例えば、この夫婦は結婚して5年くらいでまだ子供も居ないようだから、「移住したら、子供を何人作ろう」とか、「庭を作って、花の種を植えたいわ」とかさ。 全般に、「あらあらそんなわざとらしいハマり方して」というような凡庸な演出であり、複線の張り方にも工夫がない。監督の力量は知れている。 が、ラスト、結婚時のポートレートで終わったことは誉めておきたい。これはよくできたいい写真だった。ここはエリザベスも毅然としたいい表情だったね。ブレイク船長役の人はとにかく素晴らしかった。(ガイコツじゃない時の) [DVD(字幕)] 6点(2007-02-24 00:09:12) |
5. サイレントヒル
《ネタバレ》 ゲームについては何も知らずに見ました。 どうりで強引な部分があるわけですね。 ただ、冒頭からサイレントヒルに着いてシャロンを探し回っているあたりまで、「これは〝サイレン〟オチじゃないの」と思っていました。おまけにサイレン鳴るしね。なんだか設定も似ているよな、とか。ベネットまでシャロンを目撃しているということは、ベネット自体がローズの別人格なのか?とか余計なことまで考えてしまった。ただ、グッチ警部までもが「娘」と言っているのでやっとサイレンオチじゃないことに気がついた。 ストーリーを全く知らない私の場合は、サイレンオチでないならばあの怪物の意味は?なぜローズは絶体絶命のところで助かってしまうの?「手がかりを見つけた」って、なんでそれが娘の居場所の手がかりだってことが分かるわけ?という疑問だらけとなってしまいました。 ちょっと長すぎるのと、クライマックスの火あぶりおよび針金シーンあたりの見せ方が冗長な感じがしました。ああゆうシーンはえんえんと見せられると「はい、作り物ですね。」という気がしてきてしょうがない。また、ラーダ・ミッチェルがヒーロー気取りで叫びまくるシーンは舞台チック(芝居クサー)な気配もぷんぷんしてきて、閉口した。 クリーチャーが次々出てくるところはなんとなく「ザ・セル」ぽい感じもしました。 この手の映画にしては、そう悪くはないが、手放しで喜ぶほどではないというレベルでしょうか。 お疲れ女優のデボラ・カーラ・アンガーは、あの役にはぴったりだったし、ベネット巡査もイカしていました。女性警官がこんなにはまっている女優さんもめずらしい。やっぱ、女性警官はこのくらいごつくなくっちゃね。あっさりつかまってしまうところは「?」と思いましたが。 が、ラーダ・ミッチェルはあいかわらず好きじゃない。この人はウッディ・アレンの映画で堂々主役を張るわで勘違いもはなはだしい。あんなミニスカートにブーツなんて全然似合わない。他の美人女優たちがみなアクションものに励んでいるのにならって「あたしだって、戦うヒロインぐらいやれるわよ」と思ったか知らないが、ミラ・ジョボビッチやケイト・ベッキンセールやシャーリーズ・セロンとあなたは違うと思う。それは勘違いです。 [DVD(字幕)] 7点(2006-11-23 00:06:42) |