1. グラン・トリノ
《ネタバレ》 本音全開の主人公のセリフは面白いし、これまでのイーストウッド作品に比べたら気分よく見られた。けれど、あれだけ人生経験豊富でいながら、バカなギャングたちにいたずらにけしかけるような真似をするものだろうか? 咳で吐血するのは、ラストで「ほらみろ、取り返しつかなくなった」と思われないための道具。ご都合主義。荒っぽくて時代遅れの男臭さを出すのは良いが、思慮もなく銃を振り回す馬鹿な若者相手には小狡いほどのクレバーさで対抗してくれる方がカッコいいと思う。 【追記】ここのレビューの高評価の数々に驚きます。たかが映画と割り切っているからとしか思えません。まだ健康であらゆる生き甲斐を持っていても、あんなふうに人が死ぬのを見て「感動した」って言ってれば良いんでしょうか? 命を犠牲にしてあのチンピラが消えても、同じようなのがまだいるんでしょうに。命を軽々と解決策に使って感動させようとする映画は本当にシラケる。あんな風に命を落としてくれる人が次々と現れない限り、あの居住区はまともになれないみたいだ。あれほど銃武力が身近な場所から息子夫婦がリゾートめいた施設への移転を望むのは当然だし、孫も最初からあんなじゃなかったはず。いいおじいちゃんなら、あんな言い方しか出来ない成長をしてしまった孫娘に気の効いた説教くらいすべし。というか、あそこまで偏屈なじいさんに孫娘は自分から話しかけないだろうし、彼のものを欲しがったりしないだろう。家族との絆の描き方が投げやりなくせに、盗人隣人との絆は丁寧に描く。わざとらしすぎだ。 [DVD(吹替)] 4点(2010-01-12 10:44:31)(笑:2票) (良:4票) |
2. 死霊の盆踊り
《ネタバレ》 このサイトでこの映画の存在を知り、「史上最低」という映画がどんなものか観てみたくなったわけなのですが。。。そう思っているうちが花だったみたいです。すごくぶっ飛んだ馬鹿馬鹿しさを期待した自分が残念! 夜中のドライブと思いきや、真昼の道路を走る車のシーンが出てきて「待ってました!」と思ったのもつかの間。ダサくて「なんじゃこらー」と唸ってしまうメイクをした死霊がたくさん馬鹿踊りをするのかと期待していたので、普通に裸の女がぬるーい音楽をバックに一人踊ってはまた一人。。。という90分に笑うこともできませんでした。これが、ダンスにメリハリがあるとかエロくでもあればまだ救いがあるのに。。。 ダンス以外の場面でも、ぬるーい動きとセリフ棒読みのオンパレード。地獄があるとしたら、まさにこれなんじゃないかと思ったわけですが、登場人物の「地獄に落とすぞ」の台詞で、これ以上にひどい場所があるのかと驚愕。「一応見た」という満足は得ましたが、一見の価値もなかったことを確認しました。賞賛の0点など与えられたものではありません。かといって「面白なさ過ぎて大笑い」の1点でもなく、「年に一度のはずれ」2点と並べるのも他作に失礼。「かなり面白くない。かなりコケ具合」3が最もふさわしいと判断します(「盆踊り」って邦題の馬鹿センスに献上としてもいいかな)。もし自分がこれを他人に薦めるとしたら、本編ではなく付録の監督解説を推します。こうした映画が作られることになった映画業界の背景はトリビアものだし、自分を成功者だと勘違いした監督の上から目線のお話は、突っ込みどころ満載で、こちらの方がはるかに笑いのネタにできます。そこで述べられる「続編」の予告は、見てやってっもいいかもと思えました(←上から目線返し) 監督、この解説が素ではなく「狙い」だったら、一目置いてあげてもいいです。 [DVD(字幕)] 3点(2011-01-01 05:34:06)(笑:4票) (良:1票) |
3. ミリオンダラー・ベイビー
《ネタバレ》 いったい何について語りたい映画なんだ? 正々堂々とした潔い戦いの結果なら良しだが、あんな卑怯な行為のために人生をダメにされるなんて。体が無事だったとしても、あんなヤ~な感じの人間と対戦すること自体、スポーツの清々しさがないし胸くそ悪過ぎ! 主人公が死を選んでもいいけど、そういう状況を作り出したヤンキーバカ女が制裁を受ける描写(もしくは自責の描写)がないのが、とっても気分悪いです(一回しか見てないけど、そんな場面あった記憶がない)。悪者の「やったもん勝ち」な物語を見せて、主人公が悪者の不正の犠牲によってひっそりと自ら死を選ぶ・・・??? その前に人生を奪った不正に抗議すべきだろう。対戦者が善い人で、事故は不正によってではなく正当なパンチによって生じたなら、どうだろう? 自責の念に苦しみながら、しょっちゅう見舞いにも来てくれる対戦者だったら、どうだろう? 主人公の選択はその場合でも「価値ある物語」と評価されるべき? 現実の世の中には、事故で首から下が全く動かなくなった体操の先生が、口で絵筆を操って素晴らしい花の絵と健気な言葉を綴ってもいるのに、それに比べてこの映画の主人公は自死を選択する理由が軽すぎる。尊厳死を扱うにはドラマが軽薄の極み。いくらウソ話でも障害者をこんなふうに死なせて悦に浸るストーリーテラーはサイテーだ。これに賞をやるアカデミーもサイテー!! 出来るならマイナス点をつけたい。 【追記】ただボクシングが強いだけのボクサーなんてどうでもいい。倒されても立ち上がって、決して自分から折れたりしない精神こそがボクサーのかっこよさだと思う。体が不自由になり、このまま存在を忘れられていくのがイヤとか言って自分から人生リタイアするなんて、ボクシングで何を培ったんだ? バカ女!(というかバカ原作者!!) [映画館(字幕)] 0点(2010-01-06 06:03:04)(笑:2票) (良:3票) |
4. ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日
《ネタバレ》 世界のある場では澄んだ水の「プール」ある場では汚い「おしっこ」となる「ピシン」の名を貰い対照的な二つの事柄と折り合いをつけることを運命付けられた主人公。名前の由来を作った男に泳ぎを教わり、オシッコの名から逃れるために自名の先頭二文字をとって「パイ」の通称を定着させる。誰も終わりを確認したことない無限の「円周率」を膨大に暗記して。この時パイは終わりの見えない広大な海で生還する為の努力を身につけるとともに、自分の名を通して「無限」と「循環」を身近なものにしていく。澄んだ水に始まり汚れたオシッコとなる命の営みも実は循環しており、泥を食べた子の口の中に宇宙が広がっていたのも「無限の循環」。父は神を信じず科学を信じ肉を食い、母は植物学者のベジタリアン。父は優しい幻想よりも厳しい現実に重きを置きトラの実態を見せる。一方、母は学者だが「心の問題」は科学に頼っていない。そんな両親の元で、あらゆる宗教に触れ真理を探ろうとする。父母に相違がありながらも、愛し合う夫婦であるように、相違ある宗教にも等しく心を傾けてみた。これが主人公が試練を生き延びる準備段階の物語。海に投げ出された主人公は、肉食と菜食主義の狭間で葛藤する。肉食を許せない菜食主義の自分は船の外にいて、とうとうシマウマに手をつけたトラに悲しむ。けれどいつまでもそのままでは生きていけない。菜食主義者はカツオを自分の物と主張しトラに譲らないまでになり、やがて主人公とトラは同じ船に同居する。鏡写しに対照の海と空の真ん中で。だが嵐の神に遭遇しトラは激ヤセ、菜食主義者も共に瀕死の姿。神に召される覚悟を決めたあと、女形の不思議な島で彼は植物が動物の屍骸を吸収する「生命の無限の循環」と、ミーアキャット一種だけの「多様性皆無の世界のつまらなさ」に気づく。菜食も肉食もありの多様な中で命は循環している。気づかせたのは、別れた彼女に問うた「森に咲くハスの花」。馴らしたはずの肉食獣は陸に戻ると挨拶もなく去る。所や場合が変われば何が正しいかも変わるから。「さよなら」を言わないのは、無限の循環の中で繋がっているからかもしれない。「ピシン」一つが二つの異なる意味を持つように、一つの真実は二つの物語を生み対照的な二つのものに折り合いをつけた。そして物語は名付け人を介して語り部に循環していく。 最後の独白は英字幕を読むとコックがただの悪人でないと分かる。コックはパイに自分の肉を捧げた。 [映画館(吹替)] 10点(2013-03-13 00:16:51)(良:4票) |
5. エイリアン3
《ネタバレ》 むかしむかし、ハリウッドのあるところにチャールトン・ヘストンという俳優がおったそうな。ヘストンさんはお猿さんたちとお芝居した映画が大当たりした後、その続編に呼ばれました。当たれば二番煎じでもお金儲けしたい鬼たちに抵抗すべく、続編に出る代わりに二度と続きが作れないように自分とお話の舞台を吹っ飛ばしましたとさ。ところが・・・その後もお猿の星のお話は続きました。鬼たちはしぶといのです! さて、時を変えてハリウッドのあるところにシガニー・ウィーバーという俳優がおったそうな。シガニーは「そりゃ、あたしはエイリアンのおかげで出世したけど、いつまでもこのイメージに縛られて振り回されたくないのよね」と思ったかどうかは定かでないが、ヘストンさんと同じように全てを終わらせようとしたのじゃろうか? しかし、ヘストンさんと違って、テクノロジーが発達した時代のシガニーさんは死んでも死にきれないのじゃった。なんで死にきれないのかは、4を観てのお楽しみお楽しみ~! [映画館(字幕)] 1点(2009-12-15 18:33:26)(笑:3票) |
6. バベル
《ネタバレ》 アカデミー賞にいろいろノミネートされたので、良い作品なのだろうと思って観てみましたが、時間を無駄にした気分です。作品を見終わったあとに、監督さんが「21グラム」の人だと分かり「この人は映画で何がしたいのだろう?」と思いました。それまで何の接点もなかった人が事故によって接点を持ち、それによって何らかの変化が生じるというのはよくあることで「一発の銃弾が・・・」といった感じのキャッチに期待するほどの面白い展開はどこにもありませんでした。冒頭は何が起きるのかハラハラしましたが、それだけ。子供に平気で銃を持たせる父親を愚かに思い、車を狙って試し撃ちする子供も愚かに思い、やたら脱いだり誘ったりする日本少女は喋れないハンデを考慮してもバカバカしくしか見えず、アメリカ人夫婦の夫は二人きりになって関係修復する為になぜモロッコを選んだのか「はぁ?」という感じ。それ以外なぁ~んにも感じられない、くだらない作品でした。それぞれの人々が健気に思慮深く生きながらも起きた事件なら、見た後の思いももっと違うかもしれませんが、馬鹿みたいな行動選択の羅列で、事故が起きて当然。アカデミー賞の関係者の感性を疑いたくなりました。 【2011-6-8追記】機会あってここでの高評価レビューをいくつか読み、それらにはフムフムと思ったけれど、やっぱり「だから何?」と思う。世に悲しく愚かな出来事は伍萬と満ちあふれるし、この物語以上のことがニュースにもなる。『コミュニケーション』がキーワードっぽいが、この物語の事件それぞれはコミュニケーションだの環境・境遇以前に『人としてまともか』という問題が極めて大きすぎる。どぎつく下品な性描写をどうしても見せなきゃならない必然性も感じないし、それらは監督が人を小馬鹿にしている精神の表れにしか感じない。わざわざ金払って3文ニュース以下の澱みを観たいと思わないし、難解なのは自分のせいではなく監督が表現者として低能で下品なんだという気持ちは変わらない。絶対センスない! そしてこういうのをノミネートするアカデミーもすっかり格がなくなったとあらためて思う。 [DVD(字幕)] 2点(2009-06-20 19:58:05)(良:3票) |
7. ノッティングヒルの恋人
メディアも発達した現代で、どこかの国の王女が護衛の手もすり抜けて一般市民に騒がれることもなく街にとけ込むのは無理だから、人気女優に変更。人気女優がメディアに警戒を解かないわけないし、人気女優をそれとも知らない新聞記者というのも無理が出るので書店の主人に変更。オードリーの代わりなんて誰にも出来ないとは思うけれど、ジュリア・ロバーツは好きな方だけど、もっと子供っぽい可愛さを残した女優を見つけて欲しかった(オリジナル同様、新人を発掘するとか)。グレゴリー・ペックの代わりがヒュー・グラントなのは少女マンガ過ぎて「とほほ」としか言いようがない。オリジナルのイメージを汚すので二度と見ていない。 [映画館(字幕)] 2点(2010-01-09 17:22:33)(笑:3票) |
8. 借りぐらしのアリエッティ
ポニョを制作の頃を取材した特集をテレビで見たことがあるけど、あるシーンで宮崎さんがすごくワンマンで我がままに見えたのが印象に残っています。カリオストロでは世界から注目されるも興行的には大失敗して、ほとんど作家生命を絶たれたような彼が、アニメージュでのナウシカ連載を機に鈴木さんという強い味方を得て生き返り、それからたくさん良い作品を生み出して、ディズニーとも手を組みアカデミー賞も穫り、ほんとに良かったって思ってました。泥臭いと批判されても自分流を貫き続けて結局登り詰めたのですから。けれど、最近のジブリを見ていると「自分を貫くってどういうことかなー?」なんて、ちょっと思ってしまいます。作家は「俺が作りたいように作る!」でいいのかな??? 「これを見る人は本当に楽しめるか?」の疑念へのパーセンテージってどうなのだろう? そこも大事ですよね? 「挑戦」することと「我がまま」との天秤ばかりは難しい問題かもなーと思ったりします(監督は宮崎さん本人じゃないけれど)。「最初から見る気もしない」「途中で見るのやめた」などの人は評価すらしないわけで、そういう人がこのレビューの後ろには一杯いるってことを考えてしまいました。僕はたまたまテレビでやってて子供に付き合って見たわけですが、子供含め「え、それで終わり???」とポカンとしてしまったのでした。 原作も同様の終わり方としても、全編を流れている魂の部分で、他人様の作った話を借りてくるなら、借りた作品への思いがしっかり伝わるものに仕上げる義務や責任みたいな重さをもっと持っていて欲しいです。作品をいじられる原作者って、きっと手放しに喜べるものじゃないんでしょうね。自分の子供がどう扱われるのか不安もあるだろうな・・・と、そういうことを久々に思いました。 [地上波(邦画)] 2点(2012-01-06 17:38:24)(良:3票) |
9. 127時間
《ネタバレ》 ダニー・ボイル作品にいい印象がなかったので、ハズレの疑いを持ちながらレンタルしたのですが、この作品は素直に良かったと感じました! ラストになるまで実話だとは全然知らずに観ていたので、ずっと作り話だと思いながら鑑賞していたのですが、作り話だと思っていても、あの切断シーンは身がよじれる強烈さでした。自分にとってはスプラッター映画なんて目じゃないグロさとリアリティで、これが実際にあったことと知った瞬間には呆然としてしまいました。他人に無理矢理ではなく、自分自身でやるのだからたまらなすぎる。宣伝キャッチにおいて「決断」なんて言葉が使われてるし、予測は出来ていたけど、そのうえ作り話とまで思っていたのに、決行に移した時は「マジかよ!」と思いました。自分ならきっとあれを出来る根性はなく、衰弱して死んでいく方を選ぶような気がします。この決断場面の凄さのために、誰にでもお勧めできる作品ではなくなってしまっているのは勿体なくもありますが、しっかり描いている姿勢に好感を持ちます。映画のインパクトについて、このシーンが何よりも強烈に刻まれてしまうのですが、映画の語るべきことが決してそこではなく、きちんとした人間ドラマと命が刻まれているので、良質なストーリーに仕上がっているなと感心します。軽快な音楽をバックに流れる飲料水のCM映像も力強い印象を残すし、主人公がビデオを巻き戻して初めて知る映像のエピソードや、反省の思いの中で「この岩はずっと自分を待っていたんだ」と語る心の声などがとても印象的でした。泳いだプールサイドに待つ親兄弟達の画面にはホロリとしました。幻影を見た時の子供の姿が、将来の自分の子供という希望の象徴だとは気づけず、そこがちょっとだけ残念でしたけど、とにかく力強くて良質な作品だと思います。「死ぬ気になれば何でもできる」とか、そういうセリフを本気で言ってもいいのは、この主人公のような人でしょう。 [DVD(吹替)] 8点(2012-05-27 19:15:31)(良:3票) |
10. ももへの手紙
《ネタバレ》 ひっさびさに良いアニメを見せて頂きました! ここでの多くの方の評価に少し驚きです。『トトロ』と比べるのはいくらなんでも乱暴かなと思います。とてもジブリっぽいとは思いましたが『トトロ』はないでしょう。テイストが違いすぎます。これは良かった頃のジブリの高畑さんの作品のノリに近いと思います。『耳をすませば』とか『おもひでぽろぽろ』とか…。そこにちょっと『もののけ姫』のこだまやディダラボッチが乱入してくる感じではありましたが。ジブリっぽいとは言いましたものの、最近ちっとも良くないジブリには、この作品を見習って欲しく思います。海外の児童書で『青空の向こう』というものがあり、姉と弟が言い争いの喧嘩をしたまま死に別れてしまうのですが、それを思い出しました。心にもないことを口にしてしまった後悔と、本当にどうしても伝えるべき気持ちを相手に伝えるエネルギーの話。妖怪たちとの別れの後、もう少し余韻に浸っていたい思いに気持ち良く寄り添ってくれて、いい感じにエピローグ。人と人が本当に心を通わせるには、自分の心を閉ざさず開いたり、受け入れてもらえるかどうか不安な相手の心に飛び込んだり、そういうのって、あの飛び込みのように勇気のいること。新しき友たちが輪になるなか、主人公の体が深く水に潜り込み浮かび上がるまでのラストシーンは、心象風景としてとても感動的でした。父親も飛び込めなかったんだよね娘の心に…だから「ももへ」の後を書けないままだった。人の心のなかに入るのって、人はそれを求めてもいるのだけれど、やっぱり怖いもんです。そこにいない人の気持ちを「あの人ならきっとこう言うはず」とかいうのは、それもありかもだけど、身勝手な人には自分に都合のいい想像だけを選択するなんてのもあるわけで、酷いことを言ったまま死に別れてしまった相手に「許してくれてるよ」なんて勝手に想像するなんて絶対嫌。自分を責め続けるのも嫌。だからもういない人について「あの人は多分今こう言ってる」的な表現にしないで、ちゃんと父からのメッセージを届けてくれた描き方は良かったです。それこそが作り話にこそできる癒しと思います。「ももへ」に書き戻された手紙に大笑いしました。その直後のメッセージなので「母と娘の勝手な想像」では片付けられないようにできています。でも別の便箋だし見えない文字だから、解釈に幅を持たせてありその辺が繊細で巧いと思います。 [DVD(邦画)] 9点(2014-05-13 00:25:43)(良:2票) |
11. エイリアン
芋虫の背中が割れて全く違う形のサナギに取って代わったのを目の当たりに見た時、物凄いものを見たと思ったけど、ダン・オバノンも自然界や昆虫などの不思議な生態に触発されてこの映画のアイディアを思いついたんじゃないかなと思ってます。そのエイリアンのデザインを手がけたギーガーを起用したのがスコット監督らしいけど、この映画を観た人の何割があの宇宙人の頭がでっかいオティンティンだということを知っているだろう。製作段階では「頭おかしいんじゃないか」みたいな周囲の反応の中、監督はギーガーのデザインを強く買っていたそうです。ストーリー展開も、公開前は「もっと早めに見せ場を作れ」という上の反応だったそうで、それはあの名作「猿の惑星」でも同じことがあったそうです。でも、どちらの映画も「はいはい、ではそうします」とはならずに、長く引っ張っておいて突然たたみかける演出を断行した結果、大ヒットしました。スコット監督は当時まだそれほど有名ではなかったけれども、それだけに作品にかける感性と決断力はスゴいと思います。そしてスコット監督を起用したウォルター・ヒルも偉いと思います。冒険する勇気を持った人たちが集まらないと、こういう映画は作れないのだろうなと思います。 クライマックスで「幸運のお星様・・・」と祈るシガーニーのセリフは彼女自身が提案したというのも拍手。ただ当たり役をもらったのではなく、自分が預かった役を最高に演ずる努力もあったから、彼女はこの作品で成功者になったのだと思います。 [映画館(字幕)] 10点(2009-12-14 18:09:57)(良:2票) |
12. プライベート・ライアン
ライアンのモデルになった4兄弟は実在するそうだが、救出劇があった事実はないらしい。もし事実あったとしても、それがどうした。らいぜんさんの「一人っ子は?」にいたく共感。ドラマはシラケるばかりの浅さ。人が人を殺さないためには、実際の殺人事件のその現場を克明に映像再現して見せれば良いのでしょうか? 戦争の狂気を見せて「反戦」のポーズなど、個人的な「殺人」に置き換えてみれば、どれほど品のないことか一目瞭然。戦争を抑止したいのなら、健全な心を育てたり、間違っていると思いつつも従わざるを得ない恐怖政治を作らない術を考えさせる方が大切だと思います。この映画は史実でない以上、記録映画的な価値もないし、どぎつい戦争映像がなければどうしても語れないほどの、それに見合う素晴らしいドラマもメッセージもない。ただの悪趣味、映像暴力。 [映画館(字幕)] 0点(2010-01-10 09:35:51)(笑:1票) (良:1票) |
13. ミスティック・リバー
《ネタバレ》 ストーリー構成はよく出来ていると思うけど、結局のところ下らない話し。ネットをあちこち徘徊すると、安易な思い込みや決めつけを平気で書き込む人をいくらでも見かけるし、この物語もそういう人たちのレベル。そういうキャラを集めてヒネリを利かせたら、スゴいサイテーなケースを作り出すのに成功しましたって感じです。まぁ、メディアに流される人もいっぱいいる世の中で、今更こんな思慮ない人たちの集積が作り出す結果なんて現実にたくさん溢れてると思います。原作を書いた人は偉いと思うけど、「世の中にはこんなバカもいるよね」と告発するのに、こんな後味の悪さを与えられるよりは、「戦争のつくり方かた」や「バカの壁」を読む方がマシ。短絡的に正義に燃えるバカの、手に負えない怖さが共通点。 [DVD(字幕)] 2点(2010-01-06 09:01:30)(笑:2票) |
14. 容疑者Xの献身
《ネタバレ》 rhforeverさんと、かずいちさんの意見に賛成! 公開時、なんか評判よかったのでレンタル出てから観てみたら、つまらないし陰気すぎだし、TVドラマのイメージなんてすぐに消えてしまいました。それに、堤真一の演技がどうにも生理的に受け付けなかったです。最後の泣き崩れ方とか、もうホームレス殺害のこととか関係なくイラッとしてしまいました。全く同情できないし、あの泣き崩れた姿を思い出すと、蹴飛ばしたくなるんです。たかが映画の登場人物に、蹴飛ばしたくなるほど嫌悪を感じるなんて多分初めてです。あの演技はホント生理的に無理!! 【2014/7/29追記】僕も人生に絶望気味になった時、ある女性の笑顔に救われたことあります。なので堤真一演じた役の心境はわからなくはないですが、あれハッキリ言ってストーカー的に気持ち悪くないですかね? 「隣に越して来た女性が綺麗じゃなかったら…」って話しが上がってますが、この物語のネクラなストーカーも堤じゃなければ、どうなのよ? 一方的で勝手にことを進めて、相手の気持ちとか無視してるのと同じ。見栄えのさえないキモオタが一方的に女を好いて勝手に関係ない人殺してごちゃ混ぜたら、どんな気分なんですかね? [DVD(邦画)] 1点(2010-08-30 21:29:44)(良:2票) |
15. ゆりかごを揺らす手
レベッカ・デモーネイが戸を閉めてひとりホウキか何かをバンバン打ち付けるシーンはホントに体温が冷えていく気がしました。クレヨンしんちゃんのネネちゃんとこのウサギのぬいぐるみシーンを観ると思い出します。ラストの方でごまかし笑顔も利かなくなり、一瞬ヒクッと鼻が引きつるところもスゲー怖い。この映画の彼女には「何か賞をあげて」と思います。低予算で大当たりしたこの映画、多分に映画作りのあり方に何らかの革命をもたらしただろうと思います。 [映画館(字幕)] 9点(2011-06-11 01:53:46)(良:2票) |
16. LOOPER/ルーパー
《ネタバレ》 私は良質のSFというのは科学的理屈やディテイルに完璧こだわることではなく、いかに人間や社会というものを描けているかどうかだと感じています。タイムパラドックスもののセオリーがどうたらこうたらと、物語が伝えたい本質とさほど関係ないことにうるさい人たちに、この作品の評価を落とされてしまうのはとても残念な気がします。この作品は2作目までで終わらせとけば良かった『ターミネーター』シリーズの愚かなループと、『マイノリティー・リポート』がうまく描くことのできなかった部分に、強烈な答えと光を提示してくれたと思います。私がこの映画を観て強く感じたことは「世界を良くしたいなら、まずは自分の子供を愛して大切にしっかり育てなさい」ということでした。最後に復習に来るキャラクターでさえ、自分を拾ってくれた悪人に自分の存在価値を認められたいという愛情を欲しているし、すべてのキャラが自分と関わる者との絆を大切に思っているわけですが、その大切にする方向や方法が問われてる映画だったと思います。ひとりひとりが他者への思いやりを持ち、かつ家族が愛し合って健やかに心を育て合うことができれば、社会は未来は良い方向に向かうはずだと、そういう魂を感じる良作でした。子役、上手い子を見つけたなと思います。幼くして持つ重い枷に潰されまいと、同年代に比べてしっかりした判断行動を見せる健気で逞しく孤独を秘めたキャラに合った目をしてました。 [映画館(字幕)] 9点(2013-01-22 18:27:10)(良:2票) |
17. シンドラーのリスト
《ネタバレ》 女子供や老人や弱者(に見える者)が無残に殺されれば、そこだけを見ると「なんて酷いことを!」と思うのが普通の人情。しかし、それはどの戦争や殺戮においても同じことです。では、ユダヤ人の場合、なぜそんな蛮行の標的にされたのか、そこのところをよくよく考えてみたことはあるだろうか? ユダヤ人についてあれこれ調べて行くと、信じられないようなことが次々と出てくる。僕がユダヤ人についてホロコースト以外の事で最初に知ったのは、金貨や金塊を通貨として使用していた時代に、それを金庫に保管して預かり証書を渡す仕事を始めたのがユダヤ人ということ。そして実際の金より軽くて携帯しやすい証書がそのまま通貨の代わりになっていき紙幣となっていったこと、金庫の中にどれだけの人のどれだけの金が入っているかを知っているのは金庫を持つ自分のみであることをいいことに、ユダヤ人は金庫の中身と無関係にいくらでも紙幣を刷って利子をとって大儲けするようになったということだった。この仕組みが現在異常な世界的不況や貧富の差を生み出す元になっているらしい。そこからユダヤについて調べていくと、ユダヤの教典タルムードってものがあって、「ユダヤ人のみが人間であり他は家畜」「世界はユダヤ人のみのためにある」「汝殺すことなかれとは、ユダヤ人を殺してはならないのであって、他の人間は殺しても構わない」みたいなことが書かれているらしい。凄い人種差別ですね。こういう民族が総スカンくらったりするのは当然なんじゃないかなーと思ってしまいました。「だからってユダヤ人全てが悪いわけじゃないし、幼い子供に罪は無いのに」という声が当然予想されますが、ホロコーストは本当にあったのかすら疑問の余地が出てきています。ヒトラーがなぜホロコーストに走ったのか、彼の正体を調べようとすると、またまた信じられないような情報も出てくる。ヒトラーを祭り上げる群衆や資金援助をしていたのがユダヤ人って本当?! とビックリな情報もあるし、敵対する両勢力(国)にユダヤが資金提供して戦争をけしかけてボロ儲けなんて話も聞いたりすると、「ユダヤ人はヒトラーにひどい殺され方をしたんですとか言える立場なのか?」と思うようになり、むしろ、ユダヤ人の方が今の僕には怖くて忌むべき存在として疑わしく思う。何が真実であるかを確かめるのは本当に難しい。しかし、だからこそ、一方的にユダヤが被害者ぶっているだけの物語は疑問の余地が多すぎる。エジソンが特許料を請求するのから、払うべき金を払わずハリウッドに逃げて映画を作って儲けてきたというユダヤ人たち。この人たちが育てた映画産業自体、ずっとプロパガンダに利用されて戦争を煽り支えてきた道具にもなった。実際、この映画に出てくる赤い服の女の子は事実の描写なのか? (しかもシンドラーの本筋と無関係だし)。仮に事実だとしても、それはヒトラーだけが起こした悲劇ではなく、どの戦争でも殺戮でも同じような犠牲者は存在する。道徳心を失ってはならないが、マインドコントロールされてもならないと思う。反戦を描けば何でも良品というような評価は嫌いです。ユダヤ人大虐殺を扱った映画は数多く存在するが、ユダヤ人が何故それほどに憎まれたのかを説明してくれる映画と僕はまだ出会ったことがない。歴史的事実を扱ったとされる映画には、それが間違いなき真実であるかどうか、意図的に目隠ししている部分は無いのか、疑いの余地を持って見る目が必要なのではないかと考えるようになった。その点で、この映画の物語の描き方はアンフェアであり扇動的であり、歴史事実を考察する上での価値はかなり低いと考える。ラストの映像もなんか素直に受け取れない。この作品を仕上げるために『ジュラシック・パーク』の編集をルーカスに任せたというのは本当の話なのだろうか? 本当なら嫌な話である。 [映画館(字幕)] 0点(2009-12-15 23:56:34)(良:2票) |
18. 遠い空の向こうに
《ネタバレ》 盗まれた展示物を不理解な頑固親父が作ってくれるところが感動のツボなのかと思いながら、そこにそれほど感動できずにいたのですが、その親父が息子に「お前のヒーローに会ったんだろう」と言った後、息子の返した言葉に目頭が熱くなりました。頑固で、息子に対し不理解に見えても、仕事熱心で人望もあり情や正義感もある人だと分かる場面がいくつかあるので、そんな親父さんと主人公の根っこが見つかって繋がる最高の場面だと思います。 [DVD(吹替)] 8点(2011-01-23 01:46:08)(良:2票) |
19. 12人の優しい日本人
《ネタバレ》 この映画の最も好きなところは、最後の最後の廊下のシーンです。「自分は人を職業で判断したりしない」と思っていたけれど、この映画のエンドロールで、意外とそうとは言い切れない自分に気づかされました。劇中で段々と登場人物たちの職業や私生活の状態などが見えてくるのですが、長い審議が終わって部屋を出て行く登場人物たちを映すエンディングで「実は○○やってます」と本当の職業を明かす人物が数名。エンドロールにさえ、まだサプライズをサービスしてくれるのは、なかなかの作り込みだなーと感じました。「本当は有罪なんだけど、死刑にするのは気が重いから無罪」といった感覚からスタートする『12人の優しい日本人』ですが、本当にこの人たちの優しさというか暖かさを感じるのも、廊下を歩き去っていくエンディングにこそあると思います。お笑いとおふざけがてんこ盛りのパロディなんですが、エンディングの心地よさはオリジナルよりもこっちが好きです。 [DVD(邦画)] 8点(2010-10-31 05:18:23)(良:2票) |
20. バック・トゥ・ザ・フューチャー
《ネタバレ》 最初エリック・ストルツ主演で5週間も撮影された本作。エリックが演じているシーンをネットでも少し見ることができるけど、同じ脚本でも演ずる人間の全体的な雰囲気とかリアクションで出来事の感じ方が違うもんですね。マイケルのは「こりゃ、いったいどうしちゃったんだ!」てなノリなのに対し、エリックのは「大変なことになってしまった。どうしよう・・・」みたいな重く深刻なムードが漂ってます。1955年の街を呆然と歩くシーンとか、セリフもないのに、体全体から発せられてる深刻ムードが強過ぎて心細い気分にさせられる。映画を観ている時間、観客が主人公とともに旅を体験するのだと考えれば、せっかくの旅行を「ハプニングも楽しむ旅」にするか「マジどうしていいか不安な旅」にするか、いくらラストに同じハッピーエンドが待ち構えていても、旅の後の思い出の質が違うだろうなと思いました。マジメSFとして演じるのか、コメディとして演じるのか、そういう違いもあるのだろうけど、見比べてみて「人間て、やっぱ見かけとか仕草とかいろんなもの含めて物事に反応していて、その反応のあり方が周囲にも影響を与えているはず。なるほど同じことを言っても行動しても、全ての人が同じリアクションを得られないはずだ」と強く感じました。5週間して主役に降板を言い渡すのも、言い渡されるのも、かなり辛いことだろうけど、そういう苦渋の決断あって出来上がった作品なんですよね。あと、この映画を初めて観たとき一番感心したのは、疲れきったオヤジとオバサンとして登場する両親でした。不自然さがなく、ティーンエイジャーとして姿を現したときにホントにんまりしちゃう感動があって、主人公と同じ驚きを共有できた気がします。老けた両親を別の役者にしていたら(上はそうしろと言っていたらしい)、あのシーンの驚きや感動は成立しなかったでしょう。親の子として観ても、子を持つ親として観ても、楽しめる作品。 [映画館(字幕)] 8点(2011-09-09 18:05:49)(良:2票) |